映画レビュー1608 『ゴルゴ13』
いつか観たいと思いつつ一生観る機会がないであろうと思っていた映画ですが、なんとU-NEXTにあったのでやったぜと観ることにしました。
何度か書いていますが僕はゴルゴ13全巻所持者です。
ゴルゴ13

ゴルゴに詳しい人ほど憤慨待ったなし。
- 言わずと知れた長寿マンガ「ゴルゴ13」初の実写映画化作品
- ほぼ全編イランロケ、演者もゴルゴ役の高倉健以外は外国人俳優で固められたレア邦画
- ゴルゴ読者には違和感しかないゴルゴ像
- ゴルゴ的にはこの映画とビック東海のゲームとどっちが黒歴史なのか悩むレベルでひどい
あらすじ
元々評価が低かったのであまり期待もしていなかったんですが、それにしても健さん使ってこれかよとかなり腹が立ちましたね。
某国の秘密警察が「誰も顔を知らない」という国際犯罪組織のボス、マックス・ボアを逮捕しようと何人もの捜査員を派遣するも殺され続け、もはや残された手はこれしかないとばかりにゴルゴ13(高倉健)に暗殺を依頼します。
秘密警察はキャサリン(プリ・バナイ)を助手として送り込み、「完璧な夫婦役として潜入するように言われています…」とハラリと服を脱いで抱かれる「これマンガで見たやつ!」とゴルゴらしい展開を挟みつつ、果たしてゴルゴは仕事を達成できるのでしょうか、といったお話です。
ゴルゴである必要があるのか?
(ほぼ)オールイランロケ、演者もほぼ(多分)イランの俳優さんたちですが字幕はなく、吹替バージョンのみの映画です。健さん含めて全員日本語で演技していて、吹替なので当然なんですがなんとなく健さんとその他の俳優さんたちが日本語で会話しているのを見て「マンガっぽい…!」と思ったりしました。もしやそれを狙った…? かと思いましたが、そもそも当時のイランはサイレント映画しか作っていなかったらしく、「声を出す演技」をやったことがないのでそもそもイラン語バージョンが存在しないという話らしいです。
なのでオープニングのクレジットに声優さんの名前も出てくるというなかなか他にないタイプの映画になっています。
元々ゴルゴ13は高倉健がモデルになっているのは有名な話なので、そのまま健さんが演じる時点でそこまで悪くないんじゃないの? と思ってたわけですよ。しかも脚本もちゃんとさいとう・たかをだし。
評価が低いのも「ゴルゴファンはニンマリできるものの話としてはイマイチ」だからなのかな、と思っていたんですが、いきなり最初に出てくる依頼のシーンで座って資料読み込んでるんですよ。ゴルゴが。速攻で「は? ゴルゴが? 座って??」と違和感爆発。普通であれば部屋の隅で立ってるはずですけど。
いきなり出鼻をくじかれたので、これは嫌な予感しかしない…と思って観ていたんですが当然のようにゴルゴとは思えぬ言動やピンチを招くシーンだらけで脳が拒否してしまい、まー眠かった眠かった。
さいとう・たかをが脚本を書いてこれなの…? とものすごい困惑しましたが、なんでも彼が書いた脚本は「映画としては短すぎるし金がかかりすぎる」ものだったそうで、勝手に監督サイドで書き換えたものを映画化したようです。
さいとう・たかをは演出も指定していたそうですが、結局出来上がったものは「まったく違うものとなった」と不満だったそうで御大の気持ちも慮られます。そりゃそうだ、ファンでも不満すぎる内容だし。
だったら書き直してもらえばいいだろと思いますが、スケジュールの問題だったり時代の問題(監督側で書き換えることも珍しくないとか)だったりイランロケの都合だったりといろいろあったんでしょう。
そんな不幸が重なった結果、誰も幸せにならない駄作が出来上がってしまった、と。
ただの一読者である僕が観ても憤慨したぐらいなので、さいとう先生の内心たるや相当な憤りがあったのではないかと思われます。
理想の配役で海外ロケまでして肝心の主人公が原作とは似て非なるものでしかないキャラになってしまったという…。本編に偽ゴルゴで出てきそうなぐらい絶妙に似て非なるものなので、逆にファンの心情を逆なでしてしまったという典型例ではないでしょうか。
これで全然違うキャラになっていれば(嫌だけど)まだ笑えたと思うんですが、原作者が関わってモデルとなった人物が演じているのにこの体たらく、というのはガッカリレベルも相当です。
「後ろに回り込んだ人間は殴る」とか「握手はしない」とか中途半端に取り込んでいるのも逆効果で、まあよくぞここまで地雷を踏んでくれたねとびっくりするぐらいでした。
で、まあここまでの話は原作ファンの面倒くささ込みの話なので百歩譲って無視して頂いて構わないんですが、では「ゴルゴをまったく知らない人が観ても面白いのか」というとこれもまたかなり厳しいと言わざるを得ず、まったく取り柄のない映画になっていると思います。
浅い部分でも「ゴルゴ13と言えば」ビジネスに徹するキャラクターだったり、時に情に厚い部分だったり、不可能と言われるような狙撃術だったりが欠かせないと思いますが、それらの要素もまるでなく、果たしてこの映画の主人公がゴルゴ13である必要があったのかもかなり疑問です。
おそらく今であれば超人的な強さを発揮しまくる(それこそステイサムのような)振り切った映画にするか、超絶技巧を見せつけるスナイパー全振りの映画にするか、いくつかやりようはあると思うんですが、この頃は様々な事情が絡んでこんなしょうもないものとして結実してしまったというなんともやるせないお話です。
怒りと眠気のマリアージュ
一応、イランがまだパフラヴィー朝の時代でヒジャブを着けずに外出する女性の姿が写っていたり、イランの風景を観る意味では貴重な映像になっているようですが、しかし映画としては観るべき点はまったくないと思います。
せめてひどすぎて笑えるぐらいなら観る価値があるなと思って観たものの、結果的に怒りと眠気のマリアージュで終えるというなんとも悲しい結末に至りました。
イラン研究でもしていない限りは観る必要のない映画だと思います。残念すぎる。
せめて改変するならスタッフにゴルゴ13マニアを配置するんだったな……。
ズキューン
このシーンがイイ!
無いです。漫画にはいっぱいあります。
ココが○
無いですね。ここまでフォローできない映画もなかなかないです。
ココが×
存在自体が✗です。すみませんが。
MVA
うーん…難しい。正直無しでもいいぐらい。
健さんが悪かったわけではないです。これは間違いなく演出側の問題。逆に言えばだからこそもっとちゃんとわかっている人が作れば「本物のゴルゴ13」が観られたはずで、その悔しさもまた低評価に繋がります。
ということでぶっちゃけ誰でも良いんですがこの人に。
モセネ・ソーラビ(アマン・ジャフアリ役)
ゴルゴを追う市警の警部。
吹替が山田康雄なんですよね。元祖ルパンの。「うわ〜山田康雄久々だ〜!」と最初はテンションが上りました。
もう山田康雄が喋ってるだけでいい役だなと思います。その程度です。

