映画レビュー0996『勝利への脱出』
最近もうレコーダーが地上波すら映らなくなってきてしまい、いよいよ潮時か…と諦める前に配線を見直したところスッキリ映るようになった、というありがちな展開によって久しぶりにBSがまともに録画できるようになりまして、その確認も兼ねて最近録画したこちらの映画を。
勝利への脱出
ジェフ・マグワイヤ
エヴァン・ジョーンズ
ヤボ・ブロンスキー
シルヴェスター・スタローン
マイケル・ケイン
マックス・フォン・シドー
ペレ
ボビー・ムーア
オズワルド・アルディレス
ダニエル・マッセイ
ジョージ・マイケル
1981年7月30日 アメリカ
110分
アメリカ
BSプレミアム録画(TV)
サッカーを利用した爽やか大脱走。
- 兵役に招集され捕虜となった有力選手たちとドイツ代表が親善試合をすることに
- 連合国側はこれに乗じて脱走する計画を立てる
- スポーツらしい爽やかさと戦争映画のちょっと変わったコラボ
- マイケル・ケインがほとんど試合に絡んで来なくて草
あらすじ
ここ何年かで録画した映画は、大体「無事録画完了」になっていても途中でひどくブロックノイズが入ったりしていてなかなかしんどい状況だったんですが、今回原因を取り除いたことで全編無事綺麗に観ることができて歓喜ですよ。
そう、脱走に成功した捕虜のように、ね。
舞台は第二次世界大戦中のドイツにある、とある捕虜収容所。
あれは…大脱走でしたかねぇ、「捕虜の仕事は脱走」なんてセリフがあったと思いますが、その通りここでも脱走はしょっちゅう計画されているようです。
しかし脱走に興味を示さない捕虜の将校・コルビー大尉(マイケル・ケイン)は、収容所内でチームを組んでサッカーに興じております。
そのコルビー大尉を偶然見かけたドイツ軍将校のシュタイナー少佐(マックス・フォン・シドー)は、彼がかつてマンチェスター・ユナイテッドで活躍した選手だったことを思い出し、「今度ドイツの兵士たちと試合をしないか」と持ちかけます。
最初は興味を示さなかったコルビー大尉も、宿舎や食事等の生活環境を優遇してもらう条件を取り付けたことで「優秀な選手たちを集めた捕虜オールスターチーム」の作成に着手します。
やがて話が大きくなっていき、試合会場はパリで、さらに相手はドイツ軍精鋭からドイツ代表チームに格上げされ、あからさまに「ドイツ軍のプロパガンダに利用するための試合」となっていく中、一方の連合国側ではこの試合を利用した脱走計画が立てられることに。
この計画を成功に導くべく、パリにいるレジスタンスたちと連絡を取って下準備を進めようとアメリカ軍軍曹のハッチ(シルベスター・スタローン)が先んじて脱走することになりますが…はてさて計画は成功するのでしょうか。
爽やか脱走大作戦
割と脱走モノはハズレが少ないというか、僕は結構好きなんですよね。なんででしょうね。なんとなく双方の男らしさみたいなものが表出しやすい構図だからでしょうか。
この映画でも、主人公サイドである連合国の捕虜たちはもちろんのこと、ドイツ軍将校として重要な役割を担う人物もあのマックス・フォン・シドー御大が渋みたっぷりに演じてくれていて、それぞれ「国はこうだけど個人では」みたいな思いが透けて見える作りが良いですね。
この映画は言うまでもなく「サッカー試合を利用した脱走計画」というのが他と違うポイントなわけですが、そのためペレを始めとした当時の有名選手たちが“捕虜役”として多数出演しているので、古いサッカーファンの人たちにとってもなかなか見どころのある映画かと思われます。
またサッカーが大きな題材になっているために「スポーツマンシップ」的なメンタリティがそこかしこに見られるのもポイントで、それ故普通の戦争映画よりも爽やかで気持ちのいい内容になっています。戦争映画ではあるものの、血とか痛さとかとは無縁なので誰でも観やすいのも素晴らしい。
ご多分に漏れず計画はあくまで“計画”、すんなりと当初の予定通りに進まないために先が気になる展開にもなっていて、いかにも脱走モノらしい「成否が気になる」作りは今でも充分楽しめる映画と言っていいでしょう。
もうちょっとサッカーしようよマイケル・ケイン
しかし主役のマイケル・ケインは「元マンU選手」という超のつく経歴を持った役柄でありながら残念ながら体型的にもサッカーをしている(いた)感じがまったくなく、試合にもキャプテンで出場しているにも関わらずほとんど登場してこないのには参りましたね。笑っちゃったけど。1シーンだけ全力で走ってるシーンがありましたが、体型がまったく違ったのでアレはおそらく影武者でしょう…。
まあそんなのは些末な話です。僕のように脱走モノが好きな人は観て損のない一作だと思うので、機会があればぜひ観てみてください。
このシーンがイイ!
ラストシーンですかねー。「なるほどそうか」って感じで。
ココが○
当時から今に至るまで(おそらく)あまり他にないタイプの話なので、オリジナリティという意味では価値が高いのではないかなと。サッカー選手も出てるし。
あとはやっぱり軍人としての矜持みたいなものが垣間見えるそれぞれの登場人物が良いですね。
ココが×
ネタバレ項に書いたような一部分を除けば特に欠点はない話だと思うんですが、ただその割には観ていてそこまで盛り上がらなかったんですよね。
「大脱走」に倣うのであれば、もう少し脱走計画自体の危うさ、危機みたいなものがあってほしかったかも。割と順調に進むのであんまりドキドキ感が無いのは残念でした。
MVA
マイケル・ケインはサッカーにもあまり絡んでこないために少々地味だった印象。好きなだけに残念でした。
スタローンもこの当時イケメンだったけど役柄としては印象通りで面白みに欠けたかな…。
ということでやや消去法的にではありますが、この人に。
ダニエル・マッセイ(ウォルドロン役)
連合国捕虜のリーダー。「大脱走」で言うところのラムゼイ(ジェームズ・ドナルド)のポジションですね。ラムゼイも好きだったしこのポジションの人はやっぱりなんか良い感じに描かれるのかもしれない。「戦場にかける橋」のアレック・ギネスも良かったし。
この人はその2人ほど存在感も無いので、チョイスとしてはかなり渋めだとは思いますが…でもやっぱりなんでしょうね、「捕虜のリーダー」ってだけでなんか人格者っぽさが漂うんですよ。ちょっとジャック・ニコルソンとジョン・マルコヴィッチを足して2で割った感じもあったわけですが。