映画レビュー0280 『ブラス!』

少し前のことですが、生まれて初めてめまいを経験しまして。朝ベッドから起き上がろうとしたらクラッと来てそのままベッドにまた倒れ込みました。

一応症状的には軽いらしいんですが、約2週間経つもののまだ横になったり起きたりするときは結構グルグル来ます。怖いですねー。

いきなりのこの酷暑っぷりなので、皆様も本当にお気をつけください。

ブラス!

Brassed Off
監督
マーク・ハーマン
脚本
マーク・ハーマン
出演
スティーブン・トンプキンソン
ジム・カーター
音楽
公開
1996年11月1日 イギリス
上映時間
107分
製作国
イギリス

ブラス!

イギリスの炭坑の町・グリムリーには、長く続く炭鉱夫たちで作るブラスバンドがあった。彼らは順調にブラスバンド選手権を勝ち上がっていくが、勤め先の炭坑が「どうやら閉鎖するらしい」と噂になり始め…。

ほろ苦い涙が流れます。

7.5

どうやら僕は「労働者の応援歌的な映画」とか「“生きてるなぁ”と感じる人生ほろ苦映画」が好きらしいと今年気付いたわけですが、その流れでオススメされた映画がコチラ。

同じイギリス映画でもあり、同じ“労働者生きてる系”でもある「キンキーブーツ」「フル・モンティ」みたいなものを想像していたわけですが、観てみてビックリ、こちらはだいぶほろ苦い映画で。多少のジョークはあるものの、全体的には抑圧されるような重さがあります。

主人公たちは炭坑夫であり、バンドメンバー。「炭坑は閉鎖されるのか」と「バンドは(何らかの選手権的なものを)勝ち残れるのか」の二つの要素でストーリーを引っ張ります。

上に「抑圧されるような」と書きましたが、それはまさにこの「炭坑閉鎖を身近に感じる炭坑夫たち」の感情の投影と言えるもので、映画自体に今の生活の不安定さ、先行きに対する不安を感じさせる暗めの雰囲気があります。“コメディタッチで深刻さを薄めよう”みたいな雰囲気はまるでなく、バンドをやりながら失業の不安と戦う炭坑夫たちの日常を、地味かつ真面目に描いている映画です。

非常に淡々としていて、でもしっかり観られる映画になっているのは、やはりところどころで挟まる演奏の力でしょう。選手権(説明が無いので多分ですが)での演奏というのは緊張感もあり、それだけで惹きつける雰囲気がありました。

自分たちの働く炭坑は廃坑になってしまうのか…という負のベクトルと、バンドはこのまま勝ち続けて優勝できるのか…という正のベクトル、その二つが入り交じっての展開は、ストーリー自体に不思議なバランスを感じさせてくれて、その分しっかり集中して観ちゃうような映画ですね。

ただ、気になる点が何点か。

一つ目は、結構説明不足な点。あまり説明しすぎるのも興醒めですが、この映画は少しぶっきらぼうというか、昭和の親父のような「言葉では言わないから理解しろ」的な雰囲気があります。人間関係とか話の流れとか、割と中間をすっ飛ばして進む印象で、ダニーとフィルが親子だっていうところも、途中で英語の発音から理解したような状態。

もしかしたらちゃんとした説明を見逃してたのかもしれませんが、「選手権で演奏している」ということも、なんとなく観ていくうちに「ああ、試合なんだ」とわかったような感じで、やや丁寧さに欠ける話かな、という気がしました。

もう一つは、最後まで観てわかることですが、やや政治性が強い点。言いたいことはすごくよくわかるし、間違っていないと思うんですが、真面目に訴えたいことを訴えてエンディングに向かっていくので、最後までスカッとした突き抜ける力強さみたいなものが少し物足りなかった印象がありました。

おそらく当時の世相やらなんやらもあったんだとは思いますが、もう少し薄味にサラリと匂わせる程度にしておいて、ストーリー自体はもう少し娯楽に寄せて行った方がもっとグッと来たかもなぁという気がして、そこがちょっと残念でした。

とは言え良い映画であることは間違いありません。こういう仲間、共同体というものが失われつつあるのは寂しいし残念だと思いますが、そういう喪失感みたいなものを伝えてくれる映画ですね。

話としては、結局「フル・モンティ」同様、彼らが報われたかというと、劇中でそこまでは語られていません。それはそれでいいんだと思いますが、その分また、流れる涙がほろ苦かったな、と。

そういう終わり方を含めて、この手のイギリス映画には「人生甘くないよね」感があって好きなんですが、同時代の娯楽系イギリス映画の代表作、ピアース・ブロスナン版007なんかは「結局最後はいい女抱いていい思いしちゃうぜ」的な映画なだけに、同じ国でこんなに違うのもそれはそれで面白いなぁと思いますね。

このシーンがイイ!

序盤の「並び立ちション」も好きだったんですが、やっぱりメット被っての演奏会が一番良かったかなぁ…。

あ、あと地味ですが「毎日車に5人乗って仕事を行き来する」っていうのも、古き良き共同体っぽさが感じられて好きでした。

ココが○

実話に着想を得て作られた映画らしく、やっぱりリアルですよね。

(追い込まれていく部分含めて)こういう町ってきっとたくさんあっただろうし、今はもうほとんど無くなってるんだろうと思うと、やっぱりほろ苦さが残るなぁ、と…。

ココが×

邦題に謎のビックリマークが付いちゃってますが、そんな勢いとは裏腹に、本当に意外なほど重いです。娯楽的人間ドラマかと思いきや、どちらかと言うと社会派に近い気がします。ただこれは必ずしも“×”とは限りませんが…。

それと、本編とは関係ないですが、DVDの質がよろしくないです。映像も綺麗じゃないし、音声もステレオのみ。

「フル・モンティ」はこの映画の翌年の作品とは思えないほど綺麗にリマスタリングされたブルーレイだったので、せっかくいい映画なんだからもうちょっと「観てもらえる」環境を用意してあげてほしいな、と思いますが…まああっちと比べると地味さもあって、なかなかそんなコストはかけられないんでしょうね…。

MVA

出たての頃のユアン・マクレガーは、ちょっと青臭い雰囲気が役にぴったり。でも良かったのはこっちかなぁ。

スティーブン・トンプキンソン(フィル役)

家財を取り押さえられ、奥さんと子供には出ていかれ、父親は倒れ…と本当にいいとこなしのお方。とあるシーンでは可哀想過ぎて気持ちがわかりすぎて泣きました。副業がピエロというのもまた哀愁があっていい。

その起伏のある人生を演じた姿は、悲壮感すら感じさせてくれました。いい演技でしたねぇ…。

それとお父さん役のピート・ポスルスウェイトも良かった。「バンドだけが生きがい」の生真面目な雰囲気が役にぴったり。この親子の配役はお見事でしたね~。

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