映画レビュー1158 『導火線 FLASH POINT』
今回はウォッチパーティで観たこちらの映画。
ドニー師匠のアクションが観たいぜと期待たっぷりに観ましたが…!
導火線 FLASH POINT

なかなか火がつかない導火線。
- 容疑者を病院送りにしまくる暴力刑事が主人公
- しかしタイトルとは裏腹になかなか動かず火がつかない湿った導火線
- 話がポンポン進んでよくわからない
- 最終的には勢い重視で爽快感
あらすじ
ドニー・イェン師匠&ウィルソン・イップ監督と言う、「イップ・マン」コンビがイップ・マン前に作ったアクション映画です。まさに“精神的イップ・マン前日譚”かと思いきや…! 全然違ってかなりの無理筋ストーリーでしたが、これはこれで楽しめるのでヨシ。
我らがドニー・イェン師匠演じる主人公の馬(マー)刑事はしょっちゅう容疑者を病院送りにするという、とにかくストロングスタイルで「捕まえれば良いだろ」ぐらいに思っているなかなかの問題刑事です。
彼の相棒であるウィルソンはとあるマフィアに潜入捜査中で、その甲斐あってか警察は当該マフィアを仕切る三兄弟を徐々に追い詰めつつあったものの、用心深い三兄弟次男のトニー(コリン・チョウ)によって疑いをかけられ、段々ヤバい状況に。
やがて警察と三兄弟は全面対決と相成りまして、双方被害者を出しつついよいよマー刑事の出番か!? と思いきやただただ寡黙に事態を見守るドニー師匠、なかなか火がつきません。
火がついたら最後You can’t stopなドニー師匠にいつ火がつくのか!? いい加減アクション見せてくれないか!? とヤキモキしつつ見守りましょう。
引っ張り長め
なんと書けば良いのか非常に難しい映画と言うか…。まあなんかもう妙に話が入ってこないんですよ。話の範囲は狭い割にとっ散らかってると言うか。
今作における悪役は間違いなくマフィアの三兄弟、さらに言えばその中でも一番の切れ者っぽい次男のトニーが最大の悪役…ではあるんですが、そのマフィアも「潜入捜査の対象になっている」以外に何が悪いのかよくわからず、「何か悪いことをした人たち」ぐらいの感覚で話が進みます。これには若干の困惑です。
もちろん話が進むにつれて「ひどいことするな!」と言うシーンもあるものの、警察・マフィア双方で割とさっくり人が死んでいく“命の軽さ”が強いお話でもあるため、なんとなく…こう…「こいつは悪いやつだ! やっちまえ!」みたいな感情が沸き起こりにくい。それもあってか余計に話が入ってきにくい。
おまけにジリジリと追い詰められていく相棒・ウィルソンの姿を眺めつつ、ただジッと傍観するマー刑事の“引っ張り”がとにかく長い。90分弱の上映時間中70分は引っ張ってた気がする。体感的に。
こっちはドニー師匠のアクションが観たくてチョイスしたってーのになんだこのお預けっぷりは! 焦らし作戦かよ! とマー刑事の導火線に火がつく前にこっちの導火線が燃え始めます。ヤバい。
結局クライマックスを除けば「なんかよくわからない悪いと思しき連中と耐えるだけの主人公」をジッと眺める感じで、おまけに中身も大して無いのでイマイチ感情移入もできなければ流れもよくわからず、フラストレーションが溜まる映画ではありました。
が、当然ながらクライマックスは「これが見せたかったんだぜ」とばかりに勢い溢れるアクションでむしろ笑えるぐらいにキレッキレのバトルを見せてくれます。溜めて溜めて〜のドーン! と。
ラストバトルはむしろなんなら長すぎるぐらいにたっぷり見せてくれるので、それまで我慢してきた甲斐があった…のかどうかはわかりませんが満足しました。詠春拳以外でもやっぱりすごいなドニー師匠、と。
ただ映画としての配分、見せ方と言う意味ではだいぶ荒削りな印象もあり、個人的な感覚ですが「やや中途半端なインド映画」っぽい感覚もありました。もうちょっと“やりすぎちゃう”か、もしくはもうちょっとまとめて欲しかったと思います。
イップ・マンの程よいまとまり具合を考えると、この後もう一歩巧みになったのか、はたまたテーマ(キャラクター)の良さが上手く噛み合ったのかはわかりませんが、アレぐらいのものを期待しちゃうと少々肩透かしを食らう可能性は高いと思います。
悪役も美味しい(らしい)
これまたウォッチパーティらしい案件ではあるんですが、みんなでやいのやいの言いながら(ツッコミながら)観る分にはとても面白い映画ではあるものの、一人でじっくり観ていたら結構イライラしていた気がします。なんなんだこの話は、って。
なのでそこまで完成度が高い映画とも言えず、ただ腐ってもドニー師匠なのでアクションはやっぱりすごい、みたいなところでしょうか。
ドニー師匠だからと過度な期待はせず、話は適当に流し見しながら終盤まで待ってアクションを楽しめればいいかな、と言った感じ。
ちなみに僕は観ていないのでサッパリわかりませんでしたが、今作のメイン悪役であるトニーを演じたコリン・チョウは「マトリックス」の2と3で世界的に有名になったアクションスターだそうで、それを知っていると「あのコリン・チョウとドニー師匠が…!」的に盛り上がれるのも間違いないところでしょう。実際直接対決の迫力はすごかったです。
なのでアクション界隈に詳しければ本編のデキ以上に楽しめる映画なのかもしれません。
ただ「何の話なんだ」的な感覚の強さはなかなかのものではあったので、本当にストーリーは二の次にして観ないとかなりしんどいのも確かでしょう。
あくまでアクション、それ以外は期待しないでね、そんな映画です。
このシーンがイイ!
やっぱりラストバトルでしょうか。「ゴージャスな30日間」の大根寸止めっぷりを分けてあげたいぐらいにガチで殴り合ってる感じがすごい。絶対痛いでしょ二人とも…。
ココが○
なにせニワカらしく「ドニー師匠=イップ・マン」なので、詠春拳以外の「普通の格闘」が観られるのはなかなか新鮮でした。ただもっと観たかったけど。
ココが×
話がよくわからず、背景が薄い点。物語は本当に二の次だと思います。
MVA
ドニー師匠はもちろん良いものの、そのままいつものように選んでも面白く無いぜってことでこちらの方に。
コリン・チョウ(トニー役)
三兄弟の次男で一番切れ者&強そうなやつ。
上にも書いた通り、世界的にも有名な彼とドニー師匠との対決自体が目玉の映画っぽかったんですが、それも納得のアクションがとても良かったですね。ドニー師匠と一進一退の素晴らしいバトルでした。
役柄上も一番嫌な感じがよく出ていた気がします。