映画レビュー0826 『バックコーラスの歌姫たち』

ずっと観たいリストに入れていた映画なんですが、たまたま今回またネトフリの配信終了がやってきたのでよし観るぞ、ってことで観ましたよっと。

バックコーラスの歌姫たち

20 Feet from Stardom
監督
モーガン・ネヴィル
出演
ダーレン・ラヴ
メリー・クレイトン
ジュディス・ヒル
リサ・フィッシャー
クラウディア・リニア
タタ・ヴェガ
公開
2013年6月14日 アメリカ
上映時間
90分
製作国
アメリカ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

バックコーラスの歌姫たち

一流アーティストのバックコーラスの女性たち。歌のうまさは変わらない、でもそこには近くて遠い距離がある。

洋楽の魂に身震いする良ドキュメンタリー。

8.0
一流アーティストたちを影で支えてきたバックシンガーそれぞれの人生
  • 普段は“黒子”のバックシンガーたちにスポットライトを当てたドキュメンタリー
  • 誰でも知っているような有名アーティストがゴロゴロ登場
  • それぞれの残酷で美しい人生に洋楽界の壮絶さを知る

僕は洋楽には詳しくないので、正直もっとこの映画における主人公たち、つまりバックシンガー(出身)の人たちのことを知っていれば、きっともっとものすごく響いた映画だったと思うんですよ。ただ残念ながらあまり馴染みのない人たちだったために、ちょっと入り込みにくい面はあったような気がします。

それでもかなり胸に響く名ドキュメンタリーであることは疑いようがなく、若干わかりづらさはあるものの比較的誰にでもオススメしやすいタイプのドキュメンタリーではないかと思います。

映画には、洋楽オンチの僕ですら知っているようなビッグネームの方々、具体的にはミック・ジャガーにブルース・スプリングスティーンにスティーヴィー・ワンダーにスティングと錚々たるメンバーが登場し、自身が一緒に仕事をしたことも多いバックシンガーの“個人”と“バックシンガーという仕事”そのものについて語りつつ、自分(=一流のフロントマン)とバックシンガーとの違いを率直に語ってくれます。ちなみに故人となってしまいましたが、マイケル・ジャクソンやデヴィッド・ボウイも(インタビューではないですが)チラッと登場します。

また当然ながらバックシンガーその人たちが主人公の映画なので、かつてバックシンガーとして一流と呼ばれていたものの音楽から離れてしまった人や、今も活躍中の人、そしてバックシンガーからフロントに向かった人など、数人の「バックシンガーの歌姫たち」へのインタビューが中心になります。ちなみに「歌姫」は「ディーバ」と読むみたいですよ奥さん。

僕のように詳しくない人間からすると、数人の「これ誰?」状態のインタビューを前後させながら見せていく作りはやっぱりちょっと入り込みにくいものがあって、正直前半は眠くなりました。っていうか一度中断して寝ました。ただ最近は日曜の昼過ぎに観るとなんでも眠くなるのでこの映画のせいではないような気もします。

とは言えやっぱり言うなれば「裏方さん」が中心の映画なので、その世界によほど興味がない限りは食い入るように観るのはキツいんじゃないかな…という気はします。

ですが、そこにやっぱり効果的に入ってくるのがビッグネームの方々ですよ。

「おお、ミック・ジャガーとデュエットしてたのかすげーな」とか完全ミーハー目線で彼女たちの立ち位置を知り、その結果どうなっていくのか行く末が気になるというのはありました。

で、もう本当に当たり前過ぎて書くのもバカバカしい話なんですが、やっぱりものすごく歌がうまいんですよ。みなさん。

しかも誰もがソウルフルで、ものすごく琴線に触れる歌声なんですよね。もう本当に単純にこういう人たちの曲聴きたいな、って素直に思っちゃうぐらいパワフルな歌声に、やっぱり歌の力はすげーなとまたもや思い知らされるわけです。

そんな「歌がめちゃくちゃうまい」彼女たちでも、それがフロント(ソロのスター)になるにはまったく別の“何か”が必要、という話になってくると…これがもはや音楽業界のみの話に限らないよな、という深いお話になってくるわけです。

原題は「20 Feet from Stardom」、これはつまり「スター(フロント)とバックコーラスの物理的な距離」を表している(20フィート=6m程度)わけですが、そこには暗に「近いようで遠い」という無情なまでの20フィートという意味合いが込められているわけです。

このタイトルがね…素晴らしいタイトルだと思いますね。

(進むよりは)安全な今の位置で続けるのか、はたまたその20フィートを踏み出してリスクを取りに行くのか、成功するのはホンの一握りの世界で彼女たちはどう生きてきたのか…そういった「個人の人生における決断」の領域にまで目線を移した時、深く心に刺さる物語がありました。

出会いや偶然を経て自分の立ち位置が変わっていった彼女たちが、どういう決断をして今どこにいるのか、そのドキュメンタリーは力強く儚く切なく素晴らしいんですよ。なんなんでしょうね、この他にない情感に訴える感覚は。

おそらくは、やっぱり成功すれば世界に名が知られるほどのきらびやかな世界でありながら、そこに行けなかった時の無情さみたいなものがそう感じさせるんでしょう。ガラスの階段を登るような、薄氷を踏む世界と言うか。

その華やかさと過酷さが表裏一体になっているが故に胸に迫る何かがあるのは間違いないと思います。それ故に素晴らしいドキュメンタリーだし、最後はなんかよくわからないまま泣きました。胸がいっぱいになって。

洋楽に詳しくない僕ですらそうだったので、詳しい人であれば相当に響くドキュメンタリーではないかと思います。

最近の「バックコーラス自体が不遇」という話はいろんな分野にも通じる面があるし、ショービジネスの話としても十分一般的な興味に耐え得るものだと思うので、ちょっと気になった人は観てみると良いのでは無いでしょうか。

このシーンがイイ!

スティングが「一流とそうでないものの違い」を語るシーンがあるんですが、そこがもう名言過ぎて最高でしたね。彼が語っているだけで価値があるものだと思います。

ココが○

ドキュメンタリーである以上、その説得力は言わずもがなでしょう。すごい世界だなぁと改めて感じました。

それとこの前亡くなってしまいましたが、アレサ・フランクリンの名前が何度も出てくるんですよね。ご本人は登場しないんですが。そこで彼女の偉大さを改めて知る、っていうのも感慨深いものがありました。

ココが×

やっぱり最初に書いた通り主役たちは馴染みが薄いので、最初にグッと入り込めるようなものが無いのも確かでしょう。眠くならなそうなときに観たほうが良いと思う。良いドキュメンタリーだけに。

MVA

まあドキュメンタリーなので誰、っていうのもないんですが…一番感情移入したような気がするこの人かなぁ。

リサ・フィッシャー(本人)

かつてミック・ジャガーのデュエット相手としてローリング・ストーンズと一緒にツアーを回っていたバックコーラス出身の歌手。

ミック・ジャガーともただならぬ仲だったんじゃないの的に穿った見方もしつつ、やっぱりこの人も他の人同様に歌がスゴイ。

このレベルでも「あそこ」には行けないのかと思うと…なかなか考えさせられるものがありました。

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