映画レビュー0467 『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』

今月観に行きたかった映画その2。

ラブ・アクチュアリー」の監督であり、「ノッティングヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズの日記」他の脚本家であるリチャード・カーティスの監督最終作です。もっと監督業やって欲しいのに…もったいない。

監督が監督なので、当然ラブコメ的な名作なんだろうと言うことで、一人で行くにはなかなか覚悟のいる映画ではありますが、リチャード・カーティス最後の監督作品となるとこれは行かずにはいられない、ということで。

カップルに囲まれながら観てきました。(無論)一人で。

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

About Time
監督
脚本
音楽
ニック・レアード=クロウズ
主題歌
『The Luckiest』
ベン・フォールズ
『Into My Arms』
公開
2013年9月4日 アメリカ
上映時間
124分
製作国
イギリス・アメリカ
視聴環境
劇場(通常スクリーン)

アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

21歳を迎えたティムは、父に「一家の男子に代々備わる」タイムトラベルの能力を知らされる。自分にもその能力があることを知ったティムは、その能力を使って彼女を作ろうと決意するが…。

誰もが観るべき映画の一つ。

10

僕は一人の映画好きとして、(おそらく読書とかもそうだと思いますが)映画というのは「これを観た人と観ていない人では人生の景色が変わる」というものがあると信じています。かつて「インセプション」を観た帰り、あまりにもいろいろと自分の中に入り込むものが多かったために、その劇場のあるララガーデン春日部の屋上から観た景色が来た時と一変しているような感覚を覚えたことがあったんですが、奇しくも同じ劇場でこの映画を観た今日、またも帰りの風景が変わっていたように感じました。

インセプション」の時は地に足がついていないような、果たしてこれが現実なのかフワフワしたような感覚でしたが、今回はまた違って、一歩一歩丁寧に、周りを見回しながらゆっくりと歩いて、自分が乗ってきた車さえも愛おしく見えるような、「大事なものとは何か」をしっかりと考えさせられましたね。

ただそれは優しい映画の雰囲気のまま、優しく自分に語りかけてきたというよりも、激しく今までの自分を後悔させられるような、強い自責の念に駆られるメッセージだったような気がします。

とてもとてもいい映画で涙も流したんですが、反面、自分を振り返って過去の薄っぺらさに悔しさがこみ上げ、帰りの車中でも思わず涙が滲んできたほど、とても重い何かを突きつけられた気がします。

いきなり感傷的な出だしで申し訳ありませんが。ありきたりの美辞麗句を並べたところで、多分この映画の良さって伝わらないと思うんですよね。自分でも影響を受け過ぎな気はするので、誰もがそこまで何かを受け取るわけでもないだろうし、今現在幸せかどうかでだいぶ違う印象にもなると思いますが、それにしても…この映画を観る前と観た後では、やはり自分の人生について、もっと言えば時間について、捉え方が変わったのは間違いないと思います。

悲しいかな人間は忘れやすい生き物なので、あえて鑑賞直後の感傷的な今、自分のためにも、感じたことを刻んでおこうとレビューを書いているわけです。

前振りが長くなりました。もうちょっと映画そのものについて書くぜ、と。

リチャード・カーティスの作品ということもあり、完全にラブコメだと思っていたわけですが、そんな雰囲気は大体前半ぐらいで、実は主人公・ティムの恋愛は失敗しつつも割と簡単に成就します。本来のテーマはその後。

家族とは、親子とはというところに中心が移っていくので、ジャンルの上でも「恋愛映画」というよりは「家族ドラマ」かな、と思います。なので、「恋愛映画はちょっとなー」と思っている方もぜひ観て頂きたいな、と。僕自身、このブログを始めるまでは「恋愛映画なんて観ない!」と決めていたわけですが、今もその流れでこの映画をスルーしていたかと思うと、もったいないどころかおぞましい気すらします。美男美女が惚れた腫れたやってる上っ面の恋愛映画とはまったく違うので、正直老若男女問わず誰にでも観て欲しい映画です。

が、観る年齢が若ければ若いほどいいとも思います。劇場公開中に観ただけに仕方のないことなんですが、欲を言えば、僕はもっと若い時に出会いたかった。今まで積み重ねてきた薄っぺらく無駄な時間、そして未だに一人であるということを振り返った時、この映画が大きな刃となって刺さってきたわけです。

時間はとても大事なもので、でも当たり前すぎて、なかなかそれを見つめて、考えようとはしないもの。

そんな「わかりきってる」と思っていたことをわかっていないことに気付かされました。「タイムトラベルもの」の映画ではありますが、その登場頻度も、影響の度合いもあまり大きくはありません。むしろ、その「能力を持つ父子」だからこそ理解できる特殊な事情の中に、普遍性のある“時間”そのものの大切さを強く訴えかける映画になっています。

恐ろしくよく出来た脚本だと思う。さすがリチャード・カーティス。

彼らしい軽さで誰にでも見やすい作りにしながら、とても身近で深い深いテーマを届けてくれました。個人差あるとは思いますが、普通の感受性を持っていれば、きっと自分に照らし合わせて、何かを考えて受け取るものがあるはずです。

ぜひ観てみてください。

僕は自責の念に駆られつつも、反面、自分にまだそれだけの感受性があったことに安心もしました。

何も受け取らず、「良い映画だったねー」で終わる方が悲しい、それぐらいメッセージ性の強い映画だと思います。

このシーンがイイ!

一部(この辺の)界隈で不人気な(役が多かった)レイチェル・マクアダムスですが、今回はすごく良かった。特に初登場シーン。めちゃくちゃかわいかった。結構いい年なのにさすが女優さんですね。

ということでこのシーンも良かったんですが、映画としては…やっぱり劇中一番最後に出てくる卓球のシーンかな。多くは語りません。観ればわかります。

ココが○

細かい部分で言えば、これまた「さすが」の劇伴の使い方。

あとはわからない人はわからないでしょうが、アメリカとの合作映画とは言え、ほぼ完璧イギリス映画の雰囲気なので、イギリス映画が好きな人にはまたたまらないと思います。

こういう派手さはないものの丁寧でしっかり見せてくれる優しい一般人映画、ってやっぱりイギリス映画が一番だと思うな~。

ココが×

作った人たちには関係ないですが、まあやっぱりちょっと邦題がダサいですね。

もちろん言わんとすることはわかるんですが、スマートさに欠けます。百歩譲っても、「~~について」は無い。配給会社、センスなさすぎ。

それと、これはどうでもいいものの一応書いておきますが、(これまたよくありがちですが)タイムトラベルの設定については結構怪しい部分があります。ただそこが軸ではないのでそんなところは気にしなくていいと思いますが。

MVA

今絶賛売り出し中のマーゴット・ロビー含め、主要キャストみんな良かったですね。

主人公のドーナル・グリーソンの雰囲気もバッチリだったし、お母さんも妹ももちろんレイチェル・マクアダムスもすごく良かったんですが、この映画に関してはもはや異論は認めません。絶対にこの人だと思うし、誰に聞いてもそうだと思います。

ビル・ナイ(父役)

僕がビル・ナイを贔屓にしている点を除いても、この人抜きには語れない映画だし、なんなら主役はこの人だったとも思います。

むっっっっっっちゃくちゃ良かった。

温かくてチャーミングでセクシーなお父さん。これはもう理想の父親像と言っていいでしょう。100点どころか5万点ぐらいあげたい。ますます好きになりました。ビル・ナイ

この人のこの演技を観るためだけでも観て欲しい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA