映画レビュー0298 『フローレス』

少し前ですが、リストア版として最近発売された「ストレイト・ストーリー」のブルーレイを買いました。

いやぁ、こういう旬を逃した良い映画がブルーレイで出る、ってありがたいですね。この映画は歳を取ればまた違った味が出ると思っているので、綺麗な映像でまた自分が爺になっても観られるのは嬉しい限りです。もっともその頃ブルーレイ自体が観られるのかは怪しいところですが…。

ドライビング Miss デイジー」も出ないかなぁ…。DVDですら1万ってタケーよ! ※その後DVDは通常価格のものが出た模様(2017年追記)

フローレス

Flawless
監督
ジョエル・シュマッカー
脚本
ジョエル・シュマッカー
音楽
ブルース・ロバーツ
公開
1999年11月26日 アメリカ
上映時間
111分
製作国
アメリカ
視聴環境
TSUTAYA DISCASレンタル(DVD・TV)

フローレス

保守的でゲイが大嫌いな元警官・ウォルトはある日、脳卒中で半身麻痺になってしまう。やがてリハビリのために歌を習おうとするのだが、先生は嫌っていたゲイの男で…。

最後がなぁ…。

6.0

お友達のブログ「たまがわ」のレビューで気になっていた作品。

基本的にゲイものにハズレはないんじゃないか的な思いと、そのゲイ役にフィリップ・シーモア・ホフマン、相手役にロバート・デ・ニーロなんてこりゃあ観ないとバチが当たるぜ、と観てみました。

ですが、感想としては今一歩。

そんなに観たことはないですが、今まで観た他のゲイ映画と比べれば、ゲイたちの描写やキャラクターも比較的おとなしめで、「普通に生活している人たち」として描かれているような印象。実は監督さんもゲイらしいので、その辺りでリアリティがあったのかもしれません。

それはそれですごく良かったんですが、道中の味わい深さ、ジリジリとした感情の動きの良さが気に入っていただけに、その雰囲気にそぐわない、ラストのアクション的ないきなり感でちょっとガッカリ。惜しいなぁ…。

ちょこっとあらすじ。

元警官のウォルトは、ある日上の階で銃声を聞き、いてもたってもいられずに現場に向かうも、途中で発作を起こして半身麻痺の状態に。人生に絶望する中、リハビリとして勧められた「歌のレッスン」をしようと、意を決してゲイのラスティに教えを請おうとするも、相容れない二人は口喧嘩ばかり。でも次第に打ち解けていって…というお話。

安っぽいアパートがメイン舞台のためか、華やかさも特になく、割とダメな人たちが中心のお話です。喧嘩から始まって、やがてお互いを理解していくその距離感だったり、ベタベタし過ぎない、でも優しさがわかる人物描写だったり、イロモノのようで意外と繊細な内容が良くて、展開によっては号泣だなこりゃ、なんて思ってましたが、最後に強引に(そしてベタに)まとめられた感じでガッカリ。

話としては合点がいくところですが、基本線の繊細さからすると、もっと違う方向に持って行って欲しかったと悔やまれてなりません。急に安っぽい話になっちゃったなぁ、と…。

ただ、やっぱり主演の二人は抜群でした。ホンマモンのゲイとホンマモンの脳卒中リハビリ男な感じで。

私事ですが、今の勤務先の社長がこのロバート・デ・ニーロと同じように、一回倒れてリハビリしてきた人なんですね。僕が入社した時点ではもうすでにだいぶ回復してたんですが、でも歩き方とかやっぱりこんな感じで、そこがすごくリアルだなぁと。やっぱりロバート・デ・ニーロ、リサーチとかもしっかりやって臨んだんでしょうが、やや顔面麻痺っぽい演技もやっぱりすごくて「ザ・デ・ニーロ」な感じ。

対するフィリップ・シーモア・ホフマンも負けておらず、(ゲイらしく)影を持つ、でも明るいブサイクゲイというキャラがまさにピッタリ。この人もさすがゲイ達者ですね。ええ、オヤジギャグです。書いちゃいけないとは思いつつも書いちゃうんですよね。やっぱり。

もう一つ、面白いなぁと思ったのが女性2人の描き方。この女性の描き方と物語への関与の仕方が、重すぎず、でも軽すぎず、すごくいいアクセントになっていたように思います。

ゲイ映画なんだけど、でもしっかり女性を出す意味のある役割だったし、女性2人とウォルトとのやりとりでいろいろ考えさせられたりもして、意外と「ゲイ vs リハビリ」っていう単純な話じゃないのが良かった。

良かった…だけに!

最後が惜しまれます。無念。

このシーンがイイ!

家にやってきたティアとのダンスシーン。ホロッと涙しました。でもああいうこと言っちゃうんだよね…。自分も言いそうな気がして、そこがまた切なくて。暖か切ないシーンでしたね…。

ココが○

イロモノに頼り切らない、丁寧な進行。やや群像劇的な、あまり本線と関係のない人が登場するシーンも、短めにしているお陰で「みんな生きてるんだよね」といういわゆる“みんな生きてる感”(そのまま)につながっていて良かったです。

ココが×

やっぱりラストかなぁ。

いや、でもクドクド言うほどひどいわけじゃないです。全然アリだし、結末としても別に不満は無いんです。ただ、そこまでの内容とちょっとマッチしてないもったいなさがあって、「こういう映画じゃないのにー」っていう残念感があったんですよねぇ…。

MVA

主演の二人、本当に良かったので、どっちを選ぶにしても難しいんですが…。

ロバート・デ・ニーロ(ウォルト・クーンツ役)

ほぼ半身不随で自由に発音も出来ないような役柄で、まあ窮屈だっただろうなぁと思いますが、さすがにウマイ。

自分はもちろん演技の経験なんてないですが、なんとなく素人考えで、ゲイの役って楽しそうだと思うんですよね。なりきって楽しく演じられそうで、その分実はハードルが低いんじゃないか、と。

でもこっちの役はかなり大変だろうし、しんどいと思うんですよね。そういうのをしっかり演じられるのがさすがデ・ニーロですね、というところです。

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