映画レビュー0641 『17歳のカルテ』

えー、私事ですがついに…!

Netflixの契約をしました。(どうでもいい)

前にもちらっと書きましたが、こと映画に関しては今あるいわゆる動画配信サービスはどれも五十歩百歩な印象で、ハリウッド大作系が多いのであまり期待もしておらず、主目的は海外ドラマで契約したんですが、とは言えやっぱり映画もいろいろ「観たかったけど借りるほどでもない」ような旬を逃した映画が結構あったので、これはこれで楽しみという。なのでしばらくは劇場公開を除き、Netflixからの鑑賞になる予定です。でもたまにBS録画も観ます。

ちなみに、かの有名な映画評論家・町山智浩さんが言っていたことを又聞きした上に勝手に意訳したところ、今のハリウッド(≒アメリカ映画)は中国でウケる大作か、制作費の少ない小規模映画の二極化が進んでいて、予算的に中規模の映画が減ってしまい、そこを埋める形で連続ドラマに意欲のあるスタッフも俳優も流れているような状態らしく、言ってみれば一番美味しい“アメリカ映画的な映像作品”が連続ドラマになっているようです。

この場合の「中国でウケる」というのは、単純に「中国人が出てくる」とか「舞台が中国」とかではなく(もちろんそれらも含まれるでしょうが)、文化的・好み的な意味合いが大きいようで、要は一昔前の「日本人は人情モノ・任侠モノが好き」みたいなカテゴライズだと思われます。

早い話が今のアメリカ発連続ドラマは、中国向けという市場ニーズを考えず「作りたいものを作っている」から面白い、というようなことでしょうか。実際、早速Netflixオリジナルのマーベル「デアデビル」を何話か観ましたが、これがダークナイト的なシリアスヒーロードラマですごくカッコイイんですよ。大人向け! って感じで。今から観たいドラマが山ほど出てきちゃって困っているんですが、でも最初に観たのは久しぶりの「24」シーズン1という。

何しとんねん、と。その後どうでしょう観たりしてね。入らなくても一緒じゃん、みたいな。

さて、映画とは関係のない話が長くなりましたが。

今回最初に選んだこちらの映画、元々名作的な噂は聞いていて、いつか観たいとは思ってたんですが、最初にしてはチョイスが渋すぎないか? という気はしました。しましたが、この鑑賞翌日に配信終了、という噂を聞きつけたので焦って観てみたわけです。

17歳のカルテ

Girl, Interrupted
監督
ジェームズ・マンゴールド
脚本
ジェームズ・マンゴールド
リサ・ルーマー
アンナ・ハミルトン=フェラン
音楽
公開
1999年12月21日 アメリカ
上映時間
127分
製作国
アメリカ

17歳のカルテ

ある日、薬物大量摂取による自殺未遂を起こしたスザンナは、親の同意の元、精神科病院に入院させられてしまう。普通だと思っていた自分とは違う入院患者の面々に馴染めないでいたスザンナだが、次第に彼女たちとも打ち解け、徐々にそこに自分の居場所を見つけ始める。

若かりし女子たちの繊細さが伝わる傑作。

9.5

舞台は70年代の精神病棟…ということで、どうしても「カッコーの巣の上で」を思い出させるわけですが、あちらは男子病棟、こちらは女子病棟が舞台で、そして一番の違いは、この映画は原作者の自伝を元にしている、つまりはノンフィクションに近い作品ということでしょう。

ウィノナ・ライダー演じる主人公、スザンナ・ケイセンは原作者と同じ名前ということもあって、原作との違いやどこまでが創作なのかはわからないものの、ほぼ実際にあったお話なのではないかなと思います。

そんなスザンナは、自殺未遂から「境界性パーソナリティ障害」と診断され、精神科病院に入院させられてしまうところから物語はスタート。ちなみに主演であり、この原作に惚れ込んで映画化権を買い取って製作総指揮を務めたウィノナ・ライダーも同様の経歴を持っていたそうで、まさにうってつけの配役です。

さて、傍から観ていても「普通っぽい」スザンナが精神病棟に放り込まれ、かわいそうな気がしないでもない状況の中、それでもその中で人間関係を構築し、徐々に成長・変化していくスザンナ他入院患者たちのいろいろを見つめる、やや重めの人間ドラマでございます。(フワッとした説明)

やっぱり「精神科病院」っていうのは、良くも悪くもドラマにしやすい面があると思うんですが、さすが実体験を元にしたお話らしく、あくどい見せ場とかも無くてですね。とても真っ当なドラマでした。主役も周りのメンバーも精神病患者とは言え、これはこれで一つの青春映画なのかな、という気がするし。

なんというか…やっぱり登場人物たちの年齢的にも生きるのに一生懸命で、迷いも悩みも抱えてもがきながら、それでもなんとか自己を見出して未来を作ろうとする、そのエネルギーがとても良く表されている映画でしょう。若い女性らしい繊細さと危うさ、それをむき出しにする重さ、そしてそれらを包み込むような優しさに溢れた映画で、ま~ほんとに参っちゃいましたね。キッパリと傑作、名作と言っちゃって差し支えないと思います。

最初から最後まで、終始彼女たちの危うさにハラハラ緊張を強いられ、(「カッコーの巣の上で」を想像してしまうこともあって)良くない結末ばかりを想像してしまう、観ていて結構しんどい映画ではあるんですが、しかし良い意味で「カッコーの巣の上で」とは違った物語なので、そこが引っかかって観られない、というような人も気にせず観たら良いんじゃないかな、と思いますがそもそも「カッコーの巣の上で」なんて古すぎて観てねーよ、って人も多そうな哀しみ。あれはあれでとても良い映画なので、セットで観て欲しいとは思うんだけど。

とか言いつつこの映画も1999年の作品なので、もはや古い部類の映画に入ってきます。アンジーめっちゃ若いし。ギャル好きにはたまらないであろう感じでしたが。ただ、年代を感じさせない演出の良さもすごく光っていたように思います。

特に序盤の、スザンナの頭の中と現実が交差する切り替えの描写なんかもうキレッキレでしたね。テンポも悪くなく、途中からグイグイ惹き込まれて集中して観られました。演出も演技も、そして何より物語もとても良くできています。

男性と女性で感じ方も変わってくる物語かもしれませんが、僕はこの映画から漂う「女子的な危うさ」にやられましたね。ここまで強く、でも繊細に思春期の女子を描いた映画はなかなか無いように思います。この手の思春期女子を描いた物語は、とかくカジュアルに寄りすぎる印象があるので、そういうカジュアル的な要素を廃する意味でも「精神科病院」という舞台はとても良かったのかもしれません。

ただ、精神科というフィルターが強すぎるとただの「メンヘラ女子のこじらせ物語」的な感じになってしまい、ここまで深くはならないと思うので、この辺りはやっぱり原作者ご自身が経験され、考えてきたものをダイレクトに物語にしたが故に地に足の着いたものになったんでしょう。

序盤こそ「精神科病院はやっぱりよくねーな」みたいな見え方もするんですが、全体的にはそういう病院側を悪とみなす価値観はあまり見られないし、当然ながら患者たちへの偏見を助長するような表現も無いし。あくまで経験者であり、傍観者ではない人が書いた物語だからこその当事者感というのが名作につながったんだと思います。

そう言えば、スザンナは劇中でも「作家になりたい」って言っていましたね。それが叶ったんだな、と思うと…それもまたこの映画の後味に大きな清涼感を与えてくれて、涙せずにはいられませんでした。

誰にでもオススメできますが、特に若い子たちに、多感な時期に観て欲しいなぁ…。とてもとても、とても良かったです。

このシーンがイイ!

夜中の電球交換のシーン。すごく良かった。なんか泣いた。

後はやっぱり…ベタな展開だけど、わかりきってたけど…「The End Of The World」がかかるシーン。あの一連の「わかってるでしょ」的な引っ張り、そしてそこからのウィノナ・ライダーの演技。素晴らしかったです。あの場面でのアンジーのセリフもすごく刺さった。そうなんだよ、そうなの。わかる。

ちなみに、この「The End Of The World」、去年買った「パイレーツ・ロック」のサントラに入っているんですが、もう聞けないよね。もうね。そりゃあ。思い出しちゃってね。このシーンを。

でも脳内再生すごいんだよね。この曲。それだけ衝撃的なシーンだった、ということでしょう。

ココが○

演技、演出、結末含めた物語、全部素晴らしかったです。

ココが×

満点にしようか悩むほど良かったんですが、やっぱり少し…重いんですよね。満点はもう手放しで「ウヒョーーー!!! フゥーーー!!!!」ってなっちゃう感じ(どんな)なので、そんなテンションは持てなかったというか…。「ダンサー・イン・ザ・ダーク」に似ている感じ。あそこまで重くはないですが。

あとね、もうやっぱり今年も(古い映画ですが)これを言い続けることになるのか、とウンザリなんですが、まぁ邦題がクソですね。劇中、17歳って一度も出てこないんですよ。多分誰も17歳じゃないし。当時の(日本の)社会背景から付けたネーミングのようですが、原作冒涜にも程がある。邦題を付けたやつのカルテが見たい。むしろ。

MVA

「デイジー役の子(ブリタニー・マーフィ)、今いい女になってそうだなー」と思って観ていたんですが、すでにお亡くなりになっていました…。まだまだ若かったのに、残念です。

さて、わかっちゃいたんですが、ざっと世の中のレビューを拝見したところもう九分九厘「アンジーすげぇ!! ウィノナ・ライダー食っちゃってる!!」なんですよね。いや、わかりますよ。確かにアンジーすごく良かったです。強くて、繊細で。その繊細さを見せつけるシーンも素晴らしかったので。

ただ、ウィノナ・ライダー自身が言っていたように、確かにあの役なら誰がやっても(うまければ)評価はされる、美味しい役ではあると思うんですよね。当事者が言っちゃうのはちょっとカッコ悪いですが。

ということで、僕は天邪鬼だからかもしれませんが、断然!! この方だと思いました。

ウィノナ・ライダー(スザンナ・ケイセン役)

アンジーと比べれば、確かに地味でわかりにくい面はあったと思います。が、僕はもう最初っからこの人の危うさにハラハラしっぱなしだったんですよね。

ベリーショートでボーイッシュな外見も相まって気丈そうだし、普通そうだからくじけなそう…に見えるんですが、でもなんか危うい雰囲気があるんですよ。言うなればガラス細工感。すぐ壊れそうな感じがしたんですよね。すごく綺麗だった彼女の当時の外見も手伝って、より儚げなのが余計に。不安感が露出している演技がすごく良いな、と。

で、ラストはそれがすっかり無くなっていて、迷いのない強い女子の目になっていたのを見て、ウィノナ・ライダーすげぇな、立派な演技だな、と感心しきったわけです。

上に挙げた「The End Of The World」がかかるシーンでの演技もめちゃくちゃ心を打たれたし、普通なようでとても素晴らしい演技をしていたと思います。マジで。アンジーも良かったけど、彼女が目立ちすぎて「ウィノナ・ライダーダメだね」は気の毒で仕方ない。こっちの方が役的には絶対難しいと思いますが、満点だったと思いますね。ここ数年観た中でもトップクラスの演技でしたよ。

あと余談ですが、アンジーが感情をブワッと露わにする終盤のシーン(これまた名演)で、「セブン」のラストのブラピを思い出しました。皮肉ですね。

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