映画レビュー0992 『ディーン』

この日もネトフリ終了間際シリーズでございます。

ネットのレビューで「(500)日のサマーが好きなら絶対観るべき!」と数人の人が書いていたので、じゃあってことで。

ディーン

Dean
監督

ディミトリ・マーティン

脚本

ディミトリ・マーティン

出演

ディミトリ・マーティン
ケヴィン・クライン
ジリアン・ジェイコブス
メアリー・スティーンバージェン
ローリー・スコーヴェル

音楽

Mark Noseworthy
Orr Rebhun

公開

2017年6月2日 アメリカ

上映時間

87分

製作国

アメリカ

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

ディーン

何も変わらなくても、少しでも見え方が変われば良いのかもしれない。

8.5
母親を失ったばかりの青年、逃げるように旅した先で一つの出会いが…
  • ややこじらせ気味の成年男子が自分を見つめ直す期間のお話
  • 同じく妻を失った形になるお父さんの物語でもある
  • 大切な存在を失った人への優しい眼差しがグッと来る
  • イラストのシュールさも素晴らしい

あらすじ

主人公(ディミトリ・マーティン)がマジでふかわりょう感すごいです。アメリカ版ふかわりょうって感じ。名前もマーティンだし。ティンッ!

そのディミトリ・マーティン演じる主人公、ディーン。そうです映画のタイトルは主人公の名前です。ニューヨーク(ブルックリン)在住。

彼はつい最近母親を失ったばかりで、録音された母の音声を拠り所にしながらしんみり停滞中。仕事はイラストレーター兼コピーライターって感じでしょうか。以前イラストにちょっとしたコピーを添えた本を売り出したところ結構ヒットしたらしく、じゃあ次も売りましょうってことで2冊目の制作に取り掛かるもまったく進んでいない、という状態です。ちょっと一発屋の匂いが漂いだしたかも、みたいな。

ある日彼の父が「家を売る」とディーンに連絡してくるんですが、当然母親の思い出も残る家を売ることにディーンは反発、トントン拍子で売り先まで見つかったにも関わらず、ディーンは判断を引き伸ばしてその問題から逃げようとばかりに西海岸(サンフランシスコだったかL.A.だったか)へ小旅行に出てしまいます。

その旅行先で一人の女性と出会ったディーン、これは恋の予感…! なんですが後は観てどーぞ。

大人になりきれない大人の青春

「観てどーぞ」と言いつつですね、現状日本(語)で観るにはかなりハードルの高い映画のようです。劇場公開はもちろんソフトも出ておらず、配信・放送系に頼るしか無い模様。このレビューを掲載する頃にはもうネトフリでは(復活する可能性もありますが)終わってしまったので、余計に観るのが大変。

ですが、例によって「なんでこんな観る機会が無いんだよ!」と怒りたくなるぐらいに良い映画でした。こういう「観れば良い映画なんだけど日本では観るのが難しい」映画、たくさんあるんだろうな…。

ジャンル的にはコメディタッチのヒューマンドラマと言った感じで、「サマーが好きなら」の説も目にしていただけに、「なんだかおかしな物語」とか「フローズン・タイム」みたいな、よくある「青春コメディ恋愛ドラマ」風味かと思ったんですが、それよりかは若干年齢層が高い、大人の映画といった印象。主人公もおそらく30代って感じだし。ただ雰囲気としてはあの辺と似たものがあるので、好きな人であれば観て損はしないと思います。

もっとも「(500)日のサマーが好きなら」というのは少々同意しかねる面もあり、あの映画は「恋愛映画じゃない」と言いつつド恋愛だったのが良かったんですが、こちらは恋愛よりも主人公の成長と家族の物語の側面が強いかなと思います。

大切な人の代わりに新しく別の大切な人ができました的な話というよりは、人生のうまく行かなさを味わいながらそれを受け入れてどう前に進むのかを描いた物語になっていて、そこが「恋愛映画」とは違って良い部分だな、と。(恋愛映画が悪いわけではなく、違った良さが感じられた映画という意味で)

絶妙なほろ苦さ

完全にアメリカ版ふかわりょうである主演のディミトリ・マーティンさんですが、映画情報に書いた通り監督と脚本も兼ねています。

おまけに劇中ちょくちょく挟まる「ディーンが描いているイラスト」も実際に彼が描いているらしく、きっと多芸多才な人なんでしょうね。ふかわも割と多芸多才だしね。やっぱり似てるね。

このシュールでちょっとシニカルなイラストもかなり映画の雰囲気に貢献していて、主人公の感情を代弁しつつ、誰もが抱く「なんか人生ってうまくいかないよね」的な共感を引き出してくれて感情移入も高まります。

ディーン自身は割とクセのあるタイプだし、ちょっと嫌なヤツだなと思う部分もあるんですが、ただそれも母親を失ったばかりで自暴自棄になっているような面もあるだろうし、その痛みが見える分嫌いになりきれない感じがまた良いですね。ただなんでモテるんだよとは思ったけど。

この手の「主人公成長系」としては現代の映画らしく、劇的に変わったり急に物事がうまく回り始めたりはしない辺りもリアルで好感が持てます。そうだよね、人生ってほろ苦いよねと思わせる、そのほろ苦さが絶妙なお話でした。

今つらい人に

ご存知の通り、僕は1月に最愛の家族である愛犬を失ってしまったので、終盤の「大切な存在を失った人に対する眼差し」はまさに我がことのように感じられたし、結構な量の涙を流しました。そんな予定じゃなかったんだけど。

すごく笑えるわけでもすごく感動できるわけでもない、割と淡々としつつリアルな一社会人の姿を描いた映画だと思いますが、その奥には「痛みを持つ人への優しさ」を強く感じる映画だと思います。

割とこの手のオシャレ感漂う映画は「どうよ」的に“押し付けがましくないフリをした押し付けがましい功名心”みたいなものを感じがちな面があると思うんですが、この映画はそういう感覚もなく、きっとディミトリ・マーティン自身がなんらかの痛みを負った経験を糧に作り上げた映画なのかな、となんとなく思います。

なかなか良い映画なだけに…観る機会がかなり限られるのがとても惜しい。今つらい人に観て欲しい映画ですね。

このシーンがイイ!

どうでもいいシーンですが、スーツケース蹴っ飛ばして拾いに行くシーンとかあるあるすぎてよかった。あるあると言えばふかわだし。

あとはやっぱりお父さんが引っ越した後の二人の会話かな…。ああいう親子、つくづく羨ましい。

ココが○

気軽に見られる雰囲気と長さ、その割にしっかり心に染みるストーリー。なかなかの良作ですよこれは。IMDbでは評価が低いし、もしかしたらこのウジウジ感は日本人の方が合うのかもしれない。

あとそうそう、劇伴がすごく良いです。染みる。サントラ欲しくなるレベル。でもやっぱり売ってない。

ココが×

人によってはちょっとカッコつけてる感じがしちゃうのかもしれない。すごく「文化系の映画です」って感じはするので、体育会系の方々は気に入らないかも。多分まったくピンとこない人もいそう。

MVA

ディミトリ・マーティンも良かったんですが…でもやっぱりこの人かなぁ。

ケヴィン・クライン(ロバート役)

お父さん。

まあ説明不要の名優ですからね、この人は。そりゃ良くて当たり前ですよ。ディーンとは全然似てなかったけど。

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