映画レビュー0385 『きっと、うまくいく』

一部で話題の知る人ぞ知る(?)インド映画。観てみたいなぁと思ってたところ、珍しくそこそこ近いシネコンでやっていたので観に行ってきました。

で、本編とは関係ないのでここに書きますが、上映前にジブリの「風立ちぬ」の予告編をやっていたんですね。4分の。

映画自体、今の時代に対するアンチテーゼっぽさが良さそうで、観てみたいなぁと思ったんですが、何より主題歌に使われている荒井由実(結婚前のユーミン)の「ひこうき雲」がものっすごく良くてですね。たった4分で泣きました。

ユーミンは好きじゃないし、最近聞こえてくる噂もあまりいいものではないんですが、今からちょうど40年前、当時の彼女はすごかったんだな、と一発で理解させられましたね。あの予告編はズルい。

一時期、映画の上映終了後に流されてて「余韻泥棒だ」とか苦情がすごかったらしいですが、そりゃそうだなと。あんなの最後に流されたら、その前に観てた映画なんて吹っ飛んじゃうよ…。

そういうやり方を良しとする関係各位の映画に対する姿勢はよろしくないと思います。ハイ。

きっと、うまくいく

3 Idiots
監督
脚本
ラージクマール・ヒラーニ
ヴィドゥ・ヴィノード・チョープラー
アビジット・ジョーシ
原作
『Five Point Someone』
チェータン・バガト
出演
カリーナー・カプール
R・マドハヴァン
シャルマン・ジョシ
ボーマン・イラニ
オミ・ヴァイディア
音楽
公開
2009年12月25日 インド
上映時間
171分
製作国
インド

きっと、うまくいく

工科大学を卒業以来10年間、音信不通だった親友のランチョーがやってくる、という連絡をもらったファルハーンは、同じく親友のラージューを連れ、呼び出された学校へ行くと、同じくかつて同級生だった嫌味な男・チャトルが現れ、「10年前のこの日、ここでどっちが成功しているか賭けをした」話とともに今の自分を自慢し始める。そんなことよりランチョーと会いたいファルハーンとラージューは、ランチョーの消息を知っていると言うチャトルを連れ、彼を探しに行くのであった。

てんこ盛り大サービス映画。後半の勢いと引力は長くても観る価値アリ!

9.5

上映時間約3時間ということで行く前から尻込みしていましたが、結果的に観てよかったな、と。

インド映画と言えば、もうかなり世界的にも知れ渡った大きなジャンルの一つとなっているものの、やはり演技だったり劇伴だったりセリフだったり、ところどころ違和感を感じる部分があります。誤解を恐れずに言えば、二流・三流の雰囲気が強く、ある意味で安っぽい。

ですが、折しも今開催中のコンフェデレーションズカップでは、参加国の一つであるタヒチの純粋さ、サッカーへの愛情が各国のサッカーファンを虜にしているようですが、この映画もそんな感じの「テクニックは無くても愛のある映画」という雰囲気がビシビシ感じられる作品で、ややノリに付いて行きにくい前半を我慢して観るだけの価値はある映画だと思います。

お馴染みのちょいとした補足だぜ!

物語は「あいつと久々に会えるのか!」というような流れでスタートしますが、本編の大半は学生時代の描写に割かれていて、「あいつ」であるランチョーと彼の親友でありルームメイトでもあった二人の男を中心に、学長とのいざこざや学長の娘とのロマンスなどなどいろんなエピソードを描きながら、「ランチョーってこういう男で俺たちにこういう影響を与えたんだぜ」という彼の人物描写メインの物語になっています。

話の印象としては、やや「パッチ・アダムス トゥルー・ストーリー」のような、一人のカリスマの言動と彼の影響を追っていくような内容になっていて、最後には彼らが10年後、どういう人生を歩んでいるのか、そしてランチョーとの再会はなるのか…というようなお話になっております。

スラムドッグ$ミリオネア」のような“インドの味付けをした欧米的な映画”ではなく、良くも悪くも「インド色の強い」映画なので、特に序盤はついていけない人も珍しくないのではないかと思います。

かなりコメディ寄りな内容であることも手伝って、まず笑いのノリが少し違うし、僕自身も「これ…本当に楽しめるのかなぁ」と不安を感じながら観てました。笑わせに来てるのがわかりつつも笑えない、っていうのは結構不安にさせるんですよね…。

実際、劇場で観ていなかったらかなり集中力も途切れ、果たして最後の、言わば「収穫期」に楽しめたかどうか怪しい気がしました。そういう意味でも劇場で観られたのは幸運だったし、これから観る人にも、ぜひ「前半は我慢して最後までしっかり観て!」と言いたいところです。

「インド色」という意味で言えば、物語の下地にある価値観もかなり今のインドの問題を反映しているような気がしました。

インドと言えば、今や経済発展目覚ましく、またIT産業のエースとして世界的に期待されている部分があるように思いますが、その時代的な流れもあってなのか、この映画では「著名な工業大学に入ってエンジニアになる」というのが一つのステータスになっていて、でもそのために「競争のための勉強」を強いられ、頭を使うことよりも記憶することで成功をつかもうとする(その具体例がチャトルなんですが)風潮があり、それに対するアンチテーゼとして「本当に好きな事ができない今の世の中で果たしていいんですか?」というような価値観をランチョーその他登場人物の人生で問いかけているような内容になっています。

そう、まさに日本と同じなんですよね。勉強のための勉強で、頭が使えない「優秀者」を生み出す構図。この辺りの価値観が顔を出し始めると、ぼちぼち他人事でないような、日本の現状とリンクし始めてきて、俄然物語が面白く感じられました。

また、前半はほぼ大学時代の話に終始しますが、後半は大学時代に現在の話がだいぶ混ざり始めて、その辺りから徐々に物語のスピードもアップしていき、「んー、ランチョーって結局何者?」「どういう形で再会するの?」と物語への興味も高まっていきます。この辺りの作りはウマイなぁと思いますね。

前半の長さ、ちょっと入り込みにくい流れが前フリになって惹き込まれて行く感じ。「ディア・ハンター」っぽいような。

後半はホンのちょっとサスペンスっぽい展開だったり、感動大作的な勢いであったり、とにかく全力でアレコレ詰め込んでサービス満点、お腹いっぱいになるまでギッチリ映画を楽しませてくれる感覚はなかなか素晴らしく、「実は映画作るのウマイんだけど隠してました」みたいな感じすら受けました。

そう、今振り返ると、前半のちょっとヘタな感じ、「映画後進国」っぽい作りは後半を引き立たせるものだったのかな、という気すらするんですよね。なにげに伏線もたくさん、でもあざとくない形で散りばめていて、最後に見事に回収してくれるのもすごく上手い。

ベタとも言えるんですが、そこに至るまでが丁寧だから全然気にならないし、素直に「いいなぁ、いい話だなぁ」と感動できる。これはなかなかよくできた映画だと思います。

上に書いているように、笑いのノリはイマイチついていけない面も多いし、劇伴の使い方も素直すぎてうまくなかったりとか気になる点は多々あったんですが、それを吹き飛ばすほど、ストーリーがいい。うまい。オチも期待を裏切らない上に納得の展開で、大満足です。

序盤のしんどさを乗り切らなければいけない、というちょっとしたハードルはありますが、それを乗り越えて観るだけの価値はある映画だと思います。

個人的にここまで尻上がりな映画はなかなか記憶に無いほどなので、ぜひ騙されたと思って我慢しながら観て欲しいですね。オススメ。

このシーンがイイ!

インド映画らしい歌のシーンもすごく好きでしたが、一番は…ん~…ベタだけど、ファルハーンがお父さんを説得する場面かなぁ。

あと小学校での再会もすごく良かった。登場人物と同じように、自分も「あ!」って気付いて表情が変わったと思います。この辺りの人の使い方も良かった。

ココが○

ランチョーのキャラクターがすべてだと思うんですが、誰もが「そうだそうだ」と思える価値観を体現していながら、嫌味でないんですよね。これは演者のうまさもあると思いますが、やっぱりシナリオが良く出来てるんでしょう。

でも現在につながるように、うまく謎めいてる部分は残してるし、マンガのようによくできた主人公キャラで。一歩間違えると途端に安っぽくなりそうな気もするんですが、絶妙なキャラだと思います。

学長のヒールっぷりも、最後の展開もまたマンガっぽいベタなものですが、そこがまた良かった。

真面目にやっているから裏切らない良さが活きるというか。そんな映画です。

ココが×

まあ長いですよね。やっぱり。途中で「インターバル」って字幕出てましたからね。本国では休憩が挟まったんでしょう。日本では当然そのまますぐ続きが始まりましたが。3時間はさすがにトイレを我慢するのも一苦労でした。

ただ、全体的にテンポはいいし、あんまり「なげーなー」って感じるような映画ではないです。

あとは全体的にやっぱり劇伴が少し大げさだったかな。劇伴がうまくなるとまただいぶ違う印象になると思います。

MVA

ヒロインがまぁ小雪そっくりでしたね。目を閉じた小雪のまぶたに目を描いたらまんまこのヒロインになると思う。目がぱっちり過ぎて怖かった。

それはさておき、ラージュー役のシャルマン・ジョーシーのよく見るとイケメンな感じと涙をたたえる演技も好きで、この人にしてもいいかなぁと思ったんですが、やっぱりこの映画はこの人なんだろうな、と言うことで。

アーミル・カーン(ランチョー役)

この人は登場シーンから一人オーラが違うなぁという感じで、言ってみれば垢抜けてる、あまりインドっぽくない雰囲気の俳優さんだなぁと思って観てました。結構カッコイイし。

で、びっくりしたのが、まあさすがに学生の年齢ではないだろうと思ってましたが、なんと撮影当時44歳だったとか…。息子ぐらいの年代の役をソツなくこなしたすごさ。演技レベルも欧米俳優とまったく遜色なく、すごく良かったです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA