映画レビュー1527 『ドロステのはてで僕ら』
「リバー、流れないでよ」はヨーロッパ企画長編映画第2弾とのことで、第1弾であるこちらも観ておきたいぞということで。邦画3連続はなんプロ初かも。
ちなみにこちらは配信終了が迫ってきたので今(2025年12月)はアマプラ・ネトフリでは観られません。U-NEXTにはあるっぽいです。
ドロステのはてで僕ら

天才の所業。
- 1Fの店舗のTVと2Fの自宅のiMacが2分の時間差で繋がり、相互でやり取りし始める
- 話が広まってみんなが“活用”しようとし始めるが…
- SF要素強めでやや難解、ちょっとした「メメント」っぽさも感じる
- ノーカット(に見える)長回し一本勝負感も見どころ
あらすじ
いやーすごいですねこれは。文句なしに面白かったです。
ある日のカフェ。
営業も終わり、店長のカトウ(土佐和成)はすぐ上にある自室に戻ってギターでも弾くかな…とピックを探していたところ、置いてあったiMacから声が。
見てみるとそこには自分がいて「2分後の未来から声をかけてる」と。ピックはラグの下にあるよと。
言われるがまま見てみるとピックがあり、「もう2分経つから早く店来て、来たらこっちから2分前の自分に教えてあげて」と言われ、何が何やらわからないままもう一度店に降りてモニターを観るとそこにはピックを探す自分の姿が写っています。
そこで彼はモニター越しに自分に声をかけ、「2分後の未来から声をかけてる」こととピックはラグの下にあるよと教え、さらに下に降りてくるように促します。
それを見た店員のアヤ(藤谷理子)やお客さんたちが騒ぎ始め、「これはすごい」とみんなで「2分間時差がある相互通信」のような形でアレコレ始めますが…あとはご覧ください。
オンリーワン
タイトルの「ドロステ」とはドロステ効果のことで、ドロステ効果とは「あるイメージの中に小さなそのイメージ自身が描かれていることでさらにその中に小さなイメージが描かれ…」を繰り返すもののことだそうです。
元々はオランダのドロステ社が販売していたドロステ・ココアのパッケージ(映画にも出てきます)が由来らしいです。もっと学術的な名前なのかと思ったら意外と身近なネーミングでした。
映画では割と早い段階で「2分前のモニター(自宅のiMac)を現在のモニター(カフェ設置)の向かいに置けば、鏡合わせの形でもっと先の未来が見えるようになるのでは」という気付きによって対向して置かれることになり、ドロステ効果を発揮することからこのタイトルの意味がわかる形になるわけです。
iMacの電源ケーブル長すぎじゃない? とかその他の周辺機器まるで繋げてないの? とか細かいことが気になりますがそういうのは考えないで観ましょう。
かなり面白かったものの正直物語そのものについてはあんまり書くことのない映画で、平坦に流れていったらさして面白みもない話だと思うんですが、それが「時間差のやり取り」が加わるだけで抜群に面白くなるすごさ。
その場その場での「2分後と2分前」のやり取りを観ていくだけで話が進んでいく不思議な映画です。
便宜上「2分後と2分前」と書いていますが、ご承知の通り合計4分の時差があるわけではありません。部屋にあったiMacの方から観ると「今から2分後」、店にあったモニターの方から観ると「今から2分前」が見え、やり取りができるという形。
その形式はすぐ理解できるんですが、なにせ「今と過去」「今と未来」「今と過去と未来」が同時進行していく上にひとかたまりがたった2分間なので、理解する間もなく次に進んでいく感覚があり、非常にせわしなく理解しづらい故に難しさも感じるお話でした。なのであんまり構造にまで目を向けずに流れている話をただ浴びるだけで良いような気はします。
途中、セリフにも出てくるこの映画のキャッチコピー「時間に殴られる」というのは本当に言い得て妙で、もう何が何やらわからない状態で時間にボコボコにされてるうちに話が進んでいくんですよ。これは他の映画では味わえない、オンリーワンの魅力だと思います。
「リバー、流れないでよ」は2分間の“ループ”だったので、繰り返すことで理解が進む=わかりやすさがあったと思いますが、こちらは2分間のループではなく反復横跳びみたいな話なのでその分ややこしく感じられますが、しかしそれでも話を成立させる技量が本当にすごいなと思います。
上に「メメントっぽさも感じる」と書きましたが、「メメント」は例えば10分のシークエンスを観たあとに20分前に戻って次の10分を観る、みたいなお話でした。そんな感じの入れ子構造を感じる話なんですよね。
で、「メメント」を観たときに「これ作った人どんな頭してんの!?」と衝撃を受けたんですが、それと同じような感覚も覚えたんですよ。「これ作った人、天才じゃん(あと変態)」っていう。
なので監督もそうですがそれ以上に脚本であり劇団主宰でもある上田誠さんは、もしかしたら和製ノーランになれるのでは…? と思います。コメディ専門のノーラン。
「リバー、流れないでよ」も面白かったんですが、衝撃度合いで言うとこちらの映画の方がはるかに上で、日本でもこんな変態映画作る人がいるんだ、という驚きと喜びに身を包まれましたよ。しかもコメディでやってくれるのがすごく良い。
次回作は劇場で
たった1時間ちょっとという短さもあって非常に観やすく、ちょっと暇だぜってときはぜひ差し込んで観ていただきたいところ。
今までに作られた2本で面白い映画を作る人たちということは十分認識できたので、次の作品はぜひ劇場に行って観たいですね。近くでやってくれるかな…。
この映画が2020年、「リバー、流れないでよ」が2023年なのでもうそろそろワンチャン…?
強く期待して待ってます。よろしくどうぞ。
このシーンがイイ!
ラストシーン、妙にリラックスした感じでとある2人が会話するんですが、そこがなんかすごい良かった。なんでかわからないけど。一気に距離が縮まった感じもして。
そこで劇的な展開に行かなかったのも◎。
ココが○
やっぱりアイデアでしょうね、これは。ここまでアイデアが強い映画もなかなかないです。本当によく「2分後が映るテレビとのやり取り」で話作ろうと思ったよな…すごすぎますよ。
あとは撮影。「バードマン」のように全編1カットのように見える作り、さらに2分の縛り付きでこれですからね…。おまけに撮影期間も2週間かかってないそうで…恐ろしすぎる。しかも全編iPhoneで撮影したっぽいんですよね…これも衝撃。
ココが×
なにせ劇団を中心とした映像化作品のせいか若干セリフが演技臭い感じがあり、そこは少し惜しいなと思うんですがまあこのアイデアの前においては些末な話ですよ。
ただ演技とセリフがもう少し自然だったらもっと良かったなぁ、と好みの問題です。
MVA
劇団メインなので「リバー、流れないでよ」とキャストもほぼ被っていますが、あっちで主役だった藤谷理子さんがカフェの店員で普通にかわいかったです。(感想)
ということで今回はこちらの方。
土佐和成(カトウ役)
主人公。カフェの店長。
やっぱりちょっと大げさな演技の方が多い中、主役でありながら最も脱力感ある演技が良かったですね。あと不貞腐れちゃったりとか。


