映画レビュー1359 『アメリカン・ドリーマー 理想の代償』

今回もJAIHOより。JAIHOでは逆に珍しいアメリカ映画です。

アメリカン・ドリーマー 理想の代償

A Most Violent Year
監督
脚本

J・C・チャンダー

出演
音楽

アレックス・イーバート

公開

2014年12月31日 アメリカ

上映時間

125分

製作国

アメリカ

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

アメリカン・ドリーマー 理想の代償

マフィア映画のように重厚なビジネス映画。

8.0
一世一代の勝負に出た直後、次々とトラブルに巻き込まれる会社
  • 清廉潔白を信条とする社長に次々と降りかかるトラブル
  • 会社も本人も追い込まれつつそれでも“アメリカンドリーム”を手にしようともがく
  • 潔癖な夫を支える現実的な妻の役割分担が印象的
  • 重厚な絵作りでマフィア映画のような濃さ

あらすじ

あんまり期待もせずに観たんですがなかなか良かったですね。たまに観たくなるような程よい重さのある映画でした。

石油卸売会社を経営するアベル(オスカー・アイザック)は、経営規模を拡大するべく全財産を注ぎ込んでとある土地の取引に臨み、頭金を支払ってほぼ契約確定、というところまでこぎ着けます。

この契約は「1か月以内に残金を全額支払えば契約成立、支払えなければ頭金も戻らずライバル会社に売却される」というもので、つまりはこの1か月が勝負。

今まで通りに行けばなんの問題もないはずでしたが、ここに来て自社のタンクローリー強奪事件が頻発しており、さらに運転手のジュリアン(エリス・ガベル)が強奪犯に重傷を負わされる事件まで起きてしまい、従業員のモチベーションにも影響が出てしまいます。

さらには全米トラック運転組合の幹部から「拳銃を持たせればいい」と半ば脅迫的な助言も受けますが、銃を嫌い合法的なビジネスを続けたいアベルは拒絶。

しかしその数週間後、仕事に復帰したジュリアンが運転中にまたも強奪犯がやってきてしまい、より深刻な事態となっていきますが…あとはご覧くださいだぜ!

ビジネス映画なのに妙な緊張感

結構好きな映画で、この前も再鑑賞した「マージン・コール」の監督による社会派サスペンスドラマです。原題を直訳すると「最も暴力的な年」なので邦題とはだいぶ印象が違いますが…これ邦題が良いとも思いませんが付けるの大変だっただろうなという気はしますね…。

ニュアンス的には「異常な年」、「イレギュラーな一年」みたいな感じでしょうか。そんな大変な時期に勝負に出た一人の経営者の姿を追ったお話になります。

主人公のアベルは石油卸売会社の経営者ですが、観ていくとどうも業界的には新参者らしく、例によって業界の慣習やら閉鎖的な体質やらによっていろいろ苦しめられている状況があるようです。

それでも芯を強く持ち、正攻法でシェアを広げていく男として一目置かれつつあるアベルですが、しかし当然それは「裏工作は拒絶する」ような経営姿勢になっていくため、その姿勢自体が気に入らない同業者からは疎まれているようで、それが“アベルの会社のみに頻発する強奪事件”の裏を勘繰りたくなってしまう状況を作り出してもいます。果たして黒幕は誰なのか…。

しかし物語としてはその黒幕云々が重要な話でもなく、そういったいつまで経っても外様で商売がやりづらい状況のアベルが、それでも強い意志で困難を跳ね返そうともがく姿を重厚に追った映画です。さながらマフィア映画のような重厚さ。

またアベルが従業員を励ましたり教育したり、同業者と交渉したりする姿もちょっとマフィアっぽいんですよね。真っ当で裏稼業ではないのにちょっと裏っぽさが出てしまう妙な迫力があるというか。ゴッドファーザーのマイケルみたいな感じで。それ故に余計に重厚さを感じてしまうという。

冗談言ったりノリが良かったりみたいなのも一切なく、ひたすら悩みつつ己の信条を背に正攻法でことに当たる、今となっては珍しいぐらいに愚直な人物なんですが、その分頑固で柔軟性に欠けることも否めず、いかにも魑魅魍魎が跋扈していそうな石油利権の中でうまくやっていけるんかいなとハラハラするのも確か。

またそういうタイプでありつつもなぜか検察から目をつけられてもいて、終始観ているこっちも胃が痛くなりそうな状況に身を置かされているのも緊張感に寄与しているとの噂です。

普通に考えてこういうタイプの人はまず潰されておしまいじゃない? って気もするんですが、そこでポイントとなるのがジェシカ・チャステイン演じる妻のアンナ。

どうやら父がマフィアというなかなかな出自の方なんですが、それ故か夫とはまったく違ったタイプの人物っぽいのが次第にわかってきます。

これもある意味内助の功、クリーンな夫を支えるダーティな妻…みたいな役割分担も興味深くて、なんならちょっと政治家と秘書っぽかったりもするしそれも含めてやっぱり重厚な見せ方に感じましたね。

それ以外にも前述の検事であったり同業者の腹の読めなさであったり強盗であったりいろいろの周辺事情からジワジワと追い詰められていくアベル夫婦の姿はビジネス映画とは思えない緊張感もあり、珍しいタイプのいい映画だなと思います。逆転の可能性が残されつつ転落一歩前の状況を見守るような映画でした。

眠くならないときに観よう

映像的にもやや暗めでスッキリしない良い意味での不穏さがあり、やっぱりJ・C・チャンダー監督やるやないかと改めて。この人の映画は今後も期待できそうですね。

世間的にも結構評価が高いようなので、気になる方は観てみると良いのではないでしょうか。

ただ地味ではあるし大人の映画だなとも思うので、ちゃんと観られるタイミングで観ないと寝ちゃうかもしれません。ご注意。

このシーンがイイ!

同業者のピーターの家に2回目に行ったシーンがなんかもういろいろ考えちゃって良かったです。

っていうか屋外ならまだしも自宅の屋内にテニスコートがある、ってどんな豪邸よ…。

それと鹿のシーンね…。夫婦の違いを決定的に表すいいシーン。

ココが○

全編通して力量を感じる重厚さ。「ちゃんと観ないとダメなやつだな」と背筋を伸ばしてくれます。

ココが×

特にこれと言って無いんですが、まあやっぱり地味さは付きまとうかなと。

MVA

オスカー・アイザックも重厚さが板についてとても良かったし今度マフィア役やってほしいなという気がしつつ、今回はこのお方。

ジェシカ・チャステイン(アンナ・モラレス役)

主人公アベルの妻。父はマフィア。でもその部分は特に出てきません。

基本的には一歩引いた立場なんですが、実はこの人が優秀かつ“現実的”だったからこその後半の展開なので、その良し悪しは置いといてすごい人だなと感心。そしてそれを見事に演じるジェシカ・チャステインのさすが感。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です