映画レビュー1591 『シラート』
まったくノーマークだったんですが、タイッツー(レアSNS)の相互さんが気になる感想を投稿していたので興味を持ち、結構話題なことを知って金夜仕事終わりのレイトショーで観に行ってきました。
ちなみにまだ公開2週目のタイミングでしたが上映はレイトショー1回のみ、まさかのドルビーシネマ。どうやら音が重要な映画らしくそれも納得。
ドルシネは「メン・イン・ブラック:インターナショナル」以来2回目…だった気がするけどなにか他に観に行ったような気もする…謎。
U-NEXTのシネマポイント交換の都合上、当日上映40分程度前に現地でチケット購入したんですがその時点でパッと見概ね4割程度は埋まっていたと思います。(座席数は多め)
SNSでそこそこ話題とは言えややマニアックで大作でもない映画のレイトショーとしては、1回上映とは言えそこそこ入っている印象でしたね。
シラート
オリベル・ラシェ
サンティアゴ・フィジョール
オリベル・ラシェ
セルジ・ロペス
ブルーノ・ヌニェス・アルホナ
リチャード・ベラミー
ステファニア・ガッダ
ジョシュア・リアム・ヘンダーソン
トニン・ジャンビエ
ジェイド・オウキド
カンディング・レイ
2025年5月15日 フランス
114分
スペイン・フランス
劇場(ドルビーシネマ)

体験型の極み。劇場でなければ面白さ半減。
- 5か月行方不明の娘を探し、彼女の弟である息子を引き連れレイバーたちと次の会場へ向かうおじさん
- レイブをまったく理解できない父とレイバーたちには距離がありつつ、なんだかんだと交流していく
- そして突如として観客に牙を向いてくるわよ
- 絶対に劇場で観るべき作品
あらすじ
ネタバレ厳禁的な作品なので大体「すごかった」みたいな感想ばかりが流布しているんですが、僕は「なるほどー」と言っておきます。まったくわかりませんね。
レイブ…と言っても僕もまったくわからないのでこの映画で知ったクチですが、野外にどでかいスピーカーをたくさん並べてリズムのみの音楽を垂れ流しそれに乗って踊るだけのイベント…みたいな。いや全然違うんだろうけど縁遠い人間としてはそう見えたんですが、そんなような…見た感じヒッピー系の人たちに愛されてそうなイベントに、かなり違和感のある父親ルイス(セルジ・ロペス)とその息子エステバン(ブルーノ・ヌニェス・アルホナ)親子がビラ配りをしておりまして、なんでも「家を出ていった娘がレイブ会場にいるかもしれないと聞いて探しに来た」とのことで参加者たちに聞いて回っております。
誰に聞いても「知らない」「見てない」とまったく手応えのない中、会場からやや離れた高台でまったりしていた一団に同じくビラを渡して聞いてみたところ「見てないけど次の会場に行ったらいるかも」と言われます。
そこでのレイブは突如やってきた軍が「避難しなさい」と指示して終了、仕方なく参加者たちは軍の誘導に従って会場を後にしますが、先程の一団が軍の包囲を抜け出していき、それを見たエステバンも「お父さん! ついて行こうよ!」と急かしたことで親子は彼らについていくことにします。
かなり険しい道のりとのことで、親子は彼らに「そんな車じゃ無理」と突っぱねられるものの気にせずついていき、なんだかんだありつつ3台の車で次のレイブ会場に向かう形に。
途中途中でちょっとした交流がありつつ、彼らの旅はどのようなものになるんでしょうか。
嫌な感じゲージが貯まっていく
まず最初にタイトルの「シラート」について説明が入ります。なんでもシラートとは「天国と地獄の間にかかる橋のことで、髪の毛より細く剣よりも険しい」んだとか。
この説明からも伺えますが、最後まで観るとなんとなく宗教的な寓話が込められていそうな話だなとは思いましたがその辺まったく知識がないのでフワッと感じただけです。サーセン。
延々とレイブで踊る人々(その後展開する話の主要メンバーでもある)を写し続けるオープニングに「これはもしや自分が乗れないタイプのアート系映画では…」と嫌な予感がしたんですが、アート系映画っぽさはありつつも中身はかなり、かーなーりーシンプルなお話なので“その意味では”人を選びません。話自体を理解できない、ってことはないと思います。(真の意図とかそういう話になってくるとまた別だとは思います)
カンヌで話題になったそうで「なるほどカンヌっぽい」という気もするんですが、話自体はシンプルなので僕が思う「カンヌっぽさ」から受けるとっつきにくさのようなものは無いし、それだけに話題になっているというのもあるんでしょう。
一方で話の展開をただそのまま受け取るだけではあまりにも雑な映画にしか感じられない内容でもあるので、やはり何かしらの意図を汲み取る必要がある物語なんだろうと思うしそう考えると向き不向きもありそうな、賛否分かれそうな映画だなとも思いました。
僕個人の好みで言えば、あまり好きな構成ではありません。
あらゆる意味で急すぎるし、僕が嫌いないわゆる「過激さで評価を得ようとする」安易な映画に見えなくもない。
でもそこに至るまでのいろいろを観ていた感覚からするとそうではないなと思うので「なるほど確かにすごいね」と思いました。全然伝わらないですね、ハイ。
確かにクライマックスは急展開ではあるんですが、ただ序盤からなんでもないシーンでもなーんかじわじわと「嫌な感じゲージ」が上がっていく嫌な感じの道中を見せられるのでなんとなく積み上がっているものが感じられるんですよね。その積み上げ方がすごく嫌だったのでそこがすごく良かったというか。嫌な感じを感じさせる良さというか。わかりますかね!?
能天気にワイワイ楽しく旅しててこのクライマックス、だったら多分かなりボロクソに言っていたような気がします。
でもそうではなくて、急なんだけどそこに至るには理由があるような見せ方だったように感じたのでクライマックスの展開も受け止めざるを得ない心の準備があったというか。
突如として観客に牙を向いてくるシーン、当然ものすごいびっくりしたし一瞬そういう幻なのかなとも思いましたが、同時になんか納得する部分もあったんですよね。なるほどここに至る旅だったのか、と。
そう感じさせたのには中盤の大きな出来事も影響しているんですが、これはまあ観ていただくしかないので言明はしません。
僕の文章力では説明するのが難しいんですが、「急だな」と思いつつもどこかで「なるほどこの映画のテーマはここにあったのか」という納得感があって、そのスイッチの入り方にやられてしまいました。
クライマックスは他に観客がいないんじゃないかと思うぐらいに物音一つせず、ものすごく張り詰めた空気でじっと画面を観る時間が続きました。まさに息を呑むとはこのことだなと。
それは先の展開が気になるのもそうですが、やっぱり怖さだと思うんですよね。ものすごい恐怖。これから先に起こるかもしれないことへの恐怖。
これ、おそらく家でダラダラ観てたら多分こんなに惹きつけられていなかったのは間違いなく、劇場で集中して、それこそ「自分もこのメンバーと一緒に旅をしている」感覚があったからこそだと思うので、ものすごい体験型の映画だし劇場で観るべき映画だなと思います。
なんなら家だったら寝てたかもしれません。そして起こされてましたよ。ビクって。
それとおそらくですが、この展開は逆にゲラゲラ笑う人もいそうだなと思いました。
笑っちゃってもおかしくないぐらいの展開なんですよね。
僕はゲラゲラ笑っちゃう人とは多分仲良くなれないと思いますが、ただそういう人が悪いというわけでもなくてある程度気持ちもわかります。それぐらい振り幅がすごいというか。
あんまりこういう映画って他に記憶にないので、珍しさと思い切りの良さとで他にない体験になるだろうし、いわゆるハリウッド映画であれば絶対に無いであろう展開も容赦なく盛り込んでくるのでその潔さは好きですね。
やっぱりハリウッド以外の映画を観るのは大事だなと改めて思いました。
好きに感想を言おう
観ていてあの映画っぽいなと思う映画があったんですがその映画を挙げるのも結構ネタバレに近いものがあるのでここには書かないでおきます。
おそらく最後の展開についてはいろいろと示唆するものがあるんだろうとは思いますが、僕は無学故に表層的な感想しか抱けないので深いところはわからず、おそらく大半の人たちと同じような意味合いに取りました。
別にそれでいいと思うんですよね。映画なんてね。
余談になりますが鑑賞前にちょっと調べたとき、noteでこの映画について書いている人がいて、読み始めたら冒頭に「最近は素人が映画の感想を語るのが当たり前になってきてウンヌンカンヌン」と偉そうに語っていてお前も素人ちゃうんかとゲッソリしたんですが、そういった「俺はわかってる」系の人たちの目なんて気にせず、観てどう感じたかを率直に語って良いと思います。
「本当にわかる人」だけ語れなんて言ってたら盛り上がりもしないし商売にもなりませんよ。
観て面白かった、逆に胸クソ悪かった、でもなんでもいいじゃないですか。観たことは本人の経験なわけだし。
久しぶりに上から目線で「わかってないやつは語るな」的論調を見たのでこの映画のイメージが下がるなと思いましたが、ただ監督は「あなたが感じたことが正解です」とかなり幅広く許容してくれているようなので自信を持って感想を言いましょう。
ただ一点だけ、ご高齢の方は劇場で観るのは避けたほうが良いと思います。逆R15です。何歳から逆なのかわかりませんが。
あとみすぎくんも観ない方がいいね。(急なキャプ翼)
このシーンがイイ!
やっぱりクライマックスになるのかなぁ。ああいう形、あんまり好きではないんですが強制的に集中させられてすごいなと…。
あとはなんてこと無いシーンですが片足の人が膝を人に見立ててギターを弾くシーンがなんか良かったです。
ココが○
他にない感覚の映画というのが一番でしょう。そしてそれは同時に劇場で観なければおそらく味わえない感覚なので、これほどまでに劇場必須な作品もなかなかなく、そこが良いところだと思います。精神的4DXムービーですよ。意味わからないけど。
ココが×
どうしても好き嫌いは出てくる作品だと思います。中盤の展開も許容できない人が結構いるらしく、気持ちはわかるんだけどそこは創作なんだし…と言いたいところ。
そういう声が大きくなりすぎるとハリウッドのように決まった展開しかできなくなってきてしまうので、僕はむしろあの展開はすごく良かった(というのも語弊がありますが)と思いました。
逆に言えばあの展開があったからこそクライマックスの唐突さも許容できると思うんですよね。あれがなかったら本当に「えっなんで」って困惑するだけだと思います。
MVA
まー面白みがないですがこの人ですかねぇ…。
セルジ・ロペス(ルイス役)
主人公…と言うのかわかりませんが、娘を探すお父さん。
お腹出た普通のおじさんですがスペインの名優だそうでなるほど名優らしい素晴らしい演技でした。
最初から最後までそんなに変わったように見えないんですが、ところどころでわずかに変わっている感を見せるところがあり、その辺りの演技(と演出)も見事だったと思います。

