映画レビュー0315 『告白』

たまに登場の邦画シリーズ。公開当時からすごいすごいと話題だったコチラの映画。

余談ですが、次回レビュー予定の映画がコメディ系ということもあり、先に重い方を観ておくかな、こっち後だと立ち直れなくなったりしたら嫌だし、ということでコチラを先に鑑賞です。

告白

Confessions
監督
中島哲也
脚本
中島哲也
原作
『告白』
湊かなえ
出演
岡田将生
木村佳乃
西井幸人
藤原薫
音楽
金橋豊彦
主題歌
『ラスト・フラワーズ
レディオヘッド
公開
2010年6月5日 日本
上映時間
106分
製作国
日本
視聴環境
TSUTAYA DISCASレンタル(DVD・TV)

告白

とある中学の教師・森口は、終業式の日、生徒たちを前に淡々と、「自分の娘を殺した犯人がこのクラスにいます」と語り始める。

面白かった。ただ不満アリ。

8.5

前評判から結構ハードルが上がった状態、しかも(個人的に評価が低くなりがちな)邦画ということで、はじめはイチャモン付け気味に観てましたが、結果としては評判通り、人間の暗部をえぐるようなドロドロ特濃ストーリーに惹きつけられ、非常に面白かったです。

ただし不満アリ。それはまた後ほど。

森口役の松たか子メインの予告編を観ている限りでは、「いかに犯人を追い詰め、復讐するのか」がほぼすべて、というような森口メインの話を想像してましたが、実際はちょっと違って、森口さんがボールを投げ、それを受け取った犯人+その周辺の人物たちの「告白」を軸に様々な事件が展開、やがて巧妙な形で収束していく、というような物語で、予想ではドロドロした人間ドラマなのかと思ってましたが、実際はもっとサスペンスの色濃い内容になっていて、そこがまた面白かったな、と。

復讐をする側の森口さんは「娘を殺された」という強い動機があるので、さすがにここまで徹底できないだろう…とは思いつつもリアリティのあるキャラクター。完全に人としての回路が一つ、切れちゃっているようです。対する犯人である中学生二人は、それぞれの性格の違いから辿っていく末路に差が出ているのがまたリアル。

ただ、“少年A”については、「中学生がここまで完成されてるとは思えない」とか、「動機の部分がイマイチ納得出来ない」というような印象は持ってもおかしくないとは思います。かなり(普段は)幼児性が排除された人物なので、果たして13歳でこんな人間が出来上がるのか…と思う部分はありますが、その辺は生い立ちも語られるし、「結局はフィクションだし~」で逃げて結構です。

動機に関しては、逆に「中学生だからこそ」、幼児性故に残虐になるという部分が森口以上のリアリティを持っているとも言え、なかなかの怖さ。そう、そういう意味では「幼児性」もまた描かれてはいるわけです。結局行き着く先も「幼児性」がすべてなわけで、そう考えると矛盾しているようでなかなかに深いシナリオ。面白い。

ただ、一つ最初に書いた部分ですが、ひじょーーーーに大きな不満がありました。それは音楽の使い方。なーんか、無駄に「今っぽく」小綺麗にまとめようとしているのが気になりました。

登場人物にリアリティがある(その人たちが同じクラスに集まるのは奇跡ですが)だけに、もっと淡々と静かに見せてくれた方が、逆に怖さが増幅されたような気がします。変にロックで“スタイリッシュに”見せたり、登場人物の感情を表すような激しい音楽をかぶせたり、っていらないと思うんですよねー。好みの部分もあるとは思いますが。

邦画としては珍しく(と言ったら失礼ですが)「シナリオで勝負」できるような芯の強さがあるだけに、もっと物語の完成度と観客の感受性を信じてあげて欲しかった。が、あえて自分で言いますが、それは僕の「シネフィル予備軍」的映画への向き合い方と、頭を使って観るぞ、という脳味噌の作りの問題に依拠する部分もあるので、結局マス向けにたくさん売るぞ、と考えたらこういう方がわかりやすくて稼ぎやすいんだよバカ、というのもわかる気はします。

ただこれはもー“ニワトリタマゴ問題”になってきますが、「ブラック・スワン」の時に書いたような話と一緒で、こういう映画にしちゃうから観客がバカになっていくのか、はたまた観客がバカばっかだからこういう作りになっていくのか、かなり難しい問題ではあるんですよねぇ…。あ、「バカ」は言い過ぎました。そこまで過剰な演出ではないです。

ただ、個人的にこの作りをもっと抑えて抑えて、最後にドーン! って作りにしてたら、9.0以上行ってもおかしくないほどの名作足り得た気がして、そこがすごくもったいないな、と思ったわけです。

映像もあからさまに、学校も家も外もどこもかしこも灰色がかった暗い世界で、世界観にはすごくマッチしてはいるんですが、ちょっと「丁寧すぎる」かな、という気がしました。逆に底抜けに明るい空の下、こんな話が展開したとしたら…そのミスマッチ的な怖さはグッと来るものがありますねぇ。雄的な何かが立ちそう。(嘘)

そんなわけでもったいないなーと不満を感じたわけですが、それでもシナリオの優秀さ、そして役者陣の熱演は大変満足の行くデキ。若干「過激なものを見せればいいんだろ?」って匂いも感じなくはなかったですが、でも帰結の仕方でその辺も許せる感じ。

ストーリーもまったく違うのでなんとなく全体的なイメージの感覚でしか無いんですが、もう一歩だけうまくやれば、日本版「セブン」になれた…かもしれないな、と思います。

やぁ、でもいずれにせよ、邦画でこれだけのものを観せて頂けるって言うだけですごく嬉しい。ただ、「評価を得やすいキワモノ的お話」であることも確か。

非常に重くもあるので、ある程度覚悟の上、観るようにしましょう。

このシーンがイイ!

序盤ですが、森口先生が黒板に書いた「命」の文字を消すシーン。いろいろ、いろいろ考えちゃう。

あと途中の路上で嗚咽するシーン。あの演技、よかった。

ココが○

森口先生が常に敬語、っていうのがねー。地味に効いてる気がしますね。ありがちだけど怖い。

ココが×

上に書いた不満を除くと殆ど無いんですが、開幕の森口先生の「告白」はちょっと説明臭いかな、と。一人の語りが続くので、もう少し何か挟むなり時間を取るなりしてもよかったような気がします。

あとはやっぱり、確実に観る人を選ぶ点。特に子供を持つ親の方にはオススメできません。ちょっとしんどいと思う。

MVA

やぁ、役者陣良かったですね。邦画でこれだけきっちりやってくれるとホントに嬉しい。特に子役が今っぽくマセてるからか、演技も大人並で。やりよるわい、と。

松たか子はすごく役にマッチしていて良かったんですが、かねてより書いているように、あまり抑揚のない人物は演じるのも楽だろう、ってことで若干評価を割り引いて考える傾向にあるので、今回はこの方にしました。

西井幸人(渡辺修哉役)

少年A。主役の一人。

綺麗な顔してますが、腹が立つほどの大人びた感じと、それとは裏腹な幼児性をきっちり演じていて、なかなかやるなぁと感心。将来有望ですねー。間違ってもこんな役の子のようにならないで欲しいですが。(当たり前)

少年B役の藤原薫も気弱な感じと壊れ行く感じがすごく上手で、結構迷いました。こういう子いそうだなぁ、っていうリアル感が素晴らしい。ただちょっと大げさにすぎる部分があって、そこで減点。

あと北原美月役の橋本愛、この子はハッとするようなかわいさがあって良かった。ロリコンと言いたければ言えばいいさ!

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