映画レビュー0736 『ブラック・スキャンダル』

これねー、劇場に観に行くつもりだったんですけどねー。結局行けず、延び延びになってご紹介です。

ネトフリにあるじゃねーかー! と喜んでいたのも束の間、配信終了その日になってようやく観ました。

ブラック・スキャンダル

Black Mass
監督
脚本
マーク・マルーク
音楽
公開
2015年9月18日 アメリカ
上映時間
122分
製作国
アメリカ

ブラック・スキャンダル

イタリアンマフィアを根絶するため、FBIのコノリーは幼馴染で親友の兄でもあるボストンのチンピラ、ジェームズ・バルジャーに情報提供を依頼、その見返りとして彼を捜査対象にしないという“協定”を結ぶ。バルジャーからの情報を利用しFBIでのし上がっていくコノリーと、“免罪符”を手に組織を大きくしていくバルジャー。二人の協力関係は盤石に見えたが…。

崩れる階段を上る二人。

8.0

世間的にはそこまで評価が高くないようなので、おそらく期待ほど面白くないんだろうなーと思いつつ観たんですが…これがなかなかどうして良い映画でしたね。面白かったです。

ただ僕が惹かれた予告編のブラックコメディ的な雰囲気はまるでないし、3人主役のようなイメージだったのが実際はカンバーバッチ演じるバルジャー弟は少し控え目の登場だしで、かなり予告編の罪が重い映画なのは間違いないでしょう。

主人公は二人。

一人はジョニー・デップ演じるジェームズ(ジミー)・バルジャー。元々はボストンで仲間たちと行きつけの店にたむろするチンピラ程度の男で、マフィアというほど強大ではない感じ。ただそれなりに地元では“顔”のようで、まあよくいるワルって感じでしょうか。

もう一人の主人公はジョエル・エドガートン演じるジョン・コノリー。彼は将来を託望されているFBIの敏腕エージェントと言った様子。

そのコノリーの親友であり、ジミーの弟でもあるのがベネディクト・カンバーバッチ演じるビリー・バルジャー。彼は物語開始時点で何かしらの(忘れた)議員というすでに大物になっています。

予告編的にはこの3人が主役っぽかったんですが、最初に書いた通りカンバーバッチの出番は少々控え目、基本的には他の2人を中心に展開する物語です。

FBIのコノリーは…多分配属が変更になった的なイメージだと思うんですが、そこで「イタリアンマフィアを一掃する」プロジェクトのようなものに入ります。しかしFBIは彼らの本拠地すらつかめていない状況で打つ手がない…ということで、ここでうまく立ち回れば自分の立場が上がっていくと踏んだコノリーは、幼馴染で「裏社会に通じている」ジミーに“協定”を持ちかけます。

その協定とは、ジミーは情報提供者としてFBIにイタリアンマフィアの情報を流し、代わりにコノリーはFBIからのジミーに対する捜査を押しとどめるようにする、というもの。

ただ、コノリーはFBIに隠れてそれをするわけではなく、一応上司にもお伺いを立て、「チームとして」その方針を取るというプロセスも踏んでいるので、必ずしもコノリー1人が汚れ役になっているというわけでもなく、言ってみれば「使えるやつを紹介してやるからそいつのことは大目に見てやってくれよ」みたいな感じでしょうか。

かくして協定を結んだ両者は、狙い通りそれぞれの目標を達成していきます。

ジミーはライバルであるマフィアの力をFBIによって削いでもらった上に違法行為の金稼ぎもやりたい放題、コノリーはジミーからの情報を元に捜査官としての名を挙げ出世街道まっしぐら。

順調に見えた二人の協力関係は、はてさてどのような結末を迎えるのか…というお話です。

ちなみにこの両名及びビリーその他主要メンバーはほぼ実在する人物で、物語自体も実話ベースとのこと。

物語はジミーの部下が取調べを受け、「FBIのためにすべてを証言する」と宣言するところから始まります。そう、つまりもう彼らの企みは暴かれたところから過去を振り返る形で展開するわけです。つまり二人の協力関係は破綻を迎えることがわかった状態でのスタートになるんですが…これがね。

ありがちな流れではありますが、意気揚々と上り詰めていく二人の姿に影を落としていて、その危うさ・儚さみたいなものが裏にある感じがすごく良かったですね。調子乗ってるけどいつか終わりが来るんだぜ、みたいな。

当然本人たちはその時に堕ちていく自覚なんて無いとは思いますが、傍からすればその結末が見えているだけに、なんて言うんですかね…段々と後ろから崩れていく階段を気付かずに登っていく二人の姿を見ている感覚というか。

後戻りはもちろんできないし、立ち止まっても堕ちていくだけというものすごく危険な階段をある種無邪気に登る二人の姿を観て、なんとも複雑な思いを抱くビターな味がする映画でした。

そう、今良いこと言ったね?(聞くな)

ビターなんですよ。この映画。重いし苦いの。

でも予告編だと軽いし笑えそうなんですよ。でも全然笑えないんですよね。実際は。

これは本当に予告編詐欺だし、これに騙されて「なんだよ全然思ったのと違うじゃねーか!」って怒っちゃう人がいてもおかしくない気がします。

完成度その他全然違いますが、路線としてはむしろゴッドファーザーとかあっちに近いものを作りたかったんじゃないか、っていうぐらい真面目に重く、ちゃんとした犯罪・マフィア映画を作っている感じで。それ故世間的な評価が低いのかな、という気もします。

僕としてはやっぱりマフィアモノというとスコセッシ辺りが浮かぶんですが、この監督はああいう路線とはまたちょっと違った形で実在するマフィア(とFBI内部の問題)を描きたかったんじゃないかなぁという気がしました。

思ったよりちゃんとマフィア映画してたし、思ったより社会派っぽくもあったし。これは僕としては嬉しい誤算というか、自分にあった作りだったと思います。

ただ、そういう重めの真面目な実話系映画というポジションでありつつ、残念ながら…主演の二人がちょっとモノマネ感が強くてですね。

70〜80年代という時代+見た目よりも歳を取った人物としての演技を作り込んだ結果、モノマネっぽいなという感じが少々残念ではありました。

それとやっぱりカンバーバッチ演じるバルジャー弟の存在がややもったいない。

実話なだけに仕方のないところですが、彼は別に二人の協定に深く関わってくるわけでもないし、要所要所で顔を見せる割には「関わってくれるな」的に傍観者の立場を決め込むだけ、という小物感だけが際立っていて、社会的には一番大物でありながら劇中での存在感は「いなくてよくね?」レベルなのがなんとも…。

おまけにカンバーバッチもほんのりモノマネ感出ちゃってたし、これは演者の問題というよりは演出の問題なのかな…。

とは言えですね。

次第に力を増していくマフィアと、FBI内部のモロモロはよくある光景ながらやっぱり面白かったし、実話ベースということも手伝って、思っていたよりも良い映画だなという印象でした。

もう少し当事者たちの葛藤とかも見える深みがあればな〜とかいろいろ気になる点はありましたが、少し重めのマフィア(+FBI)映画がお好きであれば、それなりに楽しめるんじゃないかと思います。

ネタバレ・スキャンダル

いくつか気になった点としては。

「子供と母親を失ってジミーは変わった」的なナレーションが入る割にあんまり前と変わって無くね? っていうのがちょっと惜しいというか。もうちょい前後で落差を感じる描き方にして欲しかったなーというのが一つ。

それと奥さんとも別れたと思うんですが、その辺も特に触れられてなかったのがちょっと違和感ありましたね。別れたよぐらいの言及はあっても良さそうなのに。

あとコノリーが出世してるっぽいのはわかるんですが、もうちょい「偉くなったぜ」的な話が挟まってもいいのかな、と。FBIの内部は序列がサッパリわからない感じだったので、あの辺りもう少しわかりやすくなっていたら、もうちょっと登っていく高揚感みたいなものが出たんじゃないかなという気がしました。

それと最終的に「もうダメだ」ってなった時の決定打みたいなものがあんまりビシっと(映画的に)キメてこなかったのもちょっと残念。新聞発表がそこだったと思うんですが、さらっと出てきてなんとなく「そろそろだな」感を出しつつ静かにラストに向かった印象で。それが良い、っていう人もいると思いますが、もうちょっとビタッと決めて欲しかったような気がしました。僕は。

このシーンがイイ!

ジミーを避けて自室にこもるコノリーの奥さんの元にジミーがやってくるシーン。あそこはジョニデもさすがの演技、たっぷり見せてもらいました。

ココが○

やや深みが足りないとは言え、実話系マフィア映画としてはしっかり娯楽として成立しているというか、早い話が飽きなかったですね。思ってたよりも全然良かった。

やっぱり主人公二人の「危うい感じ」が惹きつけてくれたのかな、と思います。

ココが×

まあR15のマフィアモノなので当然ですが、やや残酷な描写はあります。ただグロいというほどではないので、それなりの大人が観る分には気にならないでしょう。

あとはやっぱりビリーの存在だなぁ。いなきゃいけないのはわかるんだけど、いる割には食い込んでこない感じが…。

MVA

主演二人のモノマネっぽさはちょっと残念でしたが…その分脇役陣がきっちり〆てくれていたと思いますね。

特にFBIの面々、ケヴィン・ベーコンにデヴィッド・ハーバーアダム・スコットの3人が地味に良かった。

おなじみピーター・サースガードの小物感も相変わらず最高でたまらなかったんですが、今回はこちらの方にしましょう。

ロリー・コクレーン(スティーヴン・フレミ役)

ジミーの右腕的存在。

ジミーの殺しの場面に大体同席しているんですが、その時の表情がいろいろと感じさせてくれていいんですよ。何とも言えない表情をするんですよね…。すごく良かったと思います。

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