映画レビュー0607 『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』

近くでやっていない場合を除き、やはりもはやおヒュー主演映画は劇場に観に行かなければいけないというルールなので、今週もまた劇場に行ってきたわけです。

ちなみに先に書いておきますが、今度の日曜日には「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」を観に行く予定なので、なんと今月4週連続劇場鑑賞。人生初でございます。

マダム・フローレンス! 夢見るふたり

Florence Foster Jenkins
監督
脚本
ニコラス・マーティン
出演
サイモン・ヘルバーク
ニナ・アリアンダ
音楽
公開
2016年5月6日 イギリス
上映時間
111分
製作国
イギリス・フランス

マダム・フローレンス! 夢見るふたり

資産家で音楽命のマダム・フローレンス。ある日、カーネギー・ホールでのコンサートを鑑賞後、「私も歌いたいわ」と夢見心地で意思表明。夫・シンクレアは早速ピアニストの面接を行い、準備万端整ってマダムもやる気満々、さぁ練習開始…となったところで脅威の音痴が発覚。しかし本人は気付いておらず…。

いいか、「おヒュー」はヒュー・ジャックマンじゃない。ヒュー・グラントのことだ!

8.0

ヒュー・ジャックマンも好きですけどね。でも「お」を付けるべきお方は、ヒュー・グラントですよ。なお、異論は認めます。

実在した人物「フローレンス・フォスター・ジェンキンス」を大女優メリル・ストリープが演じ、その夫役・シンクレアをまさかの我らがヒュー・グラントが演じたという、おヒューファンにとってはかなりエポックメイキングなヒューマンコメディ。なぜエポックメイキングなのか…というのは後ほどウンザリするほど書くと致しまして、まずはサラッと概要をご紹介。

舞台は1940年頃のお話、ニューヨーク在住のマダム・フローレンス。お父様の遺産のおかげでかなりの資産家なご様子で、自らの資金でヴェルディ・クラブという会員制のクラブを作り、そこで劇やらクラシックコンサート的なものやらを上演していたようですが、どうやら話によると元々「歌手になりたい」という夢があったらしく、ある日のコンサート帰りにその思いが爆発。「愛するマダムのためなら」と夫シンクレアが奔走し、練習を始めるも超音痴が発覚&絶望的に改善されない。しかしマダム本人はそのことにまったく気が付いておらず、シンクレアも愛ゆえに、彼女にそのことを気付かせまいとあの手この手でマダムを支える…ってなお話でございます。

まず映画として。

ご存知ワタクシが大好物のブリティッシュヒューマンコメディであり、なおかつ主演がおヒューということで、申し訳ないんですが(個人的に)つまらなく感じるわけがないので評価としてはアテにしないでくださいね、と。

努めて冷静に(なるかどうかはわかりませんが)評価すれば、話としてはやっぱりこの手の映画らしく、飛び抜けて良いわけでも無ければつまらないわけでもない、至って平均的で誰もがそこそこ楽しめる映画じゃないかな、という気がします。自分でも観る前に「大体8.0点ぐらいのちょっと笑えてちょっといい話の映画だろうな」と思っていたわけですが、まさにそのままだったので、めちゃくちゃ良かったわけでもなく、でもまあ面白かったし良かったな、というような感じで。

簡単に言えば、「天真爛漫で自分の音痴に気付かないマダムを、必死に支えてずっと“良い気持ち”でいてもらおうとする夫+ピアニスト」のお話です。それ以上でもそれ以下でもないかな、と。

ただ、何せ主人公が資産家で、よくあるブリティッシュヒューマンコメディのような「市井の人々」ではないだけに、無条件で感情移入して「いやーよかったよかった」というような話でもない分、やや人情に訴えるような良さに欠くのは事実でしょう。

ですが、このマダム、お金持ちではあるものの、なかなかの好人物で憎めない。まさに天真爛漫で天然っぽいというか、早い話がすごく良い人なんですよね。立場とかで差別したりしないし。きちんと(今風に言うなら)セレブなりの社会貢献も意識できる人物、という感じで。

んで、彼女を支える我らがおヒュー演じるシンクレアも、よそにかわいい浮気相手(あのミッション:インポッシブル/ローグ・ネイションで全世界に美脚を晒したレベッカ・ファーガソンですよ!)がいつつも、「マダムを愛している」とかのたまうわけですが、でも実際本当に愛してないと無理じゃないか、というぐらいに献身的な面があり、いくら財産があってそれに世話になっているとは言え、彼女を思う気持ちは本物っぽいその佇まいがなかなか泣けるんですよ。

マダムは「梅毒で50年以上生きている稀有な人」なので、結婚した時点で夫婦としての営みは無かったようなんですが、その特殊な夫婦関係から来る浮気相手とのつながり含め、なんとも不思議な夫婦でありつつ、でも愛は本物なんじゃないか…というような嗚呼ややこしいいろんなアレコレ…を我らがおヒューがやっているわけですよみなさん!!!

ここですよ!!! この映画のポイントは!!!!

~~以下、おヒューのお話~~

今までのおヒューはもうチンコが主で脳は副、みたいな人間ばっかりやっていましたが、この映画で演じたシンクレアは「チンコと脳は別だぜ」みたいな、割と男からすると(善し悪しは別として)なかなか高度な愛の高みに到達している人物のように見えるわけです。そんな人物をおヒューが演じている、という時点で「ああ、おヒューは違う世界に足を踏み入れたんだな」と気付くわけですよ。

おヒューももう50代後半、アラシクーですよ。アラシクー。

さすがに俳優としてはラブコメだけでは生きていけないわけで、「Re:LIFE ~リライフ~」に「コードネーム U.N.C.L.E.」と、徐々に「ナンパダメ野郎」から脱皮してきてーのこのトツギーノと。マダムのもとにトツギーノと。

もちろんご本人にそんな戦略があるのかは不明ですが、ただ彼にこういう役を当てようとした監督・キャスティング関係者の慧眼と意欲に拍手を贈りたいわけです。おヒューニストとしては。

シンクレアを観ていて思うのは、やっぱりおヒューなんですよ。どっからどう観ても。いつものあの表情で、いつもの動きです。言っちゃなんですが、特段、演技がうまいという感じも無くて。※もちろん下手ではありません。

が、その「いつものおヒュー」がばっちりハマる役だったし、ばっちりハマる話だったのがもう嬉しくて嬉しくて。

彼が演じるシンクレアは貴族の家系のイギリス人なんですが、オッサンになったとは言えさすがにタキシードもビシっと決まるし、背筋もピンと姿勢良くスタスタ歩く様は流石にかっこよくて様になるし、裏では浮気してるのもものすごくおヒューっぽくて。

でも本当にマダムを愛してるっぽい誠実さ、「裏切らなそうな安心感」みたいなものもさすがおヒューという感じで。

これが(毎度毎度スミマセンが)ケヴィン・スペイシーだったらもう気が気でないですよ。絶対なんかあるだろ、最終的にマダム殺して遺産独り占めだろ、みたいな。

おヒューはそういう怪しさ絶対無いじゃないですか。せいぜい小悪党…って言ったらアレですが、絶対大金持って逃げたりしない、小遣いごまかすぐらいしかしないだろう、みたいな安心感。これがすごく地味に効いていた気がするんですよ。おヒューニストとしては。

そんな嫌な展開がないのは百も承知なんですが、でもおヒューが醸し出す「根は良い人に違いない感」って、この映画に限らずいろんな映画ですごく貴重で、だからこそ安心してニヤニヤできる、みたいなものがあると思うんですよね。日清のインスタント(マルタイでも可)なら大体外さなそうじゃないですか。新製品が出ても。

あと柚子胡椒付けたら大体ウマイじゃないですか。食べ物って。そういう安心感があるな、と再認識したわけです。おヒューブランド。

しかも今回はそのブランドを最大限に活かしつつも、ちょっと毛色の違う役をやってくれたわけです。最後の方なんてやっぱりじんわりうるうる来ちゃうんですよ。彼の表情で。うわ、こんないい演技したっけか、って思うぐらい良い表情を見せるんです。もうそれだけで観た甲斐があったな、と。

んでもって相手役があのメリル・ストリープですから。この人はもう本当に完璧すぎて、まったく「メリル・ストリープだ」と思わせない、完全なるマダム・フローレンスにしか見えなくて、演技がどうこうより先に行っちゃってるのがすごいですね。やっぱり。

おヒューはどっからどう観てもおヒューですからね。

そこにめちゃくちゃ違いがあるわけですが、でもその二人が全力でヒューマンコメディをやってくれているわけですから、そりゃあやっぱり良いよなぁ、と思うわけです。

この映画に限らず、ヒューマンコメディは常に「クダラネ」って人が発生し得る微妙なジャンルというか、見やすさとは裏腹に大人向けの機微を含んだ話が多いので、意外と向き不向きがあるジャンルかもしれませんが、しかしメリル・ストリープとおヒューの共演に価値を感じられるような人であれば、それはもう損はしない映画でしょうとお伝えしましょう。お伝えしましょうよ。

突き抜けた良さは無いですよ? 無いですが、良いんですよ。

気になる方はぜひ、我らがおヒューの新たな姿を目に焼き付けて頂きたいと思います。

このシーンがイイ!

ポテサラの件は笑っちゃいましたが、一番良かったのはやっぱりラスト近くのおヒューの表情ですねぇ…。ここで「まだまだこの人はやれるな!!」と確信、嬉しくなりました。

あとはやっぱりおヒューのダンスシーンね。おヒューニストとしてはこれほど楽しめるシーンってそうそうないですからね。ファンサービスが過ぎますよ?

ココが○

「音痴のマダムを傍観しつつバカにする」みたいな話のように思えますが、そうではなく。一生懸命やっている人が周りを動かす美しさが見える話だと思います。そう言うところが良いな、と。

ココが×

とは言えどうしても視点によっては「金持ちの道楽」でしかない部分は拭えないので、そういう見方に偏っちゃうともうダメでしょうね。フラットな気持ちで観ましょう。

MVA

おヒューは殿堂入りしているので、自動的にこのお方になります。

メリル・ストリープ(フローレンス・フォスター・ジェンキンス役)

元々メリル・ストリープは絶対音感があるらしく、オペラ歌手志望だったというウワサもあって歌も激ウマなようですが、今回は「完璧に歌えるように練習してから崩していく」方法でヘタクソさを手にしたらしいです。終盤出て来る激ウマ歌もやっぱりメリルなんですかね…。とんでもない女優さんですね、ほんと。

上にも書いた通り、もう完璧に「マダム・フローレンス」で、メリル・ストリープを感じさせない演技はお見事でした。

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