映画レビュー0492 『華氏451』

いよいよ年の瀬ですなぁ。いやー、今年はいつにもましてぼんやりした一年だった…。

華氏451

Fahrenheit 451
監督
フランソワ・トリュフォー
脚本
フランソワ・トリュフォー
ジャン=ルイ・リシャール
原作
『華氏451度』
レイ・ブラッドベリ
出演
ジュリー・クリスティ
シリル・キューザック
音楽
公開
1966年9月16日 フランス
上映時間
112分
製作国
イギリス

華氏451

書物を読むことが禁じられた近未来。書物を隠し持っていた人の家には「ファイアマン」の集団が現れ、書物を強制的に燃やされた上に逮捕までされてしまう。その「ファイアマン」として昇進を間近に控えた男・モンターグは、ある一人の女性と出会うことで初めて書籍に触れ、徐々に考え方を変えていくのだが…。

シュールで風刺に満ちた一風変わったSF。

8.0

一応ジャンルの上では「(近未来を舞台にした)SF」ということになっていますが、50年前の映画ということを差し引いても、あまり未来感・SF感というのは感じられません。どちらかと言うと、ディストピア的な情報統制と監視が厳しい社会を風刺するような、「どこかで見た風景」を舞台にしたサスペンス映画と言った雰囲気。でもSFらしいです。なんでも監督が「宇宙や機械やロボットが出てくるものが嫌い」らしく、SFっぽさを極力排したSF映画、というなかなか珍しい映画でした。

書物は所持も読むことも禁じられたとある国家が舞台。住民間の密告も頻繁に行われていて、かなり息苦しい世の中なご様子。「本は悪いもの」と教えられて育った人たちは、誰もがその価値観を信じて疑わないわけですが、その一人でもある取り締まる側の主人公・モンターグが、初めて書籍に触れたことで今までの価値観やアイデンティティに疑問を感じ、仕事や妻との関係に悩みながら…というお話。

まず最初に感じたのは、「星新一の小説っぽい」。これで結構感覚的にわかる部分があるんじゃないかと思います。ということはやっぱりSFなんですよね。ベタなSFではないSF。そして(特に序盤が)非常にシュール。

消防署に置いてある謎の球体が浮かぶ飲み物、あれなんなんでしょうか。未来感を出したかったのかもしれませんが今観るとただ単にシュールで笑えます。

そして何より、妻がドハマりしているテレビ番組「ファミリー劇場」。これがもう僕としてはかなり衝撃的でした。

すんげーコワイの。なんか。

映像的にとか内容的にじゃなくて、シュールな内容を流して、大まじめに受け取ってる視聴者のあの感じ。「書籍禁止によって人々が低俗になった」というニュアンスが込められているんだと思いますが、あの番組のセンス、あれはちょっと普通の人には作れない気がしますね。

「昔の映画」という古さがいい感じに影響を与えている気もしますが、それにしても…あのお茶の間に同意を求める演出とか、もううすら寒いというか。

もちろんこれは悪い意味ではないですよ。そう見せようとして作っているわけなので、まあそのセンスがスゴイな、と。あの異様さに気付かない程に一般大衆が愚民化している、という表現として、こりゃーすごいな、と痛く感心したわけです。

あれですね。「ガキの使い」で板尾創路が出て来てやりそうな感じ。ああいうシュールさ。何言ってるのかさっぱりわからないのが面白い&それが現実として展開している劇中の世界のことを考えると怖いという。

実はここまでではないにしても、最近僕も普通のテレビ番組って見ていられないものが多くて、なんとなくこの「テレビだけになって愚民化する」っていう表現の仕方には考えさせられるものがありました。それだけに、書物に触れて変わっていく主人公という設定がリアルに感じられたし、古い映画の割に内容が古く感じられないからきっちり観られたな、という気がします。

これはなかなか面白い映画だと思いますよ。さすがに美術・衣装・劇伴の古臭さとかは避けがたいものがありますが、語っている内容は今でも全然通用しますね。だからこその「星新一っぽさ」でもあるわけですが。

僕としては、古い映画は割とテンポが悪く、余計なシーンが多かったり一つのシーンを無駄に長回ししたりする印象が強いんですが、この映画はそういう感覚もあまりなく、むしろ突き放し気味に進んでいく不思議な世界に結構引き込まれていました。うまく書けませんが、すごく独特な映画だと思います。

文句なしに面白かった!! ってわけじゃないんですが、なんとなくいろんな人に観てみて欲しい、不思議な魅力のある映画だと思います。

んー、あとはやっぱり「ファミリー劇場」。あれはすごい。

このシーンがイイ!

これはもうやっぱり一にも二にも「ファミリー劇場」なんですが、それ以外だとオープニング。監督から出演者から、全部ナレーションで入るんですよ。どうも「書籍を禁じている世界=読まない」という意味を強調するため、らしいんですが。この演出もスゴイな、と。

でもチラシみたいなのは普通に読んでたやん、というツッコミは厳禁です。

ココが○

独特の世界観。これは古くても生き残る映画っぽいオリジナリティがありますね。

あとはタイトルがいいじゃないですか。カッコイイ。ちなみに「華氏451」とは紙が燃え始める温度らしいです。

ココが×

こればっかりはしょうがないことですが、いろんな部分で「古さ」はどうしてもあります。でも内容は面白いだけに、今の時代にセンスある人が作ったらすごく面白くなりそう…と思ったら、フランク・ダラボン監督でリメイクの噂があるらしいですね。果たしてどうなんでしょうか。だいぶ遅延しているようですが…。

MVA

役者さんに関しては、正直そんなにパッとしなかった気がしますが、一応選んでおきます。

オスカー・ウェルナー(ガイ・モンターグ役)

主人公。前半と終盤の表情がまるで違うのが見所かな、と。

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