映画レビュー0803 『危険なプロット』

なんと今回は! ネトフリ終了間際シリーズです。いつものです。ごめんあそばせ。

結局観るのは多くても週2〜3本程度なので、もう本当に終了間際の作品を追うのが精一杯なんですよね。最近BSで放送していた映画ですごく観たいものが数本あるんですが…ご紹介はいつになることやら。

危険なプロット

Dans la maison
監督
フランソワ・オゾン
脚本
フランソワ・オゾン
原作
『El chico de la última fila』
フアン・マヨルガ
出演
ファブリス・ルキーニ
エルンスト・ウンハウアー
音楽
フィリップ・ロンビ
公開
2012年10月3日 フランス
上映時間
105分
製作国
フランス

危険なプロット

国語教師のジェルマンは、新年度に受け持った生徒たちの作文能力の低さに辟易していたが、ある日一人の生徒・クロードが提出した宿題の作文に才能を見た彼は、マンツーマンでレッスンを開始する。彼の書いてきた文章は「友人一家を覗き見する」かのような内容だったが、趣味が悪いと言いつつも次第に続きが気になっていくジェルマンは、急かすようにクロードに続きを書かせ…。

深淵を覗いちゃダメだよ!

7.5
虚実ないまぜの“小説”はどんな結末をもたらすのか?
  • 文才のある生徒に入れ込んでいく先生が、良くないと思いつつ彼の書く世界に取り込まれていくお話
  • ある意味でかなり怖い話ではあるものの、劇的な展開に寄せない作りは丁寧でリアリティあり
  • 地味ながら先を読ませない作りと、わかってても戻れない立場の作り方がお上手

ジャンルとしては「サスペンス」と書いているところが多いし確かにサスペンスなんですが、ただいわゆる殺人事件的な怖さを持ったサスペンスという感じではなくて、なんて言うんでしょうね…精神的なサスペンス、なのかなぁ。ちょっとしたエスプリを感じさせるコメディ感もあるし、やや官能的なドラマっぽさもあるし、なかなか「こういう映画だ!」と言うのが難しい、大人の映画でした。

主人公のジェルマンは高校教師。専門は国語。元々作家志望だったようで、文学に関してはかなりうるさい&知識が豊富なご様子。新年度早々に「週末の出来事」をテーマにした作文を宿題に課しますが、まあどれも出来がひどくご立腹。

しかしその中に、友人の家に遊びに行って「普通の家庭とはどんなものなのか」を観察した作文があり、おまけに思わせぶりに「続く」と未完結の文章を書いてきた生徒が。

彼の名はクロード。理系が得意で友人のラファに数学を教えるという口実で彼の家に遊びに行き、観察した内容を文章に書き起こしてきたわけですが、その文章がなかなか“読ませる”ものだったために、「皮肉っぽくて良くない」だのなんだの言いながら読んじゃってるジェルマン夫婦、と。

受け持っている生徒の中では最も文才があると思われるクロードに、不満はありつつも「プロになる才能」があると見込んだジェルマンは、彼の書く「続き」を読みながらマンツーマンで添削指導し、登場人物が実在することもわかった上で「もっとこういうキャラにした方が良い」などのアドバイスを送りつつ、どんどん彼に続きを書かせていきます。

だんだん先が気になっていくジェルマンは「♪Dang Dang 気になる〜」と美味しんぼばりに「フィクションで良いから書け」とせっつきますが、クロードは「ラファの家に遊びに行かないと書けない」、つまり自分の目で見たノンフィクションでないと書けないと訴え、続きを書くためにどんどんラファ家に食い込んでいき、やがて…というお話です。

こういう概要だと「最終的にクロードがラファ家を皆殺しするんじゃないのか…!」みたいな恐怖に震えそうになりますが、その辺は安心してください。そんな陳腐でラクな展開に逃げるお話ではありません。それだけにリアルだったし、リアルだからこそ「一家惨殺」よりももっと怖い、ありそうな生々しさがなかなかグッと来るお話でした。

テーマが小説(作文)で、作家志望だった国語教師が入れ込んで完成度を上げていくというようなお話なので、それだけにかなり文学的な映画でもあると思います。はっきり言って「友人宅を観察する男の子の目線」の物語を追うだけというシンプルな内容ではあるんですが、物語の中でもう一つの物語を紡いでいる入れ子のような構造が面白く、またうま〜くフィクションなのかノンフィクションなのか、現実なのか物語(小説)なのか境界線をあやふやにしながら進む(良い意味での)意地の悪さみたいなものが良かったですね。

そう、結局最後までその「フィクションなのかノンフィクションなのか」が結構効いてくるんですよ。

元々は「ラファの家に行かないと書けない」、つまりクロードは見たままを書いていると言っているんですが、途中でジェルマンのアドバイスによって脚色も活用するようになり、そのことでジェルマン自身も「完全なノンフィクション」ではないと思いながら読み進めるわけです。

そもそもテーマ自体に不穏さを感じているだけに、元から「フィクションだと思ってる」テイでいないと何かあっても困る、みたいな逃げの回路が働いていたのも間違いないでしょう。

要は「本当だろうが嘘だろうが面白ければいい」というようなスタンスでクロードに書かせ続けた結果、「マジだったらヤバいんじゃないか」みたいな展開の方にだんだん…Dang Dang 足を踏み入れていくその「元に戻れない」感覚がなかなか意地悪で面白いんですよ。これが。

やっぱりなんでもそうだと思うんですが、「あ、これ面白いかも」って興味を持ったら最後、どうしても先を知りたくなるじゃないですか。

よくあるパターンだと、話してる最中に相手が言いかけた言葉を引っ込めたときとか。「そう言えばあれ…ああ、まあいいや」みたいな。絶対聞いちゃうでしょ。「なになに最後まで言ってよ」って。

そういうやり過ごせないものに出会ってしまい、「これ続けさせていいのかなぁ」と思いつつも気になっちゃうから書かせた結果、はてさてどうなるのかという…やっぱりね、一言で言うと「底意地が悪い」ですよ。この映画。

「止めた方が良いのはわかってんでしょ? でも気になるから続けさせるよね?」っていうさー。「やめてぇ…」「やめてもいいのかい?」みたいな。ドスケベですね。この監督は。絶対。そういう大げさに言うと人間の性みたいなものを引力に利用したなかなかなお話ですよ。

まさに「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」ってやつですよ。見てたらダメなんだろうな〜とわかっていながら気になるから見ちゃう。で、結果どうなのよと。書きませんけども。そういうお話ですよ。

こういうお話は得てして劇的にしすぎて興ざめ、みたいなものが多い気がするんですが、この映画は伏線含めてやりすぎることがなく、それだけに余計怖いわ、っていうのがまたお上手だと思います。「上の階に殺し屋が住んでるらしいよ」って噂よりも、隣の部屋の前にリカちゃん人形が山積みになってる方が怖いじゃないですか。なんか。そういう生々しさへの距離感がうまいな、と思います。

やっぱりハリウッド的な娯楽感はないだけに地味さも拭えないんですが、ただじわじわと噛むほどに味が出るような、なかなか捨て置けない映画ではないかなと思います。いい感じにゾワッとさせていただきました。

危険なネタバレ

最後の最後に自分(ジェルマン)に降り掛かってくる、っていう展開はお見事でしたね〜。ボヘーっと観ていたので試験内容盗難の件も後に生きてくるとは全然思ってませんでした。普通伏線だって気付くはずなんだけど。ボンクラでサーセン。

ラファの自殺描写の辺りから虚実ないまぜ感が強まってきていただけに、それがそのままジェルマンの疑心暗鬼につながる作りもお見事。思わせぶりな見せ方もいいですよね。でもドア開けたら荷造りだった、っていう。あの辺でスカすのもよりリアルさを強調していてよかったと思います。

が、それだけに…ラストシーンのアパートでの銃殺はマジいらねーなと思いました。別に重要なシーンでもなんでもない、「世間では今日もいろいろあるよ」というような意味しかないシーンだと思いますが、それだけにあんな劇的な日常を差し込む必要ないでしょ、って。あそこは本当にもったいないと思う。銃声で余計な安っぽさを獲得してしまったような…。

ただ職も妻も失ったジェルマンが、それでも友達のような存在となったクロードとともにちょっとした希望を感じさせるようなエンディング、っていうのはなかなか劇中の底意地の悪さとは打って変わって妙な爽やかさがあり、片の付け方としては良いものだと思います。この展開で最終的に救いようがない終わり方だとかなりしんどい映画になった気がする。「鑑定士と顔のない依頼人」みたいなエンディングとか。

なんだかんだクロードも普通の子で、ジェルマンもいろいろあったけど「それでもまだ人生は続くしね」みたいなほろ苦さもありつつの終わり方は割と好きでした。この先、二人で共著でも書いてヒットでもしてくれれば…みたいな願望を込めつつ。

このシーンがイイ!

最終盤、一気に見せきる展開はお見事でした。終わり方含め、終盤の15分ぐらいは見どころ。

ココが○

やっぱり劇的すぎない、破綻していないところが良いところかなと思います。なんともフランス映画っぽい皮肉もありつつと言うか…。どこでどんな分岐点があるかわからないのが人生の怖いところやで。

ココが×

やっぱり全体的にかなり地味だし、結構中だるみ感も強いです。あっという間に見せきるタイプの映画でもないのは確かでしょう。

MVA

フランス映画だと思って観始めたらクリスティン・スコット・トーマスが出ててびっくり。フランス語めっちゃうまいんですね。おまけにらしくない(?)普通の奥様って感じで。結構な歳だけどやっぱり雰囲気があって良かったです。

ラファの母親が「毛皮のヴィーナス」のおばちゃんでした。さすがに内容が違うので全然違ってこれまたびっくり。彼女が毛皮のヴィーナスのようにドSだったらまた全然違った映画になっていたに違いない…。(当たり前)

ということでこの人にしましょう。

エルンスト・ウンハウアー(クロード・ガルシア役)

文才のある怪しい高校生。

ひじょーに美少年感が強くてですね。眼力の強さがそのまま嫌な予感につながるような、なかなか良いキャスティングだったと思います。

静かな演技っぷりもまた良かったですね。賢そうな雰囲気がよりリアルさにつながっていたんじゃないかと。

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