映画レビュー1153 『薄氷』

今回はツイッターで絶賛評が流れてきたこちらの映画。ネトフリオリジナルです。

薄氷

Bajocero
監督

ルイス・キレス

脚本

フェルナンド・ナバーロ
ルイス・キレス

出演

ハビエル・グティエレス
カラ・エレハルデ
ルイス・カイェホ
アンドレス・ヘルトルディクス
イサック・フェリス

音楽
公開

2021年1月29日 各国

上映時間

106分

製作国

スペイン

視聴環境

Netflix(Fire TV Stick・TV)

薄氷

フラグがいっぱい。

7.0
突如襲撃される囚人護送車。犯人の狙いは?
  • 囚人護送中に襲われ、車内に閉じ込められた警官と囚人のサバイバル
  • 囚人と犯人双方が敵で孤立無援の警官が主人公
  • ベースのストーリーはなかなかなものの、割と丁寧にフラグを立ててくれるので先が読める
  • 動機も悪くないが最近の風潮としてはありきたり

あらすじ

いやーもう何度目だよって話なんですが、ツイッターで流れてくる「これは傑作!」ってご意見は話半分に聞いておかないといけないな、と思いますね。張本の喝レベルの安売りっぷりですよ。

僕としてはまあ面白かったんですが、「まあ」が付くレベルでした。決して「必見!」なんてほどではなかったのが少々残念。

新たに現地の警察に異動してきた警察官・マーティン(ハビエル・グティエレス)。いかにも実直で真面目な警官、という主人公然とした人物です。ちょっとマイケル・キートンっぽい。

彼の現地初仕事は「囚人の護送任務」。その中には麻薬組織の大物も含まれており、相棒含めてピリピリしております。

護送車は護送パトカー(ややこしい)に先導されつつ任務を開始しますが、程なくして異常事態が発生。護送パトカーとは連絡が取れなくなり、様子を見に行った相棒も姿を消します。

やむなく外に出たマーティンは遠距離からの発砲によって襲撃を察知、なんやかんやしているうちに囚人たちのいるコンテナ(?)部分に彼らとともに閉じ込められる羽目に。

果たしてマーティンは無事任務を終えられるのか、そして犯人の狙いは…! 的な映画ですよ…!

適度なまとまり感

ネトフリオリジナル映画らしく、ほぼワンシチュエーション的なサスペンスドラマ。囚人護送車の簡易牢獄とでも言うんですかね、車体後部に取り付けられたコンテナ部分でのお話が大半の映画です。

序盤こそややホラーじみた「謎の襲撃」で引っ張る展開ですが、それ以降は囚人たちと主人公の主導権争いや囚人それぞれの人間ドラマと犯人の思惑が絡んでくる、なかなか骨太なアクションスリラーと言った感じです。

犯人の真の狙い、事件の引き金の部分は終盤近くで明かされるもののため、それまではアクションと「命に関わるレベルの寒さでサバイブする」面々のドラマが主体になってきます。

それなりに引っ張り方がうまい映画ではあるので、ワケアリっぽい犯人が登場してからは「これ絶対なにかあるでしょ」「こういうことじゃないか?」と予想させつつ、割と飽きさせないように作られています。

全体としては良くも悪くもこぢんまりと適度にまとまった外しにくい映画と言う印象で、めちゃくちゃ良いわけではないものの誰でもそれなりに楽しめる、「ハリウッド外の量産型」映画と言う感じでしょうか。この辺の完成度がいかにもネトフリオリジナルっぽい気もする。

最終的なネタバラシの部分がなかなか情に訴えてくるものなので、それを引きずったエンディングの味わい深さみたいなものはしっかりあるんですが、ただその内容自体も割と最近良く見るものでもあるし、言っちゃーなんですが(創作だけに)「とりあえずこういう話にしておけば納得でしょ」みたいな裏の理論が透けて見えなくもない。我ながら嫌な客になったもんです。

これが実話ベースですよとなるとまた全然違った感想になってくると思いますが、創作である以上、このテーマ自体に「納得できるんだけど流行りが見える」気がして、心の底から深く感情移入できない悲しさもありました。

フラグ立てが少々丁寧な気が

また道中で結構しっかりフラグを立ててくれるのも、この手の映画に慣れちゃった人間としては残念感がありました。

例えば囚人たち。大体行動だったりフォーカスされるタイミングだったりで「あ、次こいつ退場だな」というのが読めちゃう。そして当たっちゃう。

最初の1人は予想外でびっくりしたんですが、それ以外はもう綺麗に予想そのままで素直すぎる作りだなぁと。

もう一つ引っかかったのが、犯人像。

最初からいかにもワケアリ感が出ているので、間違いなく「ただの悪人」じゃないなとわかるんですが、最初に演者が登場したときの写し方がもう完全に「この人が悪役を!?」みたいな雰囲気が出てるんですよ。

もう即座に「新幹線大爆破」の健さんを思い出しました。きっとスペインの高倉健的な人なんじゃないか、って。

「この人が犯人をやる以上、ただの悪いやつじゃないよ」感がにじみ出ていて、「新幹線大爆破」のようにそれが良い…こともあるんですが、こっちはスペイン人俳優を知らずに観て「あ、健さん的な?」と思っちゃったもんだから「となるとこれはワケアリで、最終的には…」みたいにいろいろ余計な読みを働かせちゃうんですよね。

んで、その読みを持ってしても揺らがない太い物語性があった「新幹線大爆破」とは違い、「やっぱりそうだよね」と“予想通り”の方に針が振れてしまうのがこの映画だったな、と。

この内容であれば、犯人は最後の方まで「謎の人物」っぽさを残しておいた方が意外性が増したんじゃないかな〜とド素人は思うわけですよ。早々にワケアリ感を明かすには少し話が弱いような気がして。

まあそんな感じで観ていったら大体予想通りの物語になってしまったので、観る前のハードルの高さと合わせて少し残念感が出てしまったと言うのが正直なところです。

世間的には評価が高め

やや厳し目の物言いになってしまいましたが、全体的には過不足なくしっかり作られているので、あまり期待しすぎずに観ればそれなりに楽しめる映画だと思います。割と世間的な評価も高いです。

やっぱりちょっとハリウッド映画とは違って地味でもあるし暗いんですが、そこがむしろ良い面だとも思うので、たまにはアメリカ映画以外を…って時には良いチョイスでしょう。

やっぱりちょっとヨーロッパの映画は雰囲気が変わるので、それだけでも少し新鮮に見られて良いのではないでしょうか。逆に言えばこれをこのままアメリカで作ってたらもうベッタベタな感じがしちゃって全然ダメかもしれません。難しいもんです。

このシーンがイイ!

やっぱり最終盤からラストシーンにかけての一連の展開でしょうか。あそこの立ち居振る舞いによってはまるで違った感想になりそうだし「そりゃそうするでしょ」と思いつつも良かった。

タイトルを思わせるシーンも良かったけど、あれは物理的におかしくないんだろうか…。

ココが○

「移動している」からかワンシチュエーションな割にあまりそう感じさせない舞台の巧みさがあって、あまり低予算っぽさも感じさせず、普通に一本の映画としてしっかり作られている感覚が良かったですね。

ココが×

やっぱり少々フラグを立てすぎなところが一番かな…。もうちょっと意外さを感じさせて欲しかった。ワガママですが。

MVA

囚人の1人が「ザ・ダミ声」って感じでもうたまらなかったんですが彼ではなく。

結局このチョイスもベタにこの人にします。

カラ・エレハルデ(犯人役)

ワケアリ犯人。

上記の通り、ただの悪いやつではないその雰囲気が良かった。終盤まで行くともう主人公に近い。

非常に渋くて良い役者さんだと思います。僕は知りませんでしたが監督もやっているとのことで…やっぱりスペイン映画界では大物なんでしょうね。

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