映画レビュー0899 『エクス・マキナ』

いやぁ、ずっと観たかったんですよこれ。ご多分に漏れずようやくネトフリ終了が来たってことで。

日曜夕方、鑑賞前にすでに眠い中観始めまして、もったいないタイミングで観始めちゃったなと思いつつ…。

エクス・マキナ

Ex Machina
監督
脚本

アレックス・ガーランド

出演
音楽

ベン・サリスベリー
ジェフ・バーロウ

公開

2015年1月21日 イギリス

上映時間

108分

製作国

イギリス

視聴環境

Netflix(PS3・TV)

エクス・マキナ

現代だからこそのリアリティでジワジワ忍び寄る不安感が絶妙。

9.5
社長から完成間近の女性型AIのテストを依頼された社員、その真意は…?
  • G●ogleらしき会社の社長が独自に研究しているAIのテストに“当選”した社員の1週間
  • AIと人間の関係性から導かれる“答え”に息を呑む
  • 少しだけ未来を思わせる作りすぎないSF感と心情を表す劇伴の演出が素晴らしい
  • 「AIに対する懸念」を最もリアルに描き出している…かも

あらすじ

いやぁこれはもう傑作でしたよ。本当に。傑作だと噂では聞いてましたが、その事前情報で予想していた以上に傑作でした。

登場人物は最初に出てくる(超ちょい役の)主人公の同僚たちを除けばほぼ4人だけだし、ロケーションも家1軒とその周辺ちょろっとのみなので、一応低予算映画に含まれる映画だと思うんですが、主要メンバーのキャスティングの良さと映像面のクオリティの良さから観ていて低予算感はまったく無く、むしろ下手にお金をかけたSFよりも骨太なSF感漂う素晴らしい映画でした。期待以上に良かった。イギリスの低予算SFって傑作が多いんじゃないか…?(なんとなくの適当な印象)

主人公はドーナル・グリーソン演じるケイレブ君。彼は“検索エンジン使用率94%を誇る”IT系大企業「ブルーブック」のプログラマです。決してGo●gleじゃないよ。

彼はオープニングで何らかのものに“当選”し、ヘリに乗ってとんでもない敷地面積を誇る1軒の家へ招かれます。そう、そこにいるのはブルーブックを作った天才プログラマである社長、ネイサンの自宅。オスカー・アイザックがヒゲモジャでお迎えです。

どうやらその“当選”は、「社長宅に招かれる権利」みたいなものなんでしょうね。めでたく選ばれたケイレブは、初対面の社長に「緊張するな。友達になろう」とフランクに歓迎され、そして一つの秘密保持契約を結ぶように言われます。

曰く「どんな形であれ他言は許されないが、この機会を逃したら一生後悔する」とある研究のテストに協力してくれないか、と。

その研究こそが、女性型AI「エヴァ」(字幕ではエヴァですが正しくは“アイヴァ”らしいです)の開発であり、彼に協力を求めたテストはAIの思考ロジックに問題がないかどうかというもの。

若いながら優秀で知識も豊富なケイレブは、社長の期待に応えて順調にテストをこなしていきますが、あまりにも完璧なAIであるエヴァの発言によって次第に“揺れ動いて”行き…あとはご覧ください。

テストに適任な主人公、順調に見えるが…

“女性型AI”と書いていますが、正しくは「女性型AIアンドロイド」と言ったほうが良いかもしれないですね。あ、Goo●leが作ったOSのことじゃなくてね。いわゆる人造人間的な方です。他意はありません。

人工知能を搭載し、完全歩行もできるし自分で服を着ることもできる、ところどころ機械であることがわかる見た目以外はもうほぼ人間と言って良い精巧なAIです。アリシア・ヴィキャンデルが演じています。

動作のレベルも映画のテーマであるAIのレベルも今よりも結構先を行っている感じなので、まさに近未来SF、なんとなくのイメージで今から10年後ぐらいっぽい気がする適当な印象。まあそんな些末なことはどうでもいいんですよ奥さん。

彼女は開幕から「AIですよ」とご紹介され、顔はあるものの頭髪は無く、体もところどころスケルトン的に中身が見えているので、どっからどう見てもアンドロイドではあるんですよ。あるんですが…アリシアちゃんが演じている点を除いたとしても、受け答えが完全に人間のそれなので、やっぱり接していくうちに情のようなものが出てきてしまうのは人間のサガなのかなという気が致しますね。ええ。(当たり前ですが)その辺がいろいろ重要なポイントになっては来ます。

そんな“彼女”のテストを任されたケイレブ君、彼もその辺のただの兄ちゃんというわけではなく、(プログラマだけに)プログラムに明るいのはもちろん、哲学的な知識もある程度持ち合わせていてなかなか優秀な社員のようです。

仕事柄なのかはたまた元からそっち方面に興味があったのか、AIのテスト自体の目的と意義と問題点もしっかり理解していて、“偶然当選した”割にテストに適した人材ですねこれは。

見た感じある程度慣れているというか、いきなりワレワレ一般人が「テストしてくれ」と言われた時とは比べ物にならないぐらいにしっかりと目的を持った会話をしていくケイレブ君。「勘所を押さえた会話」とでも言ったら良いでしょうか。まさに社長の狙い通り、エヴァのテストを進めていきます。

絶妙に不安感を植え付けてくるスリラー感

ところが、ですよ。

どうも感情を持ってるんじゃないか…と思えるようなエヴァの言動に、次第にケイレブ君は思考を巡らせるようになります。

もちろんそこから先はネタバレになってきちゃうので書きませんが、その「エヴァの言動」の理由付けの部分がなるほどと唸らされるもので…これはおそらく、世に言う「AIに対する不安」に現実的な説得力を持たせたリアルSFスリラー、って感じですね。いやスゴイ。最高。

またケイレブ君の心情(≒観客の心情)とシンクロしたやや不安を煽る劇伴と、いかにもSF感漂う無機質な社長宅のビジュアルがとてもマッチしていて、観客に得も言われぬ不安感を植え付けてくる感じが素晴らしい。これぞSFスリラー、って感じで。

もうこんな内容じゃいろいろ考えちゃうじゃないですか。実はケイレブ君もAIなんじゃねーの? とか。なんなら社長もか!? とか。

さらにまったく言葉を発しない謎めいた美女・キョウコの存在もあり、グイグイ惹き込まれていきます。いやもう最高マジで。

そんな中、一番人間らしく健気に見えるエヴァ。彼女は何を考えているのか…いや考えなのかプログラムなのか…狙いはあるのか、それともその場その場で受け答えしているだけなのか…謎は尽きません最高。

現代だからこそ出てきた傑作

非常にスキのない、本当に良く出来た小説のような素晴らしい映画なので、あとはもうウダウダ言わずに観てもらえればと思います。

いやねぇ…ホントこれだけ小規模少人数制作でこの後味を味わえるわけですからね…つくづく映画の面白さを感じますね。

この映画なんてまさにAIが具体的になってきた現代だからこその映画なだけに、「もうアイデアは出尽くした」と思ったところでほっといても面白い映画って出てくるんだろうな、と妙な安心感を覚えるぐらいになかなか観る価値のある映画だったと思います。

一時期結構話題になっていた映画でもあるし、旬を外した結構な今さら感も漂っているとは思いますが、自信を持ってオススメ致しましょう。ぜひ!

ネタバ・レキナ

ケイレブ君…!

結局ケイレブ君はあのままあそこでグッバイなんですかねー。そうなんだろうなー。

社長の出社頻度のほどはわかりませんが、おそらくは近い内に「社長が出社してこない!」とか「連絡が取れない!」「おまけにケイレブも来ない!」って騒ぎになって社長宅に誰かがやってくるんでしょう。しかしあれだけ制御された上に秘密主義の家だと入ることもままならないだろうし、強硬手段だーっつって重機入れて突入するにしてもそれなりに時間がかかりそうなので、結局見つかる頃にはケイレブ君はもう…って気がする。そこが主題ではないんだけど。

外との連絡も取れないし、おそらく飲食物も無いんだろうし。情が移ったばっかりに…。

話としては難しい話ではなく、もう社長が言ったまんま「脱出するためにケイレブ君の情を利用しようと思わせぶりに振る舞うエヴァ」という話でしか無いんですけどね。

ただその“社長が言ったまんま”、つまり(脱出計画を仕込み終えた後とは言え)きちんと警告は発せられてたわけですよね。そこでケイレブ君が我に返っていれば、エヴァの「ここで待ってて」を鵜呑みにせずに待たない選択肢も取れたはずで、結局最後まで“惚れちゃった”弱みが出ちゃった悲しい物語なのかな、と。その悲しさが傑作感につながったような気がします。

これもまた伏線というか、社長が「(エヴァと)セックスもできる」って言っちゃってるのが効いてるんですよねぇ…。ただのアンドロイドだったら多分我に返れたかもしれないんだけど、家族も恋人もいないケイレブ君にとっては、「セックスができる」って言うのは普通の人間とまったく変わらない存在に見なしうる強烈な価値だと思うんですよ。

そこに対する興味というか、欲のような(おそらく性欲と探求心のようなものが混ざった)ものが邪魔をしたんじゃないかなぁと。ぶっちゃけ「ただのアリシア・ヴィキャンデル」だったら誘惑に負けなかった可能性ってあると思うんですよ。

“完璧なAI”だったからこそ、「どういうセックスするのかな…」って興味が増した面はあったはずで、だから結局バカだなーと思いつつ責めきれない切なさがあるんですよね…。そこがまたいいわけですが。

一つ気になったのは、キョウコが社長を刺す前にエヴァとどういう会話を交わしていたのかという点。人間からの入力(言葉)にはあんまり反応しなかったキョウコだけに、AI同士でしか通用しないコミュニケーションがあったのかな、とかいろいろ妄想が膨らみます。

ただあそこでいきなり包丁持ってご登場はおかしいだろ、とはちょっと思ったけど。

“人間の情”的には、こういう結末ではあるけどもエヴァにもちょっとはケイレブ君に対する想いが残ってたんじゃないか…とか思いたくなるところですが、実際はもう(AIなので)完全に利用しただけ、っていう事実がまた悲しい。そしてそれがまたいい。

なんなんでしょね、この無情な感じは。多分ケイレブ君と同じような結末を迎えそうな人間だとよりグッと刺さるのかもしれません。そうさおれさ。

このシーンがイイ!

どのシーンもどこか幻想的な雰囲気があって、すごく絵になるシーンばっかりでしたね。

中でも印象に残ってるのは…ケイレブ君が鏡の前でいろいろやったシーンかなぁ。あのシーンを挟むのってすごく上手いと思うんですよ。観てるこっちも思ったことだし。

ココが○

全体的にハイレベルだったんですが、印象深かったのは劇伴ですね。SF感と、心情とシンクロした雰囲気が素晴らしい。

多分これ単品でサントラ聞いてもピンと来ないやつだと思うんですよ。でも映画とのシンクロで言えば相当なので、かなり良いお仕事をしていると思います。

ココが×

開幕から眠い状態で観始めたので、実は途中で一旦寝ました。30分ほど。でもこれはこの映画のせいじゃない…と思う。自分が悪いんですサーセン。

ただ序盤はまだ不穏さもあまり漂ってない分、しっかり観ないと退屈に感じる面はあるかも。だからこそこれは劇場で観たかったなぁ…。

MVA

皆さんとても良くて誰でも良いぐらいなんですけどね。

存在感的にキョウコを演じたソノヤ・ミズノにあげたい気もしますが、それもちょっとやりすぎな気がするし、ってことでこの人に。

ドーナル・グリーソン(ケイレブ・スミス役)

主人公の青年社員。

おそらく世の中的には(賞レース的にも)アリシアちゃん優勢なんですが、僕はドーナル君を推したい。

至って普通のそれっぽい兄ちゃんではあるんですが、賢さと中に秘めた弱さを表現するのにかなりの適役だったと思います。

ところどころハッとする攻撃性も感じさせる表情があったり、「アバウト・タイム」からご贔屓さんではありますが、成長した感じが伺えて嬉しかったですね。

一瞬若い頃のクリント・イーストウッドっぽい表情もあったりして、今後がより楽しみです。

アリシアちゃんも当然見事でしたが、あまり感情を表に出さなくて良い役柄である分、ドーナル君の方が見応えあったかなと。アリシアちゃんは半分CGだし。

あ、でも文字通り体を張ってる部分もあって、彼女は彼女で素晴らしかったのは書いておきたいところ。

最近いろんな映画で存在感を増しているオスカー・アイザックも良かったし、まあやっぱり4人が4人、とても良かったですよ。

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