映画レビュー0901 『ブルーバレンタイン』

ネトフリ終了間際シリーズですよぉー奥さん。

この映画は結構タイトルを聞く機会があったような気がするんですよね。なので他にも観たい配信終了映画がいくつかあった中、選んでみましたが…。

ブルーバレンタイン

Blue Valentine
監督
脚本

デレク・シアンフランス
ジョーイ・カーティス
カミーユ・ドラヴィーニュ

出演

ライアン・ゴズリング
ミシェル・ウィリアムズ
フェイス・ワディッカ
マイク・ヴォーゲル

音楽

グリズリー・ベア

公開

2010年12月29日 アメリカ

上映時間

114分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS3・TV)

夫婦のグラデーションを目の当たりにする辛さ。

8.5
どこにでもいる夫婦のリアルな今、そして馴れ初め
  • 不満を感じつつもかろうじてつながっている夫婦の物語
  • 馴れ初めと家族の成り立ちも描き、今とのギャップにめまいがする
  • どちらが悪いとも言えないもどかしさが伝える生々しいリアリティ
  • 夫婦二人の役作りもお見事

あらすじ

タイトル通り(?)とてもブルーなお話ですねこれは…。まあ一応ネタバレしないように書くつもりではあるんですが、もう最初っから不穏な空気が漂っているのでさすがにウキウキモードで書けない映画ではありますよ。

結末がどうなるのかはお楽しみ、ってことである程度書いちゃいますが…ただこれは結末を知っていても観るべき映画なのかもしれない。

主人公はライアン・ゴズリング演じるディーンと、ミシェル・ウィリアムズ演じるシンディの夫婦。小学校低学年ぐらいの娘・フランキーと3人家族です。

悪ふざけする娘と旦那に対し、寝起きとは言え素っ気ないシンディの姿から、まあなんとなくラブラブ夫婦ではないんですね感はのっけからよくわかります。

ディーンは娘を抱える場面でもしょっちゅうタバコをスパスパ酒もグイグイ、髪の毛もボサボサでカタギ感が薄い。見た感じペンキ職人っぽいので一応カタギのようですが。

ちなみに頭髪もかなり後退してきているご様子で、これはおそらく毛を抜いてヤサグレ感を出してきてますね。体張ってますライアン・ゴズリング。

一方奥さんのシンディも常に不満顔で笑顔も無く、過去シーンと比べるとちょっとぽっちゃりしているような…? ファックシーンもきっちりご登場するし、これまた体張ってますねミシェル・ウィリアムズ。

物語開幕で、家族が大切にしていた愛犬が行方不明となり、「何をやってもうまくいかない」ような悲しい状況の一家。なんとかしたいと娘を預け、夫婦水入らずで過ごそうとする旦那・ディーンですが、まったく乗り気じゃない妻・シンディ。

オーバーラップするように描かれるのは二人の過去の馴れ初め。ディーンもきちっと髪もセットし「いつものライアン・ゴズリング」。ミシェル・ウィリアムズもキラキラJDでかわいさ満点。

そんな二人が出会い、ラブラブだったはずなのに…少しずつ距離が開いていった二人、果たして夫婦はどうなるのか…というお話です。

恋愛版「ゴッドファーザー PART II」

ドキュメンタリーっぽさを出すためか、手持ちカメラ多用で登場人物に寄りすぎる傾向があり、思わず「嬉野さんかよ!(どうでしょう感)」と突っ込みたくなるような映像が多くて、その辺イマイチ嫌悪感…とまでは言いませんが、少し嫌な気分になったんですが、それもきっと狙ってやってるんでしょうね。

現在のシーンは終始不穏でハッピー感がまるでなく、観ていてイライラするようなカメラワークなんですよ。一方過去のシーンは観ていて恥ずかしくなるぐらいに恋愛映画していて、このギャップがまあ何とも酷な感じ。

あからさまに「これは現在です、これは過去です」と説明は無いんですが、もう見るからに二人とも雰囲気から表情からまるで違うので、いちいち言われなくてもわかるよね感がすごい。

何がすごいって「言わなくてもわかるぐらいスレちゃったんですよ」って見せ方がすごいしエグい。

鑑賞後にふと思ったんですが、この「幸せな過去」と「うまくいかない現在」のギャップ、どことなくゴッドファーザー PART IIに通じるものがあるなと。

あの映画って過去のヴィトーの人格者っぷりと、現在のマイケルの人間不信っぷりがすごく対照的に映るじゃないですか。その対比でより残酷さが増すような作りで。

まさにあれの恋愛版というか、過去のキラキラしていた頃の二人と、輝きを失って現実に引き戻された二人の姿がもう本当に残酷に描かれていて、それがすごくやるせないんですよ…。

夫婦の間に横たわるいくつものピースが観客を悩ませる

もうここまで来ちゃったらムリじゃね…? 感が漂う中、それでもなんとかもがこうとディーンが一計を案じるわけですが、しかしその方向性もズレちゃってて悲しい。そうじゃねぇだろ。そこじゃねぇだろ。

でもねー、場所の問題でもない気がする。ここまで来ちゃうと。どこに行っても厳しいような…。

おまけに道中の立ち居振る舞いもマズかったりして、なかなかうまくいかないよねという二人が観ていて辛い。

ただ…なんとなくですが、やっぱり一般的なイメージからしても、またディーンのヤサグレっぷりからしても、普通に「旦那がクズだからこうなったんでしょ」と思いがちなんですが、それが…過去を見せていくことで徐々にそうでもなさそうだぞと思わせる作りが上手いし、これまた残酷。

現実は(って創作だけど)そんなに単純な話ではなく、夫婦の間にも“善悪のグラデーション”が存在するんだな、と当たり前だけど見落としがちなことに気付かされてくれるお話ですね。

ディーンはディーンで頑張ってるし、報われない悲しさがある。シンディもシンディで頑張ってるんだけど、そうなっていっちゃうのも頷ける。

これ、もしかしたら人によっては「男が100%悪い」「女が100%悪い」って捉えちゃってもおかしくないような、どっちの良い面も悪い面もきっちり描いているんですよね。

ある一か所を切り取れば、ディーン or シンディが悪いという見方は成り立つんですよ。なので観た人によって、その「切り取ったあるエピソード」の比重が重ければ重いほど、もうその時点でどちらかが一発アウトと感じられてもおかしくはないんでしょう。観た人が「これやっちゃもうダメでしょ」と感じるエピソード次第というか。

しかしその要素はいくつも重なっていて、夫婦の間に横たわるその様々なピースを見つめていくと、きっとどっちが悪いとも言い切れないし、でもこうなるのは不可避なんだろうなという悲しさがそこにあるわけで…。これはとても辛い。

まさにこれから結婚しようという二人にこそ観て欲しい

僕は独身なのでわかりませんが、きっと夫婦は「勝負をつけたらいけない綱引き」みたいな面があるんでしょう。

どちらかが引っ張りすぎるとそこで終わっちゃうし、押して引いてバランスの良い状態を保てるように、双方が努力しないといけない。

その夫婦のリアリティを感じさせる意味で、この映画ほど生々しく胸に響いた映画は今まで観たことが無かったですね。

正直好きな映画かと言われればそうとは言えないし、カメラワークにも不満はあるしでもう一度観たいかと言われると微妙なんですが、ただ夫婦の内実を描いた映画としてはかなりの傑作ではないかと思います。あとは好き嫌いの問題かなと。

僕も観終わった時は「うーん…」って感じではあったんですが、振り返ってまとめるうちに…やっぱり良い映画だったなと改めて思いました。

これね、今まさに「結婚しよう!」ってキラキラした夫婦は絶対二人で観た方が良いと思う。「うちらはこんなんじゃないもんねー」とかウキウキスルーしちゃうかもしれませんが、その時はその時で俺は知らん!

初心忘るべからず、しかし言うは易く行うは難しってやつですね…。とても示唆に富んだリアルなお話だと思います。

その時が来るのか甚だ怪しいところですが、僕もこの話は心に留めておきたいと思います。

ネタバレンタイン

タイトルの「ブルーバレンタイン」ってあのラブホに行った日のことなんですかね? 部屋もブルーだったし、ってそんな単純な理由なのかよ。

僕はあの日にうまく挽回してくれるもんだとばっかり思っていたんですが、ことごとく裏目って結局修復不可能になっていく二人の姿は…痛々しくて観ていられませんでしたよ。

どっちが悪いと決めるような話でもないんですが、僕としては端的に言うと「結婚まではシンディのせい、結婚後はディーンのせい」だったのかなと思います。

そもそも論になっちゃいますが、まずフランキーを身ごもる経緯がひどい。ヤリチン野郎(勝手な印象)に中出しさせてる時点でアウトですよ。

妊娠したら彼と結婚してもいいと思っていたならまだしも、中出しで怒って別れるまでに至っちゃったわけでしょ? そりゃ避妊はちゃんとしないと…っていうのがまず1点。

で、そこに救世主のように現れたディーンを選ぶわけです。

彼はヤリチン野郎(こいつほんとクズだな)にボコボコにされるし、自分の子どもじゃなくてもちゃんと育てると言ってくれてるだけに、こうなっちゃったらもう彼を選ばない方が人としてどうなんだみたいになってきちゃうので、この決断は仕方がないと思います。このタイミングで妊娠しちゃって、客観的には自分と不釣り合いな人を選ぶことになった、っていうのは。

しかし結婚後はディーンが仕事を変えたせいかシンディの「こんなはずじゃなかった」が増幅していくわけですよね。

ディーンの転職後の仕事についての描写が殆ど無いのでなんとも言えない部分はありますが、きっと職場環境のせいもあって段々とディーンはみすぼらしくなっていったんでしょう。「朝から飲める」環境もそれを手伝ってしまった、と。

結婚前の言葉通り、娘に対しては本当のお父さん以上に愛情を注いでいるようでそこはとても立派だと思いますが、ただ「旦那も娘も同じ子ども」のような幼さを感じさせる状態はやっぱりシンディにとってはストレスになっただろうし、旦那に対する「そうじゃないんだよ」という不満は募るばかりだったんでしょうね。

そんな彼女の態度を見て、ディーン自身も彼女への当たりが強くなる…という悪循環。この辺すごくリアルですよね、やっぱり…。こういう夫婦多いんだろうな…。

そこで娘のために踏ん張れるか否か、もうそこでしかないんでしょう。そこでシンディは踏ん張れなかった、それだけと言えばそれだけの話です。

そこで踏ん張れてたら、歳をとってから「あの時は本当に夫婦の危機だったけど、結局なんだかんだやって来れたわ」みたいに振り返れるんでしょうけどね。

でもまだまだ若くて綺麗なシンディは“次の可能性”に賭けたくなったんだろうし、その呼び水になったのがもしかしたらヤリチン野郎との再会(彼と一緒になるという意味ではなく、自分がまだイケると確認できる出来事)だったのかもしれません。ううむ…すべてはつながっている…深い。

この話に解決なんて無いんでしょうが、やっぱりシンディが「自分の子どもじゃなくても育てる」というディーンの言葉に甘えちゃいけなかったんでしょう。これもまたすごく酷な話ですけど…。

結婚後のディーンの(見た目以外の)変貌っぷりはあまり語られない部分だったのでわかりませんが、そこに埋めがたい価値観の差があったとすれば、やっぱり「ディーンと結婚したこと自体が失敗」なんだろうな…。でもそんなの結婚前にわかるか…? やっぱり結婚ってハードモード過ぎないですかね…。

ディーンはディーンで、最後までシンディもフランキーも愛していたようですが、であればもっと自分を律する、ある意味では「自分を愛する」方にも力を注ぐべきだったのかもしれません。

シンディに「才能があるのになんでそうなったのか」というような叱責を受ける場面がありましたが、シンディとしてはやっぱりしんどくても夢を追うような人間でいて欲しかったんでしょう。

ただそうなったら「ちゃんと稼いでくれない」って不満も出てきそうだし、結局この二人はどこまで行っても全部バッドエンドだったのかもしれない…。悲しい。

でもフランキーにとっては良きパパであることは疑いようがないし、母親よりも父親に懐いているエンディングがまた辛いわけで…。

思った以上に「ブルー」な映画でしたねこれは…。後味悪い系に含むべきかもしれない。

このシーンがイイ!

エンディングかなぁ。そこで何を感じたのかを書くともうネタバレになるので書けませんが…。いろいろ感じるエンディングでした。

ココが○

一番はリアリティだと思います。人生ってこうだよな、そんなうまくいかないよな、という説得力。

映画としてはなかなか珍しい話だと思うので、そういう意味でも一見の価値はあるんじゃないかなと。

ココが×

基本的に明るさがなく、カメラ寄りすぎってところでしょうか。

MVA

ほぼ2人の話なので、じゃあどっちにするんじゃいって話なんですが。

上に書いた通り、二人とも体張って頑張ってたし、どっちも見事にそれっぽい演技で文句がないんですが、選ぶとしたらこっちかな。

ミシェル・ウィリアムズ(シンディ・ヘラー役)

ミシェル・ウィリアムズ好きなんですよ。かわいくてミニスカ多いし。(そこ)

今回はおっぱいもお披露目されつつ、くたびれ感も見事に出して、キラキラミシェルとくたびれミシェル、両方全力で見せてくれた素晴らしい演技でした。

いやホントね、よくぞこの二人にやらせてくれたっていう映画でしたよ。やっぱりライアン・ゴズリングもこういう役のほうが良いですよね。ただのイケメン的な役じゃもったいない。某ランドみたいにさ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA