映画レビュー0940 『パンズ・ラビリンス』
なんと今回もネトフリ終了間際シリーズですよぉーみなさぁーん。
いやもうマジでね、日常が代わり映えしなさすぎて何も書くことがないんですよマジで。マジで2回書いちゃうぐらいに。そろそろ病みそう。
まあその辺の事情は置いといてですね、今回の映画はタイトルは結構有名な映画だと思います。僕も知ってました。ただデル・トロの映画とは知りませんでした。かなり評価が高いので期待しつつ…。
パンズ・ラビリンス
ハビエル・ナバレテ
2006年10月11日 スペイン
119分
メキシコ・スペイン・アメリカ
Netflix(PS4・TV)
観てる時以上に観終わった後に広がる世界。
- スペイン内戦下で幻想の世界と行き来する少女の話
- 義父が独裁的な軍人で母も病気がち、救いのない日常
- うまくリアルにファンタジーを織り込んだ独特の世界観
- 暗くてやや退屈、でもジワジワ染みる物語
あらすじ
いわゆるダークファンタジーというやつで、一般的な「ファンタジー」とはちょっとイメージが違うかもしれません。が、ハリポタの後期とかもこんな感じだったしまあそんな感じですよ。(どんな)
まずプロローグで地下にあるという魔法の王国の話が語られます。曰く、そこは嘘も病気も苦しみもない世界だったんですが、地上を夢見たお姫様がこっそりと城を抜け出し、人間の世界へ行くと太陽の光によるショックで記憶を無くし、普通の人間として苦しみ、やがて亡くなってしまいましたと。しかし王様は必ず王女の魂が戻ってくると信じ、待ち続けている…というフリを経ての現在、舞台はスペイン内戦真っ只中。
主人公は少女オフェリア。小学校高学年ぐらいですかね、イメージ的には。
彼女はまず母親とともにとある山奥の砦にお引っ越し。
父親は亡くなってしまったようで、母親は砦の責任者であるヴィダル大尉と再婚。加えて妊娠中ということで、「自らの手元で子供を産ませたい」大尉の意向によって引っ越してくるわけです。
そのヴィダル大尉、舞台となる砦の責任者ということもあってか、「大尉」という肩書きよりも全然偉そうな印象で、早い話が強権的で独裁的、そして冷酷非道な人物。マジでなんでこんなやつと再婚したんだよマザー、と誰もが言うのは間違いないでしょう。ただ戦時下においてはこの手の人の家族であれば生きやすいであろうことも頷けるし、舞台背景を考えればやむを得ない決断だったのかもしれません。
オフェリアは自らの娘でもないからか当然のように冷遇され、大好きな母親は身重な上に体調も芳しく無く、引っ越し早々つらい日常にさらされますが、しかし彼女は妖精に導かれ、砦裏にあった遺跡に到達。
そこにいたパンという名の迷宮の番人と出会い、「あなたこそは地底の王国のお姫様だ」と告げられ、同時に3つの試練を課せられます。
過酷さを増す日常と、おとぎ話の世界を行き来しながら、果たして彼女は3つの試練をクリアすることができるのか、というお話です。
現実に織り込まれたファンタジー
ご覧の通り、パンの迷宮だから「パンズ・ラビリンス」なんですが、試練は特に迷宮を使うわけでもないという若干の謎み。
僕の中で正統派のファンタジーと言うと(詳しくないけど)ティム・バートンなんですが、あの人のファンタジーは「モロファンタジー(=映画の世界全体がファンタジー)」のイメージが強い印象で、それと比べるとかなり現実の描写がしっかりしている、「現実に織り込まれたファンタジー」の色合いが強い印象の映画でした。思えば「シェイプ・オブ・ウォーター」もそんな感じだったし、デル・トロのファンタジーは「現実に特異点を追加した」ような作りが特徴なのかもしれないですね。
ちなみにファンタジーと言えばもう一人、テリー・ギリアムもいるんですが彼は彼でまたかなり独特なので今回はちょっと脇に置きます。
この映画で描かれるファンタジーはオフェリア目線のものでしかなく、それ故いろんな推測が成り立つ(現実逃避による彼女の妄想じゃないか、子供だけ見られる世界なんじゃないか等)のもミソで、それ故ラストの解釈もいろいろ分かれそうなところではあります。ただ一応映画上は「こうです!」って言い切ったエンディングでもあるので、僕は映画の語りそのまま素直に受け取るようにはしましたが…実際はどうなんでしょね。
ただ完全にオフェリア限定のファンタジー世界というわけでもなく、一部他の登場人物が介入する部分もあるので、「全部が全部妄想」とするのも無理があるのも事実です。結局は本当に起きた出来事で、ただ最後の解釈だけは…ってところが興味のマトって感じでしょうか。
暗くてつらいお話
まあね、しかし一応言っておくと全体的に暗いですよ。ファンタジーというより戦争映画っぽさも色濃いです。
そもそも望んでいない母親の再婚に加え、再婚相手がガチクズで早い話が悪役だし、頼みの母親は弱っていく一方だし…と望みがない。
そんな最中に「あなたはお姫様です」なんて言われたらそっちに夢中になるのもやむを得ないと思いますが、しかしその妖精の存在やらは当然ながら母親含め大人たちは理解してくれないし、そのせいで余計に孤立していきより幻想の世界に取り込まれていくオフェリアの姿もなんともつらい。
舞台となる砦も近くで反政府活動を繰り広げるレジスタンスによる攻撃に神経を尖らせており、誰も彼もが余裕がない状態。暗い。しんどい。
映像としてもややグロかったり、クリーチャーの造型がリアルで気持ち悪かったりするので、人によっては映像面でもダメそう。いわゆるダークファンタジーなので、決してキラキラしたファンタジーではないです。ただ僕はクリーチャーのその気持ち悪い造型が良いデザインだなと思いましたが。一部で有名な「手のひら目玉男」とか。(そのままのネーミング)
観た後に評価が高まるタイプの映画
映画としては割と進みが遅く感じられ、中盤までは結構退屈に感じたのも書いておきましょう。
「これもっと盛り上がって行くのかな〜」と思いながら観ていましたが、盛り上がるとかそういう話じゃねぇんだよ! とビンタされてもおかしくないぐらいには暗く、ファンタジーの割に派手さのないお話だと思います。
なので正直言うと、鑑賞直後は「そこまででもないんじゃないの?」と思いました。良い映画だけど、言うほどじゃないんじゃないの、みたいな。
でも鑑賞後にいろいろ考えるとジワジワ世界が広がるお話なので、たまにある「観た後に評価が高まる」タイプの映画なんじゃないでしょうか。少なくとも自分の中ではそうでした。
なかなか他にない世界観でもあるし、「リアルとファンタジーの境目」の描き方がすごく面白い、良い映画だと思うので、映画好きであれば一度観てみることをオススメします。
このシーンがイイ!
やっぱり「手のひら目玉男」のシーンかなー。
彼(?)はあのインパクトから「なんの映画かは知らないけどすごいキャラだな」と認識していたので、出てきたときは妙な喜びがありましたね。で、あのデザイン。すごい。気持ち悪いけど最高。
ココが○
ファンタジーと現実の合わさり方。
エンディングは解釈がわかれるところですが、僕は好きです。「シザーハンズ」にも似た、ファンタジー特有の「絵本を閉じて終わる」感じがあって。
ココが×
暗いしややグロいしつらい話だし、観るタイミングを選ぶ映画かも。
それとやっぱり中盤まで少し退屈だったのは引っかかります。
MVA
セルジ・ロペスの悪役ぶりも見事だったんですが、この映画はこの人だろうなー。
イバナ・バケロ(オフェリア役)
主人公の少女。
聡明そうで、でも薄幸そうで。純粋で健気な雰囲気と、強さもしっかり併せ持った少女像が本当に見事でした。彼女の雰囲気あってこそだし、その辺もちょっと「ミツバチのささやき」っぽさを感じる。この子すごいなぁ。
この子、って今はもう立派なガールなんだけど。