映画レビュー0361 『アルゴ』

春分の日特別企画!

…とか言うとそれっぽくなるのでただ言ってみただけで、残念ながら通常営業です。あしからず。

とは言えですね、一応最新映画ですよと。主戦場のシネコンで昨日が最終公開日だったので、レイトショーで行って参りました。耳に入ってくる評判はなかなかよさげなので、こりゃー劇場で観たいぜ、と目の前の2カポーにイライラしつつ、じっくり鑑賞して参りました。

ご存知、この前発表になったアカデミー作品賞受賞作品です。

アルゴ

Argo
監督
脚本
原作
『The Master of Disguise』
アントニオ・J・メンデス
『The Great Escape』
ジョシュア・バーマン
音楽
公開
2012年10月12日 アメリカ
上映時間
120分(劇場版)
130分(エクステンデッド版)
製作国
アメリカ

アルゴ

1979年、贅を尽くし国民を貧困に陥れた元国王をアメリカが受け入れたことから不満が爆発したイランの学生ら過激派がアメリカ大使館を占拠。大半が人質となる中、間一髪大使館から逃げ出した外交官6人はカナダ大使の私邸に匿われるが、書類の修復に走るイラン側に逃げ出したことが判明するのは時間の問題と思われ、日に日に命の危険が迫っていた。アメリカ国防総省とCIAはこの6人を救出する計画を複数検討し、「人質救出のプロ」であるCIAのトニー・メンデスが提案した、「偽の映画撮影のスタッフとして偽装、出国させる」という計画を採用する。

事件当初の映像もうまく使いながら、持続する緊張感で目が離せない!

9.0

オープニングで「実話を元に作ったぜ」とある通り、実際に起きた「イランアメリカ大使館人質事件」の、「カナダの策謀」と呼ばれる事件についての映画です。詳細がどこまで事実に基づいているのかはわかりませんが、当時の映像をかなり混ぜ込んで来ているあたり、大部分は事実に基づいた部分が多いような印象。

さすがに煽りだったり“間一髪”な場面は映画らしすぎて実際ここまでギリギリな救出劇ではなかったんだろうと思いますが、それでもドキュメンタリーと見紛うようなオープニングといい、かなり現実に寄せたリアリティを求めている感じで、それがまたまさに手に汗握るような緊張感を感じさせてくれました。

「アルゴ」というのは、救出作戦に使用された偽SF映画のタイトルで、その「偽映画のスタッフとして出国させる作戦」というのもいかにも映画向きで娯楽っぽいですが、実際に行われた作戦のようです。ちなみに僕は勝手に、もっと撮影しながら「今まさに撮っているんですよ」的な感じで逃げていくのかと思ってたんですが、名目上はロケハン(ロケーションハンティング:撮影前の下調べ的なもの)で、「イランに下見に来たカナダ人クルーが視察を終えて帰国する」という設定で逃げる、という計画です。

ただし、問題の6人はただの外交官であり、いわゆる素人。おまけに(結構歳食ってるように見えますが)大半が20代の若者。そこに“映画スタッフ”としての肩書きや半生、過去なんかを詰め込むスパイお馴染みの努力をたった数日でやれ、というんですから、そりゃーどっかでボロが出ない方がおかしい、と不安感たっぷりに展開。

外交官なのでそれなりに頭もいいんでしょうが、でもこんなの一人ダメ男君(もしくはダメ子ちゃん)がいたら終わりなので、まあ当時の本人たちの緊張感たるや相当なものだったでしょう。胃が痛い。

その“当時”への想像を膨らませるように、古いニュース映像やインタビューなんかがところどころで挿し込まれ、「作り物なんだけど実際にあったリアリティ」がうまく演出されています。当然ながら小物類や登場人物の髪型等、当時を彷彿とさせる作りはもちろん、映像も(気持ち?)綺麗すぎず、過去の映像とつないでもさして違和感のない感じに撮影されているように感じました。通して観ると完璧に娯楽映画として素晴らしいデキなんですが、細部のこだわりからドキュメンタリーっぽさ、リアリティも追求している感じがより作品の質を高めているのではないでしょうか。

単純に話として観てもサスペンスフルで面白く、「アメリカ人は一人残らず殺すぞ」ぐらいに殺気立ったイラン人たちの狂気じみた追い詰め方に、当然ながら「バレる=死」の6人、同じくバレれば殺されるのは間違いない救出に来たCIAのトニー、さらに同じく命の危険が迫る彼らを匿うカナダ大使…と誰もが「死と隣り合わせ」の恐怖。

まさに生きた心地がしない状況を綱渡りしながら、果たして無事帰国できるのか…という緊張感は終始途切れず、あっという間の2時間でしたね。

作り物だったとしても傑作だったと思いますが、これが事実に基づく話だっていうんだからもう。久々にアメリカのスケールの凄さというか、諜報的な奥深さを感じました。

事件の結末についてはあらかた知っている人も多いだろうし、特にアメリカ国内であればまず大半の人間が知っているであろうことを考えると、「結末」についてはあまり大きな意味を成さない話でしょう。そこに至るまでのプロセス、「わかってても緊張する」作りのうまさがこの映画の良さですね。

緊張しっぱなしだと疲れますが、たまに登場するアラン・アーキンとジョン・グッドマンコンビのハリウッド事務所がいい箸休めになっていたり、緩急の使い方もお見事。

割と「アカデミー賞」って文学的だったり感動的な作品が多い印象の中で、ここまでしっかり“娯楽”した映画は珍しいような気がしました。きっとたくさんの人が楽しめるだろうし、派手ではないリアルなスパイ映画としてもよくできていて、ひじょーに満足の一品でございましたよ。

オススメします!

このシーンがイイ!

これはもう、「搭乗券予約」の時のCIA内部のシーンに決まり。緊張感と観客への「お前らも準備しろよ!」的なストーリーの加速度が最高。

ココが○

若干家族愛や夫婦愛も登場しますが、基本は「脱出計画」一本で通す芯の強さがすごくいいですね。下手に泣かせに来たり感動的にしたり、っていうのがなくて。これぞ娯楽映画だと思います。レベルの高い娯楽映画。

ココが×

イラン国内では、イラン人の描写が残酷だったりするだけに「アメリカのプロパガンダでしか無い」という評判が多いようで、確かにそういう見方をすればそう見える気もします。

でもこれは過去に実際にあった事件の話だし、ちょっとプロパガンダ的には時代が前すぎるかな、と思いますね。この頃とは今のアメリカはだいぶ変わってるわけだし。

それにプロパガンダ臭はほとんど感じなくて、むしろ「娯楽として楽しませるぞ」っていう良い意味でハリウッドらしい映画になっていたと思います。

ということで×は特に無し。

MVA

これだけの作品だけに当然ですが、役者陣がまた結構良くてですねー。監督兼主演のベン・アフレックを観るのはクソつまらなかった「ペイチェック 消された記憶」以来になりますが、髪型&ヒゲのおかげもあってひじょーに渋い、イイ男になっていました。彼の物静かな、でも情熱を持った(善玉)CIAらしい演技も良かったですね。

それと「みんな大好き爺」、アラン・アーキン。当たり前のように最高でしたね。ファッキン、アルゴ!

が!

まあ、大半の人がそうじゃないかと思いますが、僕としてはこの人しかいないな、と。

ブライアン・クランストン(ジャック・オドネル役)

ベン・アフレック扮するトニーの上司。

序盤も渋くていい存在感を見せてましたが、スイッチが入ってからの動きたるや!

役の美味しさはもちろん、感情の見える演技っぷりもお見事で、まー素晴らしかった。もっかい観たい。あのシーン。

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