映画レビュー1152 『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』
実は2021年現在、FF14はライトな現役プレイヤーのためずっと観たかった映画でもあります。今回めでたくウォッチパーティで選ばれたので、これ幸いと鑑賞しました。
劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん
野口照夫
山本清史(エオルゼアパート)
吹原幸太
『一撃確殺 SS日記』
マイディー
『ファイナルファンタジーXIV』
スクウェア・エニックス
坂口健太郎
吉田鋼太郎
佐久間由衣
山本舞香
前原滉
今泉佑唯
野々村はなの
和田正人
山田純大
佐藤隆太
財前直見
南條愛乃(声の出演)
寿美菜子(声の出演)
悠木碧(声の出演)
森英治
2019年6月21日 日本
115分
日本
Amazonプライム・ビデオ ウォッチパーティ(iMac)

ゲームすぎず、ゲーム好きにも。
- MMORPGを利用した“他人の友達”になって父と交流する息子
- 良い意味でMMOの現実逃避感を利用した親孝行
- 実話ベースの強さ
- その後、現実でもいろいろあって…
あらすじ
なにせ舞台となるFF14の現役プレイヤーなので、いろいろと贔屓目で観ちゃう部分はあったんですが、しかし「ゲームも全然わからない」と言っている人のほうが感動していたりしたので、割と知識関係なく万人にオススメできる映画なのかもしれません。
フツーの会社員である岩本アキオ(坂口健太郎)の父、暁(吉田鋼太郎)は勤務先の企業で間もなく専務取締役に昇格…と思われた矢先に突如退職し、毎日家で黙って1人過ごす日々。
家族にも理由を明かさず突然家にこもり、意気消沈しているかのように見えた父を心配するアキオ。しかし幼少期以来まともにコミュニケーションを取っていないと言う“ありがち男親子”のため、一計を案じてかつてゲーム好きだった父を今自分がやっている「ファイナルファンタジー14」の世界に引っ張り込んで、ゲーム内でコミュニケーションを取ってみようと企みます。
いろいろありつつうまくゲーム内でも知り合い、息子であることは黙って「フレンド」として父とともに冒険に繰り出すアキオ。やがてゲーム内屈指の難易度を誇るコンテンツに一緒に挑もうと猛特訓を開始しますが…。
FF14とは
まずご説明ですが、「ファイナルファンタジー14(通称FFXIV)」は「MMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)」と言うジャンルのゲームで、要は他のプレイヤーも同時にゲーム内世界にいて、一緒に強敵を倒したりコミュニケーションを取りながら遊ぶタイプのゲームです。もちろん最低限のコミュニケーションのみで大半は1人で遊ぶこともできます。
主人公はゲーム中で「光の戦士」と呼ばれているので、それをもじって「光のお父さん」と。
ちなみに映画では演出上普通に(声で)会話していますが、実際は別途通話ツールを用いない限りはゲーム中は文字チャットでのやり取りが通常の手段になります。
当然ゲーム内ではリアルのことは(自分で言及しない限り)わからないので、正体を隠して父と一緒に冒険する、と言うのがこの話の大筋です。
なお、この話は大枠の部分では実話がベースになっていて、映画でも実際にインゲームキャラとして登場する(原作者でもある)「マイディー」さんが、PS4を手に入れた(モンハンとかもやっちゃうゲーマーの)父にFF14のソフトと3か月分のゲームカード(ゲーム利用券)をプレゼントし、息子であることを黙ってフレンドになり、映画でも挑戦する「ツインタニア」という超高難易度コンテンツを一緒にクリアしたら「実は息子だよーん」とネタバラシする、という計画を記したブログが元ネタになっています。
僕もその計画は詳細を知らないんですが、おそらくはこれに先駆けて映像化された(大杉漣が父を演じる)ドラマ版の方が元ネタに近く、映画の内容はほぼ脚色と思われます。「息子が父を誘って息子であることを黙ってともにツインタニアに挑戦する」ぐらいまでが事実なのかなーと思いますがこの辺りは詳しく調べていないので話半分に聞いといてください。
ついでにもう一つ書けば、この「ツインタニア」ってやつが…実装当時の難易度は「(8人中)誰か1人がワンミスしたら終わり」と言う超激ムズコンテンツで、その性質から「大縄跳び」と言われたコンテンツ。また今はだいぶ穏やかな世界になりましたが、この頃はこの手のコンテンツの影響か、ギスギスするパーティばっかりだったために「ギスギスオンライン」なんて蔑称を持っていたゲームでもあります。
僕も当時クソみたいなプレイヤーにあたったために一気にモチベーションが削がれ、長い休止状態に入ったと言う余談はどうでもいいお話です。
この映画は簡単に言えば、そんなFF14に父を誘い、幼少期のようにコミュニケーションを取ろうと頑張る青年と父との家族の物語にゲームを上手く融合したドラマ、と言う感じでしょうか。
正直ドラマ部分はまあ当然ありがちな流れでもあるし、その部分だけで言えばそこまでよくできた話とも思えない、本当にフツーの親子ドラマではあるんですが、やっぱりそこにMMOを一つ噛ませているのが他にない特徴だし面白さでもあります。
事前に自分が予想していた以上にFF14(ゲーム内)の世界が映像としてよく登場するし、音楽もゲームの音楽(しかも良いチョイス)が映画にかぶさってくる辺り、現役プレイヤーとしてはなかなかたまらない映画ではありました。
またゲームフェーズがいい感じにコメディリリーフ的な役割を担っていて、リアルのみではあまりにもありきたりな物語になりがちなところを上手く補完しているのがなかなかやり手だなと思います。
プレイヤーには良いファンサービスになるし、知らない人には新鮮さのおかげで「ありきたり」を回避する一石二鳥の手法になっているのが面白いですね。
誰でも楽しめる系
それでですね…実はこの映画と言うかこの原作についてはここで終わりではないのが…この映画(とドラマ)になんとも言えない、より強い物語性を帯びさせているのがすごいと言うか…。
一応(映画では語られないものの)ネタバレ的に伏せておいた方が良いと思うのでここには書きませんが、その事実のおかげで映画そのもので語られるもの以上の“何か”がここには存在するので、それも含めて世に出るべくして出た物語なのかな、と思います。
もちろん作る段階でそれを狙っていたわけでもないし、それ故に「事実は小説より奇なり」と感じてしまうわけですが…。
プレイヤーであれば間違いなく親近感のある世界が楽しめるし、そうでなくても新鮮な「(陳腐な言い回しですが)ゲームと映画の融合」的な楽しみ方も味わえるので、万人にオススメできる良作と言えるでしょう。
まさにファミリー映画極まれり、と言えるかもしれません。ぜひこれを観て、少しでも“エオルゼアデビュー”する人が増えれば嬉しいですね。
なお、(新生版)FF14はサービス開始からすでに8年が経ち、もうじき発売される拡張ディスクで一旦現在の物語が終わりを迎えることになっていますが、その今がサービス開始以降最もプレイヤー数が多いと言う化け物じみた売れっぷりを見せています。
新規プレイヤーが最も多い時期でもあり、始めるなら今からが一番良い…かもしれません。
僕もFFシリーズは大半(同じオンラインの11も含めて)プレイしていますが、14の漆黒編(今度発売になる暁月編の1つ前)のストーリーの良さはシリーズ全体を通しても1・2を争うレベルで相当上位の内容だったと思っています。オススメ。映画よりプレイをオススメ。
このシーンがイイ!
終盤ねー、お父さんが頑張るシーンがね…。わかっちゃいるけどたまりませんでしたね…。
ココが○
ゲーム世界の組み込み方がお上手。良い緩急になっていました。
ココが×
展開的にベタなのをどう捉えるのか、と言うところは多少あります。ただ見せ方がうまいからそんなに気にはならないと思いますが。
MVA
順当にこの人かなー。
吉田鋼太郎(岩本暁役)
光のお父さん。
大杉さんで見たかったな…と言う思いもありますが、こればっかりは仕方がないし吉田さんもとても良かったです。
特に声がダンディなのでゲーム内のハキハキダンディボイスで笑わせてくれるのがズルい。
あとは妹ちゃんを演じた山本舞香も良かったですね。アキオといい感じになる同僚の佐久間由衣も良かった。
それと軽くてダメな上司の佐藤隆太も好き。割と珍しいタイプの佐藤隆太でした。