映画レビュー1611 『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
なんとなくここのところ(シラートを除いて)しょうもない映画ばっかり観ている気がしたので、ちょっとちゃんとした映画を観たいな…と選びました。決してステイサム批判ではありません。
ただこれもコメディ系ではあるので結局お気楽チョイスではあるんですけどね…。
ダム・マネー ウォール街を狙え!
ローレン・シューカー・ブラム
レベッカ・アンジェロ
『The Antisocial Network』
ベン・メズリック
ポール・ダノ
ピート・デイヴィッドソン
ヴィンセント・ドノフリオ
アメリカ・フェレーラ
ニック・オファーマン
アンソニー・ラモス
セバスチャン・スタン
シェイリーン・ウッドリー
セス・ローゲン
ウィル・ベイツ
2023年9月15日 アメリカ
105分
アメリカ
U-NEXT(Fire TV Stick・TV)

この手の映画らしい安定の面白さ。
- 普通の会社員かつ有名でもない配信者が「この株好きだから買うよ」宣言
- その株はヘッジファンドが空売りしていたことから個人投資家 vs ヘッジファンドの様相を呈してくる
- 実際にあった「GameStop株騒動」を元にした映画
- ポール・ダノのふつーっぽさがとても良い
あらすじ
よくある金融実話系の映画ですが、これまたこの手の映画らしい軽めの観やすさもあって普通に面白かったです。
妻子とともに暮らす普通の男、キース・ギル(ポール・ダノ)はRedditの常連であり、「ローリング・キティ」のハンドルネームで株投資について顔出し解説していたりするYouTuberです。ただ配信を見に来る人は大していない模様。
彼はある日ゲーム小売店のGameStop株が安すぎると踏んで「好きだし買うよ」と配信で告知、ほとんど全財産を注ぎ込んで自らの保有株数と時価総額も公表し、オープンな形で投資の成果を発表し続けます。
一方、GameStopにはいくつかのヘッジファンドが「そろそろ倒産するだろう」と見越して空売りを仕掛けていました。
ローリング・キティの配信は徐々に広まってGameStop株が注目を集めだし、ジワジワ価格を上げていきます。
その流れはやがて社会運動のように加熱し始め、ニュースにも取り上げられたことでどんどん株価は高騰していきますが、そうなると空売りを仕掛けた側のヘッジファンドは膨大な損失が発生するため、看過することも出来ません。
じゃあどうするの、ってな話ですが…あとはご覧ください。
判官贔屓でわかりやすい
この騒動はコロナ禍真っ只中の話だったため、劇中でもマスクをしている演者が結構出てきてなかなかレアな映画です。コロナ禍に作られた映画でも大半は「映画の中ではコロナ禍ではない」のでマスク演技なんてほとんど出てきませんからね。
現実の出来事で演者が(役柄上必然的に)制約されるのもなかなか他にないことだと思うので、やはりあのコロナ禍の異常さが改めて感じられますがそれはそれとして。
観終わってから振り返るとそこまで鮮明に流れを覚えていないポンコツ野郎なので申し訳ないんですが、Wikipediaにあるように「ヘッジファンドに一泡吹かせるために個人投資家が団結して買い支えた」みたいな流れではなかったような気がするんですよね。最初は。いやほんと曖昧な記憶で申し訳ないんですが…。
ヘッジファンド側の動きは別で出てきはするんですが、それはそっちで閉じた話であって個人投資家側にその動きは見えていなかったはずなんですよ。ニュースになるまでは。
それよりも、最初に「買うよ」と宣言したローリング・キティ(ポール・ダノ)の配信を観て最初は「あんな株買うのおかしいでしょ」みたいな声が大きかったはずなのに、あまりにも自信を持って買い続ける彼に感化されて「ワンチャン上がったら美味しいかも」みたいに買う人が増えていく→ヘッジファンドが怪しい動きに気付く、という順番だったと思います。なので個人投資家たちが「格差社会に対する抵抗」のように言い出したのは後付の話で、最初は「変わり者のローリング・キティに乗っかってみる」ぐらいの感じだったと思います。まあ言ってみればちょっとしたイベントぐらいのノリですよ。
話が前後しますがある程度投資についての知識(と言っても大したものではないですが)が必要な話なので少々説明しましょう。
まず主人公のキースは「Redditの株式市場を扱うサブレディットの常連」なんですが、これは僕も詳しくはないもののまあ「5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の株式市況板の常連」みたいなものではないかと思います。そこで株式についての有象無象の情報を見たり発信したりしている、と。
加えて彼は「ローリング・キティ」という名前で投資についての配信をしてもいて、ある日目をつけたGameStop株を買うよと宣言、それがムーブメントを起こすわけです。
GameStopは世界最大のビデオゲーム販売店なんですが、これまたもはや時代的に厳しい商売なのは言うまでもないのでヘッジファンドに目をつけられて空売りされていた、と。
もはや日本では「ビデオゲーム専門店」が存在しないので比較するのも難しいですが…ゲオのようなイメージでしょうか。商材の幅の狭さからするとTSUTAYAの方が近いかもしれません。あちこち潰れてるし。(親会社のCCCはまた別だと思うのであくまでTSUTAYA限定の話)
「空売り」も一応説明しておくと、何でも普通は「ものを買うよと意思表示→売る」の順番ですが、投資においては「物がないのに売る」ことが可能で、その“売り”から入って「あとで買い戻します」という契約を結ぶのが「空売り」です。
つまり今が高くて将来的に安くなる(倒産は自ずとそうなる)と踏んでガンガン売ってしまい、二束三文になった時点で買い戻せばその差額で儲けることができるわけですね。それを狙っていたのがいくつかのヘッジファンドだったと。
そこでGameStopという株が(本体とはほぼほぼ無関係のところで)戦場として選出されてしまい、双方が激しい争い≒売買を繰り広げた結果どうなるんでしょうか、というお話になります。
この映画の面白いところは、ポール・ダノのビジュアルからしてよくわかるようにことさら「一般人」が強調されているところでしょう。一般人がヘッジファンドに戦いを挑む、その構図。
日本で言うところのいわゆる判官贔屓ってやつですね。もうそれだけで感情移入できるし面白い。
また一般人を強調するのと同時にヘッジファンド側も鼻持ちならない金持ちアピールに余念がなく、わかりやすすぎるぐらいに格差を強調しています。
また個人投資家側にはアメリカ・フェレーラが演じている、コロナ禍を象徴するかのような、また同時に「弱者」をより強く意識させるような「母子家庭で子どもを育てるママ看護師」さんが出てきます。
最前線で危険と戦うエッセンシャルワーカーが安い給料で資産もなく子どもを育てながら頑張っている一方で、ちょっと電話して金を動かすだけのヘッジファンドマネージャーはテニス場をさっさと作れとキレながら美味いもの食ってるだけで仕事をしている様子もないという。
こうして文章で書くとあざといぐらいにわかりやすい対極な存在ではありますが、とは言えこの格差は事実ではあるのでここでまた非常にいろいろ考えさせられてしまうわけです。
定番中の定番の描写ではありますが、この辺りもやはり過不足のない良い作りだったと思いますね。
そこにさらに主人公の家族、妻であったり弟であったり両親であったりが良いフレーバーとして主人公に影響を与えていて、等身大の人間がいかに戦っていくのかが描かれます。
弟がまたかなりのクソ野郎ではあるんですが大事なところではきちんと(物語上という意味での)仕事をしてたりもして、肉親の距離感や存在感をうまく表していて良かったですね。
ちょっとした勉強感もありつつ楽しめる
なにせ実際に起こった出来事の映画化なので説得力は言うまでもなく、こんなことがあったのかといい勉強になりました。
ご多分に漏れず「おれも買っておくんだったちくしょう…!」と思いましたが日本人がこの情報を得るのは難しすぎるよね、と自分を慰め。
観ていて「これ売り払って大金手にする以外に終わり方無くない?」と思ったんですがそんな単純な話ではなかったのも面白いところで、ちょっとした勉強感を得つつも娯楽映画としても楽しめるなかなかの良作です。
久しぶりにボロ株、手を出してみようかな…!(わかりやすく損するタイプ)
このシーンがイイ!
ベタですがやっぱり兄弟で走るシーン最高だったなー。「あ、やるんだ」って。
その前の兄弟シーンもこれまた位置づけとしてはベタなんだけど良かった。
ココが○
とかく投資絡みの話はわかりづらくなりがちだと思うんですが、なにせ主役が一般人なのでその分よりわかりやすく、より観客の身の丈に合わせたような作りになっていたのは密かに上手だったように思います。
あまり難しい金融知識を必要とせず、ふわっと観ていてもわかるような内容にしたのはテーマとしても正しいでしょう。
ココが×
重要なポイントとしては、上に書いたようにいつの間にか「一般人 vs ヘッジファンド」という大きな戦いになっていた、その転換点がわかりづらいところ。
もう少し「空売りしてるだとぅ!? 許せん!」みたいな動機付けが出てきた方が盛り上がったような気がします。
気付けば「株を持ち続ける=ヘッジファンド対抗」みたいな構図が出来上がっていたので、その辺りをもう少し丁寧に描いてくれたらな、と。
もう一つ、ヴィンセント・ドノフリオ演じる金持ちの存在がよくわからなかった点。いてもいなくても良さそうだし。
モデルとなる人物はいたはずなので、事件を詳しく知っている人であれば彼の存在についても意味がわかるんだと思いますが、正直映画を観ている限りではカットできる役柄だったような気がしてならないしそんな中途半端な役にドノフリオが使われているのも良くわかりませんでした。
MVA
弟のクズっぷりがなかなかでとても良かったんですが、まあ順当にこの人にしましょう。
ポール・ダノ(キース・ギル役)
主人公の一般人YouTuber。
演技的にすごく優れているとかは別にないんですが、もう見た目が一般人すぎて適役すぎました。
この人、「ザ・バットマン」のときも印象的でしたがやっぱり個性派として面白くなりそうな存在だと思うんですよね。タイプはだいぶ違いますが第二のブシェミになれそうな予感がします。
もう一人、セス・ローゲンがいつもの感じとはだいぶ違う役でこれも面白かったです。ふざけてない役初めて見たかも。
セバスタは相変わらずしょっぱい役だったけど。自分からしょっぱい役選んで行ってるのかな!?


