映画レビュー0521 『レッド・バロン』

今年は日本としてもいろいろと戦争を考えざるを得ない年だと思いますが、それ故に戦争映画を観るいいタイミングな気がします。ということで観てみましたドイツの戦争映画。

レッド・バロン

Der rote Baron
監督
ニコライ・ミュラーション
脚本
ニコライ・ミュラーション
出演
マティアス・シュヴァイクホファー
フォルカー・ブルッフ
音楽
ディルク・ライヒャルト
シュテファン・ハンゼン
公開
2008年4月10日 ドイツ
上映時間
129分
製作国
ドイツ

レッド・バロン

第一次世界大戦中のある日、ドイツ軍のエースパイロットが死亡。士気高揚のため、代わりの英雄が必要と考えたドイツ軍上層部は、敵側のエースパイロットを撃墜したリヒトホーフェンに勲章を授与、“不死の英雄”として祭り上げる。快調に撃墜数を増やしていくリヒトホーフェンだが、やがて親友たちが一人ひとりと戦死していき、過酷な現実を目の当たりにする…。

とても真面目ながら、やや丁寧さに欠ける。

6.0

ドイツの戦争映画と言えば、やはり第二次世界大戦のナチス・ドイツが一番描きやすい題材になると思いますが、この映画の舞台は第一次世界大戦、実在したエースパイロットに焦点を当てた伝記に近い戦争映画です。

歴史に名を残すパイロット、マンフレート・フォン・リヒトホーフェンの生涯を、家族、親友、敵軍パイロット、そして恋人といった周りの人たちとのドラマを中心に描いた作品になっております。

率直に言って、とても真面目で、いわゆる「良い映画」と言える内容なんですが、ただ全体的にかなり脚色を嫌っている感じがあり、良い意味でも悪い意味でもテクニックを避けすぎている印象。

前フリもかなりサラッとサラサーティながらさっくり親友が戦死、とかあっさりしすぎて物足りなさも感じます。やられたシーンも無く、場面が変わると死んでます、みたいな場面が結構あるし、フラグ→即回収、みたいな呆気無い展開も多いので、感情的にグッと高まってやられた! みたいな感覚はまったくありません。これはちょっともったいないかな、と。

おそらくドイツでは「誰もが知っている」ようなポジションの人の物語だろうと思われるので、それ故史実部分はあまり直接的な表現をせずにサクサク進めた…のかもしれませんが、だったらなんで英語の映画にしたんだろう、という疑問も。別にそんなにこだわりは無いんですが、せっかくドイツでドイツの映画を作るんだから、そのまま素直にドイツ語でやればよかったんじゃないの? って気がするんですよね。

なんとなーくですが、英語自体ぎこちなさを感じる役者さんも結構いたし、これまたちょっともったいないんじゃないかな、と思いました。おそらく英語の方が輸出もしやすくてコスト諸々メリットが多いのかもしれませんが、その割に状況説明や人物描写に丁寧さが欠ける部分があって、ちょっとやってることがチグハグな気がしないでもなかったですね。

「知ってる」ドイツ向けならドイツ語で、「知らない」海外向けなら内容をもっと丁寧に、という個人差があります的な感想。

そういうやや丁寧さに欠ける部分に加え、(半分)伝記映画を実直に描きました、という少しジャンル的にも難しい部分があるためか、「映画としての面白さ」としては少し足りていないかな、と思います。

ただ、最初に書いたように良い映画であることは疑いようがありません。すごく真面目に作っています。

これが逆にお涙頂戴でガンガン演出臭さが入ってくるともう一気に観ていられなくなるレベルまで落ちので、その辺りのさじ加減ってほんと難しいよなぁ、と作り手側でもないくせにしみじみ思った次第。もう一歩、あざとさがあっても良かったかな、と。

かねてより書いていますが、僕は観客に媚びるほど「わかりやすく作っている映画」は大嫌いなので、こういう「間を脳内で補完して理解してね」っていう作り方は基本的に賛成ではあるんですが、それにしてももうちょっと、感情に訴える作りでも良かったのかなぁという気がするんですよね。

「体に良いラーメンを」っつって贅沢な素材を使った超薄味のラーメンを作ってもなかなか流行らない、そんな感じ。もっと醤油ドバドバ、化調も入れやしょうぜジャーマニー、的な。

ただ入れ過ぎると「クソだなこのラーメン」ってなっちゃうんでね。そこが難しいよね、というお話です。

このシーンがイイ!

ラスト近く、主人公が久々に空へ行って戻ってきた後、恋人の看護婦さんと会話するシーン。静かながら端的に戦争の狂気を感じさせていて、とてもいいシーンだな、と。男ならああいう場面でああいうことを言うのもわかるし、そこから後には引けないのもよーくわかるんですが、そういう立場に人を追い込んじゃう時点でやっぱり戦争って異常だよな、と思わされるわけです。

ココが○

そんな感じで、表立って「戦争ってこんなヒドイんだぜ」と説教モード丸出しの話にはしていないものの、やっぱりそこかしこから「おかしいぞ」って価値観を差し込むのは、戦争映画としては大切な部分でしょう。

あとは敵軍パイロットの使い方。これも実話の部分中心のようですが、こういうドラマはベタですがたまらないものがあります。

ココが×

上に書いた通り、フリの利かせ方、引っ張り方がもったいない印象。ちょっと真面目過ぎてね。授業とかで見せられそうな映画というか。やっぱりどうしてもこう真面目だと観ていて飽きてきちゃう面も否定出来ないので、その辺りのバランスが残念。

それと、誰が誰だかわからない空中戦。空中戦自体は悪くない作りだったと思いますが、(あまり慣れてない役者陣ということもあって)かなり人物の見分けがつきにくく、誰が怒ってるのかとか誰が落ちたのかとかよくわからず。もったいない。

MVA

主演のマティアス・シュヴァイクホファーは、若い、いかにもドイツ系のイケメンって感じが良かったんですが、時折見せる“目”に若干狂気が宿っている感じがして、そこがまた良かったですね。若いながら、戦争の英雄、ってイメージをうまく見せている気がしました。こういう人は悪役をやるとすごく面白くなると思うんですが、まだまだお目にかかる機会は少なそう。

今回はそんな彼を差し置いて、こちらの方をチョイス。

ティル・シュヴァイガー(ヴェルナー・フォス役)

主人公の親友のパイロットの一人。

今作では数少ない、見覚えのある役者さんの一人だったんですが、とても渋く、安定感のある「ザ・脇役」という存在感が良かったです。ただ主人公とちょっと歳が離れすぎな気はしますが。

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