映画レビュー1291 『アーカイヴ』

最近JAIHOに惹かれる映画がイマイチないため、今回もアマプラから1本選びました。

ツイッターで仲良しの方が「面白かった」と言っていたような記憶があった(曖昧)映画で、この数日後に配信終了となっていたのでじゃあ観てみるかなと。

なおどうでもいい情報ですが、「アーティスト」以来10年以上ぶりに50音順のトップが変わりました。(マジでどうでもいい情報)

アーカイヴ

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監督

ギャヴィン・ロザリー

脚本

ギャヴィン・ロザリー

出演

テオ・ジェームズ
ステイシー・マーティン
ローナ・ミトラ
ピーター・フェルディナンド
トビー・ジョーンズ

音楽
公開

2020年7月10日 アメリカ

上映時間

109分

製作国

イギリス

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

アーカイヴ

引っかかりも多いものの話はとても好き。

8.5
ヤマナシで一人AIを研究する男、“禁忌”と思しき開発に手を出すが…
  • 日本の山奥で一人AI開発に勤しむ男、しかし作るAIは雇い主から秘匿していて…
  • AIのはらむ問題を描きつつ、もう一歩先にあるオチに唸る
  • 他のSFの影響も見て取れるストーリーとビジュアルはSF好きなら観てほしい
  • ただところどころチープなのは我慢する必要あり

あらすじ

いろいろ言いたいことがありつつ、でも最後まで観たらかなり好きなSFでした。やっぱりSF好きだぜ…!(SFが好きという概念)

AI開発者のジョージ・アルモア(テオ・ジェームズ)は、山梨の奥地にあるらしい住居兼ラボで生活しながら一人で高度なAIの開発に勤しんでおります。

彼は物語開始時点で「J1」「J2」の2台のAIを完成させていて、さらにその上を行くAIも開発中。

しかし“ワケあって”雇い主には「J1」しか完成していないと伝えているらしく、J2の存在と開発中のAIについてはショナイにしているようで、そのせいか雇い主からの評価は低く、停滞している開発者と見なされている模様。

そんな評価はお構いなしに新たなAI開発に勤しむジョージですが、そこには彼の執念のような思いが込められておりまして…まあこれ以上は観てちょーだい、といつもの流れです。

チープさが気になるけど気になるのが良いのかもしれない

結構話の構造が何段階かに分かれてはいるんですが、その手前の方でもあんまり書いちゃうと面白くないよなと思うのでイマイチ書けることが少なく、うっすいレビューになりそうでいつものことですが申し訳ない限りでございます。

彼がなぜ“高度なAI”の開発に執着するのか、そこはまあすぐわかる話ではあるんですが、事前情報は無いほうが面白いと思うので伏せておこうかな、と。

さらに他にもいろいろ言いたいんだけど言えないよ、ということでね。言えることとしては主演の俳優さんがちょっとネイマールに似てたよね、ぐらいのもので。でもサッカーはしないよ。

最初ちょっと「ネイマール似てない?」と思いながら観ていたんですが、時間が経つにつれてもうネイマールにしか見えなくなってき(ネイマールの話を続ける不毛さにより省略します)

あとソックリ話をもう一つすると、もう最初のシーンで「うわっこのラボ月に囚われた男そっくりじゃん!」と思ったんですが、それもそのはずどうやら監督さんは「月に囚われた男」の美術監督を勤めていた方らしいです。初監督作品なんだとか。Twitter情報なので真偽は不明ですが確かに言われてみればさもありなん。

ロボット(J1とJ2)もどことなくガーティっぽさを感じたし、あの映画が好きな人はいろいろグッと来るビジュアルが楽しめるでしょう。

上記の通り、舞台は(何故か)山梨なんですが、1シーンだけ街に出向くシーンがあり、そこではご多分に漏れずサイケジャパンが登場してきてこの辺は「ブレードランナー」みが強くて最高、と。もうホント日本はこの手の「外国から見た怪しい日本」を早急にテーマパークにして外国人観光客に媚売らないとダメですよ。

主人公が暮らし、そして働くラボも日本にあるせいかところどころ怪しげな日本語表記が散見され、その辺りの雰囲気もなかなかたまらないものがありました。日本人だったら絶対そうは書かないでしょ(むしろ英語でしょ)って感じで。

一人高度なAI開発に勤しむ感じは「エクス・マキナ」っぽさもあるし、本当にアレコレいろんなSFのエッセンスが感じられて非常に好みです。

一番の見どころとなるオチに関しては「うわーこれ○○○ッ○じゃん!!」と脳が昇天するぐらい気持ちよくビビッと来た小説があるんですが、当然ネタバレになるのでここで書くのは控えておきます。

この作品自体は世間的には結構評価が低く、それ故にちょっと観るのを悩む面もあったんですが(微妙な評価のSFを観てガッカリする恐怖は「オートマタ症候群」と呼ばれているオンリーおれ)、確かに観ていて「それはどうなの」みたいなチープさがいろいろあってガッカリした面はありました。

一番はやっぱり…こればっかりは書かざるを得ないので書きますが、「人間に極めて近いAI」として作ったロボットがまんま人間すぎて「人間にロボメイクしてるだけじゃん」問題ですよ。不気味の谷現象の逆バージョンというか。

この辺り、さりげなく「エクス・マキナ」は上手かったんだな〜と改めて思いました。顔はアリシアちゃんだけど全体は機械だなと認識できるデザインだったなと。

この映画はおそらく低予算映画だと思われるのでそれ故こうせざるを得ない…のも理解できるんですが、でも「エクス・マキナ」も低予算映画な気がするし(俳優陣は贅沢だったけど)、もうちょっとやり方はあったんじゃないのという気もする。

…が!

がですよ皆さん。ところが。

そのチープさに目を奪われ、「なんだかなぁ」とそっちに気を向けていたらオチをまったく予想せずに観ることになり、結果的にオチで…というか「こういう話ですよ」と気付かせるラストのとあるポイントで気持ちよく「そういう話か〜!」とズルムケになれたので逆に良かったなとも思います。ズルムケになれたって何。

「おっぱいの大きい水着美女写真の背景にゴリラが写ってても誰も気が付かない問題」と同じですよ。違う方に目が行っちゃったもんだから本来なら「どうせこういう話でしょ」と予想してたような気がするオチでもびっくりできる、という。これ狙ってやってたとしたらすごいな…!

おっぱいに興味がないようなタイプの人は、案の定「予想通りのオチでイマイチ」とか言っちゃってるんですが、僕は存外に楽しめたのでおっぱいに興味があるタイプで良かったなと心底思いました。

いやこの映画におっぱいは関係ないんですけどね。比喩として。

現代文のテストに出そうな文脈です。「この“おっぱい”は当該映画においては何を意味しているのか答えよ」みたいな。

SF好きなら一度観てみてもいいかも

その他にも「なるほどこういうAIは初めて観たかもしれない…」と思わせるポイントがあったりして、評価が低い割には意外と見どころのある映画だなと思います。

ただ主人公にも奥さんにもいろいろ難があるので人物描写≒感情移入的には微妙な面もあるし、その辺りで好き嫌いが分かれてしまうのもまたよくわかります。僕もそうでしたがどちらかと言うとJ1・J2に感情移入しちゃう人が多いでしょう。

ただ僕としてはこの手の低予算SFにしては奥さん結構綺麗だなと非常に問題のある思考で観ていたのであまり気になりませんでした。今の時代、公には言えない発言です。

オチとしては一発勝負のタイプだと思うので、繰り返し観るような映画ではないのが残念なところ。とは言えビジュアルは(チープな部分を除けば)好きなので映像を観るだけでも楽しめる面はあるでしょう。

いろいろ言いたいことはこのあとのネタバレ項に譲るとしまして、とりあえずSF好きは軽く観てみると良いかもしれませんがつまらなくても苦情は受け付けません。よろしくどうぞ。

ネータバレ

ネタバレタイトルにもチープさが漂っていますがダジャレの時点でチープなので今さらです。

まず「J2の自殺」に結構衝撃を受けましたね、僕は。

人に反旗を翻すAIは散々見聞きしてきたけど、自ら命を絶つAIという発想はなかなか珍しいんじゃないか、と。

嫉妬故にその道を選んだわけですが、これはこれで意外と有り得そうな気がするし、こっちの問題も今後描かれる機会がもっと出てくるんじゃないかと思います。

J2は設定(能力)的に大体高校生ぐらいという話だったので、その年齢の面でも繊細で弱い部分がある…というのが説得力を増しているのがまた良かった。いわゆる「思春期」がAIにもある…というエモさ。

それも含めてJ1、J2の存在が非常に悲しいし不穏だしで好きでした。

特にJ1はもはやアニメを観るぐらいしかやることがない、なんなら主人公にとってもJ2にとってもお荷物になってしまう“お姉ちゃん”という存在なのがすごく悲しくて、彼女は自殺をすることすら出来ない(考えない)しその価値とは…と考えるといたたまれなくなっちゃって困りました。

そんな「AIの自殺」がテーマなのか〜なるほど新しいな! と思っていたら意外と終わらず、余計なこと付け足さんでええのに…と思っていたらラストで意外とやられてしまい、結果すごく面白かったなと。

僕がビビッと来た小説は…ってタイトル書いちゃうとそっちのネタバレにもなっちゃうのではっきりとは書きませんが(まあ古典中の古典SFなので今さら隠す必要もないですが)、「ブレードランナー」の原作である「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」でもおなじみのフィリップ・K・ディックの別の作品、とだけは書いておきましょう。僕は電気羊よりも断然こっちの方が好きでした。

オチとしてはほぼ同じ…というかリスペクトしているぐらい似ている感じがしたんですが、どっちも同じぐらい「そういう話か〜!」とびっくりできたので二度美味しい、単純な人間です。

それとあの“最後の通話”がアナログの黒電話、っていうのは最高でしたね…。ベタだけどあのガジェットは最高だなと思いました。

それにしてもJ2といいJ3といい、その性格を見るに彼の奥さんはよほど嫉妬深い…と彼が思っていたように見えるんですが、そう思ってたのに執着してる主人公もどうなの、って気もする。

このシーンがイイ!

これはもうラストの“ネタバラシ”のところでしょう。バラし方がすごく好きでした。「えっ…てことは!?」っていうね。

ドカンと「こういう話やで!」と教えるのではなく、一つの情報でわからせる、気付かせてくれるようなちょっと捻ったネタバラシになっているというか。

そんな難しい内容ではないんですが、ただはっきりと提示するよりも全然センスがあって好きです。

それとやっぱりサイケジャパンのシーンも捨てがたい。あのおっさんが怪しすぎてまた良い。

ココが○

狙ってるかどうかは不明ですが(多分狙ってないとは思うけど)、上記の通り「これコスプレじゃん」とチープな方に苛つかせておいて本筋を予想させないのが僕にはドハマリしました。やられたー! って感じで。

多分普通に観られるスキのない作りだったら「どうせこれ○○なんでしょ」みたいに予想して当たってがっかり、みたいになっててもおかしくなかった気がします。

ココが×

とは言えそのチープさで評価を下げているのも間違いないところなので悩ましいところ。

あとは…僕が「思い出した」小説を知っていたら普通にオチを予想していてもおかしくない気はします。知ってて予想してない人間が言うのもなんですが。

オチを予想してしまうと(そして当たってしまうと)面白さが半減する映画だと思うので、とにかく先を予想せず、目先のチープさに文句を言いながら観てほしいですね。そんな制約があるのも微妙っちゃ微妙なんですが。

MVA

本来であれば断然J2なんですが、ロボットだけに選出しづらい…ということでこちらの方に。

ステイシー・マーティン(ジュールス・アルモア役)

主人公の奥さん。全然気付きませんでしたがフランス人だそうです。ファッションモデルもやっているそうで、そりゃー綺麗なはずだ。

上に書いた通り、この手の低予算SFの奥さん役って大体チョイ役で微妙な方が多い気がするんですが(「月に囚われた男」でもあんまり出てこないし「メメント」も微妙だったし)、この方は割とガッツリ登場してきてなかなか良かったな、と。ちなみに「ハイ・ライズ」にも出ていたそうですがまったく記憶にありません。あの映画自体トムヒの裸が出てきたことしか覚えてない。

それと密かにトビー・ジョーンズが出てたのが嬉しかったですね。久々に観た気がする。トビジョ。

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