映画レビュー0960 『フローズン・タイム』
ジャケットが静止したおっぱいという破壊力抜群のビジュアルだったので覚えてた映画。
ちょっととっつきにくそうな映画だなーと思いつつ評判も悪くなさそうだったので、おなじみネトフリ配信終了を機に見ることにしたぜよと。土佐弁ぜよと。
フローズン・タイム
ショーン・エリス
ショーン・ビガースタッフ
エミリア・フォックス
ショーン・エヴァンス
ミシェル・ライアン
スチュアート・グッドウィン
マイケル・ディクソン
マイケル・ラムバーン
マーク・ピッカリング
ガイ・ファーレイ
2007年1月17日 ベルギー・フランス
102分
イギリス
Netflix(PS4・TV)

イギリス青春ラブコメの王道感最高。
- 彼女と別れたショックから不眠症→時間が止まるようになった男子の物語
- 寝られないからバイトでもするか、と始めたバイト先での出会いが彼の生活を変えていく
- 変態だけど真面目でどこかかわいい主人公がとても良い
- イギリス映画らしいオシャレさとかわいさが好きな人にはたまらない
あらすじ
ボカぁねぇ、なんとなく芸術的な映画なのかと思ってたんですよ。やっぱりジャケットがね。なんか高尚な雰囲気を感じたりして。おっぱい出てるんだけど。
ところがその予想はまったく外れ、普通に「観やすい青春ラブコメ」でしたよという喜び。どことなく(同じイギリス映画である)「サブマリン」に似たようなちょっとシュールでちょっとファニーな感じがたまりませんでしたね。
主人公は美大生のベン。冒頭でスージーに自ら別れを切り出し散々罵られた挙げ句別れることになるんですが、彼は速攻でそのことを後悔しており、毎日その後悔に苛まれながらひたすらウジウジとスージーのことを考え続ける日々です。
しかしスージーは(女子らしく)あっさり切り替えて違う彼氏とよろしくやっちゃってるもんで余計に凹むよと。同じ大学行ってるから視界に入っちゃうよね的な。
あまりにも引きずりすぎた彼はそれが原因で不眠症に陥り、「しばらく寝られそうにないからバイトでもするか」とスーパーの遅番のバイトを始めます。「いわばキャッシュバック(原題がCashback)だぜ」と。この辺妙にポジティブなのがスゴイ。
そこで彼はクセのある人々と知り合いつつバイトに精を出していくんですが、ある日バイト中に突如として“覚醒”。時間を止めることができるようになります。すんごい謎だけど。とにかくそうなの。
元々(思春期の男は大半がそうですが)女性の体に並々ならぬ関心を持っていた彼は、時が止まったのを良いことにスーパーに客としてきている女性たちを次々と脱がせてはスケッチしていきます。美大生ですからね。裸はもちろん見たいんだけど触るとかよりも絵に描く、っていうのが変態なんだけど真面目な感じがしてEABですよ。いい塩梅。僕も北川景子みたいな奥さんが欲しいのでDAIGOっぽく書きますけども。
他にも同僚(と店長)たちにちょっとしたいたずらをしたりして能力を楽しみつつ、段々とバイト仲間の女子・シャロンに興味を持っていくベンですが…あとは観るがいい!
寄り道が作品への愛に変わる
主人公ベンを演じるのは、ハリポタでクィディッチのグリフィンドール代表パイセンとして有名なショーン・ビガースタッフ。この映画当時は24歳ぐらいのようですが、まだちょっとあどけなさも感じる雰囲気があってちょっとシュールな映画にとてもマッチしたかわいさ。いや地味そうですが良い人選ですよこれは。
そんなベンの周りには、チンコ脳ながら失敗続き(でもへこたれない)の幼馴染・ショーンやバイト先の個性的な面々がおりまして、彼らとの日常を通して「スージーショックを乗り越えて新しい恋を始められるか」を描く映画になっております。
ジャンルとしては間違いなくコメディ含みの恋愛映画に入ってくるとは思うんですが、ただそれ以前に青春映画の色合いも濃く、この辺もまさに「サブマリン」に近い感じ。「普通の日常」の描写が多いということもあってあれ以上に青春っぽさが強い気もしますね。無駄に出てくるフットサルの対抗戦とかね。それが最高なんだけど。
この2作を観ればなんとなくわかると思うんですが、この手の「青春恋愛イギリス映画」ってやっぱりちょっと独特なものがあって、ハッとするようなオシャレで印象的なシーンがあったり、どうでもいいシュールな笑いが入ってきたり、ダイレクトにバカバカしいエピソードがあったりで好きな人にはたまらない世界観が見られる気がします。
相変わらず言語化能力に乏しいので具体的にどうこう言えないんですが、やっぱりちょっとアメリカの映画よりも“味のある”内容のような気がする。それはどっちが良いとか悪いとかではなくて。
大筋の展開を振り返ったとき、そこには関係ないと思われるどうでもいいエピソードが結構あるんですね。ストリッパーの話であったり、バイト仲間のクンフーマニアっぷりだったり。
エピソードが強すぎるんだけど別にこれ無くてよくね? と思われるようなクセの強さがところどころあるんですが、それが“味”になってきてこの作品への愛に転化するような。
ほんとバカバカしいしどうでもいいよな、ってエピソードが笑っちゃうし好きだわーってなっちゃうのがたまりませんでした。
多分アメリカ(≒ハリウッド)映画の方が無駄がないと思うんですよ。整合性も取れてるだろうし、その分綺麗なんだけど、反面読みやすい面があるような気がします。
一方この手のイギリス映画の場合、「いやその情報いらんだろ」みたいな贅肉で楽しませてくれるので本筋を読むとか気にせず「その映画の世界」に浸って楽しむだけでいいや、みたいになっちゃうような良さがあるよなと。
旅で言うと寄り道が多い感じですかね、イギリス映画は。こう言うとちょっとどうでしょう藩士としてはよりたまらんぞ、みたいな面があるじゃないですか。
その“寄り道”を楽しめるかどうかで評価が変わってくる映画かもしれません。もしかしたら人によっては「何が言いたいの??」ってなっちゃうのかもしれませんが。
単館系の入り口としても
他愛もないレベルですが下ネタも直球だし、あけすけな話なんですよね。でもそこが構えすぎてない良さのような気もするし、国は違えど「青春ってこうだよなぁ」みたいな感覚につながっているのかもしれません。
それとそんなに深く考察するようなお話でもないと思うので、ちょっと軽めの単館系の映画が観たいときに重宝するようなタイプの映画かも。
大作系主体で観てきた人が「もっといろんな映画を観たい」って思ったときの候補の一つとしてもかなりセンスあるチョイスなのではないでしょーか。
確実にメインストリームの映画とは違った雰囲気があるし、このゆるさが好きな人って結構いると思うんですよ。僕もそうなんですが。
ただ油断してると最後は結構綺麗に見せてくれたりして、いやなかなかいい映画じゃないかなと思います。少なくともジャケットから漂うある種のイロモノ感で避けちゃうのはもったいない。っていうかインパクト重視のこのジャケットもあんまり良くない気がする…けど他にどんなビジュアルが良いのかと言われると難しいよなぁ。
ちなみに監督は「メトロマニラ」を撮った監督なんですが、どっちも良作である上に見せ方がまったく違うのがすごいですね。この監督も名前を覚えておきたいなかなか良い監督ではないかなと思います。
このシーンがイイ!
フットサルの日の帰り、シャロンを送っていったマンション前のシーン。あのもどかしさたまらない…! いいわー青春だわー。
ココが○
なかなか笑えるんですよね。笑わせ方がすごい好きでした。特にスーパーのバイト仲間の頭悪そうな感じとか。
あと幼馴染の水かぶりも最高。
ココが×
多少気になる部分はあるものの、あんまりこれと言って良くないぞ、っていうのもなかったですね。
人によってはちょっと鼻につくオシャレさ、みたいなのはあるかもしれないけど。
MVA
ヒロインのシャロンが若干グウィネス・パルトローっぽかったんですが、最初のくたびれっぷりから段々かわいくなっていく感じ、見せ方が良かったですね〜。
その他幼馴染や店長のひどさもなかなか捨てがたいところですが、ここは順当に。
ショーン・ビガースタッフ(ベン・ウィリス役)
主人公の美大生。
多くを語らない朴訥な雰囲気の青年なんですが、すごいかわいいんですよね。言いたいけど言えない感じとか。
言っちゃ悪いですが全体的に地味なキャスティングだと思うんですが、その地味さがまた良いと感じさせる主人公の「目立たない良さ」はなかなか貴重ですよ。
少し内気で真面目、でも男らしいちょっとした変態性も持ってるけどかわいい、絶妙なバランス。この後もあんまり売れている気配はないですが、良い役者さんだと思うなぁ。