映画レビュー0833 『デイブレイカー』

またも例のやつです。

結構グロそうな雰囲気もあるしおそらく普段は観ないタイプの映画なんですが、オススメされたので観ることにしました。

デイブレイカー

Daybreakers
監督
マイケル・スピエリッグ
ピーター・スピエリッグ
脚本
マイケル・スピエリッグ
ピーター・スピエリッグ
出演
クローディア・カーヴァン
マイケル・ドーマン
音楽
クリストファー・ゴードン
公開
2010年1月8日 アメリカ
上映時間
98分
製作国
アメリカ・オーストラリア
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

デイブレイカー

人口の9割がヴァンパイアとなった近未来。人類は滅亡寸前で、ヴァンパイアの食糧(血)不足が深刻な問題になっていた。そんな中、大手血液製造会社で代替血液の研究をしていたヴァンパイア・エドワードは、ある日人間たちの乗った車と事故を起こし…。

ありがちな構図も斬新な設定のおかげで新鮮。

8.5
人間がほぼヴァンパイアに切り替わっていった未来での食糧危機
  • ヴァンパイアは異質なものではなく、「不死になった人間」のような存在
  • 食糧である人間(の血)は絶滅寸前、解決のため代替血液の開発が進む世界
  • ややグロもあるものの比較的観やすいホラー
  • 構図はありがちながら設定の良さで新鮮な物語に

一応ジャンル的にはSFホラーという扱いっぽいんですが、内容的にはスリラー映画に近い感じでしょうか。結構「ヴァンパイアが出てくるホラー」って言われるとグロありきで陳腐に驚かす系を想像しちゃったんですが、この映画は内容がしっかりしていてそういう陳腐さはまったくなく、またグロさも若干はあるんですが(個人的には)許せる程度のものだったので、これは観て良かったぜと。

ちなみに主演のイーサン・ホークは当初好きなジャンルではないために参加を悩んだらしいんですが、脚本を読んで内容の良さに主役を引き受けたそうです。そんな逸話がそのまま「B級ホラーじゃね?」的心配にお応えする良い回答になっていると言えるでしょう。

舞台は近未来、「人口の9割がヴァンパイア」といういきなり強烈な設定の世界です。

皆さんご存知の通り、ヴァンパイアに血を吸われた人間は同じくヴァンパイアになっちゃうわけですが、この世界でもいつ頃からか「ヴァンパイアの方が死なないし良くね?」的な流れがあったんでしょう、結局みんな“選んで”ヴァンパイアになったという世界です。まあ容姿的にも青白くなって目の色が変わる程度で人間とさして変わらないし、なんと言っても不老不死(≒外見もヴァンパイアになった時点から歳を取らない)で病気とも無縁なのでヴァンパイアこそが真にイケてるぜ的にみんなこぞって転職しちゃったんでしょうね。

これまたご存知の通りヴァンパイアは太陽に弱い(オープニングで太陽を浴びて風化する少女ヴァンパイアが出てきます)ので、人々は日中は地下を通り、車の窓は真っ黒に保護されて車外カメラに映る映像を見ながら運転するような世の中になっております。っていうかだったら車に窓付けなくてよくね? とか野暮なこと言わない。

まあ要するにですね、ヴァンパイアがマジョリティになったおかげで世の中の構造もそれに合わせた世界になっているわけですよ。夜に活動する人(ヴァンパイア)ばっかりだったりしてね。

そんな状況じゃあ余計にヴァンパイアになった方が得じゃないか、ってことで増え続けた結果、想定外の事態に陥るわけです。そう、それが食糧危機。

ヴァンパイアは人間の血液からしか栄養が取れないらしく、またしばらく人間の血液を摂取しないでいるとクリーチャー化して発狂しちゃうよってことで人間の血液が文字通り生命線になってくるわけですが、ただこぞってみんなヴァンパイアになっちゃったせいで人間は絶滅寸前になってしまい、おまけに彼らは見つかれば捕らえられて血を搾取されちゃうので隠れて暮らすようになっちゃったわけですよ。そりゃそうです。

そこで喫緊の課題として代替血液の開発の必要性が叫ばれ、その研究員として大手血液製造会社に勤めているのがイーサン・ホーク演じる主人公のエドワードですよと。

彼は人間の血液を好んでいないようで、立場上良い血を飲める環境でも飲もうとしない変わり種のヴァンパイアらしいんですが、それはつまり人間たちにも同情的(というか自身が人間だった頃の気持ちが強く残っているような感じ)で、ある日人間の車と事故を起こしたときにそのことを看過した人間の女性・オードリーに協力を求められ、彼女の手引きで会った人間、ライオネルにある話を聞かされるんですが…あとは観るがいい!

割と説明が長くなりましたが、おそらくもうこの設定を知った時点で「なんや面白そうやないか…!」と思うじゃないですか。多分。

結局構図としては、この前の「リベリオン」とほとんど一緒なんですよね。細かく書くとアレなんで書きませんけども。

もっと言えば「ランナーランナー」だって同じ構図だし、アレも一緒だしアレも一緒だし…って感じでもうかなり使い古された構図ではあるんですよ。ベタ中のベタで。本当にこういう形の話は多いです。

ですが…! もう設定が唯一無二なので全然ベタな感じがしない、むしろ新鮮に楽しめたのがとても良い映画だなと思います。

アクションが好きであればおそらく「リベリオン」の方が面白いなと思うんでしょうが、僕としてはリベリオンで感じた「設定は良いのに詰めを放棄してアクションで乗り切った」不満がそっくりそのままこっちでは解消されたような印象で、きっちり設定の良さを活かして最後まで綺麗に(この映画における)解を用意してくれたところに非常に満足しました。

その“解”の部分は当然ながらネタバレになるので書けませんが、この映画の巧みなところとしては

  • 細かい説明が必要ないヴァンパイアの特性(血が好き・太陽に弱い・噛まれると伝染する・不老不死等)のおかげで無駄な説明がいらない
  • 現実には起こり得ない世界だけに説得力を気にせずギミックを仕込みやすい
  • そのギミックから導き出される終盤の展開の巧さ

辺りが上げられるかなと。

本当に終盤の展開は一見の価値ありで、まるで(文字通り)オセロのようなひっくり返りっぷりに気持ちよさすらありましたね。なるほどそういう話かと。

「リベリオン」もこういう気持ちよさがあればもうちょっとグッと来たのにな〜と思いつつ。観たのが近かっただけにどうしても比べちゃいますね。

ダークな雰囲気のSFが好きな人であれば間違いなく観ておいて損はない映画だと思います。

ガタカ」ほどの傑作ではないにせよ、主演もイーサン・ホークだしなんかそれっぽい雰囲気あるじゃん? みたいないい加減なニュアンスでオススメしておきましょう。面白かったです。

ネタバレイカー

ちょろっと本レビューの方の補足。

まず構図について。これはいちいち説明する必要も無いですが、「権力者(悪役:A)に立ち向かう内部の人間(主人公:B)と彼を引き入れる少数派(C)」という形。

この映画ではAが社長、Bがエドワード、Cが人間。

「リベリオン」ではAがファーザー(のフリをしていた副総裁)、Bがプレストン、Cがユルゲン率いる地下組織。「ランナーランナー」ではAがベンアフ、Bがジャスティン・ティンバーレイク、CがFBI。

本当にこの構図って多いんですよね。それでもこの映画は新鮮に思えたのは、やっぱり設定の勝利なんだと思います。

特に終盤の「人間に戻った元ヴァンパイアの血を吸うと人間に戻る」ギミックは見事で、1人の犠牲で大量に人間が増えていく展開は若干グロいながらも爽快感があり、同時に悪役(社長)の制裁も兼ねているという素晴らしい解決方法だったと思います。(なんで主人公とオードリーコンビにむしゃぶりつかないんだとか細かいことは言っちゃダメ)

映画が終わった後、終盤の展開と同様に一人ひとり街で食い荒らされて死んでは人間が増えていくのか、はたまた「このままじゃやばい! 献血だ!」と何らかのシステムを作って人間の血を提供していくのか、ちょっとその後の世界も気になるところです。今度は人間だらけになっちゃってヴァンパイアがレジスタンス化して永遠に繰り返されたりしてね。鶴瓶犯人回の古畑任三郎かよ!!

このシーンがイイ!

特定のこのシーンでグッと来た、みたいなのはあんまり無かったんですが、「ヴァンパイアの世界」なので全体的にダークで暗い雰囲気なせいかどのシーンも映像が綺麗だったのがすごく印象的でした。ライティングとかもすごくこだわってそう。

ココが○

やっぱり設定でしょう。ぶっ飛んでる設定だけど内容はしっかりしているのがとても良い。

ココが×

一応はそれなりにグロいので、グロ嫌いな方は少し注意した方が良いと思います。でも言うほどでも無いので相当弱い人でない限りは大丈夫じゃないか…という気も。

MVA

ウィレム・デフォーがちょっと細すぎて心配になるくらいだったんですが、ただ役どころが美味しすぎたので良かったねと思いつつ、やっぱりこの人かなー。

イーサン・ホーク(エドワード・ダルトン役)

人間の血が好きではない穏健派(?)ヴァンパイア。

やや気弱そうで優しそうな雰囲気がまさにぴったり。ついでに言えばヴァンパイア的な色白メイクもぴったり。

その後の展開にも合ってたと思うし、やっぱりイーサン・ホークはいいなーと改めて。この人もなんとも言えない他にない魅力がある役者さんだと思いますね。こういう役は本当に似合う。

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