映画レビュー0552 『ブリッジ・オブ・スパイ』

今週は、立て続けにデヴィッド・ボウイアラン・リックマンの訃報がありました。奇しくもどちらも69歳。早すぎる…。

デヴィッド・ボウイはもちろんミュージシャンですが、あまり洋楽を聞いてこなかった(その分最近興味がありますが)人間としては、デヴィッド・ボウイは「プレステージ」のニコラ・テスラであり、ダンカン・ジョーンズのお父さんという映画経由の印象も強いです。

アラン・リックマンに関しては、もう誰もがハリー・ポッターのスネイプ先生を想像すると思いますが、その他にも1作目のダイ・ハードの悪役をやっていたりして、これまた映画ファンにはとても大きな存在です。

最近監督作品を作り上げたと予告編で観ていたので、これからもっと活躍するんだろうな…と思っていた矢先の訃報。とても残念です。世界の端の端ではありますが、ここでお二方のご冥福をお祈りします。

ちなみに、僕個人としてデヴィッド・ボウイと同じポジションにいるのがスティングです。ミュージシャンだけど、映画俳優として見てしまう人。スティングにはデヴィッド・ボウイの分も長生きしてもっと活躍して欲しいと願ってやみません。

さて、今日の映画は早速今年2本目の劇場鑑賞となりましたこちら。以前ならこの手の映画はソフト化を待ってたんですが、劇場に行って観るぞ、って思えるようになったのは大人になった証拠ですねこれは。

大人ですわ。立派な。オッサンですわ。

ブリッジ・オブ・スパイ

Bridge of Spies
時は冷戦下、FBIに逮捕されたソ連スパイ・アベルの弁護を頼まれたドノヴァンは、世間の反発に合いながらも自らの正義を貫き、減刑に成功する。その後、ドノヴァンはソ連に捕まったアメリカ軍パイロットとアベルを交換する交渉人として指名され、最も東西対立が激しい東ベルリンへ単身向かうのであった。

政治サスペンス好きにはヨダレもの。

8.5

もはや今の若い人なんて東西冷戦とか全然ピンと来ないんでしょうね…。

さすがにこの頃はスパイ花盛り、この手の話に事欠かないんでしょう。実話を元にしたスパイ捕虜交換映画ですが、ただ実際のところは“終始スパイ交換”というわけでもなく、最初は「ソ連のスパイであるアベルが捕まり、その弁護と裁判を通して二人が信頼関係を構築する」過程、そしてその直後に今度はアメリカ軍パイロットが捕まってアベルとの交換に駆り出されるドノヴァン、という感じの2部構成的な雰囲気。そのためもあってかやや長めの上映時間となっております。

上映時間に関しては、さすがにスピルバーグだけあって特に長いと感じることもなかったんですが、ただ前半はとても丁寧にドノヴァンの人間性の描写に時間を割いていた印象で、昼食直後という時間帯もあり、実は珍しく劇場で一瞬だけ寝落ちしました。字幕1フレーズだけ見逃したのを見逃しませんでした。(どっち)

一瞬だけカクっとなってからは目が醒めて、そこからはしっかり集中して観られたので許してください。

そんなわけで、僕の大好きな冷戦下スパイ絡みの地味映画であるにも関わらず眠くなったという事実からもわかる通り、この手の話に興味のない人は、まぁかなりしっかり観るのがしんどい映画じゃないかと思います。特に前半は。

緊張感や重みを増すためにとにかく丁寧に進行していた印象で、正直もう少しスピーディにして尺を短くできたんじゃないか、と感じましたが、当然そうすると軽くもなるので、それを避けたかったんでしょうね、スピルバーグは。

そんな前段の「アベル裁判終了」までは、“ホーム”アメリカでの話なので、若干トラブルがありつつも割と淡々と進んでいくんですが、後半の本題・捕虜交換の話になってくると緊張感が段違い。

舞台となる東ドイツはとにかく彩度の低い景色が鬱屈としている印象で、その寒々しさと抑圧された雰囲気が重々しく、個人的には逆に盛り上がりました。これだよこれ、この緊張感だよ、と。

東西冷戦が最も激しかった当時、民間人として単身交渉に臨むドノヴァンはいつ逮捕されてもおかしくないし、そうなるといつ帰れなくなってもおかしくない…という極限状態の中、とんでもない肝っ玉で交渉を進めていきます。

この彼の強さ、交渉力には目を見張るものがあり、こんな人が実在したというだけで圧巻。予告編でも「この橋を踏み外せば、世界が終わる」とか言っていましたが、これってただの大げさな宣伝文句と言えないレベルで、本当にかなり危険な橋を渡っているんですよね。東西冷戦の最前線で、捕虜交換の交渉っていうのは。

もうこの交渉自体の重みを理解していると、その緊張感はやっぱりとんでもないものがあります。しかもただの捕虜交換だけならまだしも、オマケ的に余計なことをしてくれた輩(これも実話)もいたりして、その辺りもまたドノヴァンの“タフネゴシエーター”っぷりを強調しています。すごい。

余談ですが、捕虜交換の舞台となる“ブリッジ”、グリーニッケ橋というのは東西冷戦の象徴的な場所で、ゴルゴ13でもここで捕虜交換する話が出てきたりします。(もしかしたらこの実話が元なのかも)

ここでのやり取りの秀逸さ、緊張感も見事で、雪の舞う景色も不気味なほど綺麗。当然ながら物語のピークとなるシーンでもあり、さすが勝負所をおさえたスピルバーグの作りも素晴らしい。このシーンの感情面を助けるのが前半のアメリカ国内での話だったのは間違いなく、眠くなってごめんなさいね、と謝りたいところです。

総じて、絵的にはとても地味ながら丁寧でしっかりと作られた、当然ですが隙のない作品になっていて、良質な大人の娯楽的な政治サスペンスに仕上がっております。これはこういうのが好きな人には外さないタイプの映画じゃないかなぁ。

個人的にはやや抑圧的な気がして、あとほんの少しだけあざとさが欲しかったというか、感情的に高めてくれるとものすごくバチッと来た気がしますが、ただそれをやっちゃうと反面嘘くさく見えてきちゃうのもまた事実なので、この辺りのさじ加減もさすが、というところなんでしょう。

観ようによってはきっちりプロパガンダ映画になっているとも思いますが、その辺を際立たせないために抑圧的にした気もするし、これがまた絶妙。結果、良い映画だと思います。

舞台背景や概要で「面白そうだな」と思える人ならまず外さないでしょう。

このシーンがイイ!

これはもう、橋のシーンでしょう。ドノヴァンとアベルのやり取りがとんでもなく良い。静かに熱い。

ココが○

なんでこんな格好なネタが初映画化なんだろう、と思えるほど、政治的な話題としてこの上ないテーマ。それをスピルバーグが監督してトム・ハンクスが演じる、と来たらそりゃあ面白くないわけがない。

ココが×

やっぱりなんだかんだ言って、前半のやや冗長な感じでしょうか。眠くなったのは事実なのでね…。ただ、それが必要なのもわかるので難しいところ。

MVA

昔、とある友人が「ブルース・ウィリスは常に世界のピンチに立ち向かっている」と言っていましたが、それと同じように最近のトム・ハンクスは本当にこの手の役が多いですね。人権派と呼ばれるような人物。そしてそれがまた抜群に似合うしうまい。この役は彼以外考えられません。今回もさすがに素晴らしかった。でも僕はこの人を推したいです。

マーク・ライランス(ルドルフ・アベル役)

最後まで口を割らないソ連スパイ。

結構なお歳ですが、淡々と、でも芯が強そうな雰囲気が最高でした。胸に熱いものを秘めている感じもあったし、何よりトム・ハンクス演じるドノヴァンとの信頼感の表現がとても熱い。渋すぎるチョイスですが、とても良い役者さんだと思います。

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