映画レビュー1188 『ECHO/エコー』

例によってJAIHOだバカヤロー! なお、あまりにも面倒だったのでジャケ絵はいつも以上にサボりました。サーセン。

今年はかなりレビューを溜めてしまい、最後は休みに入ってからおざなりにこなしていってしまい猛省しております。

そんなわけで今年はこれにて終了です。皆様良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いします。

ECHO/エコー

Bergmal
監督

ラグナー・ルーナルソン

脚本

ラグナー・ルーナルソン

出演

シグルマール・アルバートソン
ベント・キンゴ・アンダーセン
シフ・アルナドッテイル
アル・アルナルソン
フィンヌル・アルナル・アルナルソン

音楽

キャルタン・スベィンソン

公開

2019年11月20日 アイスランド

上映時間

79分

製作国

アイスランド・フランス・スイス・デンマーク・フィンランド

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

ECHO

みんな“生きてる”なぁ、としみじみ実感。

9.0
クリスマスから年末まで、ある田舎町の人々の日常をつないだオムニバス
  • ごく短い1シーンを56シーンつないだ、それぞれが独立したオムニバス映画
  • なんてことのない日常のシーンの連続ながら、そこに人々の生活を見てほっこり
  • 無名のアマチュア俳優を起用しているもののまったく違和感がなくドキュメンタリーのよう
  • 年末観るのにとても相応しい映画

あらすじ

いやぁ、これめちゃくちゃ良かったですね…。本当になんてことないシーンばっかりなんですが、その積み重ねで人々が「生きている」ことをしみじみ感じ、年の瀬らしい感慨にふける良作でした。

なにせそれぞれが独立しているのであらすじというあらすじは特にありません。

舞台はアイスランドの田舎町らしく、クリスマスから年が明けるまでの1週間程度の一般人の姿を1シーンずつ、固定カメラでつないでいきます。

再婚した父の元に再会しに行く娘、友達と酒を飲みながらボードゲームを遊ぶ男たち、えらい寒そうなプールで運動する老人たち、クリスマスツリーを買いに来て喧嘩しちゃう家族、日焼けマシンで母と電話する男、別れた夫と電話で揉める女性、その他様々な人たちそれぞれの年末です。

みんな生きてるんだなとしみじみ

固定カメラで短いシーンをつなぐ、その作りはかなり「さよなら、人類」っぽくてまさにあの映画を思い出しましたが、かなりシュールでわかりづらかったあの映画とは違い、こちらはまさに自分と同じ一般人たちの等身大の日常を短くつないでいった内容でとても理解しやすく、また温かい気持ちにさせられるとても良い映画でした。

それぞれのシーンに長短はありましたが、合計56シーンで上映時間79分ということを考えると、平均すれば大体どの“物語”も1〜2分程度で終わります。そしてそれらはほぼ繋がりがありません。(一部場所的に近いとかそういうのはありましたが、人間的なつながりはゼロ)

すべてなんてことはない、劇的なことも起こらない本当に「一般人の年末のひとコマ」でしかないんですが、それが積み重なっていくと、やがて「これが生きるってことなんだなぁ…」としみじみ感じ入ってしまうものがありましたね…。

自分の目に入る範囲以外の人たちも当然普通に生活をしていて、そこにはその人なりの悩みもあれば幸せもある、そんなことはわかりきっているんですが、こうしてまとめて観ていくとそのことに改めて気付かされるというか、そっちに目を向けて世界が広がる感覚がありました。

また固定カメラで情報量が限られている割に絶妙に情報量がコントロールされていて、短い中にも「ああ、この人たちはこういう背景があるんだな」と想像力を刺激してくれる良さもあって、思いの外すんなりと各人の“ドラマ”が浮かび上がってくるようになっています。

一見するとドキュメンタリーのようにすごくリアルで、さらに大きな事件も無いので地味に見えがちな映画ではあるんですが、その実しっかり必要最小限の情報を込めていくことによってその後ろにあるものに思いを馳せることができる作りになっているし、その積み重ねで「世間」「生活」というものを浮かび上がらせる作りはものすごく巧みだと思います。この監督すごい。

たった1〜2分を56シーンつないだだけの映画なんですが、そうやって各シーンに奥行きがあるので、上映時間以上にいろんな“人生”を観たな、という満足感もあるし、情報量の総量が多いのでジワジワと心に染みてくる深いものがありました。そこもまたすごい。

最終的に「最初の頃に出てきた人があとの方の人とつながったりするのかな?」と思いながら観ていましたがそういうことはまったくなく、すべて独立したお話なのに、すべてを通して観るとそこに「人の営み」の大きな塊が感じられるのもすごく不思議な体験で、なかなかこれはすごい映画だと思います。

急いでJAIHOへ

なんでもこの映画はリクエストで選ばれた映画らしいんですが、こんな映画を推薦できる人もすごい。

北欧らしい寒々とした舞台ながら、全部観るとなんとなく気持ちが温かくなるのも不思議。他にない貴重な経験をさせてもらった気がします。

やっぱり年末は誰しも「来年こそは」みたいな、切り替えの感情が芽生える時期だと思うので、そういうタイミングでこの映画の「みんな精一杯生きてるんだよ」というメッセージを受け取ると、ほんの少し背筋が伸びるような、改めてもう一度頑張らないととネジを締め直すような効果もある気がして、映画自体の世界観もさることながら、自分への影響という意味でも年末観るのにこれ以上無く相応しい素晴らしい映画でした。

今のJAIHOの配信が終わってしまうとなかなか観る機会が無さそうな映画ではありますが、月額料金も安いしお試しにぜひJAIHOに入って観てもらいたい一本ですね。

このシーンがイイ!

印象的なシーンはいくつもあって、特につらい人に感情移入しがちだったんですが、一番印象的だったのは…再婚した父親に再会してサプライズしようとした娘ちゃんのお話かな…。絶妙なエピソードでした。

あとバス停で過去のいじめを謝罪するシーンもいろいろ考えちゃってよかったな…。

ココが○

やっぱり各人にドラマがあって、当たり前だけどみんな「生きてる」ってところを実感できる作りではないでしょうか。悩みも喜びも人それぞれ、まったく関係のない人たちを観て「自分も一人じゃないな」と感じられる、なぜか励まされる世界は素晴らしいです。

ココが×

どうしても地味ではあるし、その文脈を読み取るにはそれなりに年齢を重ねていないと難しい部分はあるのかなと思います。眼前に描かれる物語を自分の中でどう解釈するのか、その経験値や推察力みたいなものは必要な映画でしょう。

MVA

今回はちょっと特殊な映画で、どの人がどの役なのかもわからないので該当なしにしましょう。映画自体はとても良かったんですけどね。

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