映画レビュー0497 『ダラス・バイヤーズクラブ』

ご存知アカデミー賞で話題となった作品。

ダラス・バイヤーズクラブ

Dallas Buyers Club
監督
ジャン=マルク・ヴァレ
脚本
クレイグ・ボーテン
メリッサ・ウォーラック
公開
2013年11月1日 アメリカ
上映時間
117分
製作国
アメリカ

ダラス・バイヤーズクラブ

1980年代のダラス。電気技師でロデオカウボーイのロン・ウッドルーフは、仕事中のアクシデントで病院に運ばれ、目が覚めると「エイズで余命30日」と突然宣告される。ロンは生きながらえたい一心から、当時臨床試験が始まったばかりのHIV治療薬を違法入手するが一向に良くならず、また薬も手に入らなくなってしまう。やむなく薬を横流ししていた男に教わったメキシコの医者を訪ね…。

アウトローな社会派映画。

8.0

マシュー・マコノヒー演じる主人公、ロン・ウッドルーフは実在の人物で、映画の内容も実話に基づいたものらしいです。

彼はまあいかにも西部男っぽいイメージというか、あまり知的な雰囲気はなくすぐ激して暴れるし、ドラッグとセックスと酒に溺れる毎日を送る、言ってみればアメリカの田舎にいそうなダメ人間っぽい印象。ゲイも極度に嫌っていて、エイズだと宣告されると「そんなはずがない」とこれまた激昂して暴れちゃってます。

そう、時代は1980年代、まだまだ世間のエイズに対する理解も低く、またそもそも田舎の肉体労働者の集まりで生活を送っているだけにあまり情報に強い感じもないので、とにかく偏見がひどいわけです。

最も忌み嫌うゲイの病気だと思っていたエイズにかかり、周りからも疎外され、おまけに余命は30日。もう自暴自棄になって自殺なり大量殺人なり犯してもおかしくない状況の彼ですが、とにかく彼は「死にたくない」という一心で、あの手この手で生きながらえようと抵抗します。

その手法はほとんどが違法なんですが、元々がアウトローな人間なだけに特に抵抗もなく、まずは当時臨床試験が始まったばかりのHIV治療薬「AZT」を入手。でも一向に良くならない。

おまけに薬も手に入らなくなってしまい、仕方なく行ったメキシコの医者(この人も医師免許を剥奪されたアウトロー)と出会ったことで、「アメリカでは認証されていない本当に効く薬」の存在を知り、それをアメリカに持って行ってさばくことでお金も稼いでやろう、と違法の“薬横流し事業”を始めます。これが「ダラス・バイヤーズクラブ」。

入院中に知り合ったゲイのレイヨンをパートナーにして手を広げ、評判が評判を呼んで大繁盛、となると当然当局も黙っていないわけで、ここに「製薬会社と結託して金儲けに走るFDA(アメリカ食品医薬品局)」vs「違法入手の未認可薬で生きながらえながら金儲けをするロンたち」の戦いが始まる、と。

製薬会社とその認可を担う行政の癒着、っていうのは日本でも同様の噂があるように、やっぱりすーごいマネーが唸っているんですよね。なにせ薬は開発にどえらいお金がかかるので、その回収のために割と汚いことが横行しているという話ですが、この映画でもその辺詳細は語られないものの、「実際に効果のある薬は認めず、ある特定の薬を優遇する」政策で患者たちの命が削られている社会が描かれています。

最初は金儲け&自分の命のために薬を横流ししていたロンたちも、段々と「FDAはおかしい」と義憤に近い怒りの感情で戦い続けていくわけですが、この元々はとても褒められた人間ではないロンが、自分の命のために勉強し、ついでに私腹を肥やすつもりが結果的に社会を変えていっているという事実、この綺麗すぎない物語にとてもリアリティがあって、“現実の妙”みたいなものを感じましたねぇ。

得てして社会が変わる時、って決して聖人が頑張るんじゃなくて、こういう小さい人間が私欲で動いた結果だったりするんだろうな、と。

最後までロンは表面上は正義感を出すことがありませんでしたが、内面はおそらくかなり変わっていて、間違いなく「自分のため」以上の感情で動いている姿がありました。その辺りの人間が変わっていく様子も決して説明はしないものの、行動や表情から容易に伺い知れるように作られていて、とても丁寧でしっかり作られた、真面目な映画だと思います。

しかしマシュー・マコノヒーの(特にオープニングの)激痩せっぷりは壮絶で、この役作りは確かにアカデミー賞クラスの衝撃だな、と。「インターステラー」と同じ人とは思えませんでした。多分事前に知らなかったら気付かなかったレベルだと思います。

そんな彼を始めとした演技陣も当然レベルが高く、かなり力の入った映画であることは間違いありません。序盤を観ていたらそうは見えない感じもしますが、これは立派な社会派映画と言えるでしょう。

こういうダーティーな部分も含めてリアルに描く社会派映画、もっと増えていってくれると嬉しいですね。

このシーンがイイ!

マシュー・マコノヒーが劇中で二回、はっきりと泣くシーンがあるんですが、これがどっちもすごくよかったです。すごく刺さって。

ココが○

がさつなところは変わらないのに、中身が変わっていっている、その成長というか変化の描き方がすごくいいですね。本当にリアルな物語だと思います。

ココが×

特に無いんですが、「想像以上に刺さる」、予想を超える何かが無かったので、すごく突き抜けていい映画だった、とまでは行かなかったのが少し残念でした。でもこれ以上は望み過ぎな気もします。良い映画なのは間違いありません。

MVA

これはすごく悩みました。激痩せっぷりが壮絶なマシュー・マコノヒーは、見た目もそうですが、中身も「インターステラー」とはまったく違うので、本当にすごいなと感心しきり。女医のジェニファー・ガーナーもすごく良かったし、どの人でもいいんですが…この人に。

ジャレッド・レト(レイモン役)

ロンのビジネスパートナーであるゲイ。

ゲイ自体、演じるのが難しい気もしますが、このレイモンがまた破滅的で健気で泣かせるんですよねー。この人もマシュー・マコノヒー同様、この映画でアカデミー賞を受賞しているようで、どっちもナルホド納得いたしました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA