映画レビュー1211 『ショコラ』

いやー懐かしいこの映画。

いつだったかは忘れましたが大昔に観て、すごく好きだったのを覚えていたんですが内容は結構忘れてるのでもう一度観たいと思っていたところにJAIHO、と。

ショコラ

Chocolat
監督
脚本

ロバート・ネルソン・ジェイコブス

原作

『ショコラ』
ジョアン・ハリス

出演
音楽
公開

2000年12月15日 アメリカ

上映時間

121分

製作国

アメリカ・イギリス

視聴環境

JAIHO(Fire TV Stick・TV)

ショコラ

チョコのようにちょっと甘くてほろ苦い、大人のおとぎ話。

8.5
ある保守的な村にやってきた母娘が開いたチョコレート店にざわつく村内
  • 親子代々チョコレートの効能を広める旅人母娘が小さな村で新しい店を開店
  • 保守的な村は厳格な村長を中心によそ者母娘を敵視するが…
  • ちょっとファンタジックな大人のおとぎ話
  • ジュリエット・ビノシュ演じる主人公がとても素敵

あらすじ

割としょっちゅう「大人のおとぎ話」って言ってる気がするんですが今回もそれです。ただそのおとぎ話っぽさが良いんだと思いますね。記憶通りとても良かったです。

強烈な北風の吹いたある日、フランスのとある小さな村に一組の母娘、ヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)とアヌーク(ヴィクトワール・ティヴィソル)がやってきます。

彼女たちは村の老女アルマンド(ジュディ・デンチ)から空き店舗を借り、断食期間最中に新しくチョコレート店を開店。

旦那もおらず、ほとんどの村人が参加するミサにも参加しない彼女たちを規律に厳しい保守的な村長(アルフレッド・モリーナ)は敵視し、村人たちに悪口を言いふらして回ります。最低です。

しかし「その人にピッタリのチョコレートを見繕う」ヴィアンヌは村人たちを少しずつ惹きつけ、お店はちょっとしたコミュニティのような場に。

そんな中、村に流れ者の一団が現れたことでさらに両者の関係は悪化、いよいよのっぴきならない事態に…!?

かわいくファンタジックな物語

なんか自分で書いててちょっと違う気がするあらすじですが。まあそんな話ですよ。(どんな)

記憶に残っている印象としては「魔法使いの話」だったんですが、今観るとそう取れなくはないものの魔法までは行かない程よくファンタジーなお話でしたね。

一応ギリギリ現実的に取れなくもないので、ジャンルはファンタジーではなくあえてドラマにしました。逆にこの物語をファンタジーとして捉えちゃうと夢がないというか、もったいない気もして。

母娘の設定、狭い世界、ナレーションの入り方等の程よい「おとぎ話」感は印象的には「シザーハンズ」辺りとも似た感じがします。

チョコレートもかなり万能なために余計におとぎ話感が強いんですが、これは「チョコレート」の体裁を取っているだけで何らかのメタファーだったりするんでしょうね、きっと。ヴィアンヌと村人たちをつなぐ何か、きっかけの一つにすぎないのかもしれません。

また村人たちの閉鎖的な暮らしぶりや差別と偏見、それに対する物語の回答もおとぎ話っぽさに拍車をかけているかもしれません。

よくある設定と展開だよなーとも思いつつ、しかしこの映画から20年以上経ってもなお同じような問題を同じように目にする世界はやっぱり進化に乏しく、「人間…!」と思わざるを得ません。それでも少しずつ、本当に少しずつは変わってきているんだと思うんですけどね。

裏を返せばそれだけ普遍的な問題を描いた映画でもあり、その表現方法が違うだけ…ではあるんですが、それがチョコレートっていうのがなんともオシャレでかわいくていいなと。

ヴィアンヌのファッションにもちょっとオールドファッション的なかわいらしさがあるし、そこも含めてまたおとぎ話っぽい、絵本っぽい良い意味での「作り物」っぽさがあって、それ故にちょっと出来すぎたチョコレートの力もすんなり受け入れられるようになっているような、そんな上手さのあるお話だと思います。

それとネームバリューとしてもイメージ的にもジョニデの存在が大きいのは確かなんですが、彼との絡みはあくまで副次的なものなので、この映画を恋愛映画っぽく見せるジャケット他のイメージはどうなのと苦言を呈しておきたいところ。超今さらだけど。

本筋はあくまでヴィアンヌ・アヌーク母娘と村人たちの関わり方であり、それこそ終盤に出てくる“説法”がそのものズバリのテーマだと思います。

そういう視点で考えると、それなりに若い頃にこの映画を観て好きだった自分は、この物語からなんらかの“包摂”的な考え方を受け取っていたんだろうなと今になって思いますね。

まさに現在進行系で分断が進む「(なんちゃって)保守とリベラル」の価値観の違いを考えさせる意味でも、今なお古くならない名作の一つでしょう。

素直に受け取って現実に反映したい

当然のように細かい部分はあまり覚えていなかったんですが、そういう「良い映画だったのは覚えてるんだけど詳細は忘れた」映画を結構な年数が経って観る機会は意外と無くて、自分の人生経験がどう感想に影響するのか期待半分不安半分で観たんですが、やっぱり良かったのと同時におそらく当時はあまり考えずに受け取っていた価値観が見えてきたのがすごく面白い経験になりました。

悲しいかな今はこの映画が公開された当時よりももしかしたら分断が進んでより厳しい世の中になってきている気もするし、それ故当時よりもさらに価値のある映画になっているのかもしれません。タイトルとジャケットから感じる「ただ甘いだけ」の映画ではないですね。

もちろん現実はこんなに単純でも素直な世界でもないんですが、単純化している分理解しやすく受け入れやすい物語でもあるわけで、いかにそのわかりやすく受け取った気持ちをリアルに持ち込むことができるかがこの映画から得た価値につながるのではないでしょうか。

これをくだらない、つまらない、ありきたりと腐すことは簡単ですが、その想いはきっと現実にも同様の影を落とすはずなので、素直な物語を素直に受け取って現実に橋渡しできる人間でありたいと思いますね。改めて。

このシーンがイイ!

やっぱりダンスシーンが良いですよねぇ…これだよな、と。

あとは一応ネタバレ的にちょっとぼかしますが、終盤のチョコ食いまくるところ。抑圧されたものがあったんだな、って。

ココが○

変にリアルにしていないのが良いんだと思います。チョコレートもなにやらちょっと怪しいぐらいですが、そこがおとぎ話っぽくて良いというか。

ココが×

ピーター・ストーメア(DV夫)の扱いがちょっと残念というか、ステレオタイプすぎるかなぁと言う気はします。彼にもうちょっと違った役割があったらもう一歩上の作品になったような気も。

MVA

ジュディ・デンチが相変わらず最高なんですが、でもこの映画は順当にこの人に。

ジュリエット・ビノシュ(ヴィアンヌ役)

主人公の店主。

フランス人女優らしく、やっぱりちょっとアメリカ系とは雰囲気が違って柔らかくて、でもその中に強さがあるようなイメージがすごく役に合っていたと思います。デコルテが超綺麗。

実写版「大人になった白雪姫」って感じでしたね。すごく絵になる美しさがあって、良い時期に良い役を演じたなぁと思います。

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