映画レビュー0861 『ミルクは白く、血は赤く』
たまたまですがラブコメ続き。そして今回もまたネトフリ終了間際シリーズですよと。
ミルクは白く、血は赤く
真っ直ぐな恋愛を真っ直ぐ描きすぎて意外性が無いのが辛い。
- ややチャラ兄ちゃんが愛する人の病気を契機に成長していく青春ラブコメ
- 病身の彼女はなかなか振り向いてくれないが…?
- イタリアらしいオシャレな雰囲気と色彩がまぶしい
- しかしすべてにおいてフリがご丁寧すぎる
なかなか評判が良さげで、おまけにヨーロッパの映画なのでこりゃちょっと期待できそうやで、と観てみたものの…残念ながら僕には合いませんでした。申し訳なさの極み。
主人公のレオは先輩女子のベアトリーチェに恋心を抱きつつも話しかけたこともなく、いよいよ意を決して話しかけるぞ…! と親友のメガネ君を引き連れて行くも勇気が出ずに撃沈、どうしたらこの恋は実るのか…とお悩みのご様子。
勉強やら代筆やらいろいろ世話になっている異性の親友・シルビアに手伝ってもらって電話番号をゲットしたりしつつもなかなか近付くことができず、今度は彼女が映画館にいるところを狙って偶然の出会いを演出し、ようやく初会話に成功、これで段々距離を詰めていけるぜ…! と思っていた矢先に「ベアトリーチェはガン(白血病)らしい」と辛い情報が。
看病のため彼女の自宅に押しかけ、徐々に交流を深めていく二人。果たしてレオの恋愛は成就するのか、そしてベアトリーチェは助かるのか…ってなお話でございます。
余談ですが「ベアトリーチェ」って「イル・ポスティーノ」の奥さんも同じ名前でしたね。イタリアにおける美女の象徴的な名前なのかな…。
物語の基本はレオの片想いが実るのかと、ベアトリーチェの病気の行く末、そしてレオの親友なんだけど密かに思いを寄せているシルビアという三角関係。
高校生らしく学校のシーンも多いし、まあなんというか「青春だねぇ」感がほとばしっていて羨ましいやら眩しいやら。こんな学生生活送ってみたかったぜ…!
ただまず気になったのが、主人公レオの性格。子供(というかこっちの感情的には“ガキ”が近い)と言ってしまえばそれまでですが、まあ生意気だし謙虚さが無いしで好きになれなかったんですよね。いわゆる「主人公に感情移入できなかった」最たる例的な。
この手の映画は成長物語的な意味合いも含まれているので、「まあ後半に向けてイイやつになるんだろうな」と思って観てましたがそうでもなく、割と最後までブレずに自己中なガキのまま。ほんっと嫌いだった。レオ。だから応援もする気になれないし。
ま、でもこの辺は好みの問題だから良いとしましょうよ。それより映画的に一番気になったのは、とにかくフリが丁寧過ぎるんですよね。
最初は明かされていない「シルビアが実はレオに惚れてる」雰囲気もすごくあからさまに「私本当はレオが好きなのに」ってシーンを挟んでくるし、ベアトリーチェの行く末もとにかくわかりやすくフリを用意してくれるので意外性がまったくないのが辛いところ。
前は「フリがなさすぎて良くない」とか書いたりしててどっちやねんと思われそうですが、要はバランスの問題です。
きっとこの映画は、この登場人物たちと同年代の人たちが観るべき映画なんでしょうね。かなり対象年齢が若い映画だと思う。ひねくれた映画好きのおっさんにはまったく響きませんでした。他のいろんな映画を観てるともう嫌って言うほどその後の展開が見えちゃうんですよね。だから全然興味をそそられなかった。
描かれる物語自体はストレートでよくわかる…んですが、見せ方もストレートすぎるから「これこうなるんでしょ」をそのまま追ってくれちゃうので面白味に欠けるし、その上主人公の性格が好きじゃない…とくるとなかなかしんどい。
おまけに…これ結構デカいと思うんですが、個人的な好みを除いて普通に観たとしてもベアトリーチェよりもシルビアの方がかわいいんですよね。マジで。
だからもう5分の3ぐらいはずーっと「もうシルビアで良いじゃねぇかよ」「シルビアのどこが不満なんだよ贅沢野郎が」「都合のいいときだけシルビア利用してんじゃねーよ」とどんどんレオに対する嫌悪感が増していくだけという状態。
その上ベアトリーチェの前ではいい男でいようとがんばる、その姿がまた嫌いでしたね。
いやわかるんだけど。恋に焦がされ振り向かせようと熱心にベアトリーチェのために行動する、それはわかるんだけど…もうちょっと「ベアトリーチェ以外」にも優しくして欲しい。「ベアトリーチェ以外」には勝手で傲慢な振る舞いをしていながら、「振り向いてくれ助かってくれ」は都合良すぎる。世の中そんな甘くねーよ。
と結局主人公に対する不満ばっかり書いてますが、やっぱりそれが一番大きかったのかな。
ストレートな見せ方に好きになれない主人公、となるとやっぱりこの映画を好きになるのは難しい。
思わせぶりなタイトル(実際イタリアにはこういう格言というか言葉があるらしいですね)よろしく、色彩豊かで映像としてはなかなか良いものがあったと思うんですが…もうちょっと感情的にレオの背中を押したくなるようなものにして欲しかったなぁと思います。なんならメガネ君の方を応援してたし。もう全然。シルビアにも「レオなんてほっとけよいい男他にいるって」ってすごく言いたかった。
ただフィルマークスなんかの評判を見る限りでは、例のごとく僕のほうがひねくれていてダメな見方をしているっぽいので、普通の人であればもっと感動できるのかもしれません。ただ僕はダメでした。くどいようですが。
一つ、「あの映画っぽいなぁ」とある映画を連想したんですが…それはネタバレ項で。
このシーンがイイ!
これはもう断然「カンニングを手伝ってくれるシルビア」で決定ですね。このシーンだけは最高中の最高でこのシーンがあったがために観てよかったと思いましたよ。全男子憧れの学園生活に違いない。
ココが○
真っ直ぐで青春らしい爽やかさがあるお話なので、ひねくれる前に観ればグッと来るでしょう。ひねくれてしまったおっさんはいろいろ考えちゃって楽しめませんでした。先を読んじゃうのも悪い癖。
ココが×
真っ直ぐすぎる作り、主人公の性格。
でも一番はきっと、ネタバレ項に書いた内容だと思う。「どうなるんだどういう選択を取るんだ…!」って思わせて欲しい。狭めちゃうのは作り手の逃げでしょう。
MVA
もう開始10分で迷わずこの人以外いねーなと思いました。
アウローラ・ルフィーノ(シルビア役)
情報が少ないんですが調べましたよ。この映画当時、24歳ぐらいだったようです。でも高校生役。
まあなんつってもね、やっぱりカンニングのお手伝いからして魅力がほとばしってました。超かわいい。っていうかマジでなんでベアトリーチェなの? シルビアのほうが全然良いじゃん。
とか言っちゃうのは無粋なこともわかってます。キャスティングの問題でしょう。ただベアトリーチェはベアトリーチェで薄幸そうな雰囲気が出ててよかったとは思う。
この人はイタリアの健康的美人、ってところでしょうか。かなりタマラン指数高かったと思いますね。とても良かったです。