映画レビュー0489 『2001年宇宙の旅』

言わずと知れた、SF映画の歴史上最も重要な映画の一つでしょう。

かつて二十歳前後に一度観たことがあり、おぼろげに断片的な記憶はあるものの、その時はもうさっぱりわけがわからない感じで眠気もマックス、「クソつまんねーな」と思ったわけですが、「インターステラー」を始め最近この映画の影響が語られる映画に触れることが増えたので、やはりこれはもう一度観て、現時点での再評価をするべきだな、と思い鑑賞。

また寝ないように、もっとも眠くならない休日起きたての午前中に観ました。それぐらい、寝るのが怖かったです。

2001年宇宙の旅

2001: A Space Odyssey
監督
脚本
アーサー・C・クラーク
出演
キア・デュリア
ゲイリー・ロックウッド
ウィリアム・シルベスター
ダグラス・レイン
公開
1968年4月6日 アメリカ
上映時間
141分
製作国
イギリス・アメリカ
視聴環境
BSプレミアム録画(TV)

2001年宇宙の旅

遠い昔、突如猿人たちの前に謎の物体「モノリス」が出現、猿人たちはその影響で「道具」の概念を獲得する。それから長い時が流れ、人間となった猿人は月でも暮らすほど進化し、そして月でもまた「モノリス」が発見される。それから18か月後、人類は宇宙船「ディスカバリー号」を木星探査に向かわせる。

こりゃすげーわ。

9.0

何度も書いていますが、例え歴史的に評価の高い映画であっても、正直に自分の感じた感想を書くことのみに重きを置いているブログなので、決して「これがわからないなんてクソだな」的レッテルを恐れてこの評価にしたわけではありません。

確か最初に観た頃も映画のレビューみたいなことをどっかでやっていたような記憶がおぼろげにあるんですが、あの当時は1.0と書いたような気がします。それぐらいつまらなかったし、もうナニコレ状態でキューブリックの自己満足にしか思っていませんでした。ですが、今観たらこれはやっぱり本当にとんでもない映画だったんだなと反省。ただしそれには前提があります。その辺含めてちょこっとレビュー。

今から50年近くも前の映画ですが、まずその映像自体がさすが未だにレジェンドとして語られるだけあってスゴイ。宇宙空間として理論的にあってるとか間違ってるとか、その辺は語られていない設定もあるし撮影技術の問題もあるしで、あんまり気にしない方がいいでしょう。美術的にも「いかにも昔の“未来を描いたアメリカ映画”」っぽさもあるので、その辺り古さを感じる面はあります。(そこがまた味でもありますが)

その辺を考慮しても、やっぱりスゴイ。

有名なディスカバリー号内最初のシーン(ランニングしているところ)にしても、単純に映像として未だに面白さ、驚きが色褪せていません。タブレットみたいなものも出て来ましたからね。今だからこそ気付ける驚き。

昔観た時は「もうダラダラとセリフも無くてなんなのこれ」と思っていましたが、今思うとこういった映像をじっくり見せたかった、っていうのもあるのかなーと思ったり。

確かにダラダラ感は否めないシーンも多いんですが、でも今観てもスゴイ映像なだけに、間が持っちゃうんですよね。当然ながらCGも無いこの時代、全編通してとんでもない映画です。序盤チラッと出て来た電話先の女の子、当然僕より年上ですからね。自分は生まれていませんから。スゴイ。ちなみにキューブリック監督の娘さんだとか。今何してるんだろう。

ですが、当然映像だけではここまでのレジェンドにはならないわけで、問題はストーリー。

いまさらネタバレ云々も無いと思うので気にしないで書きますが、やっぱりこの映画のこの映画たらしめている一因は、HAL9000の存在ではないでしょうか。

かつて観た時も、このHAL9000のアレコレだけは面白かったのに最後意味わかんねーよ、と思った記憶があります。(そしてそれは今もあながち間違っているとも思いませんが)

人工知能が現実味を持って語られる今の時代、この映画が与える人工知能への恐怖は今なお増幅されているような気がしますね。ある意味、トラウマ。

月に囚われた男」然り、「インターステラー」然り、SFで人工知能的なものが出て来たらまず裏切りを予想して怯えますからね。FFで言うところの(本来とは違う意味の)カインコンプレックスみたいなものです。もしくは「どうせまたヒロイン死ぬんじゃねーの」でお馴染みのエアリス症候群。

話がそれましたが。それほど“人工知能”のイメージを決定付けた映画でもあったわけで、このことからもこの映画の偉大さがよくわかります。あのHAL9000の目を模したカメラレンズの捉え方、これまたスゴイ。コワイ。

かつて観た時は「ほとんどセリフもなくてつまらない」的なことも思った記憶があるんですが、今観ると意外とセリフもそこそこあって、ちゃんとストーリーもありました。もっともっと芸術的な映画という記憶が強かったので、その反動もあってかなり楽しめました。

やっぱり映画っていうのは観るときの年齢やその人の経験に影響される部分が大きいので、誰かが「つまんねー」って言ってても自分にとっては面白いかもしれないし、逆もまた然りってやつですね。

※ただし「ディナーラッシュ」は誰がなんと言おうがクソ

なので自分と感覚が似てそうなレビュワーを探すのが(自分にとって)良い映画に出会う一番いい方法だと思いますが、それは置いといて。

この映画、今観るととんでもない名作であるのは疑いようもないことが理解出来ましたが、それには条件というか、前提があるな、とも思いました。

確かに映像はすごいし、面白いんですが、反面やはりラストの解釈は知らなかったらちんぷんかんぷんなわけで、映画の感想はラストに影響される部分が大きいことを考えると、まったく予備知識無しにこの映画を観た人がラストまで観て「これは名作だ!」って言えるとしたら、それは相当レベルが高い人なんじゃないかと。

僕は初見から今に至るまでに散々この映画の表現について目にしてきたので、それの意味するところをある程度知るに至ったわけですが、これを初見で「なるほどそういうことか」と理解するにはあまりにも哲学的過ぎて、自分が助監督だったら「ちょっと監督突き放しすぎっすよwwww」と言ってクビになりそうな気しかしません。

スターチャイルド、ってなんだよ。

って思うでしょ? 普通。なので、さすがに1.0はやり過ぎだと思いますが、酷評した二十歳ぐらいの自分には、それはそれでしょうがないよね、と励ましてあげたいところ。

そんなわけで、映画としての功績を考えれば満点でもいいところでしょうが、序盤の猿シーンを始めとしてやたら長くて退屈なシーンもいくつかあるし、事前情報が無いとまったく理解できないレベルの表現があることも加味して、9.0点かなというところ。

とは言え、やはり「ブレードランナー」辺りと同様に、後世の映画に与えた影響の大きさはとんでもないものがあるし、もはやHAL9000を知らずに人工知能についての世間話なんてしたら恥知らずと断定されかねないほどの、ある意味で「古典」化している映画でもあるので、もし未見の映画ファンの方がいましたら、ぜひ一度鑑賞を。

僕は今回の鑑賞を経て、俄然続編(2010年)が観たくなりました。

このシーンがイイ!

いろいろありましたが、一番印象的だったのはHAL9000の“目”がアップになった(多分)最初のシーンでしょうか。映像としてはなんてことないシーンですが、あのシーンで「こいつもしや…!」という疑念を持つしか無い状況になるという恐ろしいワンカット。

ココが○

やっぱり60年代の映画とは思えない完成度の映像でしょう。これまた「ブレードランナー」同様、今でも通じる凄みがあります。

同じく今でも通じるHAL9000の存在。デジタルのくせにアナログっぽく切れていくのはご愛嬌です。

ココが×

これはもうエンディングでしょうねぇ…。あとは冗長な猿。

MVA

まあ、ほぼこの人しか出てないので。

キア・デュリア(デビッド・ボーマン船長役)

結構いい男だしいい役者さんだと思うんですが、他はあんまりパッとしないっぽいですね。代表作がでかすぎるとこうなっちゃうんでしょうか。

他の役者陣もこの映画以外ではあんまり聞かない人ばっかりだし、今思うと不思議なキャスティングではあります。

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