映画レビュー1126 『プラットフォーム』

一部で話題沸騰中の映画なんですが、これまたビッグウェーブに乗ってやろうと観ることにしました。

プラットフォーム

El hoyo
監督

ガルダー・ガステル=ウルティア

脚本

ダビッド・デソラ
ペドロ・リベロ

原案

ダビッド・デソラ

出演

イバン・マサゲ
アントニア・サン・フアン
ソリオン・エギレオール
エミリオ・ブワレ
アレクサンドラ・マサンカイ

音楽

アランザス・カレハ

公開

2019年11月8日 スペイン

上映時間

94分

製作国

スペイン

視聴環境

Netflix(PS4・TV)

プラットフォーム

設定は抜群なものの、もう一捻り欲しい。

7.5
上から降りてくる“残飯”だけで生きていかなければいけない場所で起こる様々なドラマ
  • 上層階ほど食事にありつける刑務所のような場所で顕になる人間性
  • 登場人物も少なめ、いわゆる低予算ワンシチュエーションサスペンス
  • やや宗教的な暗示が多く、すべて理解するには難しい内容
  • 非常に尖った設定が面白いものの、ところどころ不満もあり

あらすじ

なんとなく色合いと宗教的なニュアンスから「残酷で異常」っぽさを感じました。どっちも設定が素晴らしいインディーズムービー、と言う印象で。ただ僕はどちらかと言うと「残酷で異常」の方が好きですね。

ある日、主人公のゴレン(イバン・マサゲ)は刑務所のようなコンクリ打ちっぱなしの部屋で目覚めます。冬場はすげー寒そう。中央には大きな穴が空いていて、下が見通せないぐらいに長い構造。上も空いています。

穴の向かいにはトリマガシ(ソリオン・エギレオール)という男がいて、この建物についての断片的な情報を教えてくれます。

この場所で生き残るためにもっとも重要なことは「食事」。

食事は時間になると上から1フロアごとに停止するゴンドラのようなもの(これがプラットフォームらしい)に載せられ「収容されている全員分をまかなえる」だけの量が降ろされてきますが、上の階層にいる者たちは食べられるだけ食べ、下の者たちはその残飯を貪り食うと言う状況。

今現在2人のいるフロアは48階層であり、トリマガシ曰く「かなり良い」階層のようですが、しかしこの階層は毎月ランダムで変更になってしまうため、「良い」状況が保てるかどうかは運次第。当然、普通に考えて「良い」方にいる以上、次は悪い方(下)に行く可能性の方が高いわけで…案の定、ここでの生活に慣れてきた1か月後、2人は「171階層」に移動していました。

ろくに食事も残っていない下層に置かれたゴレンとトリマガシ。彼らが生き残るために取る行動は…。

移動が不満でモヤモヤ

いろいろ現代社会への皮肉も込められている感のある設定の建物が舞台のこの映画。あらすじからするとひじょーに面白そうで事実面白かったのは面白かったんですが…描かれる内容的には宗教的な語り口が大きいようで、「設定で期待させたほどではない」と言うのが最初に思った感想です。

面白いんですけどね。ただもっと面白く出来るんじゃないのと思います。もう一捻り欲しかったなーと。

僕が最も不満…と言うかもったいない気がしたのが、「1か月ごとに変更になる階層」が“完全ランダム”だという点。つまり努力ではどうしようもないわけです。

努力ではどうしようもないからこそ降りてくる食事を「分ける」ことにより価値が出る、と言うのもわかるんですが、ただ完全ランダムじゃあ収容者たちに「分けよう」と思わせる動機付けに乏しく、そりゃあ「食えるときに食っとくぞ」となるのも仕方がないし、価値観の硬直化は避けられないと思うんですよね。

だからこそ(映画的に)この後の展開に意味があるんでしょうが、それよりも「毎月の行動によってフロアが決まる」方が行動原理も増えていろんなドラマが生まれそうな気がする…けどどうなんでしょうか。素人考えですけど。

まあ「ランダムじゃない方が展開的にも面白くなりそう」と言うのは完全に後付けの話で、正直に言えば「ランダムだったら我が強い人間ほど得をする」ような世界になってしまう部分が解せなかったのが大きいのかもしれません。それ故にこの映画で描かれる内容になったんでしょうが、ただランダムなせいで一部の登場人物の行動の動機付けがあまりにも弱く感じられるし、展開自体に結構無理を感じる面がありました。そんなことしないでしょ=したくなるようなルールが無いでしょ、っていう。

そのまま流されるだけでは環境が変わらない、だから行動を起こさなければ…と言うのは理解しますが、それをするにはあまりにも敵だらけ(全員私利私欲しかない=翻意する理由がない)でまず成就が難しいのは想像に難くなく、それ故この映画で描かれる方法ではなくもう少し違った方法で“根回し”をするんじゃないかなと思ったんですよね。そしてそのためにはやっぱりランダムではない方がよりリアルな話になりそうな気がして。

ただこれはどっちが正しいということもなく、単純に僕が「ランダムに対する違和感」からいろいろ考えちゃったせいでもあるので、そこに疑問を感じなければ特に何も思わないのかもしれません。

まあ…この辺はちょっと説明が難しいんが、そこに対して違和感を感じてしまうとその後の展開もいろいろ気になってきちゃう部分は間違いなくあって、それ故に楽しみきれない部分はありました。

ランダム故に「そうするしかないよね」とわかっちゃう面も多く、いろいろモヤモヤ。決して自分の方が正しいとは思いませんが、そこがなんだかもったいないなぁと思ってしまい。

この辺は描きたいものが人間ドラマなのか宗教暗示なのかで変わった部分もあったのかもしれません。

リメイク期待

なんだかんだ言いましたが、しかし設定的に他にないオリジナルな面白さがあるのは間違いないので、話題的にも観ておいたほうが良い映画の一つかもしれません。

僕としては割と「資本主義の歪み」みたいな現代社会の風刺的な側面が強いのかと思ってそっちを期待していたんですが、実際はそれよりも宗教に寄った内容に見えたので、この辺りはやはりお国柄の違いもあるのかもしれませんね。日本でこの設定で作ったら(面白いかどうかは別として)まったく違った内容になるのは確かでしょう。

アメリカ映画ともまた違うし、やっぱりちょっとヨーロッパらしい映画なのかなと言う気もします。だから逆にこの映画をアメリカでリメイクしたらもっと期待できるかも。わからないけど。

と言いつつ結構面白かったので、やっぱりアイデアは大事だなとありきたりの言葉を吐いて締めたいと思います。グッバイ!

このシーンがイイ!

どのシーンも印象的でしたが、やっぱりトリマガシが出てくるシーンはどれもなんかいろいろ来るものがありましたね。なぜかはちょっとネタバレ的に書きませんが。

ココが○

ワンシチュエーションで寒々しい光景しかない映画なんですが面白い。本当にアイデアが素晴らしいですね。素晴らしくエグいアイデア。

ココが×

結構グロい面もあるので、その辺りは要注意です。そうなる気はしたけど…的なシーンもあって。個人的にはグロレベル的にはギリギリセーフ、ってところでした。

MVA

やっぱりこの人かなー。

ソリオン・エギレオール(トリマガシ役)

ゴレンと同室の爺さん。

欲に忠実で残飯の食い方の汚らしさがもう素晴らしい。ベストな配役。最も哀れで最も人間臭い登場人物だった気がします。良い役者さんですね。

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