映画レビュー0559 『狼たちの午後』

今回は久々に少し古い映画になります。

タイトルだけは結構有名な映画だと思いますが、アル・パチーノお馴染みのマフィア系映画なのかと思いきや全然違って、奇しくも前回同様、銀行強盗の話でした。たまたま。

狼たちの午後

Dog Day Afternoon
監督
脚本
原作
P・F・クルージ
トーマス・ムーア
公開
1975年9月21日 アメリカ
上映時間
125分
製作国
アメリカ

狼たちの午後

ある夏の日、ソニー他2人の男が小さな銀行に強盗に入る。しかしいきなり1人の少年が怖気づいて逃走、すぐに終わるはずが気付けば大勢の警官に囲まれていた。窮地に追い込まれた二人は、銀行員たちを人質に立てこもる。

リアルダメ強盗。

8.5

若き日のアル・パチーノ主演。

僕は勝手に「アル・パチーノ主演でタイトルに狼」という時点で、マフィアの男が世間に紛れて過ごす穏やかな午後に事件が…的なものを想像していましたが全然違いました。

フツーの男がとある理由により金が必要になり、ずさんな計画で銀行強盗に押し入ったお話。ちなみに原題の“Dog Day”は盛夏という意味らしく、中学生レベルの英語力で訳せば「ある暑い日の午後」ぐらいのタイトルなんでしょう。なんでこうなった。

オープニング、アル・パチーノの相棒らしき男が写った時に「あれ? これジョン・カザールじゃね…!」と一人ざわついたのですが実際ジョン・カザールでした。そしてアル・パチーノの役名がソニーということで、ゴッドファーザーファンにはたまらない映画と言えるでしょう。たぶん。

昨今の映画とは違い、オープニングで大々的に「リアルストーリーにインスパイアされた系だぜ」みたいな告知は出ないんですが、実際にあった銀行強盗事件を元に作られた映画だそうです。なんでも犯人がアル・パチーノに似ていたから主演がアル・パチーノになったとか。贅沢。

そんなリアルな事件を社会派の名匠シドニー・ルメットが監督した、っつーことでこれはつまらないはずがないぞ、と。

まず小さな銀行に三人の男が押し入るわけですが、いきなり下っ端の少年が「俺やっぱ無理っす(´;ω;`)」と逃げてしまい、その後も銀行にあるお金がやたら少なかったり、いきなり警官隊に囲まれたり…と計画のずさんさがすぐにわかる、前回の「インサイド・マン」とは正反対の“残念強盗”のお話です。

途中、ジョン・カザール演じる相棒のサルが「海外に逃げるならどこがいい」と聞かれ、「ワイオミング」とアメリカ国内の地名を出しちゃうことからもわかる通り、残念ながらあまり賢い人達には見えません。本当に普通のその辺の兄ちゃんがお金欲しさに強盗に入っちゃった感じ。そしてそこが非常にリアルで、確かにこのお粗末さは実際にあってもおかしくないリアリティがありました。

ただ、当然ながらそれですぐに解決、というわけではなく、人質をとっての立てこもり事件に発展しつつ、ストックホルム症候群よろしく犯人側と捕虜側の妙な信頼感も醸成され、ソニーはなぜか野次馬たちに英雄視されたりと、なかなか一筋縄では解決し無さそうな様子。そこにソニーの家族が連れてこられたりしながら人間ドラマ的な見所も交えつつ、果たして彼らはどうなるのか…という映画になっております。

もう40年前の映画になりますが、結論から言えばまったく色褪せない面白さでハラハラドキドキ、とても楽しませて頂きました。

さすがに美術面は当然として、警察の介入方法なんかも今よりもやや人情寄りな気がして良い意味で少し古さを感じる面はありますが、芯の部分の面白さはまったく今観ても問題がないレベルでしょう。

劇中で徐々に明らかになっていきますが、主犯であるソニーはどう見ても悪い人では無さそう。奥さんや母親との会話も日常の大変さが忍ばれるもので、同情せざるを得ません。この辺りの細かい舞台背景の描き方も丁寧かつわかりやすいもので、さすがシドニー・ルメット。

とにかくこの映画の良さは、実話から来る犯人たちの平凡さでしょう。作り物だからこそのキレ者感みたいなものがまるで無いので、本当にリアルだし、感情移入もしやすいです。なんでこんなことしたんや、と親目線で諭したくなること間違いありません。

そしてそんな平凡な犯人たちも、なんとか考えてうまくいく道を最後まで模索するので、当然ながら、早々に詰んだように見えたこの事件も最終的にどうなるのかは最後までわからず、きっちり尻尾まであんこが詰まってます。

一応ジャンルとしては犯罪映画だと思いますが、人間ドラマ寄りなので深さも感じられるし、アル・パチーノは魅せてくれるしで今の時代でも十分オススメできる映画でしょう。

アメリカン・ニューシネマ的な雰囲気、味わいもあるし、この時代ならではの良さがしみじみたまりませんでした。

このシーンがイイ!

「アッティカ!」ってセリフだけは知ってたんですが、ああ~この映画で出てくるのか~、とちょっと映画通になれた気がして嬉しかったです。

あとは映画自体とはあまり関係のない理由になりますが、ジョン・カザール演じるサルが、人質の女性に「タバコはやめろ、ガンになるぞ」的に諭すシーン。ご存知の通り、ジョン・カザールはこの数年後に42歳の若さでガンのために亡くなってしまうので、そのことを知っている身からすれば、なんともやりきれないシーンだなぁ…と複雑な気持ちになりました。

ココが○

リアルさ、登場人物の平凡さ。笑わせるつもりではないセリフで笑っちゃうような、頭の悪さが見え隠れするキャラクターは秀逸。実話系はさすがにこの辺が強いですね。

ココが×

中盤はやや中だるみ感がありました。その辺もうちょい切り詰めて短めにまとめてたらもっと良かったような気も。

MVA

やっぱりアル・パチーノとジョン・カザールの共演、っていうのはいいですねぇ…。んでもって当然ながらこの人かな、と。

アル・パチーノ(ソニー役)

この頃のアル・パチーノのいつもの感じ…ではあるんですが、やっぱりなんとなく小物感あり、でもなんとなく憎めない平凡さ、そして一生懸命に生きている雰囲気、どこをとってもさすがです。これ、主演が違ったら全然違うんだろうな…と思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA