映画レビュー0592 『Dearダニー 君へのうた』

公開時にとても観たかった作品ですが、あまり近くでやっておらず、借りてきました。アル・パチーノ主演映画ももうそんなにメジャーじゃないんだな、と思うと寂しいもんですね。

Dearダニー 君へのうた

Danny Collins
監督
脚本
音楽
ライアン・アダムス
公開
2015年3月20日 アメリカ
上映時間
107分
製作国
アメリカ
視聴環境
TSUTAYA DISCASレンタル(DVD・TV)

Dearダニー 君へのうた

年老いた今でもロックスターとして酒・女・ドラッグに明け暮れるダニー・コリンズ。そんなダニーのある誕生日、マネージャーがプレゼントとして持ってきたのが、40年前に若手ミュージシャンだったダニーの雑誌記事を読んだジョン・レノンが彼宛に送った手紙だった。それを読んだダニーは、今までの生活を改め、新たなスタートを切る決心をする。

もうひと押し欲しい…。

6.5

最近この手の「年老いて人生を見つめなおす」映画が多いような気がするんですが、そういう時代性があるんでしょうか。まあこういう話は嫌いじゃない、むしろ好きなんですけどね。

ただ、この映画は「クレイジー・ハート」や「Re:LIFE ~リライフ~」のように“かつて才能ある人間が落ちぶれて”というような感じはやや薄めで、今でも現役バリバリ、超人気で稼ぎまくっているスターが主人公です。

もっとも当人のセリフにあるように、新曲はここ何十年も書いていないということもあって、やっぱり「昔の名前で出ています」的な(この表現ももはやかなり古い)色合いも強いし、人気はあれどやはり過去の威光で生きている人の物語と言えるでしょう。

主人公はご存知アル・パチーノ

実際にジョン・レノンが若手ミュージシャン宛に送った手紙が彼の死後見つかったという話があったらしく、それをベースに作られた(いわゆるインスパイア系)物語のようですが、ただオープニングでも語られるように「ホンのちょっと事実に基づいた」だけのようで、その手紙のくだり以外はオリジナルの話と思っていいようです。

歳を取っても酒に若い女にドラッグに明け暮れるロックスター、ダニー・コリンズ。アル・パチーノは一体これまでどれだけの回数ドラッグを吸う演技をしてきたんでしょうね。まあそんな彼が、親友でありマネージャーでもあるクリストファー・プラマー扮するフランクが持ってきた“ジョン・レノンからの手紙”を読み、自分を変えるべく新曲制作に励みつつ「それなりに歳相応」の女性とうまくいくようがんばりつつ、自分を恨んでいる、会ったこともない息子と家族関係をつくりあげようとする、というお話。

流れとしてはまあ言っちゃなんですがベタです。一念発起して、新しい女性と、訳ありな家族の再生物語という形。

ただ…まあ率直に言ってしまえば、ちょっとカタルシスが足りなかったんですよね。ベースがベタなだけに、展開もベタにしたくはないというのもよくわかるんですが、とは言えあまり期待するような「こうして泣かしてくれるんでしょああん!」みたいな方に行ってくれないもどかしさ。そういう面ではものすごくリアルではあるんですけどね。

やっぱり人間は弱いし忘れっぽいので、もういかにもその人間らしさを残したダニー・コリンズその人はスターといえど人間だな、と思わせるに十分なリアリティがあります。そこはいいんですが…でももっとあざとくして欲しかったかなぁ。泣きたかった泣けなかった。

あざとくしちゃったらそれはそれで文句も言いそうだし、我ながら汚い物言いだとは思うんですけどね…。でももっと山場を作って欲しかったし、「わかってるけどいいよなぁ」っていうシーンが観たかった。

それともう一点、なにげに結構大きな不満なんですが、アル・パチーノがきちんと歌うシーンがほぼないんですよ。

やっぱりこういう映画だし、音楽映画の良さって文字通り音楽だと思うんですが、そこから逃げているような感じで…。アル・パチーノほどの大物だからヘタに歌わせられなかったのか、はたまた脚本上そうしたのかは不明ですが、やっぱり一度でいいからバチッと「おお、良い歌だな」っていうシーンが欲しい。

ラブソングができるまで」のインタビューを読んでいたら「今は後工程でどうにでもなる」と、かのおヒュー様が申しておりましたので、歌がヘタとかそういう問題ではないと思うんですよね。なぜそういうシーンが無かったのか…。

ミュージシャンはあくまでバックボーンで、人間ドラマが主体だよ、と言われればそうなんですが、でもやっぱりねぇ…歌って欲しかったなぁ。

クレイジー・ハート」の良さは間違いなくジェフ・ブリッジスの歌にかなり比重があると思うんですよ。物語の本筋とはあまり関係ないかもしれないけど、でもあの暑苦しさであんなに綺麗な歌を歌うのか、っていう感動がやっぱりすごく良かったわけです。

あの人は元々ミュージシャンでもあるだけに別物かもしれませんが、でもやっぱりああいう感動が欲しいんですよね。導入で似たような話だと感じる分、余計に。

総じてかなり大人向けの、すんなりうまくいかない人生のような映画で、展開自体はとても良いと思うんですが、ただその歌の問題だったり見せ方の問題だったりで、少し活かしきれていないような気がしました。

惜しいなー。

ただ世間的にはとても評価が高いようなので、まあ例に漏れず僕が少しおかしい可能性はあります。

このシーンがイイ!

なんてこと無いシーンではあるんですが、ジョン・レノンの手紙を渡すシーン、爺さん同士が酔っ払ってダラダラしつつ話してる感じがすごく好きでした。

アル・パチーノとクリストファー・プラマーですからね…。映画ファンとしてはこの二人のやり取りはたまらないものがありますよ。

ココが○

キャストは息子家族含め、みなさんすごく良かったです。アル・パチーノが一番パッとしなかったような気もする…。好きですが。やっぱ歌ってないからかな…。

ココが×

上に書いた通り、2つ結構大きな不満があったので、今ひとつという印象。ちょっと事前に期待しすぎた面もあったと思います。

MVA

そんなわけでみなさんとても良かったんですが、今回はこの人。

アネット・ベニング(メアリー・シンクレア役)

ダニーが口説くホテル支配人。最初出てきた時はただのオバちゃん…だと思ったんですが、どうしてなかなか芯があって歳相応の美人感がとても良かった。

あとはやっぱりクリストファー・プラマーね。最高です。若い頃のアル・パチーノとの二人の写真、あれ本人なのかなぁ…。少し気になりました。アル・パチーノは本人でしたが…。

二人とも若かりし頃の本人だったらすごく貴重な写真でグッと来ちゃいますが、まあ今なら簡単に合成も出来るし微妙なところですかね…。

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