映画レビュー1115 『ロンゲスト・ヤード』
今回は古い映画を観たいぞということでBSプレミアムから…のように見せかけていつものやつだ!
ロンゲスト・ヤード
ロバート・アルドリッチ
トレイシー・キーナン・ウィン
アルバート・S・ラディ
バート・レイノルズ
エディ・アルバート
エド・ローター
マイケル・コンラッド
ジェームズ・ハンプトン
ハリー・シーザー
フランク・デ・ヴォル
1974年8月21日 アメリカ
122分
アメリカ
Netflix(PS4・TV)
サクサクドライに、無駄な演出はしない感が○。
- 元大スターのアメフト選手が収監、チームを作るよう打診される
- 看守チームの引き立て役としてのチームという役柄ながら、当然次第に熱が入りだし…
- 70年代らしいドライな展開に爽やかなエンディングの古き良き映画感
- リメイク版もあるよ
あらすじ
第2回午前十時の映画祭上映作品として名前を覚えていて、いつか観ようと思っていたタイトルの一つ。ただ正直あのシリーズで上映するほどなのかな? という気もしました。良かったけどね。
主人公はおヒゲのおっさん、ポール・クルー(バート・レイノルズ)。彼はいわゆるヒモ的な男のようですが、相手の女性と喧嘩別れした挙げ句彼女の車で出ていったところ警察に追いかけ回され結果逮捕。めでたく収監でございます。
その後の話でわかるんですが、どうやら彼はアメリカンフットボール(NFL)の元スター選手だったものの八百長に絡んだために追放され、ヒモになってしまった様子。
彼が収監された刑務所の所長(エディ・アルバート)はいわゆる“アメフト狂”のようで、看守たちで構成されるセミプロのアメフトチームを作っていたものの正直そんなに強くない…ということで「クルー逮捕」の一報を聞きつけた所長は裏から手を回し、自らの管轄の刑務所に連れてきて彼にコーチを引き受けるように要請します。
しかしその直前に看守長(エド・ローター)から「断れ」とボコボコにされていたクルーは「特別待遇」も蹴って辞退、そのことで機嫌を損ねた所長によって過酷な労働に従事させられることになります。
そうして時が経ったある日、今度は所長から「看守チームを勝たせるための囚人チームを作れ」と依頼され、承諾。囚人たちをテストして即席チームを作るのでした。
しかし「負けるため」とは言えそれなりに格好がつかないと意味がない…ということで次第に気持ちを入れてチーム作りに取り組むことになるクルー、問題の試合はどうなることやら…。
無駄な演出はしない良さ
ジャンルとしては一応スポーツコメディとなっていますが、そんなにコメディ色は強くなく、この頃らしいスポーツドラマと言った印象。80年代になりますが舞台や作り的には「勝利への脱出」にかなり近いものを感じます。
もっとも当作は脱獄話ではないのでテーマの部分はだいぶ違うんですが、ただ刑務所が舞台だったり囚人チームだったりスポーツ主体だったりとかなりの部分で重なるかなと。
序盤の唐突な別れフェーズから刑務所内での過酷な労働等、割と本題に入る前の部分がやや長めに感じられ、ドラマの構成的にもどことなく70年代っぽい雰囲気が感じられるとか感じられないとか言う噂です。
「看守チーム用の“接待チーム”を囚人たちで作る」のが軸のお話ですが、その中には囚人たちのドラマがあったりその他いろいろトラブル(詳細は書かないでおきます)があったりして当然一筋縄では行かないものの、そのエピソードも割とあっさりサクサク次へ進むドライな感じがこれまた古い映画っぽくて逆に良いと言うか。
「多分今ならこのエピソードもっと引っ張ってるだろうな」と思う部分もサクサク次へ進んでくれるので、やや物足りなさはありつつも無駄な演出はしない感覚が潔くて好きです。
定番ですが個性豊かなチームメンバーのご紹介フェーズも楽しい。ただ「仰々しく出てきた割に」みたいなメンバーがいるのも否めませんが。
こと試合に関してはなにせアメフトのルールがよくわからないのであまりピンとこない部分もあったんですが、しかし役者さんたちメインとは思えないぐらいにしっかり激しくぶつかり合う内容で迫力もなかなか。
試合展開自体は“いかにも”ではあるものの、見せ場もしっかりしてるし期待に応えてくれる内容で満足です。
やっぱりなんだかんだ全体的に漂う古い映画らしい良い意味でのストレートな物語は、小難しい話にせずに「こうあるべきでしょ」と潔い価値観を感じさせてくれて好きですね。
反体制的な面にはアメリカン・ニューシネマっぽさも見えるし、そこがまた良い。
この頃の映画が好きなら
2005年にはアダム・サンドラー主演でリメイクもされているようです。話としてはほぼそのままだとのこと。
アダム・サンドラーやボブ・サップの出演にはあんまり興味がないんですが、今作で主人公を演じたバート・レイノルズがリメイク版では先輩格の元プロであるネイトを演じていたり、今作で看守長を演じたエド・ローターも別の役で出演していたりとそっちはそっちでまた気になります。観る機会があれば観たいですね。
めちゃくちゃ良かったわけでもないので強烈にオススメするような映画でもないんですが、ただこの頃の映画が好きな人であれば割と観ているだけでたまらんな的な感覚が得られる映画だと思うので、その辺りの好みに応じて観てみるといいのではないでしょうか。
このシーンがイイ!
エンディング良いですね。あの捉え方、構図が好き。
あとベッドでお祭り騒ぎする二人のシーン最高。
ココが○
ベタですが期待通りの内容で、「そうだよね、そうじゃないとね」と確かめるような後味が良い。好き。
ココが×
日頃の恨みがあるとは言え、囚人側も結構なラフプレーを行使したりするのでその辺りは少々やりすぎ感があります。
あれで骨が折れるのも弱すぎじゃね? という気もしつつ。
MVA
バート・レイノルズがマジ普通のおっさんだな、って感じで結構衝撃だったんですが見てるとそれなりに元スター選手っぽく見えてくるのが不思議。
しかしそれはそれとして選ぶなら、この人でしょうか。
エディ・アルバート(ヘイズン刑務所長役)
所長。いわゆる悪役です。
なかなか憎らしく、そして威厳もある佇まいがお見事でした。
Wikipediaによると「リベラルな人柄でも有名」とのことですが、まったくリベラルさが想像できない悪役だったのでビックリ。役者やで。当然だけど。