映画レビュー0169 『ヒトラーの贋札』
最近は大体週に2本ぐらいの観賞ペースですが、録画に関しては平均すると週3本ぐらい。ってことは…減らねぇYO!
一生レンタル復帰できないような嫌な予感を抱きつつ、今日も消化。余裕があったらもう1本ぐらい観たいの心。
ヒトラーの贋札
「ドイツ産」の重み。
劇中でも贋札作りをサボタージュする重要人物として登場する「ブルガー」という実在の人物がいるんですが、その彼の証言とフィクションを織り交ぜて作られた映画とのことで、リアリティと演出が程良く混ざった、良くも悪くも「こなれた戦争映画」といった風情。
さすがに戦時中、迫害されるユダヤ人が主人公なだけあって始終暗いです。笑い所は(当たり前ですが)一切なし。主人公は中年のおっさん、女性はオープニングとエンディングにちょこっと登場するぐらい…と華やかさゼロなので、(いつものことですが)興味の無い人にはサッパリ楽しめない映画でしょう。
映画そのものとしては、よくある「普通の善良な市民なのに…」みたいな面はなく、主人公が元々犯罪者だった、というのがちょっと他とは違って新鮮でした。一応は従順な囚人風なんですが、ところどころでアウトローな側面も出てくるし、その辺で少し他の設定が似た映画(戦場のピアニストとか)とは違った匂いがあった気はします。
それと、自分を逮捕した人物が、出世して作戦の指揮官としてまた登場し、主人公に協力してくれるといういきさつもなかなか面白い展開。
が、それがすごい「映画としての面白さ」に直結してるのか、というとそういうわけでもなくて、むしろ他のユダヤ人収容者たちと比べて断然環境のいいところにいる主人公たちの姿が、イマイチ「戦争の悲劇さ」というこの手の映画ではかなり重要だと思われる部分の雰囲気を伝えきれないもどかしさみたいなものはあったんじゃないかと思います。必死感が足りないと言うか…。悲劇は見せつけられるんですが、そこに悲壮感が足りないと言うか…。
そこまで重くしたくなかったのかもしれないし、もしかしたら「ドイツ産」という面が表に出たのかも…。と言うのが映画の中身に対しての感想ですが、実はその「ドイツ産」というところにすごく大きな意味がある気がしましたね。
まだそんなに遠くない、今も生きている世代もいる時代の「過去の過ち」を、自分たちの手で映画にした、という意味合い。
主人公はユダヤ人で、ドイツ人は(基本的に)悪として描かれていて、処刑のシーンも何度か出てくる。そういう過去を当事者が表現したことの重みというのは、ちょっと「同じような戦争映画」とは意味合いが違うのかな、と思います。
上にはああ書いたものの、それは映画自体の面白さという意味であって、時代の描き方としては特にオブラートに包んだような映画にも思えなかったし、その辺の勇気は大したもんだな、と感心しましたねぇ。
同じようなことを今の日本とか中国なんかが出来るのか、と考えると…。中国は…まず無理でしょうね。
日本は…。
このシーンがイイ!
ありきたりですが、劇中一番最後に出てきた処刑のシーン。どことなく「ショーシャンクの空に」の1シーンを思い出しました。やるせない。
ココが○
オープニングのオシャレな音楽に面食らいました。全然イメージが違ったので。でもその音楽がよかったです。当然ながら、収容所時代はあんまり出てこないものですが…。
あとは…淡々と、真面目な作り、でしょうか。
ココが×
当然のことですが、戦時下の話なのでそれなりに残酷だし、目を背けたくなるようなシーンもあります。と言っても、こういう映画の割にはソフトだとは思うので、そういうものを極度に嫌う人でなければ問題ないとは思います。
あとは…上にも書いた通り、地味だし華がないので、眠いときに観たら即グッスリでしょう。
MVA
主人公の人は、その風貌と言い戦時中という設定と言い、もしかして「善き人のためのソナタ」の人と同じ人じゃないかと思った節穴君なわけですが、今回の選定はこちらのお方に。
デーフィト・シュトリーゾフ(フリードリヒ・ヘルツォーク少佐役)
序盤、主人公を逮捕するまでは何となく小物っぽく、でも出世して軍服を着ると大物っぽく、でも将校としては少し優しすぎるんじゃないか…という感じからかいま見える「弱さ」みたいなものもなかなか。
まあ、でも正直なところこの映画では強烈な光を見せてくれた人はいませんでした。