映画レビュー0832 『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』
気付けばまさかの年末と言うことでですね、例年通りレビューの溜まりっぷりがひどいため、今後毎日更新していく予定です。
それでも多分追いつかないので最後の方はおなじみの連続ぶち込みになりそうですが…。
さて、今回のこれは自動的に観に行くシリーズですね。今回は「夜廻り猫展」を観に行くついでに都内の劇場で観てきました。なので大きいスクリーンではありましたがIMAXではありません。
前作は「まだまだ序章、今後に期待」って感じでしたが、今回はさて…。
ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生
続きが気になる…! ものの詰め込みすぎで捌き下手。
- 続編への布石はさすが、閉じ方もお上手
- ハリポタファンへのサービス的なネタがいろいろ登場する美味しさ
- ただいろいろ詰め込もうとしすぎな上にそれぞれのつなげ方がヘタなので散漫
- 主人公の見せ場が少なく不満
っつーことでね、ファンタビシリーズでございます。
現時点では5部作になると言われていますがその2作目に当たります今回の映画。
結論から言うと顔見せ程度でやや消化不良だった1と比べ、今度は逆にいろいろ詰め込もうとしすぎた上に捌き方があまり上手ではないのでとっ散らかって時間経過した挙げ句なんかヤバイからとりあえず的にまとめてピーク作って「なに!?」と気になる布石を打って終わり、という言っちゃなんですがなかなか監督の力量不足が伺える内容だったように思いますね。マジで「ダークナイト ライジング」の鬼のような捌きっぷりを思い出し、ノーランが監督なら…と思わずにいられませんでしたよ。
開幕は投獄中のグリンデルバルドの姿から。(確か)ニューヨークからロンドンへ移送させるぞ、ってことになり、当然ながら最大限の監視体制で臨むもあっさり破られてグリンデルバルドは逃走、彼は姿をくらまします。
一方ニュートはロンドンで相も変わらず魔法生物の研究(というか魔法生物とイチャイチャ)していたところにマグルのジェイコブを連れてクイニーが遊びに来ます。前作で記憶を失ったはずのジェイコブも記憶が戻り、私と結婚するのよ! なんて浮かれモードのクイニーですが、なんだかんだあって喧嘩して飛び出してしまい、姉であるティナの元へ向かいます。
ニュートもクリーデンスを追うティナを探すため、ジェイコブと共にフランスへ。かくして前作の4人がフランスに集まり、裏でうごめくグリンデルバルドに追われる謎の男クリーデンス、さらにニュートの兄やダンブルドアも登場して何やら大変そうだぜ…! ということであとは観てくださいまし。
もうこのあらすじを振り返っている段階でまとめづらいというか、各々がどういう目的で何をしようとしているのかが非常にわかりづらく、また前作にも登場したクリーデンスが超重要キャラ的に扱われているのもよくわからず、おまけになにかやら訳ありコンビっぽく彼と共に行動しているナギニもよくわからない関係性のままいきなり出てくるしで、最初っから終始ノレない展開でした。
ファンはそんなことないのかなー。僕もこのシリーズ(というかいわゆる一連の「魔法ワールド」)は好きで観てきてはいるんですけどね…。珍しく劇場で眠くなるぐらい、まったく頭に入ってきませんでしたね。
前作ありきの続編なので、前作の諸々についての説明が無いのは特に問題ではないと思うんですよ。もうそんなレベルじゃないぐらい、前提なしのいきなりコンニチハをギュウギュウに詰め込まれ、「ああこれ段々と糸を解くようにつながってくるのか」と思ってたらもうグチャグチャなままボーン! って放り投げて「どうだボールだ!」みたいな。よくわからない例えになってますけども。
前作で描かれた前提+今作からの新キャラ(ニュート兄やダンブルドア等含む)+ハリポタ遺産のファンサービス(フラメルとかナギニとかレストレンジ家とか)を並べてきれいに収納するわけでもなく、ただ段ボールにガンガン突っ込んでそれを「ファンタビ2です!」って見せられてる感じ。これは結構なレベルでひどいと思いますね。
ラストが一応それなりに劇的な展開を迎えることと、いわゆる起承転結における“転”のような先行きが気になるストーリーになっているので、最後まで観ると「まあまあかな」と騙されそうになるんですが…でも全体の作りはやっぱりひどいよ。これ。このレベルの人気作品でやっちゃダメなぐらいにまとまりがない。
ある種群像劇っぽく複数の舞台がそれぞれ描かれて進むわけですが、その核になる話はグリンデルバルドとニュート周辺のはずなんですよね。
ところがニュートは登場時間こそ長いものの物語の進行に関わってくる部分はほとんどなく、そのためタイトルにもなっている重要な要素であるはずの「ファンタスティック・ビースト」も中国への媚売り程度に今作から登場のズーウーがちょこっと活躍する程度。これほどまで主人公の影が薄い映画も珍しい。
いきなり重要人物になっているクリーデンスがなんでそこまで重要視されているのかもよくわからないし、グリンデルバルドの目的ももうちょっと声高に宣言してから行動を開始すればまだしも気付けばなんとなく軍団的なものが出来上がってて「俺の目的ご存知でしょ?」って感じだし、チュートリアル無しでいきなり中盤からゲームさせられてる感じって言うんですかね。あらゆるものに納得感が薄いので、情報もまったく入ってこないし興味も持てない。
これめっちゃ面白かった、って言ってる人はどんだけ理解力あるんだよ、ってちょっと嫉妬するレベルでまとまりがない映画になってると思いましたね…。どうしてこうなった。
このシリーズ特有の膨大な設定に対する興味はやっぱりあるし、観終わってからの知識補完も楽しいのは楽しいんですよ。Wikipedia巡りが終わらない感じが。でも肝心の本編がどうだったのかと言われれば、これはもうはっきりと「出来が悪い」って言っちゃって良いレベルだと思いました。僕はね。
地頭の良し悪しは置いといてそれなりに映画を観ている人間がコレなので、ミーハー客が多いであろうこの映画をどれだけの人が満足できるのか、かなり疑問を感じざるを得ません。
そりゃあジュード・ロウのダンブルドアとか最高でしたよ。ものすごくいいキャスティングだと思う。ジョニデもさすがに貫禄十分の悪役っぷりだし、コマが揃っているのは間違いありません。
でもそれを活かすはずの肝心のストーリーがもう全然ダメ。ストーリーがダメって言うよりまとめ方、つなぎ方が全然ダメ。これはもう単純に監督(デヴィッド・イェーツ)の限界が見えたと思いますね。魔法世界の描き方はおそらく世界一の域だと思いますが、ストーリーテリングの能力がこの脚本に追いついてない。
ということでね、僕としては大変不満な2作目となりましたが、悲しいかな次も自動的に観なければならないシリーズなので観に行くでしょう。我ながらそういうところがダメだとは思うんですけどね。ここでボイコットするぐらいじゃないと…。
個人的な最大の関心事は次作の監督人事になりました。まあ九分九厘変わらないだろうけどね…。
このシーンがイイ!
まあやっぱりね…あの音楽とともに登場するホグワーツには胸熱ですよ。そりゃあ。あのシーンは誰もがワクワクでしょう。
ココが○
それなりに過去の遺産を取り入れつつなので、シリーズモノの美味しさはところどころ見て取れると思います。ただそれが効果的に使われていたかどうかはまた別の話。
ココが×
散々書き倒しましたが、一言で言えば「まとめがヘタ」。それに尽きます。風呂敷広げまくって仕舞い方わからない、って大阪万博かよ!!(タイムリーな話題)
MVA
役者陣は本当に皆さん良かったと思います。特にエディ・レッドメインにエズラ・ミラーのような若手を中心に据えつつ、脇を固めるベテラン陣に名の知れた名優たちを配している辺り、とても巧み。
ただジョニデはやっぱりちょっと鼻についちゃう部分はあると思うんですよね。ある意味それで良いのかも知れませんが、どこか「グリンデルバルド自身も演じている」雰囲気が出ちゃうと言うか、グリンデルバルドの素が見える演技ではないのでそこは評価が分かれそう。
ということで僕の好みで選んでこちらの方に。
ジュード・ロウ(アルバス・ダンブルドア役)
第一報で「ジュード・ロウがダンブルドアを!」って聞いた時は驚くと同時に楽しみでしたが、その想像以上に良かったですね。
もうどっからどう観ても優秀そうだし、底知れぬ余裕を感じさせる佇まい、そして色気。さすがとしか言いようがありません。
今後は(原作の内容から言って)ダンブルドアとグリンデルバルドの対決色が鮮明になってくると思うので、となるともうこのシリーズの主役はジュード・ロウになるんじゃね? みたいな不安&楽しみもありつつ。
でもニュートももうちょっと活躍させてくれよな…。