映画レビュー1326 『ブレット・トレイン』

今回のこの映画、アマプラに来ていたのは知っていて、それなりに面白いだろうなと思って取っておいたんですが、何も観るものがないけど何か映画が観たいぜと思ったこの日に満を持して観ることにしました。

ブレット・トレイン

Bullet Train
監督
脚本

ザック・オルケウィッツ

原作

『マリアビートル』
伊坂幸太郎

出演
音楽
公開

2022年8月5日 アメリカ

上映時間

126分

製作国

アメリカ・日本・スペイン

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(Fire TV Stick・TV)

ブレット・トレイン

しっかり伏線回収、しっかりエンタメ。

9.0
濃すぎるメンツだらけの新幹線、殺し殺されの先に待つものは
  • ブリーフケースを奪って降車して終わり、のはずが…
  • 殺し屋やら謎の女子やら曰く付きの面々が乗り合わせる新幹線で展開されるほぼワンシチュエーション
  • やや怪しい日本を舞台にした伊坂幸太郎原作映画
  • とにかくいろんな人が出てきて飽きさせない

あらすじ

面白いんだろうなと思って観たものの、その予想を超えて面白くて「いやーこれはやられたなー」なんつってニコニコレビュー漁ってたらいまいち評判がよろしくなく、世の中厳しいわね…とちょっと悲しくなりました。

メンタルがやられてしまったのかセラピーにお世話になり、心機一転復職した運び屋だか泥棒だか殺し屋だかなんだかわからないけどとりあえず裏稼業のレディバグ(ブラッド・ピット)の復帰初戦は「ある新幹線で運ばれるブリーフケースを回収する」というもの。いわゆる「ミッドナイト・ラン」、ちょろい仕事ってやつですね。

彼は東京から東海道新幹線(ゆかり号というありそうでない絶妙な名前)に乗り、問題のブリーフケースを回収したら次の停車駅である品川で降りてお仕事完了のご予定です。

任務(映画)開始早々にブリーフケースを回収、マジで楽な仕事だぜと下車しようとしたところ、そこに乗ろうとしてきたいかついメキシコ人・ウルフ(ベニート・A・マルティネス・オカシオ)にパンチをお見舞いされた挙げ句に「殺す」と襲われる羽目に。

何が何やらわからないレディバグは応戦しつつもなんとかウルフを撃破、しかしこんなのはまだまだこの「厄介な旅路」の端緒に過ぎないんだぜ…!

伊坂作品らしい伏線回収っぷり

あらすじと言いつつ全然ご紹介していないポンコツっぷりが申し訳ないんですが、その他の主要メンバーとして、まずオープニングで何者かによって幼い息子を殺されかけ、復讐するために新幹線に乗った木村(アンドリュー・小路)とその父エルダー(真田広之)、とある超大物マフィアの息子を救出し、その息子と問題のブリーフケースを京都まで運ぶ任務を請け負っている殺し屋コンビのタンジェリン(アーロン・テイラー=ジョンソン)とレモン(ブライアン・タイラー・ヘンリー)、そして謎の女子プリンス(ジョーイ・キング)といった面々。他にもいるよ。

それぞれは別の目的で新幹線に乗り合わせているんですが、それがいろいろ絡み合って相互作用していき、最終的には話が収束していく例のパターンです。

例のパターンと言いつつも先が読みやすいとかはまったくなく、テンポの良さと程よいコメディテイストも相まってまったく飽きない2時間強でした。めちゃくちゃ面白かったです。

最近自転車通勤中にAudibleで何作か伊坂幸太郎の小説を聞いているんですが、確かにこの人の作品っぽくいくつもの伏線回収が折り重なる作りは非常に好みでした。細かな小ネタ含め、遊んでいるようでいて無駄な情報がない感覚が素晴らしい。

しかしこの映画の原作にあたる「マリアビートル」は未読です。Audibleにもあるし近い内に聞こうと思ってたんですが、でも原作との差異に違和感を感じている人(あるあるですが)も多いようなので先に映画を観ておいてよかったような気もします。大体原作の方が濃いものだし。

この映画の一番のキーマンと言えるのはジョーイ・キング演じるプリンスだと思いますが、彼女は原作からもっとも変化しているキャラクターらしいので、そこも違和感を感じがちなポイントなのかもしれません。ただ映画から入った人間としては、彼女の憎たらしいまでの狡猾さはハマり役ですごく良かったと思いますね。ミニスカだし。

ルックス的にも「誰が見てもかわいい」ようなタイプではない、ちょっと個性的な顔立ちなのもすごく役に合っていたと思います。あと何よりミニスカだし。

観客的に絶対好きになっちゃうのはタンジェリンとレモンのコンビ。この二人の良さもたまりませんでした。残念ながらミニスカではなかったんですが二人ともおっさんだしそこは不問です。

映画的には先の読めない展開に加え、どうやらすべての裏に存在してそうな大物マフィアの「ホワイト・デス」がいつ出てくるんや…とワクワクしながら観ているだけではあるんですが、やっぱり「ついてないちょっとゆるめのブラピの巻き込まれ系」なだけで楽しめてしまう魅力があります。

本当にこの手の役のブラピは良いですね。もはや立派なおっさんだけどかわいい。ことあるごとにセラピーを引き出すのもかわいい。

とは言えしっかりアクションも出てくるし、そこも含めて非常にスピード感があって楽しめました。

結構命軽めでバンバン人が死にはしますが深刻さもなく、コメディ臭が強いので割と何でも許せる感じ。

設定的にもかなり「それはないでしょ」的な面はいろいろありはするんですよ。パンチで窓ガラス割ったりさ。新幹線でそれはないでしょ、なんだけどいいんですよ。コメディなんだし。その辺は全部ノリでオールオッケーにしていかないと楽しめません。

僕なんかは「殺し屋たちの共演」なんだからむしろリアリティが無い方が生々しくなくていいんじゃないの、って思いますけどね。そこリアルにやっちゃうと違うジャンルになっちゃうので。

結構揚げ足取り的にイチャモン言ってる人が散見されて、それはそれできっと「面白くなかったから文句を言い」たくなったんだろうしその気持ちもわかるんですが、でもこの映画はもう完全にドエンタメ映画だと思うので、細かいことは気にしないでただ「ブラピ気の毒だな〜」って笑って観るのが正解だと思います。

某Yah◯◯映画のとあるレビューには「アホだけが絶賛しているクソ映画です。絶賛しているアホは、マンガ原作のお花畑映画見て、涙流して喜んでろ。」とまで書かれておりまして、まあお若い方ですわねオホホホホと微笑みつつYah◯◯界隈らしい書き込みに納得もしました。きっとこの方は「Fukushima 50」とか好きで涙流して喜んでるんでしょう。(偏見)

例によって日本描写も怪しさ満点なんですが、それでもタイトルから日本語表記も併記している辺りかなり原作リスペクトな感じは受け取れたし、最近僕は「一周回ってこの怪しさが良い」みたいになってきているのでむしろウヒョウヒョ言えて楽しかったです。

もう本当にもっとどんどん(日本からも)「怪しいジャパン」を売っていってほしい。「正しい日本」なんて日本人が満足しておしまいですよ。怪しいジャパンでどんどん外貨稼ごうぜ。

日本原作×ハリウッド、相性いいのでは?

実は(当然ネタバレ回避のために詳細は書きませんが)終盤のとある顛末に「ああやっぱりハリウッド映画だなぁ」とちょっとガッカリして、「まあまあだな」と評価を定めた直後にそこにもう一捻り加わったところが最高だったのでもうこの映画は最高だなと思いました。大好きです。

賛否両論あるのであんまり大きな声では言えませんが、この映画を観て(もちろん監督とか制作陣にもよりますが)実は意外と日本人作家の緻密な原作×大味なエンタメ路線ハリウッド映画、って相性が良いのでは…? と思ったりしましたね。「オール・ユー・ニード・イズ・キル」も大好きだし。

伏線の作り方と回収は原作の良さを活かしつつ、派手な映像とこなれた演出でエンタメ化すると割と万人が楽しめる、程よい深さも感じられる映画になるのでは…と。

まあ自分が知っているベースが2作しかないので全然アテにならない話なんですけど。でもその理論を立証するためにも今後もこういう組み合わせの映画が増えていってほしいなと思います。

とりあえずブラピ好きなら間違いないです。ちょっと前に裸体晒してカッコつけてたとは思えない情けないキャラで最高でした。

ネタバレ・トレイン

ちょっとだけ、終盤の話。

上記レビューに書いた「とある顛末」はプリンスの死に方のことです。

なーんかトラックに轢かれて退場、ってありがちだな〜勢いで終わらせるのハリウッドの良くないところだな〜ってすごいガッカリしたんですよ。あそこ。ゾンビーバーかよ、って。(ここでゾンビーバーを例えに出してくる人間はそうそういない)

なにせキーマンでもあったので、もうちょっと納得の行く終わらせ方をしてほしかったと思ってたし、何よりある意味ヴィランでもあっただけに余計に「ザマァ」みたいな死に方を期待しちゃうじゃないですか。なのにこれは…って。

で、直後に始まる「10分前」のお話。まさかレモンが乗っていたとは…!

ここで彼女を轢いたトラックにちゃんと動機が設定され、「なるほどな〜!」とニンマリエンディングですよ。

やっぱり人間はガッカリからの満足、ってそのギャップでものすごく評価が上がるじゃないですか。普段は超真面目そうなのに夜はエロい、ってめちゃくちゃ興奮するじゃないですか。

やっぱりギャップって大事だなと思った次第です。

このシーンがイイ!

一番笑ったのはブリーフケースを「ちゃんと確保してるぞ」って見せるシーン。ベタなんだけどめっちゃ笑っちゃった。

あと終盤、プリンスの背後下からズズッと見せていくシーンのカメラアングルがすごく良かった。ミニスカだし。

ココが○

劇中歌で結構邦楽がかかるんですよね。そこもちょっとリスペクト感あってよかったなと。

この映画の「日本」について文句を言っている人は本当に表面上で見て言っているとしか思えません。その劇中歌も含め、中身はきちんと敬意を払ってるように見えて、僕はそこがまた好きでした。

ココが×

一方で、キーキャラの一人「木村」については申し訳ないけどちゃんとした日本語話者に演じてほしかったなと思います。そこだけすごく残念でした。

演者が悪いと言いたいわけではなく、キャスティングの問題だと思います。

やっぱり絡みの多い父親役が真田広之なだけに、息子もちゃんと違和感のない日本語を話せる人じゃないと日本人的には(日本人だけの問題なので無視してもいいっちゃいいんですが)どうしても引っかかるな、と。

MVA

いいキャラいっぱいいてどの人も良かったんですが、今作はこの人かなと思います。

ジョーイ・キング(プリンス役)

謎の女子。ミニスカ。(4度目の言及)

本当に憎たらしい「自らの見た目と属性を活かした狡猾さ」がすごくいいキャラだったと思います。ムカつくぐらい魅力的で。

彼女の謎めいた存在感が物語の引力の一つだと思うので、そこも含めてきっちり引っ張ってくれてお見事でした。

あとはもうブラピですよ。

ジョーイ・キングが素晴らしかったと言いつつも、やっぱり主演がブラピじゃなかったらきっと観てなかったしここまで楽しめていたかどうかも怪しい。

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