映画レビュー0713 『マイ・ブラザー』

今回はNetflixより、もちろん配信終了間際のやつです。けっこー前から気になっていたのでレッツ・視聴。

マイ・ブラザー

Brothers
監督
脚本
デイヴィッド・ベニオフ
原作(オリジナル脚本)
スサンネ・ビア
アナス・トマス・イェンセン
音楽
主題歌
『Winter』
U2
公開
2009年12月4日 アメリカ
上映時間
104分
製作国
アメリカ

マイ・ブラザー

両親からも愛され、妻と二人の娘と幸せに暮らす米軍大尉のサム。一方彼の弟・トミーはデキが悪く、銀行強盗による服役からようやく仮出所するも、父親もサムの家族からも疎まれ、居心地の悪い日々を過ごしていた。その直後、サムはアフガニスタンへ再度派遣され、ほどなくして彼が戦死したという報告が入る。

家族という距離感。

8.0

元はデンマーク映画の『ある愛の風景』という作品らしいんですが、こちらもまだ観たことはなく初めて観るお話でした。簡単に書けば、兄の穴埋めとして徐々に更生していく弟と、戦地という非日常にさらされて壊れていく兄の物語。そこに二人をつなぐキーマンとして兄嫁がいる、という感じでしょうか。

オープニングは銀行強盗で捕まり、服役していたトミーを兄・サムが迎えに行くところからスタート。トミーを迎えに行くサムに対して彼の嫁・グレースは露骨に嫌な表情を見せている辺り、トミーはいわゆる“鼻つまみ者”ってやつなんでしょう。まあ銀行強盗犯ですからね…。

サムはいかにも正義感溢れる良いやつで、それ故弟に対しても優しいためか兄弟の仲は良さそうですが、そんなわけでグレースはもちろん、父親(母親は故人で再婚しているようなので、母親は少し距離がある感じ)もトミーに対してはあからさまに出来損ない扱いをしていて、そりゃグレもするわと。んでまあそんな感じでデキの悪い弟が帰ってきた…ものの、入れ替わるように良くできた兄は再度アフガニスタンへ派兵されるということで、残された家族は複雑です。あからさまに逆ならいいのにと。

とは言っても仕方がないということでサムはアフガニスタンへ、トミーは金もないのに飲んだくれてグレースに迎えに来てもらってお金払ってもらって…と相変わらずクズのまま。愛する夫がいない上に残った義弟がクズすぎて毎日つらいグレースのところに、さらなる追い打ち「サム戦死」の一報。

しかしそれがきっかけとなり、不器用なりに「兄の代わり」としてサムの娘達(要は姪っ子)の面倒を見たりグレースのためにキッチンを改造したりと徐々に更生していくトミー。一方死んだと思われたサムは実は生きていて、捕虜として捕まっていた…というお話です。

弟・トミーを演じるのはジェイク・ジレンホール。さすがにクズっぽさがお上手。兄・サムを演じるのはトビー・マグワイア。むしろ弟っぽくね? と思いますが普通に彼のほうが年上でした。変わらないよね、トビー・マグワイアって…。

サムの奥さん・グレースを演じるのはナタリー・ポートマン。相変わらずお綺麗です。で、ちょっとこの映画の変わっているところとしては、わざわざグレースを「美人だね」っていうシーンが何度か出て来るんですよ。妙に(周りの反応で)イイ女感を強調するというか。

つまり誰が見ても美人であるグレースは(途中の段階までは)夫が戦死してしまい、残された義弟は娘達ともうまくやっていて…というようなお話なので、当然ながらそこに不穏さが漂うじゃないですか。イイ女と死んだ夫、そして残された夫の弟。しかも彼は更生してきているわけです。徐々に近付いていく二人、そして死んでいたはずの夫は生きていて…嫌な予感しかしない!! そしてコレ以上は言えない!!!

…とまあそんな感じでちょっと違う方に煽るような書き方をしましたが、実際はものすごく真っ当な家族の物語で、あざとくないリアリティのある展開に「そりゃあこうなるよなぁ…」と思わされる重めの人間ドラマでした。

主要登場人物は上記3人ですが、その3人全員理解できるんですよ。そうだよな、そうなるよな、って。誰もがその時その時で納得できる生き方をしていった先に形作られる“家族の物語”というのは…リアルでもあり、残酷でもあり。そしてそのドラマを仕立てた“役者”が戦争であるというのは…もう言わなくてもわかりきったことですが、やっぱりいろいろ考えさせられます。

「戦争は良くない」なんて月並みすぎる感想ですが、やっぱりそう思わざるを得ないお話でした。戦地での話はあまり日本にまで伝わってはきませんが、きっとこういう話は結構あるんでしょう…。

タイトルが「マイ・ブラザー」ということからもわかる通り、中心に描かれるのは兄弟なわけですが、またこの兄弟っていう距離感が物語を語る上で絶妙でしたね。

僕には姉がいるんですが、やっぱり兄弟(姉弟)っていうのはどんな関係性とも違うんですよね。頭にくることも山ほどあるけど関係を断てるわけでもないし、全部引っくるめて「仕方ない」で認めるしかないこともあったりとか。多分それは向こうも同じなわけで、「肉親と言えど他人」ではあるものの、やっぱり他人として捨てきれない絆があるんだと思うんですよ。普通は。しかもこの映画の二人は同性で、その間に美人の妻ないし義姉がいるわけです。そして当然ながら彼女は肉親ではないわけで、これはやっぱり…いろいろ出てきますよ。

その辺りの細かい機微の部分がすごく伝わる話だったので、「兄弟」という関係性を使って劇中に展開される絵とセリフ以上に「心情が雄弁に語られる」映画だな、と思います。これは一人っ子の人には伝わりにくいのかもしれません。

さらにそこに「正直な存在」としての娘二人も絶妙に物語を動かしてくれて、これがまた…残酷というかなんというか…。

あまり書くと興を削ぐのでこの辺にして大事なところは書きませんが、関係性と環境の変化が絶妙に組み合わさった人間ドラマとして、とても良くできたお話だと思います。やや重めではありますが、濃い目の人間ドラマを観たい時にはオススメしたいですね。

マイ・ネタバレー

あんまり書いちゃうのもなんなので、本レビューでは「帰ってくる」点は触れていませんが…まあそりゃ生きてたら帰ってくるでしょ、とは思いますよね。普通。

そんなわけでPTSD関連の話はあえて触れていません。やっぱりある程度「アメリカン・スナイパー」を意識せざるを得ない物語でしたが、そこに触れてもまた興を削ぐ気がしたのでそれもあえて触れないでおきました。

観ていて一点だけ「自分は違うかもなぁ」と思ったのが、サムがウィリス二等兵を殺しちゃう場面。自分だったら自分が死ぬ方を選ぶんじゃないかな…と思いながら観ていました。

ただそれは偽善的な意味でもなんでもなくて、単純にネガティブ&リアルな自分の環境から自分の命を軽めに見積もっちゃう傾向が大きいような気もするので、サムのように美人な妻とかわいい娘二人が家で待っているなら…やっぱり違うのかなぁとかいろいろ考えながら観ていました。

と同時に、やっぱりその後のPTSDの部分は絶対頭によぎると思うんですよ。「こいつを殺せば生きて帰れるかもしれない、でもそうなったら一生十字架を背負うことになる」っていうのは。それでも生き続けられる自信があるのか…自分にはそれがない気がしたので、やっぱり違う選択を取ったような気もします。

ただなにせ極限状態ですからね…そこまで冷静に考えること自体無理なのも確かなんでしょう。捕虜の期間も長かったわけだし…。きっとサムも派兵後すぐああなっていたらまた違う選択肢を選んでいたのかもしれないし、そういうことも考えるとまたいろいろと思うところが出てきます。

この戦争部分を取っただけでも異様だし考えるところが山ほど出て来るお話ですが、そこに残された家族が入ってくるわけですからね…なかなかこれだけ身近に戦争を捉えられる物語は珍しいかもしれません。

それでも結末的には誰かが死ぬような悲劇もなく、それなりに希望を感じさせるエンディングだったのが良かったですね。真っ当に嘘くさくない、リアルで真面目な物語だと思います。

このシーンがイイ!

サム戦死の知らせを聞くときと、それをトミーに伝えるときのナタリー・ポートマンの泣きの演技は素晴らしかったですね。本当に。素晴らしいとしか言いようがない演技でした。

それと「サラダドレッシング」の後のお姉ちゃんの表情。すごい。うまい。

ココが○

ネタバレになるので詳しくは書けませんが、人間関係の踏み込み具合として絶妙なところを描いていると思います。ものすごくバランスの良い3人の距離感がこれだけのドラマを生んだんでしょう。

ココが×

やや重めなのでその辺りは体調(気分)とご相談かな、というところぐらいでしょうか。ただその割に上映時間も短めにしている辺りがまたバランスが良い気がします。

MVA

主要3人の中ではトビー・マグワイアがやっぱりちょっと綺麗すぎちゃう気はしました。演技としてはすごく頑張っていたとは思うんですけどね。ただ見た目の作りとして甘さがある感じが惜しいなぁというか…。

ジェイク・ジレンホールはさすがのクズっぷり&改心っぷりでお見事でしたが…やっぱりこの人でしょう。

ナタリー・ポートマン(グレース・ケイヒル役)

上に書いた泣きの演技だけでももうものすごいな、美人でうまくて言うことないな、って感じで。

やっぱり物語的にメソメソせざるを得ないお話なので暗い顔のシーンが多いんですが、それでも哀しいだけじゃない、強さも感じる表情がまた良いというか。当然ながら文句なしです。

それと地味な部分ですが、長女の方がかわいがられる次女にコンプレックスを持っているという設定を活かす娘二人のチョイスも良かったと思います。

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