映画レビュー0891 『特捜部Q Pからのメッセージ』

今日も今日とてネトフリ終了。

これねー、「特捜部Q」3作目なんですよね。以前ご紹介している通り、僕はまだ1作目しか観ていないので、観ようかちょっと迷ったんですが…でもこのシリーズはちょっと観ていきたいなという欲求が勝り、配信終了が来ちゃったよということで鑑賞。

特捜部Q Pからのメッセージ

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監督

ハンス・ペテル・モランド

脚本
原作

『特捜部Q Pからのメッセージ』
ユッシ・エーズラ・オールスン

出演

ニコライ・リー・カース
ファレス・ファレス
ポール・スヴェーレ・ハーゲン
ヤコブ・ウルリク・ローマン
アマンダ・コリン
ヨハン・ルイズ・シュミット

音楽

ニクラス・スミット

公開

2016年3月3日 デンマーク

上映時間

116分

製作国

デンマーク・ドイツ・スウェーデン・ノルウェー

視聴環境

Netflix(PS3・TV)

特捜部Q Pからのメッセージ

雰囲気、緊張感、ロケーションすべてハイレベル。

9.0
未解決事件専任“特捜部Q”に届いた一通のメッセージから明らかになる連続殺人事件
  • 過去書かれたメッセージと今起きた誘拐事件が結びつく
  • 信仰を背景にした事件はなかなか切り込んだ内容
  • 相変わらず安定した作風で見事な出来栄え

あらすじ

ということで「未解決事件の資料はとりあえずヤツらに渡しとけ」的な存在、“特捜部Q”シリーズ3作目。

前段で書きました通り、僕が観たのは1作目「檻の中の女」のみで、2作目の「キジ殺し」は未見です。そのうち絶対観たいぜとは思っております。

ちなみに前2作と今作では監督が変わっているようですが、作風としては概ね1作目と変わらない雰囲気で、一言で言うと「普通の刑事モノなんだけど見せ方がハイレベル」なシリーズ、というような印象。

前作を観ていないだけに、前作で起こったのであろういくつかの事象(特捜部に秘書的な女性が配属されていたり、カールが精神やられちゃったのか休職中だったり)があるんですが、その辺は知らなくてもまあ特に問題がない内容ではありました。

そんなわけでカールの休職中、秘書とアサドの二人に「これは特捜部案件だろ?」と渡された一つの資料が物語の始まり。

これはいわゆるメッセージ・イン・ア・ボトル的なやつですよ奥さん。ボトルの中に入った手紙が発見されましたと。そこそこ時間が経った手紙のようで、一部判別不能ながらアサドが概ね解読していきます。

どうやら“P”というイニシャルの子どもらしき人物が書いた、「誘拐されたから助けて欲しい」という内容の手紙のようで、引っ張り出されたカールとアサドが過去の誘拐事件と照らし合わせながら手がかりを追っていきます。

その彼らの捜査が進行中の同時期、(おそらく同じ国内の)別の場所ではとある誘拐事件が発生。その情報を受けた特捜部の面々は自分たちが追う“過去の”誘拐事件との関連性を見出し、現在の誘拐事件に関係すると思われる地域の聞き込みを始めるわけですが…後はご覧くださいませ。

これはもう傑作では

前回観た1作目(ややこしい)は「オーソドックスな刑事モノなんだけど雰囲気抜群で筋の良い映画」と言った印象だったんですが、今作はその印象を残しつつさらにもう2ランクぐらいランクアップしたような、かなり出来の良い刑事サスペンスに仕上がっていると思います。これはもうぶっちゃけ「傑作」と言って差し支えないんじゃないかなと。

犯人自体は早々に明かされるので、推理モノのような楽しみ方は出来ないんですが、しかしそれ故犯人の人物像もしっかりと狂気に満ちた素晴らしい描写がなされ、「連続殺人犯を追うただの警察」という2時間ドラマ感溢れる概要とは一線を画す仕立ての良いサスペンスになっています。

改めて書くまでもないことですが、このシリーズは本当に「普通の警察」が未解決事件を追う、前も書きましたが「デンマーク版相棒」的な極めて身近な警察が主人公の物語なので、当然ながらスパイガジェット的なチートアイテムは出てこないし、いきなり解決に導くヒーロー的な人物も登場しません。

至って真っ当に警察の捜査とそれをかわす犯人の戦いが描かれ、そこに被害者の感情やらも相まってくる内容なんですが、そこに遊びはまったくなく、地味ながらシリアスにじわりじわりと歩みを進める主人公たちの姿にとにかく引き込まれます。

かねてより僕は「具体的に何がとは言えないんだけど映画とドラマはまったく違う感覚がある」と言っているんですが、このいかにも2時間ドラマっぽい刑事モノでありながら、観ている手触り(あえて手触りと言いたい感じ)は完全に映画のそれ、という質の高さがたまらなかったですね。1作目以上に。

陰影の効いた重厚な映像に、たっぷり惹き付けつつ間延びしないカット割、そして北欧ならではのロケーションの見事さと、あらゆる面でハイレベル。本当に素晴らしい作りでした。

おそらく邦画もこういう路線を目指すべき良いお手本だと思うんですよね。ドラマの延長線上に位置する、でもドラマとはレベルが違う仕立ての良さという。

もちろん原作の良さもあってのことだとは思いますが、日本にも素晴らしい推理小説は多いはずだし、こういう「小手先でごまかさないガチサスペンス」みたいな路線、誰か目指して欲しいなぁと思います。

列車って良いよね

また今作を評価する上で大きいのは、中盤に描かれる列車のシーンでしょう。

閑職の2人が地道に頑張ります的な1作目では観られなかった、警察の威信をかけた人海戦術による大捜査に否が応でも盛り上がるぜってもんですよ。

ついこの前に観た「天国と地獄」をオマージュしているんじゃないかなと思わせるような内容でしたが、それだけに緊張感もたっぷりでサスペンス好きとしては本当にたまらないシーンでした。

やっぱりもう単純な話ですが、列車って緊張感を作り出しやすいすごく良いモチーフだなと改めて思いましたね。

止まる地点と時間とルートがほぼ決まっているために予測ができ、簡単に止まることが出来ない不自由さがある。ありきたりなものだけにその利点を忘れがちですが、これほど観客をハラハラさせやすい舞台装置もなかなかないんじゃないでしょうか。

「さすがにこのタイミングでこんなピークを持ってきてハイ解決とは行かないでしょ」と思いつつ観ていましたが、もちろんそこからさらに物語は転がっていくわけで、中盤にピークを持ってきつつ後半に向けてもう一段犯人の異常性を際立たせる展開もまた見事でした。

狂気漂う犯人像が秀逸

その今作の犯人がまた素晴らしくてですね。

パッと見はライアン・ゴズリングエドワード・ノートンを足して2で割った感じの優しそうなイケメンなんですが、それだけに狂ってる中身に怖さ倍増。このキャラと演技とキャスティング、これまたお見事としか言いようがありません。

上記列車のシーンまでは主に「犯人を追う警察」が中心なんですが、そこから一転して犯人を中心にしたストーリー展開に移行、徐々に「うわこいつマジやべぇ」感が強まっていくようになっていて、それ故中盤のピークを越してもテンションが切れない。疲れるぐらいガッツリじっくりかぶりつきで観させて頂きましたよ。

サスペンス好きを自認する方はぜひ観て欲しいシリーズ

一部気になる点も無かったわけではないんですが、しかし総じて本当にレベルの高い映画だと思います。「裏切りのサーカス」辺りと似たような遊びのなさ、ガチ感が観ていてたまりません。

あの映画の監督のトーマス・アルフレッドソンもスウェーデン出身なだけに、こんな感じのヒリついた重みのあるガチサスペンスは北欧のカラーなのかもしれないですね。適当な印象だけど。

推理する楽しみは無いとは言え、それを補って余りあるほどの魅力に溢れたサスペンス映画と言って良いでしょう。っていうか推理モノってよほどデキが良くない限りは「いやお前知らねーよ」的な人選だったり、ただ驚かせるためだけに選んだ伏線も何も無いクソビックリ人選だったりするので、むしろ推理モノじゃない方が良い説もありますね。僕の中ではね。

そうだよディナーラッシュ、おめーだよ。

ネタバレからのメッセージ

ちょっと納得行かなかったのが、ご両親も誘拐された時点で犯人がわかってたじゃないですか。

ってことは多分、ヨハネス(犯人)の過去の犯行って信者たちの間では有名だった、ってことですよね?

彼に見初められたらおしまい、みたいな雰囲気じゃないですか。それこそ生贄的な。だからこそ過去の被害者家族も警察に届け出てなかった、っていうのは理解できるんですよ。

だとするとですよ。あのヨハネスが家に来た時に子ども二人が「おやすみなさい」って挨拶に来たのってものすごい失態だと思うんですよね。

そもそも元から知り合いだったわけだし、「こういう人が来たら部屋に閉じこもってなさい」みたいなことを言っておくべきなんじゃないの、とか。

まあ「元から知り合い」だったら隠そうが子どもが二人いることも知られてるだろうし(そもそも経済状況まで把握されてたわけだし)、隠すこと自体にあんまり意味がないとしたとして、ですよ。

もっと不可解なのが、「帰宅途中にヨハネスから誘われても絶対乗っちゃダメだよ」ぐらいは言っておかないとおかしいと思うんですよね。あんなご存知犯罪なのであれば。最近自分たちの前に姿を現したのであればなおさら。

そういう事前準備をせずに号泣するお母さんどうなの、とその部分がちょっと腑に落ちませんでした。

が、まあその辺は些末な話ですよ。全体的に良く出来ているので大変満足しました。

このシーンがイイ!

やっぱり一連の列車のシークエンスですかねー。あの緊張感は本当にたまらなかった。

それとラストのセリフがまたしみじみ良かった。

ココが○

なんなんでしょうね、この仕立ての良さは。多分観ればわかると思うんですが、なんで良いのかは言語化するのが難しい(というか自分に知識がない)んですよね。

見た目すごく普通のラーメンなんだけど素材が良いのか食べると見た目より全然良く出来てる、みたいな。3作目でテンション落ちずにこのデキの良さ、っていうのはなかなかスゴイと思います。今後も期待。

ココが×

ネタバレ項に書いたちょっとした気になる点を除けば、ほぼ不満無しです。本当に大満足でしたよ。

ただ話の内容的に子どもがかわいそうな物語ではあるので、そういう話が苦手な人は要注意でしょう。

MVA

相変わらず「ゴリラ寄りのジェイソン・ベイトマン」ことニコライ・リー・カースの苦み走った演技もとても良かったし、相棒アサドを演じるファレス・ファレスの優しさと優秀さを潜ませている感じも素晴らしい。

被害者お父さんの演技もかなり出色で見事だったんですが、この映画はこの人かなぁと思います。

ポール・スヴェーレ・ハーゲン(ヨハネス役)

犯人。

上記の通り、イケメンで優男感漂わせつつ狂ってる感じがもう最高。背筋が寒くなる狂気を感じてとても良かったですね。文句なしに良い悪役。

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