映画レビュー0923 『アメリカン・グラフィティ』

この映画も「映画好きであれば一度はタイトルを聞いたことがある」言わずと知れた名作でしょう。

いつか観たいとは思っていたんですが、例のごとくネトフリ配信終了が迫ってきたためついに鑑賞に至りました。

アメリカン・グラフィティ

American Graffiti
監督
脚本
出演

リチャード・ドレイファス
ロン・ハワード
ポール・ル・マット
チャールズ・マーティン・スミス
シンディ・ウィリアムズ
キャンディ・クラーク
マッケンジー・フィリップス
ハリソン・フォード
ウルフマン・ジャック

公開

1973年8月11日 アメリカ

上映時間

110分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

アメリカン・グラフィティ

名車とオールディーズに彩られた“一生忘れない夜”。

8.5
地元を離れる前日の“最後の夜”、それぞれが思い思いに一夜を過ごす
  • 高校卒業直後の若者たちそれぞれの一夜
  • 同じ町内・知ってる顔ぶれによる青春群像劇
  • 一度は耳にしたことがあるような往年の名曲がわんさかかかる
  • 羨ましさとちょっぴりの切なさでしみじみ

あらすじ

もー大号泣か大感動か、期待満々でハードル上げちゃったせいもあるのかもしれませんが、思っていたほど大きな波もなく、意外とサラリとした印象のお話ではありました。

が、それが悪いというわけではなく、ひたすらしみじみと「いいなぁ…こういう青春羨ましいなぁ…」と失ってしまった過去の時間に思いを馳せる、この頃の古い映画らしいノスタルジックな味わいがたまらない映画でもありましたね。

物語の中心となるメンバーは、いつもつるんでいるカート・スティーヴ・ジョン・テリーの“4人組”と、カートの妹でスティーヴの彼女であるローリー、ジョンが引っ掛けた女子のキャロル、テリーが引っ掛けた女子のデビーと言った面々。

そこに往年の名曲、いわゆるオールディーズをひっきりなしに被せてくる実在のDJ、ウルフマン・ジャックが青臭い街の空気を包み込む…そんな一夜のお話です。

それぞれ仲が良かったり面識があったりの、この時期の映画によくある「狭いコミュニティ」でのお話なんですが、ただみんながみんな一緒に行動するわけではなく、それぞれが思い思いに成り行きで過ごす一夜を描いています。

メインの主人公はリチャード・ドレイファス演じるカート。彼は優秀な学生だったらしく、奨学金によって大学進学を決めているいわゆる優等生。

ただ本人はこの街を離れて大学へ行くことに迷いもあり、出発前日夜の段階ですら「まだわからない」と言っているような状況。母校のパーティに出席した後、一人ボーッとテレビを眺めていたところであるトラブルに巻き込まれるんですが…。

一方彼の妹・ローリーと付き合っているスティーヴ。彼もまた翌日朝に旅立ち、3か月ほど街を離れる予定なんですが、ローリーに「離れている間はお互い干渉なしで好きなことしよう」と提案。要は「一旦別れて戻ってきたときも好きだったらまた付き合おう」というような…かなり都合のいい提案をしたところ、当然のごとくギクシャクすることに。はてさて二人はどーなるんでしょね。

メガネでいかにもモテなそうなテリーは、スティーヴから「俺がいない間、俺の車を好きに使っていいよ」と望外のオファーを受け、調子乗って街へ繰り出しキュートガール・デビーをドライブに連れ出すことに成功。

「お酒が飲みたい」と言う彼女に未成年のテリーは四苦八苦、それでもホラ吹いて自分を大きく見せている彼はあの手この手で彼女の気を引こうと頑張るわけですが、これまたどうなることやら。

大きな波は無いものの…

序盤はあまり人間関係もわからず、なんとなく青春っぽい光景を目にしてるだけで大して面白いと思えずに観てました。っていうか割と終盤近くまでは「これずっとこんな感じなのかなー」というような印象で…正直イマイチだなぁと思ってたんですが。

その後終盤になってそこそこ惹かれるイベントが出てきた、っていうのもあるんですが、なんというか…最後の方まで観てきて、この映画で描かれる“一夜に通底する青春”感に浸りきって自分の殻がスルリと脱げたような感覚って言うんですかね。

「うわぁ、これは…いいなぁ…羨ましい…」と一気にノスタルジックな憧れのようなものが吹き出してきて、結果「良い映画だったな…」としみじみしみじみ思いましたね…。

あらすじに書いたように、それぞれ思い思いにその日の夜を過ごすだけなので、特に友情だなんだ、っていう部分が強調されるような話でもないし、割とそれぞれの人間関係ってあっさりしてるんですよね。群像劇だし。

ただ…シーンとして何かがあったわけでもないんですが、ふとその「思い思いにその日の夜を過ごす」のは「彼らは仲間と過ごす時間の大切さに気付いていない」無邪気さの裏返しなんじゃないか、と気付いたタイミングがあって、そこで得も言われぬノスタルジックな気分を呼び起こされちゃったんですよね。

まあ誰だってそうですよ。いつも遊んでるメンバーがいて、「このメンバーで集まるのも最後かもしれない」なんて思わないじゃないですか。歳をとった後であればまだしも、二十歳前ですからね。

当然のように(歳をとった僕のような人間が感じる)「仲間たちと過ごす時間」の貴重さはまだわからないし、それが途切れることにも意識は行かない。明日の朝旅立つのはわかってるんだけど、でもきっと「どうせまた戻ってくるでしょ」ぐらいに思ってるんでしょう。もしくは「また集まるときもあるでしょ」って。

ただそれは言うまでもなくそんな簡単な話ではないし、例えこの後集まったとしても、日常的に遊んでいた頃とは感覚が変わってくるでしょう。

もう二度と戻らないかもしれない関係性と時間の扉をくぐる一夜、そう考えると…もうたまらなく感情的になっちゃうんですよね…。

いわゆる「モラトリアムの終わり」を迎える人たちの物語、ということでしょう。「ファンダンゴ」然り、僕はどうしてもこういう話に弱いようです。

友情としてはサラリとしている…けどそこがまたいい

普通に考えれば、カートとスティーヴは街を出ることになるので、「じゃあみんなで夜通し遊ぼうか」辺りがよくある過ごし方なのかなぁと思うんですが、そうじゃないんですよ。

ジョンは完全に異性のことしか頭にないし、テリーも「この車でモテモテじゃん!」とこれまた女の子とどうにかしたいことしか頭にないし。

スティーヴは(成り行き上仕方ないとも言えますが)仲間より彼女のことで頭がいっぱい、カートはまだ迷ってるせいか考えながら流されてる感じで自分に精一杯っぽいし。

そう考えると、「男4人が中心の青春映画」でありつつ、意外と友達についてはあっさりしてるし重要視してないんですよ。

でもそこがいいんだろうと思うんですよね。この映画は。そこに「貴重さに気付いていない無邪気さ」が見え隠れしてるし、でもどこかではお互いを大切に思ってるのが伝わってくるエピソードもサラッと差し込まれるし。

自分の欲望に忠実に、目の前のことに精一杯で未来のことは考えられない。これもまたすごく「青春」だなぁと思うわけです。もうそんな時期をとっくに通り過ぎてしまった人間としては。

「もう二度とそんな仲間できないんやで!」「もうみんなで集まる時はないんやで!」と言ってあげたい。応援上映してあげたい。でも彼らは気付かない。

その無邪気さと残酷さに、青春のほろ苦さを感じるわけですよ。感じるんです! みなさん!

この辺はこれまた名作「スタンド・バイ・ミー」そのものですよね。エンディングのセリフそのものですよ。それを(歳をとった人間は)理解しているからこそ、わかっていない彼らの姿に胸を締め付けられるんだな…と今回初めて気付きました。

いやぁ、こりゃあ確かに…いい映画だわ。

二重の意味で失った世界

最初は「曲のおかげで良い感じに見えるだけじゃねーの」ぐらいに思いながら観ていましたが、最終的にはその曲自体たまんねーな感満載でサントラ買おうか悩んでいる現状ですよ。

自分にとって過ぎ去ってしまった青春を直視する切なさもありつつ、同時に世界そのものが変わってしまったために、この時代のようなある種牧歌的な日常自体がもう手に入らないであろうことにも胸を締め付けられましたね。

つまり二重の意味で「もう来ない」時間を見せられたんだと。

今の若い人たちも、きっとこんな一夜を過ごしたくても無理だと思うんですよ。環境的に。

無闇に「昔は良かった」説に流される人間にはなりたくないんですが、でもどうしても…この頃のような人情味のある世界には憧れる面があって、そこをまた呼び起こされた気がしました。この辺は「スケアクロウ」を観たときと似ているかもしれません。

最初に書いた通り、大きな波はありません。ただ若者の一夜を観ているだけの映画です。

それでもその裏に見える「手に入らないもの」を見つめると、これはやっぱり…名作と言わざるを得ないでしょう。

しみじみ、しみじみ良かったです。本当に。

このシーンがイイ!

一番青春っぽいなと思ったのは、ジョンとキャロルが水風船(?)を投げてきたガールたちに“仕返し”するところ。

もう一つ、カートとパトカーの話。

この二つの青春感はエグいですよ。眩しいぐらいで。

ココが○

上に書いていない点としては、ウルフマン・ジャックがね。ものすごく良いですよね。使い方が。詳しくは書きませんが、あの辺でもうやられたのは間違いないです。

ココが×

やっぱりちょっと流して見ちゃうと「楽しそうだね」だけの話なので、その裏のところにまで思いを馳せることができるかどうかで感想は変わると思います。

僕としても面白かったかと言われると面白かったってわけではないんですよね。ただ全体的になんとも言えない喪失感があって、それにやられちゃったなというところなので。

MVA

いやー、ロン・ハワードが元々は俳優だった、って初めて知りました。すんげーかわいいの。びっくり。

彼も良かったんですが、一番はこの人かな〜。

チャールズ・マーティン・スミス(テリー・フィールズ役)

メガネの童貞。いや童貞なのかわからないけど。童貞感すごい。

彼が一番活躍していたと言うか…いろんなところを見せてくれたので。

どっかで観たことあるよな〜と思いながら、「まあこのタイプの役者さんこの頃結構いたような気もするし」って流してたんですが、「ネバー・クライ・ウルフ」の主人公だったとは…。あの映画もまた観たいんだけどなかなか観る機会が限られちゃうので大変です。

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