映画レビュー0887 『アメリカの友人』

ここのところネトフリ終了も控え目になってきたので、今回はBS録画より。サスペンスが観たいぞと思って選んだんですが…。

アメリカの友人

Der amerikanische Freund
監督
脚本

ヴィム・ヴェンダース

原作

『アメリカの友人』
パトリシア・ハイスミス

出演
音楽

ユルゲン・クニーパー

公開

1977年6月24日 西ドイツ

上映時間

120分

製作国

西ドイツ・フランス

視聴環境

BSプレミアム録画(TV)

アメリカの友人

サスペンスより人間ドラマ。ところどころわかりにくいものの味がある。

6.5
余命幾ばくもない男に殺人を依頼する男
  • 友人への借りを返すため、ある先の長くない男を殺人実行犯として斡旋する男の話
  • 斡旋した男と依頼された男の間に奇妙な友情が芽生えていく
  • サスペンスというよりドラマ色が強い静かな物語
  • 「太陽がいっぱい」の後の話という設定

あらすじ

そんなわけで「サスペンスが観たい」と思ってチョイスしたものの、全体的に淡々としていて静かな人間ドラマ中心の映画で、サスペンス的な要素はあくまで添え物。でもこれはこれで悪くなかったですね。

割と「察しろよ」的な展開が多めでわかりづらい面は否めないし、面白かったかと言われるとなかなか微妙なんですが、ただ妙に後に残る印象深さもあったし、もう一度観てみたいと思わせる何かがある映画でした。

主人公はデニス・ホッパー(若ぇ)演じるトム・リプリー。…ん? トム・リプリー…「太陽がいっぱい」と同じ名前じゃね? と思ったんですが実際同一人物らしく、彼を主人公にした『トム・リプリーシリーズ』の3作目が原作だそうです。あれ捕まってなかったのかよ…!

あの超絶イケメンだったトムが味のある中年になったよということで思うところもあるわけですがまあそれはいいとして。

彼は実際のところ何を職業にしているのかは不明ですが、物語冒頭で知り合いの画家に贋作を描かせて捌いたりして…まあ“あの後”も真っ当な人間ではないようです。今は(西)ドイツで生活しているご様子。

そんな彼の元に一人の友人・ミノーがやってきて、「以前の“貸し”を返してもらうためにある男を殺してくれる人間を探してくれ」と頼まれます。

渋々承諾した彼は、少し前にオークションで知り合い、失礼な対応をされた額縁職人のヨナタンに白羽の矢を立てます。なんでも彼は血液の病気(白血病?)で先が長くないらしく、また無礼な態度で気に食わなかったのもちょうどいい…ということで彼を“死刑執行人”としてミノーにご紹介。

ヨナタンとミノーの間で殺人をやるやらない一悶着ありつつ計画が進行する中、トムはそれとは無関係を装ってヨナタンの元へ出向き、少しずつ親交を深めていきます。

自身の病気の深刻さも半信半疑の中、ヨナタンは家族のためにお金を残すべく果たして殺人に手を染めるのか…そしてそこに「関知していない」素振りのトムはどう絡んでくるのか…あとはご覧くださいまし。

サスペンスよりも人間ドラマが中心

殺人自体は大した内容ではないし、被害者の扱いも雑だしで、「殺人そのもの」に重きを置いたお話ではありません。

結局のところ「ミノーに頼まれたトムがヨナタンを巻き込み」、「自身の病気もあって事件に関わっていくヨナタン」と、その裏で手を引いているミノーの人間関係と流動的な立ち位置の上に、それぞれの友情が絡んでくる人間ドラマと言ったところでしょうか。

特に最初は「気に食わなかったしそろそろ死ぬみたいだからちょうどいいだろ」とヨナタンを選んだトムと、そうとは知らずに自分の人生と家族に向き合って孤独を深めていくヨナタンの関係性はなかなか味わい深く、語りすぎない映画の雰囲気と相まってなんとも言えない良さがありました。

全体的にわかりづらい

基本的にセリフが少なめであまり状況を語ろうとしない映画なので、結構集中して観ていないとわかりづらい面が多い気はしました。

終盤はまあ良いんですが、そこに至るまでが割と「わかりまっしゃろ」的にあまり説明もせず、「あれどうなったん?」的な話も結構多いので、観ていて深く理解するというよりは、「きっとこう思ったんだろうな」とか「あれはこういうことだったんだな」とか自分なりに解釈して肉付けをしていく必要がある映画だと思います。

そこが味でもあるし印象深さにもつながっていると思うんですが、ただその辺ある意味では詰めの甘さにも見える面はあるので、やはりサスペンスというよりは人間ドラマなんでしょうね。

初めは(お互い)気に食わない相手だと思っていた男が、妙なきっかけによって“友人”となって行くも、そこはやはり介在する事情が特殊すぎて「普通の友人」になれない二人、というのはなかなか心情を察する余地もあって良いです。

映像で感じる心象

そんな感じで言葉少ない“間”のあるやり取りを見つめる映画なんですが、その雰囲気に大いに貢献しているのが古いドイツの街並み。

まだまだ雑多で古い建物中心の風景はやや彩度が低く、その映像自体がこの映画の渋さや大人の男感を醸し出している気がして、少し古めの映画ということを除いても、これまた味のある雰囲気を作り出していたと思います。

天気もピーカン的な好天はほとんどなく、なんとなくいつもどんよりした感じで、それがまたより映像の渋みを強調しているようで良いなと。

登場人物の心情もそんなにスカッと明るい感じはなく、またわかりやすいストレートな状態でもないのがその天気や映像の彩度に現れている気がして、そういった映像面での雰囲気作りの巧みさはすごく感じましたね。

そんなわけで直接的な描写で言えば結構わかりづらいし、率直に言って「面白かった!」と言うような映画ではないんですが、でもなーんか心に残る魅力のある映画でした。

ネタバレの友人

すごく気になったのが、最初の殺人直後に「監視カメラにバッチリ映ってまっせー」って散々ご紹介しておいて足が付かないのはなんだったんだ、と。

てっきり捕まるもんだと思ってたのに最後までバレなかったようなので、だったらあの監視カメラ映像のシーンいらないんじゃないのと。緊迫感出したかったのかもしれないけどさ。

なにせそんなに理解できていないのでとてもレベルの低い疑問かもしれませんが、最後ヨナタンはなんでトムを置いて行ったんですかね?

すべてが終わった開放感と、二度とこういう話に関わりたくない気持ちから、なのかなぁ。その心情がちょっと気になる、そんなエンディングでしたね。

このシーンがイイ!

特段ここが、っていうのはあんまり思い出せないんですが、ただどのシーンもすごく絵になる雰囲気の良さは感じました。

なーんか妙に記憶に残ってるのは、高架道路(?)の縁をトムがスタスタ歩くシーン。落ちたら死ぬぞ、って高さで特に気にせず颯爽と歩くデニス・ホッパーがかっこよかった。

ココが○

この映像と雰囲気はなかなか他にないものだと思うんですよ。舞台もアメリカほど見慣れた場所ではないこともあるし、程よい古さも相まって、風景を観ているだけでもしみじみ良いなぁと思う面がありました。

ココが×

やっぱり一番はわかりづらい部分だと思います。淡々としつつ「察してね」という作りなので、観る時は集中できる環境で観た方が良いでしょう。

MVA

この日は特に何も考えず、たまたまこの映画を観ようと選んだんですが、実はヨナタン役のブルーノ・ガンツが亡くなった翌日だったんですよね。奇しくも追悼と言う形になりました。

そんなこともあって、デニス・ホッパーも良かったんですがこちらの方に。

ブルーノ・ガンツ(ヨナタン・ツィマーマン役)

殺人を依頼される先の長くない男。

ものっすごい普通で静かな男性なんですが、それ故生々しくリアル。

見た目も中身も派手さがなく、真面目な人なんだろうなぁと思わせる演技力は見事で、それ故「普通の男が殺人に手を染める」リアリティを感じさせてくれました。紛れもなく名優と言って良いでしょう。

ご冥福をお祈りします。

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