映画レビュー0842 『永遠のこどもたち』

いつものごとくネトフリ配信終了シリーズですが、今回の映画はツイッターで割と好みが近い方に激推しされたので絶対観るぞと思っていた一本です。

永遠のこどもたち

El Orfanato
監督
脚本
出演
フェルナンド・カヨ
ロジェール・プリンセプ
モンセラート・カルーヤ
音楽
公開
2007年10月4日 スペイン
上映時間
108分
製作国
スペイン・メキシコ
視聴環境
Netflix(PS3・TV)

永遠のこどもたち

障害のある子どもたちのための施設を運営するため、かつて幼少期を過ごした孤児院を買い取り、夫のカルロス、息子のシモンと3人で引っ越してきたラウラ。常に空想上の友達と遊ぶシモンに不安を覚えつつもやってきた開園パーティー当日、シモンが姿を消してしまう…。

物悲しい良質なストーリーの泣かせホラー。

7.5
この洋館には何かがいる…? 息子失踪の原因とは
  • かつて過ごした孤児院に戻ってきた母親が失踪した息子を探し求めるお話
  • 空想上の友達と消えた息子の関係を追うサスペンスタッチのホラー
  • 映像美と不気味さが程よくマッチした悪どくない作りが◎

基本的に僕はホラーが嫌いなのであんまりこの手の映画は観ないようにしているんですが、そんなわけでオススメされたので鑑賞。

結論から言うととても良く出来た良い映画だと思いますが、ただホラー嫌いとしては「いい話なだけにホラーに寄せすぎてるのがもったいない」印象が強く、もうちょっと煽りを抑え気味にしてくれたらなぁ…というちょっと惜しい気持ちになった映画でした。

ただそんなに安っぽい煽りでも無く、その上ただの怖がらせホラーじゃないよというお話なので、ホラー好きの方はかなりグッとくる映画になるのもよくわかります。

要は僕としては「うどん嫌いだけど美味しいうどんだからって勧められて食べたんだけど思いの外うどん感が強かったので美味しいけどもっとラーメン寄りにして欲しかった」という謎の供述を伺わせている状況なので、何言うとんねんコイツと思って頂いて結構です。ちなみにうどんは好きです。

舞台はとてもとても雰囲気のある、古めかしい洋館。いやー、良いですねぇこういう館。たまらないですよもう。いかにもって感じが。

ここは元は孤児院として運営されていたんですが、いつの頃からかその役目は終了していた様子。その孤児院でかつて育てられ、大人になった女性・ラウラが本作の主人公です。ベレン・ルエダが演じます。

確か設定上は37歳、数字よりはやや歳を取ったくたびれ感がある印象でしたが、でもおっぱいはとても立派そうでした。彼女は「ロスト・フロア」で奥さん役もやっていたんですがおっぱいについての記憶はまったくなく、「ほう、なかなか生意気そうなおっぱいをしてやがるぜ…」と思ったんですがおっぱいの話はこの辺にしておきましょう。

彼女は今は結婚して夫カルロスと一人息子シモンの3人で暮らしていたんですが、これからは障害のある子どもたちのための施設を運営するぞということでかつて自分が暮らしていた孤児院を買い取り、引っ越してきて自宅兼施設に改造しよう、というところから物語が始まります。

んでこの家に越してきてからというものの…息子のシモンは常に空想上の“見えない友達”とよく遊んでいて、両親は心配しつつもそのうち治るだろう、とひとまず静観の構え。

やがて施設の開園パーティーの日がやって来ますが、「新しい友達」を迎えるその日もシモンは相変わらず空想上の友達と遊んでいて、おまけに忙しいラウラをその空想上の友達の部屋に連れ出そうとしつこく誘ってきたため彼女は激怒、その直後目を離した隙にシモンが行方をくらましてしまいパニック状態に。

その後も一向に見つからないシモンに加え、正体不明の謎の婆の影など嫌ですねぇ怖いですねぇというこの展開、はてさてシモンはどこへ行ったのか、そして彼の言う“友達”の正体とは…! というお話ですどうぞ。

まず観終わって「あの映画とあの映画を足した感じ」と思ったんですが当然ながらその映画のタイトルを出すとネタバレになるのでネタバレ項に譲るとしてですね、全体の感想としては…最初に書いた通り、「ちょーっとホラーに寄せすぎなのが残念だな〜」というのが正直な感想でした。

いや、だからホラーじゃんっていう話なんですよ。最初っから。だからお門違いなのはよーくわかってるんですが、好みで言えばそういう感想になるかな、と。

もちろんどういうお話なのかもネタバレになるので書けないんですが、ただベースとしてはなかなかに物悲しい、ある意味で一般的に共感を誘いやすいストーリーだと思うので、それ故にもっとホラーよりもサスペンスドラマっぽい方向に持っていってくれれば…多分ものすごくグッと来たんじゃないかなぁと思うんですよ。

なんでそう思ったのかと言うと、上記の「あの映画」がまさにそういう映画だったので、この映画よりも後発だけにどっちが優れているとも言えないんですが…やっぱり比較対象が頭の中で出てきちゃった以上、「あっちの方が泣いちゃったし良かったなぁ」と思っちゃったんですよね。めんどくさいやつですよほんとに。

それと結構序盤は間もたっぷりに、少しスローに展開していた印象があって、もうちょっと詰めて見せてくれても良かったんじゃないかなという作りの問題も若干感じました。

ただホラーなんでね。くどいようだけど。ホラーってやっぱりじっくり引っ張って「なんだなんだ」ってドキドキさせてナンボって部分もあると思うので、その辺(ホラー好きではない人間からすると)ちょっと大仰というか、まどろっこしいような面はあるのかもしれません。

何分ネタバレを気にするとあんまりアレコレ言えないタイプの映画なので、いつも以上に内容のうっすいレビューとなりましたが…なんでしょね、あとは美術的にヨーロッパっぽい匂いがするのは間違いなくあると思うので、やっぱりどことなくハリウッド系とは違った色のある映画だとは思います。そこが少し入り込みにくい、興味を持ちにくい面もあったと思うんですが、ただそういう色があるからこそあざとく感じられない終わりにも思えたし、そこがまた良いのも確かなんでしょう。

ホラーとは言えいかにもな化物が出てきたり恐怖で煽ったりとかもないので、割と間口も広い映画だと思います。特に子供を持つ親の人が観れば…いろいろ感じるところもあるんじゃないかなと。

永遠のネタバレたち

似た要素を感じた映画2本、それは「シャイニング」と「ドリームハウス」。

なので以下この2本のネタバレにもなります。読みたくないぞ、って人はここからグッバイしましょう。ザ・グッバイです野村義男です

最終的に「息子に会いたい」一心で自ら死を選び、この洋館で“永遠のこどもたち”と一緒に暮らしていくことを選んだラウラ…これはまんま「良いシャイニングだなー」というのが最初の感想。

いわゆる“建物取り込まれオチ”とでも言ったら良いでしょうか。

もちろんこの映画は「シャイニング」と違って建物自体に何らかのものがあるわけではないんだろうと思いますが、ただ最終的には建物に定住する=取り込まれるということでそれっぽいなと。ただ本人の意志でそこに残ることにしただけにちょっと良い話版のシャイニングだな、みたいな。

もう一つ、「ドリームハウス」はもっと近い印象がありました。あっちもややホラー気味だし。でもあっちの方がホラーよりもサスペンス、そしてサスペンスよりもヒューマンドラマに展開していくので、その見せ方がすごく好きだったしそれと比べちゃったからこっちの方が少し落ちるかな、という個人的な好みです。

中心として展開する話はそんなに似てるわけでもないんですけどね。ただ子どもたちが霊となって建物に残り、その幻を見つつの親子愛という帰結は似ている部分があったと思います。

ついでに言うと終盤薬を飲んで幻を見る様は、この前観た「ハッピーボイス・キラー」の逆バージョン的な感じもあって、全然話は違うのにスイッチが似ているのはなかなか面白いなと思ったり。ただその物質的なスイッチで切り替わるのはちょっとわかりやすすぎるかな〜という気もしました。

このシーンがイイ!

何度か映る、館外のオブジェがキィ…って動くシーンがすごく良いんですよ。なんか知らないけど。不気味さを増してくれて。

ココが○

ホラーの割に観やすく、話がしっかりしているところ。それだけに「ホラーじゃない方が良かった」って思っちゃったわけですが。

ココが×

上に書いた通り、ベースが良いだけにもうちょっと感情に訴えかける面を強く出してきて欲しかったなぁ…。仕方ないんですけどね。

あとはさすがにホラーなだけに、若干ですがグロい場面もあるので苦手な人は少し気をつけましょう。

MVA

正直主役のベレン・ルエダはそこまで惹かれる感もなく、消去法的にですがかなりの脇役のこちらの方に。

ジェラルディン・チャップリン(霊媒師役)

途中で出てくる霊能力者の女性。

ジェラルディン・チャップリンがやってた、っていうのはさっき知ったんですけど。

彼女が一番見せ場を作ってた気がするんですよね。話的にも真相に近づいていく大事なところではあったし。

この人の不気味な雰囲気と能力者感みたいなものは中盤の引力になっていたと思います。

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