映画レビュー0581 『シン・ゴジラ』

どうも世間的にはイマイチ評判が良くなかったらしい予告編を観て、僕は「これはもしかするともしかするんじゃないか…!」と期待をふくらませていたのです。

果たして僕に期待させた予告編が世間的に悪評の予告編なのかは謎ではありますが、ただセリフが一切なく、危機感たっぷりの予告編に並々ならぬ自信を感じ、そして昨今の「観るべき!」意見に押され、行ってきましたこちらの映画でございます。

大人(オッサン)になって初めて劇場で観る邦画がまさかゴジラシリーズになるとは思ってもみませんでした。ちなみにゴジラシリーズ自体も観るのは初めて。

例によって世間に媚を売らず、また己の学のなさに臆すること無く、正直に思ったことを書きます。それがまた過疎ブログの良いところです。はっきり言って邦画の好評なんてまったくアテにならないと思っているので、それなりの映画マニア(と言わせてください)から観てどうなのか、そんな感じでダラダラ書くぞ、と。

シン・ゴジラ

GODZILLA Resurgence
監督
庵野秀明(総監督)
樋口真嗣(監督・特技監督)
脚本
庵野秀明
出演
長谷川博己
竹野内豊
石原さとみ
高良健吾
大杉漣
柄本明
余貴美子
松尾諭
音楽
鷺巣詩郎
伊福部昭
公開
2016年7月29日 日本
上映時間
119分
製作国
日本
視聴環境
劇場(大きめスクリーン)

シン・ゴジラ

東京湾で大量の水蒸気が噴出し、同時にトンネル崩落事故が発生。政府は「海底火山の噴火」と見立てて緊急対策本部を設置するが、ネットではどうも巨大生物が原因ではないか、という説が沸騰し始め…。

日本ならではのポリティカル・ディザスタームービー。

9.0

と、言うことでですね。

率直に言って、ンマー面白かったですね。ジャンル…というか劇中の状況的には「インデペンデンス・デイ:リサージェンス」と似た感じですが、こっちが圧勝です。

ただ、あっちはレビューにも書きましたが、まあ前時代的なフォーマットに則った激寒恋愛要素なんかが混ぜ込まれた陳腐仕様でしたが、こちらはそういった要素は極力排除された、真っ当で骨太なポリティカル・ディザスタームービーというか。

特に前半はとにかく政治、政治、政治で、まさにドキュメンタリーを観ているかのような緊迫感が素晴らしく。会議会議からのご報告ご報告、みたいな。

まさにザ・日本、ザ・官僚という展開がリアルなことこの上なく、大真面目にやりつつもエライ風刺にもなっているというとんでもなく美味しい展開がたまりません。会議中の差紙とかもうそれだけでたまりません。

担当官庁は? とか。「それはどの官庁に言ってるんですか?」とかもう名台詞すぎます。ここまで日本の官僚機構を見事に描いた映画はなかなか無いんじゃないでしょうか。

※実際はもっとスムーズに意思決定がなされるシステムらしいです。映画を観た官僚の人が書いていました。

とは言え、官僚が悪という単純な話でもなく、個は弱い日本人が組織になって戦うぞ、という様が非常によく描かれていて、なるほどこれは日本人が日本人のために作った映画だな、と。

大体この手の映画を日本で作る場合、日本人からすればまったくリアリティがない“最強のリーダーシップを持った”人間がトップダウンで大活躍→ハリウッドの真似したらアカンでやすし君、というパターンに陥りがちな気がしますが、この映画はしっかりと「日本らしい組織が日本らしい意思決定で戦う」様を描いていて、あらゆる面で違和感がない、だからこそ緊張感があるし、ドキュメンタリーのようにハラハラドキドキ楽しめる、という当たり前のようで今までなかなか観られなかった完成度のディザスタームービーと言っていいと思います。

素晴らしいです。

要はハリウッドの真似して大コケしたテラフォーマーズはお疲れ様でした、ということです。観ていませんが。

んで、「当たり前」のようなリアリティと言いつつも当然そんなレベルは凌駕しているわけで、観ていて感じたのは、とにかくテンポがいいおかげで細かいところは吹っ飛ばせる、観客に良い意味で考えさせない勢いが面白さにつながっているすごさ。

前半はとにかくいろんな人が登場してはテロップが流れ、すぐに消えてはまた会議、さらにセリフも早口で専門用語がバンバン登場、とにかくついていくので精一杯。

「これ海外に持っていくの大変だなー…」と思いながら観ていました。字幕だったら絶対追えないレベル。

もっとも字幕派は日本固有の文化のようなので、吹き替えになるんでしょうが…吹き替えでもすごく大変そう。母国語ですら追うのが大変なぐらいの情報量なので、海外は言うに及ばず。

そんなこともあって、登場人物も情報量も相当なだけにかなり難しくて客を選ぶ…かと思いきや、方方で大絶賛なわけです。なぜか。

僕が思うに、実は重要な情報はほとんどないから、のような気がします。

本当に前半は面食らうほどの情報量なんですが、ただ最後まで観ると「あれ(あの人)は別に意味無かったんかな…」みたいなのが結構あった気がするんですよね。結局、物語のテンポと迫力を出すために、大量の人と情報が消費されている映画というか。言い方を変えれば、大量の人と情報をエネルギーにして突っ走る映画というか。

若干中だるみが感じられる時間もありましたが、基本的にはとにかく密度が濃いし、アラや矛盾に突っ込む隙を与えずに最後まで突っ走る映画です。殺られる前に殺れ、これだけ割り切った作り方で“攻めきる”邦画は初めて観ました。スゴイ。

そして核となる物語はとてもわかりやすいものなので、「細かいことはわからないけどすごかった、面白かった」と思える勢いがある。これだけ勢いのある映画は海外でもなかなか無いですよ。そんな内容なだけにもう一度観たいとも思わせるし、それでまた理解が進むという一粒で二度美味しい方式。

…とまあ褒める面ばかりではありますが、気になる点ももちろんあります。

一つはやっぱり邦画を観ていると気になる、セリフ回しの部分。

どーも漫画っぽいというか、ドラマ仕立てというか、リアリティのない言い回しが結構多いんですよね。多分、気にする人ってほとんどいないので、僕がうるさいだけなんだと思うんですが。具体的にどこがどうとは言えないんですが、緊張感を強調するためか、少し棘があるセリフだったりとか「多分実際はこういう言い方はしないだろうな」というセリフが結構ありました。

まあ、そう思うのは日本人だからこそ、なんでしょうし、いつも書いてるように、海外の映画も母国語じゃないからわからないで観ているだけ、という面もあると思います。ただ、セリフのうまさで言えば「桐島、部活やめるってよ」の方がかなり自然に感じました。

また、これに少しつながる面がありますが、主人公・矢口と一部で大人気の巨災対メンバー・尾頭のキャラが少し鼻につきました。

矢口に関しては主人公が故に仕方がない面もありますが、ちょっと人間として“綺麗すぎ”て、周りのリアルな人間性から一歩上に持ち上げられてる感じが気になりました。首相補佐官・赤坂のように、もう少し汚い面が見えるとよりリアルで良かったのになーと。

尾頭さんについては、単純にちょっと狙いすぎかな、と。もちろん僕も彼女の存在はとても良いと思って観てましたが、ただそう思った時点で「狙い通り」な感じがするというか、狙って作ったキャラに狙い通り惹かれちゃうのが悔しい感じというか。

あからさまに早口で人を寄せ付けないキャラ付けがフィクションっぽさにつながってたし、もうちょっとだけマイルドな演技で良かった気がします。

ああ、あと一応書いておきますが、一番鼻についたのはもちろん石原さとみですからね。あれは日本語うまい外人でいいでしょ。わざと、なんでしょうが…すごく気になった。あの言い回し、存在感。

アメリカ人設定の割に日本語がうますぎるし、っていうか石原さとみだし。もっと知名度の低い女優さんならまだしも、石原さとみっていう時点でちょっとアイコンとしての力が強すぎて、あの役には全然あっていなかったと思います。

石原さとみその人は好きなんですが。エロいしかわいいし。ただあれは完全にミスキャストだと思う。

と偉そうにダメ出ししつつ、でも全体的にはとてもとても素晴らしくよく出来た映画だと思います。まさにアッパレ。

いろいろと現実の政治に置き換えてどうこう言っている方もいらっしゃったので、そっちの面でも少し心配ではあったんですが、そういう意味で観ても一面的に観られるほど単純に作られていなかったのもまた良かった。

ゴジラの存在自体にもいろんな意味が内包されているし、フィクションとして楽しみつつも、現実に意味を持ち込むこともできる、娯楽100%ではない懐の深さも素晴らしいと思います。

日本人なら観ましょう。損はしないと思います。

【余談】

これは映画とはまったく関係がないんですが、邦画だからなのか、はたまたヒットしているからなのか…観客の質が低すぎ。

たまたまそういう回に当たっただけなのかもしれないんですが。そして埼玉の民度なのかもしれませんが。まー劇中に喋る連中の多いこと多いこと。ひどいのは携帯鳴るやつもいて。電源切るどころかバイブにもしていないという。隣のオッサンは持参のサンドイッチと水筒でバクバクゴクゴク。貴様みたいなオッサンがいるから結果的に映画がダメになるんだ、って説教してやりたかったですね。ほんと。

洋画の方がマナーがいいお客さんが多いのは気のせいでしょうか。マナー啓発のCMってホント意味無いんでしょうね。あれが響く人は最初からやらない、っていう。いわゆる「早く来ている人間に遅刻説教問題」と似てる気がします。ポンタンからのお願いを聞けよちゃんと!! おまえら!!

このシーンがイイ!

いろいろとありましたが、絵的にやっぱりいいなぁと思ったのは、予告編でも使われていた、ゴジラの尻尾だけがグルリと空を一周するシーン。あの規模感、現実とのリンク感と説得力にすごくグッと来ました。また予告編で使われていた少し悲しげな劇伴も、シーン含めてすごくいいんだよなー。

ココが○

上に書いた以外ではですね、やっぱり邦画に多い「売れるための作り」をほぼ排除している点。エグザイルもAKBもジャニーズも出てこない、でもいい役者さんが山ほど出てくるキャスティング。

別にエグザイル他が悪い、っていうんじゃないですよ。それで客寄せしない姿勢がいいんです。(エンドロールで前田敦子の名前は確認しましたが、どこに出ているのかサッパリわかりませんでした)

とにかくいろんな人が少ない出演シーンでキラリと光る演技を見せてくれるので、役者好きにはたまらないんじゃないでしょうか。

それとやっぱり、陳腐な恋愛や人情話が一切無い点。これはもう無条件で大拍手もの。最後に矢口(長谷川博己)とカヨコ(石原さとみ)がブチューとかやったらスクリーン切り裂いてましたよね。安心です。

逃げ惑う人たちに変なドラマも持たせず、安っぽいお涙頂戴もゼロ。何度も書きますが、これは本当に素晴らしい!!! もう「逃げる少年少女が最後助かってよかったね」みたいなのはいらねーんだよ!!!

あともう一つ、物語としてとても大きいのが、「ゴジラ」自体が持つ出自の部分。やっぱりそこに人間の罪とか哀しみが内包されている、という設定がすごく効くんですよね。これは初代からだと思いますが、そのセンスたるや素晴らしいです。

ココが×

しっかり書くとネタバレ気味になるのでふわっと書きますが、最後の決着の仕方がちょっとだけ腑に落ちなかったんですよね。ん~、なんて言ったらいいんだろう…。最後の方のあるシーンで、「抱かれることを拒否していた女性がパンツに手をかけたら腰を上げてくれた」みたいな違和感があった。(何)

それと序盤、川を遡上するシーンで船とか車がガッツンガッツンぶつかりつつ大惨事になるんですが、あの辺のCGが少し軽い感じは受けました。後半の電車●●とか。やっぱりCGは少し弱いのかなぁ、と。

でも戦車とか、後で聞いてCGと知って驚いた部分も結構あったし、全体的にはすごく良く出来ていたと思います。

MVA

さて悩むところ。チョイ役で良い人もたくさんいたんですよねー。ピエール瀧とかもう安定の良さ。普段あんなふざけた人なのに。すごく渋い。

印象的だったのは鶴見辰吾。あんな渋いオッサンになっていたとは…。すごくかっこよかった…けど大して出番無し。1シーンだけでもめっちゃ“らしかった”片桐はいりもお見事。あの役はあの人しかいない!

んでもって誰にしようか悩んだ結果…うーん…本当に悩みましたがこの人にしましょう。

松尾諭(泉修一役)

政党副会長って言っても肩書じゃあよーわからん人も多いでしょう。

矢口の親友で、あのメガネで小太りの政治家。「幹事長は任せろ」でお馴染み。

この人、すごくリアリティがあって。役でも演技でも。性格的に暑苦しくないし、賢そう&ずる賢そうな雰囲気がとても良かった。

他にも良い人たくさんいましたけどね! 次点で悩んだのが、巨災対のメンバー・安田さん役の高橋一生。

柄本明とかも最高でした。あんなお爺ちゃん感あったっけ、って思いつつ。余貴美子の防衛大臣も生々しかったし。まあ皆さんよかったと思います。残念ながら一番見た目が好きな石原さとみがブービーということで。

今って「ブービー」なんて言わないよね、きっと…。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA