映画レビュー1374 『ヒトラー暗殺、13分の誤算』
JAIHO配信終了間際より。
やっぱりヒトラー暗殺とかナチス系の映画はいろいろ考えさせられるところが好きなので観ちゃいますね。
ヒトラー暗殺、13分の誤算
オリヴァー・ヒルシュビーゲル
フレート・ブライナースドーファー
レオニー=クレア・ブライナースドーファー
クリスティアン・フリーデル
カタリーナ・シュトラー
ブルクハルト・クラウスナー
ヨハン・フォン・ビューロー
フェリックス・アイトナー
ダービット・ツィンマーシート
ルーディガー・クリンク
サイモン・リヒト
デビッド・ホームズ
2015年4月9日 ドイツ
114分
ドイツ
JAIHO(Fire TV Stick・TV)
邦題がミスリードで良くない系。
- 運命の“あや”でヒトラー暗殺に失敗した男の半生
- 「一人でできるはずがない計画」と見なされ、過酷な尋問でその背景を問われる
- おなじみ実在の人物を描いた実話系
- 内容は個人にフォーカスしたドラマなので邦題はタイトル詐欺に近い
あらすじ
これもよくあるパターンではありますが、邦題の内容を期待して観るとまったく違う内容なので大きな残念感に包まれます。僕がそうでした。
毎年ヒトラーが演説をしにやってくるビアホールがあることに気付いた反ナチ派の家具職人、エルザー(クリスティアン・フリーデル)は、演説が行われる柱の裏に時限爆弾を隠してヒトラーを暗殺する計画を立てますが、しかし当日演説会直前に霧のため飛行機から列車に移動手段を変えたことでヒトラーが早めに切り上げてしまい、結果暗殺は失敗。
その後捕まった彼は悪名高きゲシュタポに連行され、激しい尋問を受けることになります。
とても一人では成し得られそうもない計画にゲシュタポはその背景を問いますが、一人でやったんですけどーと何度言っても聞き入れてもらえません。
証明のためエルザーは同じ爆弾を製作したりもしますが、それでは上層部が納得しないとのことで却下、その後も苦難の日々が続きます。
やがて婚約者のエルザ(カタリーナ・シュトラー)も連れてこられ、あらゆる手で「存在しない黒幕」を問われ続けるエルザーですが…どうなるでしょうか。
人間ドラマが主体
主役がエルザーで婚約者がエルザ、ってややこしすぎる。
さて、こっちが勝手に想像したことではありますが、邦題からすると「周到に計画した暗殺が13分の誤算によって失敗に終わった」それまでの話を順を追って観ていくサスペンス…みたいなものを期待していたんですが、上記あらすじの通りまず最初に速攻失敗し、「まあ確かにヒトラーが暗殺されてないのはわかってるしここから過去に飛んで裏を描くのね」と思っていたら…実際そういう映画ではあるんですが、ただ計画そのものよりも計画を企てたエルザーその人を追う人間ドラマの色彩が強く、期待してたのはそういうのじゃねーんだよなーとなりましたよと。
原題は「Elser」、つまり主人公の名前なわけで、それなら確かにこの内容でも納得だなと思うしそのままのタイトルならもしかしたら観てなかったかもしれません。でもこの邦題だと「計画した人物」よりも「計画そのもの」の色の方が濃そうな気がするじゃないですか。しないですか?
僕はそっちの…早い話がサスペンス的な緊張感を期待して観たので、人間ドラマ主体でコレジャナイ感を強く感じてしまい、結果的に悪くはないんだけどイマイチだったなという感想です。
人間ドラマ主体にするにしても、彼がなぜ反ナチになったのかの描写は無いとは言いませんが主体ではなく割とあっさり目に触れられる程度で、比重が大きいのは婚約者のエルザとのアレコレ。つまりは恋愛映画に近い…とまで言うと言い過ぎですが、そういう感覚の強い映画でした。
エルザはエルザで重要な人物ではあるんですが、ただそれはあくまでエルザーにとって(ほんとややこしいな)の話であって、計画自体には彼女は何も関係していないのでやっぱりこの邦題の内容を期待して観た人にとっては「関係ない話がなげー」と思ってしまうのはやむを得ないように思います。
出会った当初は夫がいて、彼に虐げられていて…というのは同情もするしそこに割って入って救うエルザーの図式は応援したくもなりますが、いやでもぶっちゃけヒトラー暗殺と何も関係なくね? という思いは最後まで拭えず、やっぱり邦題が意味するところと中身のギャップがひどい。これは被害届を出してもいいレベルだと思います。
「ヒトラー暗殺」と言えばやっぱり僕は「ワルキューレ」が好きなのでどうしてもあの映画と比べてしまうんですが、結果がわかっていても緊張感が伝わってくるあの映画とはまったく別物なので、やっぱり「ヒトラー暗殺事件のサスペンス」を期待して観る映画ではないのは間違いないでしょう。
おそらくこの人はドイツでは英雄として知られた人でもあると思われるので、国内ではこの人の名前でこの人の半生をテーマに描いた映画ならそれなりに観る人も興味を抱く人もいるんだろうと思います。
それを日本に持ってきたときに、誰も知らない固有名詞のタイトルでは…とこういうタイトルを付けるのもよーーーーくわかるんですが、ただそれでもあまりにもピンポイントに「計画の誤算」を主題にしてしまっているのでタイトル詐欺感が強く感じられてしまうのは非常に残念です。とは言えじゃあなんて邦題にすればいいんだよと言われたら難しいよねとお茶を濁すしか無いのも事実なので卑怯ではあるんですが。「たった一人のヒトラー暗殺計画」…とか? 全然良くないけどタイトル詐欺感は減りそうな気がしないでもない。
良い映画ではあるんだけど
一人でいかにして暗殺計画を実行していったのか…の詳細部分はなかなか興味深いものがあったし、決して悪い映画ではないと思います。
ただやっぱり鑑賞前の期待と違うものが出てきてしまった残念感は拭い難く、また超個人的な好みで申し訳ないんですが主役の人の表情が憎たらしいのも相まって感情移入もできず、少々残念感が勝りました。
ナチス関係の知識を広げる意味でも価値のある映画ではあるし、そっち方面に興味がある人はまあ観てもいいんじゃないかなとは思いますが、ただ大半は知らない人の半生を観させられるということだけは事前に知っておいたほうがいいよ、というアドバイスでおしまいです。
このシーンがイイ!
終盤のとある処刑シーンはやっぱりいろいろ考えちゃいましたね…そういうことがあったのか、と。
ココが○
そもそもこういう計画、こういう人がいたことは知らなかったので、知識を得られた意味では観て良かったです。
ココが×
やっぱり邦題がなぁ…もうちょっと計画寄りのものを期待していたので。
MVA
あんまりこの人! って感じの人はいなかったんですが、こちらの方に。
カタリーナ・シュトラー(エルザ役)
主人公エルザーの婚約者。
計画自体には関わっていないのでどうでもいいっちゃどうでもいいんですが、単純に美しい人だなと見惚れちゃうぐらい素敵な方だったので選出。
特に候補がいない場合は綺麗な人に差し上げる、それがなんプロスタイル。