映画レビュー1031 『残酷で異常』

やんごとなき事情により、久しぶりにAmazonプライムにお試し加入したのでおすすめ映画を募ったところ、挙がってきた中で概要が面白そうだったこちらの映画を最初の一本目としてチョイスしてみましたよよよ。

残酷で異常

Cruel & Unusual
監督

メルリン・デルビセビッチ

脚本

メルリン・デルビセビッチ

出演

デビッド・リッチモンド=ペック
バーナデット・サキバル
ミシェル・ハリソン
モンスール・カタクィズ
カイル・カッシー
マイケル・エクランド
アンディー・トンプソン
メアリー・ブラック

音楽

マーク・コーベン

公開

2014年5月24日 カナダ

上映時間

95分

製作国

カナダ

視聴環境

Amazonプライム・ビデオ(PS4・TV)

残酷で異常

もしかしたら人生の教訓になるかもしれないループもの。

8.5
謎の施設に入り、身に覚えのない妻殺害を繰り返し経験させられる男
  • 気付いたら謎の施設でカウンセリングを受けさせられ、妻殺害のシーンを繰り返させられる
  • 結末がわかっていても抗えず、繰り返すも改善できないループ
  • 「もしかしたらこうなのかも」と思わせる設定が秀逸
  • 役者陣がやや地味でもったいない

あらすじ

詳しくは調べていないんですが、おそらく日本では劇場未公開かつAmazonプライム・ビデオ限定の映画と思われます。ジャケットもあってないようなものでかなり地味だし、いかにも「好きな人は観てね」と言わんばかりのマニアック感漂う映画です。

しかしこれがねー。僕はループものが好きなのでなおさらなんでしょうが、意外とめっけもん的な良作でした。ただ人によって結構評価は割れているようなので、あまり期待せずに観るのが良いでしょう。

主人公は冴えないおっさん、エドガー。彼はアジア系(フィリピン系っぽい)の奥さんであるメイロンをとても愛しているんですが、開幕時点で彼女に何かがあったらしくトイレで意識を失っていて、エドガーが必死に蘇生を試みるも失敗。同時に彼も息絶えたところで突如車を運転しているシーンに戻り、助手席では何やらお怒りのメイロンが。

悪い夢を観たんだろう…と思ったエドガーでしたが、家に帰ってなんやかんやあった後に体調を崩し、救急車を呼んでもらって部屋に戻ろうとドアを開けて進むと知らない施設に突如ワープ。

何もわからず進んだ先の部屋でテレビモニター越しに「座りなさい」と命令され、そこにいた人たちとともにグループカウンセリングを受けさせられる羽目に。

その後「7734号室へ行け」と指示され、そこに置いてあったテレビモニターに映る男性から「お前は妻を殺した」と断罪されるエドガー。そんなはずはないと否定しますが、またも突如として“現実”に戻ったエドガーは、自らの手で不慮の事故により妻を殺してしまう経験をします。

そしてまた車の運転に戻り、また謎の施設に放り込まれ、やがて妻を殺してしまうエドガー。何が起こっているのかもわからないまま、彼は愛する妻を殺し続けます。彼は一体なぜこんなことに巻き込まれることになったのか…あとは観ておくんなまし。

納得できるループ

あまり興を削ぐようなことは書きたくないので、謎の施設が何なのか、なぜ彼は身に覚えのない妻殺しを繰り返すことになるのか、その他諸々の理由は書きません。書きませんが、それらにはすべて理由があり、最終的にきちんと伏線を回収してくれることは書いておきましょう。

ご覧の通りのループものではありますが、他のループものと違う点としては、「繰り返していることを把握していながら行動を変えられない」、つまりループした記憶もあって抗おうとしても妻が死ぬことは避けられないという点と、「ループ自体に理由がある」、なぜループしているのかにきちんと意味がある点でしょうか。

基本的にループものは「なぜループしているのか」がわからず、「そう言う設定だから」ループしているものが多い気がするんですが、この映画はきちんとループせざるを得ない事情があり、それ故「もしかしたら実際こう言うことがあるかも」と思わせる説得力があるのがとても良いですね。

もちろんフィクションだしある意味ではファンタジーなんですが、ただテーマ上どうがんばっても普通の人間には真実がわからない部分のお話なので、「もしかしたらあり得る」と思えるし、それが今を生きる人たちにとってある種の教訓になり得る話なのが絶妙です。ある意味で社会性を含んでいる物語になっている点が。

教訓があるのがポイント

ループものなので当然ながら同じシーンを繰り返し観ていくことになるんですが、「そのシーンの意味するところ」を少しずつ小出しにしていって理解させてくれる作りなのもなかなか秀逸で、「なるほどそういうことか」が徐々にわかっていくようになっていくのも良いですね。

基本的に同じシーンでありつつ、今までは飛ばしていた“中略”の部分を見せたり、別人物からの同じシーンを見せたりと多角的に見せてくる辺りも巧み。これをあんまりやりすぎると「それ聞いてなかったんですけど」となりがちなんですが、そこまで行かずに無理のない小出し感がなかなかセンスあるような気がしますね。なんとなくね。

普通に観ていれば、おそらく中盤にもなれば「ああ〜なるほど、ここはアレなのか…」と謎の施設の正体がわかり、わかることで「なぜループしているのか」、エドガーはなぜここに連れて来られたのかもわかって「じゃあこういう話なのね」と先の方までわかるようになる…んですが、そこからまた一捻りあって最終的になかなかエモい仕上がりになっているのも良いところ。

結構仕込みも充実しているようなので、他の人の考察を読むのも楽しいし、もう一度観て「これはこういうことかー」と気付ける点も多そう(二度観ていないのであくまで予想)だし、地味な割になかなかどうして良い映画だと思います。

酷評しているレビューも読んで、その言わんとすることもわかるんですが、僕はやっぱりこの映画の持つ「普遍的な教訓」を帯びた内容故に評価したい気持ちが強いです。娯楽映画でありつつも教訓がある…といういかにも僕が好きなタイプの物語で、しかもそれがループものということでそりゃ満足しますわなと。

第二のヴィルヌーヴなるか

少々役者陣が地味だったり、ループもので起こりがちな矛盾も気になったりはするので、手放しで大絶賛とは行きませんが、しかしなかなか日本では話題になりにくいカナダ映画でなおかつ地味なビジュアルでありつつこれだけの内容を見せてくれたのは嬉しい誤算。上映時間が短めなのもとても良いですね。

監督さんは初めて名前を聞きましたが、カナダ出身の方なんでしょうか。脚本も兼務しているとのことで…もしかしたら同郷の先輩であるドゥニ・ヴィルヌーヴのようなメジャー監督になる…かもしれませんね。名前覚えておきましょう。

ちなみに監督の名前は読みの違いで「マーリン・ダービズビック」説もあります。マイナーな映画はこれがあるから困るぜ…。(統一して欲しい)

ネタバレで異常

他の方の考察で見たんですが、エドガーが最初に行けと指示される部屋、7734号室(若いマーク・ストロングみたいな男がモニターにいる部屋)はなぜ「7734」なのかと言うと、この数字をそのまま180度回転させると「hELL」になる=地獄なんだぜ、と聞いてなるほどーと。「LION」が180度回転させた「NO17」を商標登録してるのと同じアレですね。(豆知識)

ただあれが地獄なんだとして(というか施設全体が地獄なんだろうと思うんだけど)、脱出した先が何なのかがよくわからず…。結局“いつも行かされる”自分の過去とあんまり変わらない場所だし、「脱出できてハッピー」というわけでもなく、単純にエドガー以外の人たちの視点を追体験して「自分がしでかしてきたこと」を理解させるだけの場所だったので…じゃああそこはなんだったのかな、と。

穿った見方をすれば、「通常ループとは違った形で物語を多角的に見せて観客に理解させるためのスイッチの役割を持った(文字通り)扉」でしかないんですが、ただアレはもしかしたら「脱出したら天国に行ける」みたいな単純な機構ではなく、ある意味で罠のような…施設に入った人たち(地獄に落とされた人たち)が抜け出そうとする習性を利用して「なぜこの不条理な罰を受けているのか」を理解させるためにわざと思わせぶりに用意された場所なのかもしれませんね。わからないけど。

他に気になったのが、テレビに映るコエーババーが何度か「あなたはまだ準備ができていない」とか「準備ができたようですね」とか、しきりに“準備”という単語を口にしていたので、僕はてっきり「完全に改心したら地獄から出られる」お話なのかと思っていたんですが、でも結局エドガーも“常連”になって終わっちゃったし、そもそもそれ以外のメンバーも変わってないしで、じゃあ「準備ができた」からなんやねん、という。

あの感じだともうあそこから出る手段ってなさそうだし、となるともう永遠にループに囚われるのが地獄なんだろうと思うんですよ。じゃああの人数少なすぎねぇ? って気もしますが…まあ土地とか建物の広さなんて関係ない世界なんだろうし、同じような集団(か施設か)が文字通り死ぬほどいるんでしょうね…。

あくまでエドガーが加わることになったメンバーがあそこで、彼らはあそこで永遠にループし続けるってことなのかな。それはそれで…かなりしんどい。でもそれこそが“地獄”だし、だからこそ「悪いことをしたらいけませんよ」という至って真っ当な示唆になっているということなんでしょう。

このシーンがイイ!

ラストシーンなのかなぁ。ベタですがフリが利いててね。なるほどね、って。

ココが○

舞台的にも役者的にも低予算映画だと思いますが、やっぱり低予算故にアイデア勝負なところがあってそこがとても良い。

あと上映時間の短さとね。これも大事。

ココが×

ちょっとルール上わかりづらい部分があるのと、役者陣含めたビジュアル面がとても地味なのでなかなかウリに乏しい映画ではあると思います。一番のウリは間違いなく面白さなんですが、人によっては合わないようなのであまり万人向けではないでしょうね。

それとなぜエドガーがドリスに執着するのかが一番ピンとこなかったですね。奥さんを愛している以上、「女性だから」グイグイ行くのも何か変だし。その辺の動機面をもう少し掘り下げて欲しかったかも。

MVA

主人公のくたびれおっさんっぷりは良かったと思うんですが、まず奥さんがなかなか厳しい感じでもうちょっと良い女優さんを使ったほうが良かったんじゃないの、と言うのと、キーマンであるドリスももうちょっとキレイな女優さん使って欲しかったなぁ…という気が。見た目で文句言うのもよくないんですけどね。謎にミニスカだったし美人が良かったなって。

ということでこちらの方にします。

メアリー・ブラック(カウンセリング進行役)

役名不明のため、便宜上カウンセリング進行役としました。婆さん。

もうめっちゃ怖いの。夢に出そう。テレビの中にいるだけなのにめっちゃ怖い。怖くて最高。

脇役ではありますが、あの不気味な存在感がかなり映画の雰囲気に一役買っていたと思います。あんなカウンセリング絶対イヤだわ…。

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